Quoraは、最近人気を増しつつある「オンラインQAサイト」。Yahoo知恵袋のようなものだが、従来のQAサイトとは違うあさっての方向に進化しつつある。
で、その進化ぶりを見ながら、最近感じていたのが「そうか、こういうサイトがニュースメディアの一部を代替していく可能性があるんだ」ということ。
・・・という話を、本当は3月11日に書き始めていたのだが、地震があってちょっとお箱入りしておりました。が、福島第一原発の政府・東電発表と、海外メディアやアメリカ政府の右往左往ぶり、そして世界中の知見者がインターネットの片隅で発信する情報を見ながら、
「Quora(的なもの)が普及していたら、もう少し正しい情報が伝わるのに」
と思った次第。(以下長文)。
Quoraは、誰でも質問をポストできて、誰でも答えが書ける、というありがちなQAフォーラム。もちろん、アメリカにもその手のものは大量にある。そんな中で、なぜQuoraが違うのか。
元FacebookのCTOがファウンダーで、最初にまず、シリコンバレーのハイテク業界で人的ネットワークのハブとなるような人達がユーザーとして参加、質の高いQAのクリティカルマスが集まった
UGC系のサービスでは、みんなが面白いと思うコンテンツが集まるまでの「最初の一転がし」が大変。Quoraの場合は、元Facebook CTOのファウンダーが、VCやアントレプレナーのネットワークを活かし、彼らに「自分の知見で人助けをしながら見識を発表する場」を与えた。
Marc Andreessenもこれまでに2つ質問し、49個答えている
基本は実名で、それぞれの人の評価や、個別の回答の評価のフィードバックが明快にある
(1)実名・匿名
最初の登録には実名が基本だが、個別の回答時に匿名を選ぶこともできる。さらに、個別のテーマごとに、「なぜ自分が回答者として適切か」を書くこともできる。
例えばこちら。
「なぜ1990年後半のインターネットバブルは崩壊したのですか?」という質問の回答でトップに来ているのはあのSteve Case。回答者略歴には「 Co-founder of AOL」となっている。AOLは、バブルの絶頂の2000年1月に、Time Warnerおよそ1600億ドル(1ドル100円として16兆円)で買収・・・・そして失敗したバブルの寵児。
「AOLのファウンダーの私が答えましょう」と来たら、読んでしまいます。
(2)ポジティブ・フィードバック
ポジティブなフィードバックとしては、個別の回答にvoteして、その表示順位を上げることもできるし、thankすることもできる。また、回答者をfollowすることもできる。誰がvoteしたかの履歴も残るので、その回答がどんな人に評価されているかもわかる。どれも、最近ありがちなソーシャルな仕組みだが、きっちりインプリされているとろこがエライ。
(3)ネガティブ・フィードバック
ネガティブなフィードバックでは、「Not Helpful」があり、さらに、Commentで、「なぜその回答が悪いのか」を書きこむこともできる。
Quoraなりの「良い回答のガイドライン」はこちらにある。このガイドラインに外れた回答が悪い回答。
ちなみに、このガイドライン、なかなか深いので、興味のある方は是非原文を読んで欲しいが、要旨を翻訳するとこんな感じ。
- 内容が実態に即したものであり、回答者が自分で書いたもので、出来る限り正確を期す
- 単なる感想や意見ではなく、質問に直接的に回答する
- サポートする論理の筋立てを書き、読んだ人が、「なぜ回答者がその回答にたどりついたか」がわかるようにする (よって、理由が書かれていない非常に短い回答は大抵の場合NG )
- よほど自分の回答者としての妥当性が明快でない限り、データ元を明示する
- もし、一般的に信じられている常識とは異なる回答をする場合は、まず「常識」に触れ、その上で自分は常識とは敢えて逆行するが、と前置きした上で、なぜ特定の回答に至ったかを説明する
要求基準が超高いし、極めて理屈っぽい。
で、この基準から外れると、ビシバシとネガティブなフィードバックが来る。
たとえば、とある会社間のやりとりがなぜ起こったか、という質問に、Big cat slaps little cat.という「短い」「感想」を回答として書いてしまった人にはこんなコメントが。
「回答ではなくコメント。回答ガイドラインをよく読むように」
「質問に直接答えていない。回答ガイドラインをよく読むように」
・・・・こんなこと言われたらシュン、ですな。
というわけで、埋め込まれた色々なしくみ、厳しいガイドラインの設定などにより、
- 「自分の専門領域について、真剣に回答するぞ」という気合が入りやすく、質の高い回答が集まる
- 良い回答を書くと皆から評価されることもあり、さらに良い回答を書こうという気合が入る
という正のループが形成されているのであった。
では、それがどうしてニュースメディアになり得るのか
さて、こうして、「専門的回答を理屈っぽく語ることが推奨される場」が形成されると、それをリアルタイムの事象の解説、および当事者による説明にも活用できる。
たとえばこちら
Twitterが、メジャークライアントであるUberTwitterのAPIアクセスをブロック、という荒業に出たのだが、その直後に出た質問。
「どうしてTwitterはUberTwitterを利用停止したのですか?」
答えているのは、UberTwitterの親会社の社長のBill Gross。さらに下の方には、TwitterのPRの人も回答。報道記者は、当事者にインタビューするのが大事な仕事なわけだが、それより早く本人が自分の言葉で声明を発表できるわけです。
インタビューを受けた人の多くが経験があると思うのだが、記事では、「うぉおおお、こんなこと言ってねぇっ!」と頭をかきむしるような引用をされることもある。自ら書けば、その苦難は解消される。
もちろん、自分のサイトにきっちり説明を発表することもできるが、見つけてもらえるかわからない。いろいろな意見が出る中で評価されることもないので、本当に正しいことを言っていても、それが正しいかどうかを他人に分かってもらうのが難しい。
Quoraなら、きちんとした事実の提示と議論展開ができる中立的な場と成り得るわけだ。
例えば、今回の原発では、世界各国の専門家が様々な説明やリスク分析を発表しているが、それをひとつの場所にまとめ、専門家同士でそれをvoteしたりthankしたりnot helpful認定したりすれば、かなり心強い。現状Quoraは日本語では使えないが、Quoraもやがては日本語化するだろうし、日本に独自のQuora的なものを作ることもできる。逆に、日本の専門家・当事者が英語で情報発信する場としても使える。
QuoraがIT以外の領域でもニュースメディアとして機能するための条件
今のところは、やはりIT関係の回答者が強力。世界が注目する福島第一原発に関する質問は20以上あるが、回答できる専門家が少ないようで答えはチラホラとしかない。よって、上記のメリットが顕在化するに至っていない。
今後、現在のクオリティを保ったまま、他の領域にユーザを広げていけるかが鍵となるでしょう。
<注意事項>
- 別にQuoraはニュースメディアになろうとしているわけではないので、これはあくまで「そういうこともできる」ということ。Wikipediaがニュースメディアではないのに、現在進行形の事象についてニュース並に詳しいのと同じような発展でしょうか。
- 「Quora的な場があれば、他のニュースメディアは要らない」ということではなく、やはりテーマを取捨選択し、特定の視点でニュースを届けるメディアは必要。今ほどいらないですが。
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