インフレのある暮らし – 15年ぶりの1ドル80円時代に思うこと

 私がアメリカに旅行以外で最初にきたのは1995年であった。当時は1ドル80円だった。ここ2年ほどと似た様な水準ですね。

して、思い起こすに、1995年当時はアメリカのものは何もかも尋常でなく安く感じた。

「えー、こんな値段でいいの」

と、つい鼻息荒くなって、使いもしないシャネルバッグとか買っちゃったよ。(ちなみに、私の服装はシャネルから極めて遠い)。

が、今回円ドルレートが同じ水準になっても、あまりアメリカが安い感じがしない。「日米同じくらいかな?」というイメージ。

前回の1ドル80円時代から今回の1ドル80円時代の間に、アメリカはインフレがあったからですね。

ビバ・インフレ。

以下、どんなにシリコンバレーのものが高くなったか、書いてみたいと思います。

家賃

最近、前回の1ドル80円時代にPalo Altoで同じアパートに住んでいた日本人の知人と久しぶりに会った。彼は日本に帰って10数年経つ。で、賃貸費用の話になって、

「あのPalo Altoのアパート、2ベッドルームで2000ドルいかないでしょ」

と言われて目が点に。確かに95年当時それくらいでした。

でも、今では4000ドルですわい。

95年当時、私が住んでいたのは1ベッドルーム。確か1300ドルくらいでした。10万円ちょっと。で、その値段で建物内に駐車場があって、温水プールが複数あって、ジムがあって、テニスコートがあって、グランドピアノのあるラウンジがある。

「なんてお安いのかしら」

と思った。(ただし、壁が薄くて、「隣の人のいびきで飛び起きる」という、まさに目が覚めるような体験もあった。)

今、そのアパートのサイトをチェックしてみたら、同じフロアプランの1ベッドルームのユニットが$2375 – $2800となっている。確か95年に借りたのは同じサイズの部屋の中では割と高めだったはずなので、2800ドルに近いはず。22万円か。全然安くないですね。

特にここ1年ほどのベイエリアの家賃高騰はすごくて、こちらの記事によれば過去1年だけでサンノゼが10.1%、オークランドが14.4%、サンフランシスコが12.9%あがったそうです。

(ちなみに、過去15年、すごく景気が悪かった時も当地の家賃は意外に下がらず、あがらないだけだった。だから景気の上下と共に、家賃は「あがる」「足踏み」「あがる」を繰り返すので、結局あがる一方でございます。ハウジングバブル崩壊で持ち家の値段が半分以下になったラスベガスとかでも、家賃は逆に上がったりしている模様。人間、結局どこかに住まなければならず、持ち家を失った人は借りるしかないので。)

学費

1995年〜1997年のスタンフォードのビジネススクールの学費+教材費等=2年トータルで500万円台であった。社費派遣で留学、卒業して2年後に会社を辞めたのだが、そのとき全額お返ししたのでよーく覚えてます。(ただし3年分割。人事部の皆様、お手数かけました。)

今年の夏同じ学校に入学する人に今後2年間にかかる学費+教材費等は、学校のサイトによれば12万ドル強、約1000万円である。

アメリカ全国で、大学の学費の上昇ぶりはこちらより

(暗い赤が学費)

 

こちらはカリフォルニア州立大学の学費:

1995年は4000ドル、32万円。このグラフよりさらに新しい2011年の数字だと13,000ドルとのこと。100万円強。つまり、

  • カリフォルニア州立大学:30万円→100万円

一方、日本の国立大学の学費は、1995年で51万円、今は61万円。つまり

  • 日本の国立大学:50万円→60万円

比較すると、カリフォルニア州立大学は、95年ごろは「えー、お得」で、今は、「うむ、結構高いな」という感じです。

注:カリフォルニア州立大学は州内の人と州外の人で学費に倍以上の差があるのだが、上記は「学生平均」だそうです。
注2:日本の学費は入学金を4で割ったものを年間の学費に足してあります

ちなみに、カリフォルニア州立大学はハイレベルな教育をお値打ち価格で提供する「アメリカ高等教育の良心」だったのだが、それすらこのていたらく。ま、でも、アメリカの私立大学の学費が簡単に年間4万ドルを超える昨今、まだ超お買い得ではあるのだが。

王道、消費者物価指数

しかし、家賃と学費などという限定的なものを比べずとも、世の中には便利な消費者物価指数というものがある。これは政府がちゃんと調べている統計的な数値で、数万のお店、これまた数万の個人家庭にアンケートして出すという大変ご苦労なもの。

して、1995年の物価を100とすると、2011年の物価は、日本が99、アメリカ148であります。

インフレっていいですよ

さて、アメリカの方のインフレも年間3%くらいでしかないのだが、それでも15年たつとモノの値段が5割高になる。これはつまり、去年と今年の値段の差は誤差の範囲だが、10年、20年たつと目に見えて高くなる、というレベル。

経済の教科書的に、インフレとデフレの消費者行動の違いは、

  • インフレ=借金してでも買おう(将来買おうと思ったらもっと高くなる)
  • デフレ=買い控えて現金で持っていよう(将来もっと安くなるから)

ということなのだが、いや、これ、自分個人の心理的に見て本当。

インフレというと響きが嫌な感じだが、中にいる実感としては

「パイが大きくなっていく」

という感じ。減少していくパイを奪い合わなくても、平均的なことをしていれば15年で5割増なわけです。心証的には「将来は高くなるから今のうちに買っておこう」という打算的な感じより、「この先もっとよくなるから安心して今買いましょう」という感じが強い。

「幻想だ!勘違いだ!」

と思う人もいるかもしれない。

でも、住んでいる人の多くが「今後も価値が上がっていく」と信じれば、消費行動が促進され景気が良くなる。そういう幻想を与えるのも政治の役目。(もちろん、ハイパーインフレは駄目ですが)。

おまけ:物価と為替レート

ちなみに、1995年当時、

「アメリカのモノがこんなに安いのはおかしい。日本とアメリカの物価が同じくらいになるためには、1ドル150円くらいが妥当では?それくらいまで円は安くなるはず!」

と思った。一応そう言う理論もあって

One suggested method of predicting exchange rate movements is that the rate between two currencies should naturally adjust so that a sample basket of goods and services should cost the same in both currencies (PPP).

要は、同じ金額で同じものが買える方向に為替レートが動く(=モノが安く感じる国の通貨は高くなる)ということ。

でも、日米の場合は、結局動いたのは為替レートではなく物価の方だった。そんなすごいことが起こるとは、95年当時かけらも思いませんでした。

今年の3月に日本に帰ったとき、何冊か為替関係の本を買って読んだ。(アメリカでは、為替レートは日本ほど争点ではないので、一般人向けに為替の動きを解説した本はなかなかないのです。)それで思ったのは、「要は誰にもよくわからないんだな」ということでした。みんな言ってることが少しずつ違う。

ただし、デフレは通貨高を招くのは仕方ない。で、みんなで爪に火を点すように努力して価格削減すると円高になって結局輸出産業の首が絞まる、そしてさらにみんなで爪に火を点すように努力して価格削減すると円高になって(ry つらいことでございます。

インフレのある暮らし – 15年ぶりの1ドル80円時代に思うこと」への6件のフィードバック

  1. 拝読させていただきました。私は95年Londonにいて今またLondonですが。物価は少し東京より高いかなという感じです。あの頃もドルとポンドの交換レートは1:1.6で、今も大体は同じです。何故このレートがつづくのか解りませんが。Macのコーヒーが£1.19,東京は¥120.今住んでいる家の家主の話では土地は上がりつづけているそうです。何故?ロシア人と中国人がお金を海外において置いた方が安心と思っている内は上がると言ってます。米国西海岸も中国人マネーが入っているようですね。

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  2. chikaです。
    デフレが先か、円高が先か・・・。私は、「もはや政府(日銀)が介入したくらいで為替レートは変えられない」と信じているので、もとのNY Timesの記事は間違っていると思います。
    高齢者が日本を滅ぼす・・・については、上記が正しいかどうかに関わらず問題で、すごい前もブログに書きましたが、「平均余命と、現在の年齢の差分を個人の投票権とする(平均余命80歳でその人が20歳だったら、60投票権。79歳以降はずっと投票権1、とか)」ぐらい画期的なことをしない限り是正は難しいでしょうねぇ。

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  3. ななしさんは、University of California System とCalifornia State University Systemの違いをきっとおっしゃってるんですね。なるほど。カリフォルニア大学システムとカリフォルニア州立大学システムって、日本語で言ってもその差がはっきり出ないし、難しいですね。

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