ファミリサイドと整理整頓の関係とは?

Photo by DESIGNECOLOGIST on Unsplash

「ファミレス」とか「ファミマ」 など、「ファミ」とつくと楽しそうだが、ファミリサイドとは「複数の家族の殺人」のこと。「サイド」はジェノサイドの「サイド(cide)」である。

9月の終わりにNetflixで、父親が家族を皆殺しにした2018年の事件のドキュメンタリーが出た。殺された奥さんはマルチ商法のセールスをしており、その拡販目的もあってか、生前大量の動画・静止画コンテンツをオンラインにアップしていた。子供はまだ3歳と4歳。しかも家族全員見目麗しい。殺人の動機は「愛人と一緒になりたい」という極めて俗っぽいものだったようだが、その愛人さんもなかなか美しい。その上、なんと彼が家族の死体を(彼の仕事場であるシェール石油の掘削現場に)捨てに行っている間に警察が家に来て、殺人犯が家に帰ってくるところからずっと警察が撮っている動画もある。ドキュメンタリーにならないはずがない展開の事件だった。

しかし、事件の中身もさることながら、私が瞠目したのは警察が踏み込んだ家の中が美しく片付けられていたこと。

時系列的に見ると、

  • 金曜に奥さんが出張に出ていく
  • 週末は彼が子供2人を家で見る(家の中で遊んでいる動画もある)
  • 月曜の早朝2時過ぎに奥さんが出張から帰ってくる
  • 数時間後の朝5時半には、彼が車に家族全員の死体を乗せて出ていく(近所の人の防犯カメラに写っている)
  • 昼前には警察が家に
  • そのあとで彼が帰ってくる

という流れになっている。(なお、車に乗った段階では子供たちは生きていた、と本人は証言しているが、いずれにせよどこかで殺して、原油タンクに放り込んだ)。

もとい。週末のあいだ3、4歳の子供の面倒を1人で見て、しかも「奥さんが帰ってきたら家族全員殺して捨ててこよう」と(少なくとも頭の片隅で)思いながら過ごし、さらにそれを実行したばかりの人の家がどこまでもスッキリ片付いているとはどういうこと、と瞠目したのである。

リビングルーム↓

キッチン↓

子供部屋とかバスルーム、パントリーの中もきれいなのです。

そしてこのドキュメンタリーを見た私は、猛然と自分の家を整理整頓したい欲求にかられた。

なぜそう思ったかのわかりやすい理屈としては

「週末1人で3、4歳児の面倒を見て、しかも家族全員殺す気だった人がここまで家をきれいにできるならきっと私もできるはず」

ということがあるが、個人的にはもっと違う理由な気がする。

そもそも「全く理解できない人間の心理の探究する」というのはわたくしの趣味であります。

その中でも「息をするように嘘をつく人」「サイコパス」「シリアルキラー」あたりは、あまりにも訳がわからないので何十年もずっと追いかけているテーマでもある。追いかけているうちに、だんだん世の研究も進んで色々と新しいことがわかってきて、さらに興味をかき立てられる。

して、今回の事件は、年端もいかない自分の子供を2人(奥さんは妊娠していたので、3人とも言える)も殺してそのあと愛人と楽しく暮らしていけると思った点だけをとっても明らかにどこか壊れている犯人なのだが、その彼が「寡黙な人」なのだ。サイコパスは「口がうまくて表面的にはとても魅力的」というのが一般像なのだが、今回の犯人は子供の頃から誰もが認める「寡黙で感情を現さない人」なのである。

ゆえに、

「寡黙なサイコパスの希少事例が」

と私の探究心が煽られて、ドーパミンかなにかがドカドカ脳内に出ている状態で整理整頓された家を見たので、脳が勘違いして整理整頓の方に執着してしまったのではなかろうか。

そうとしか思えない、「うおおお、ゲームやりてぇ!」みたいな強度で、前回のブログのように収納ボックスを求めてさまよう事態になったのである。


しかしですね、どう考えても家族3人殺してバレずに終わるより、自分1人で愛人と逃げて別の州で新しい人格を捏造して生活する方が成功確率が高いと思うんですが・・・・。

ちなみに今回の犯人氏は、警察も家に来た殺人当日の月曜に、子供を通わせていた一月2500ドルという高価な保育園に電話して退園を告げている。家のローンも3ヶ月滞納して家計は火の車だったらしく、それもこのファミリサイドの原因ではないかと推測されているが、それにしてもあまりに短絡的である。

人間って恐ろしい。


Netflix: American Murder: The Family Next Door

YouTubeの、「取り調べの心理学」的なチャンネルでも3回にわたってこの犯人の尋問が解説されています ↓


p.s. 犯行当日、犯人(↓)の車が出ていくのを撮影した防犯カメラの持ち主の隣人の家で。なぜか後ろのスクリーンにAmerican Horror StoryというシリーズのCMが流れていて、それが「胎児が骨になって原油風の黒い液体に沈んでいく」という映像なのです。まさに自分の子供を殺して原油のタンクに沈めてきたばかりの人の前に偶然それが流れ、それが警察のカメラに残っているとは・・・・。

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