シンガポールのタクシー運ちゃん語り

突然ですが、今シンガポールにいます。後2時間で出ちゃいますが。で、昨日乗ったタクシーの運ちゃんの語るグローバル経済とシンガポールの比較優位について。

よく言われていることだが、タクシーの運転手さんにはよく世の中のことを知っている人が多い。どこの会社が景気がいいとか、悪いとか、リアルタイムで大変よく知っている。どの会社の人がタクシーによく乗るかを知っているのに加え、乗ったお客さんの話はリアルタイム情報だし、加えて暇な時間はじっくり新聞とか雑誌を読んでたりする。

シンガポールとか香港もタクシーが沢山いるので、多分運ちゃんたちはいろいろなことを熟知していると思うのだが、世間話ができるほど英語が堪能な運転手さんは中々いない。(シンガポールは、生まれ育った人だったら学校教育が英語のはずなのだが、中国から来たばかりの移民の運転手さんも多いそう・・・というのはシンガポール在住のLa Dolce Vitaさん情報。)

しかし、昨日乗ったタクシーの運ちゃんは、かなり英語が上手で、あれこれ話が聞けて面白かった。いわく

  • 景気は悪くない。去年も決して悪くなかった。そもそも、シンガポールはみんなあくせくして、かつ雨も多く、暑いので、タクシーで移動する人が常に沢山いるということもある。
  • が、それ以上に大事なのは、シンガポールには常に人が国外から流入していること。すぐ近くのインドネシアは2億4千万人の人口がおり、多くの人は貧しいが、少数の著しい金持ちがいる。そういう人たちは、国情不安があり教育レベルも低いインドネシアではなく、シンガポールに資産を置き、家族も住ませたがる。
  • シンガポールは、外国人でも不動産などの資産売買が容易である。経済は安定しており、先々の政情不安の懸念も低い。また、教育レベルも高い。そして、高い教育レベルか富を持つ人は簡単に移住できる。よってそういった人たちが世界中から集まって来る。
  • 他の国もシンガポールの成功を真似しようとしたが、中々成功するものではない。デュバイなど、もう今はガラガラだ。(←まるでデュバイを見てきたかのようであったよ)。
  • よってシンガポールが作り上げた現在の成功は当面は続くであろう。
    (←念のため、私が言ってるんじゃなくて、タクシーの運ちゃんが自信満々に語ってくれたのであった。)
  • たまたま通りかかった建設現場。「人口増加に対応するための公共住宅建設プロジェクト。50階建てが3棟並んでいる」んだそうです。
    50-story public housing project. Singaporean gov't is trying ... on Twitpic

以上。おまけで、「シンガポール・タクシー営業事情」
。「ロング一発、みたいなのあるの?」と聞いたところ、「ない。シンガポールは狭いから。1時間30ドル(日本円で2000円くらい)で観光する、っていうのがベストなくらい」だそうです。

しかし、この運転手さん、「シンガポールの人口は400万人でうち中国系が7割」とか、上述のインドネシアの人口とか、数字もすらっと出てきて、一応CIAのFactbookでチェックしたらあってた。すごいですねぇ。

では。

シンガポールのタクシー運ちゃん語り」への14件のフィードバック

  1. アメリカやイギリスなどの英語圏に長期滞在している人は、アジアの中でもシンガポールや香港などの準英語圏にしか行きませんね。グローバリゼーションといいながら、英語圏の人は英語圏の中だけをグルグルまわるんでしょうかね。30億の人口を持つアジアの中で、人口計1000万の香港シンガポールにしか生活圏がないとなると、アジア・日本に対する理解も浅いものになってしまうのでしょうね。

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  2. chikaさんに質問したいとき(質問の内容がトピックの内容とずれてるようなとき)どうやって質問したら良いですか?

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  3. てつさんの言うとおり、これからの日本人は英語+もう一つのアジア語が出来たほうが良いと思うけど、ともかくシンガポールにまで足を伸ばし、タクシーの運ちゃんから情報を仕入れてきてくれた千賀さんに、大感謝。私もシンガポールには興味あるんだけど、昔ちょっと行っただけだから。
    ちなみに最近シンガポール大学のウェッブサイトを見ていて、あ、これはすごいって思いました。インドと同様、大英帝国の一部であったなごりから、英語によるハイレベルな教育・コミュニケーションを維持しつつ、インドでも中国でもなく、その中間点として、インド、中国、東南アジアのエクスパートを大学では集めているという感じ。これからのグローバライゼーション時代に、国の代表としてではなく、個人としてきらめいていくのは、ああいう色々な文化の合流点のようなところで育った人なのでは? 

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  4. シンガポールに2009年3月まで駐在していた者です。
    たしかに、シンガポールのタクシー運転手さんは物知りな人が多かったように思います。「シンガポールには天然資源が無いから、インテリジェンスが1番重要な資源なんだ」と頭を指差しながら真顔で説かれたり・・・。比較的お年を召された方は、英語ができないことが多かったですが。
    教育に関しては、お金持ちは高校まではシンガポールで学ばせて、大学はアメリカでMBA取得までというのがひとつの流れとして存在すると聞きました。そして子供に事業を継がせるそうです。その方はフォーブスのアジア版に載ったこともあり、インドネシア人ですが、シンガポールでは某高級ホテルのレジデンスに住んでいました。
    おまけですが、シンガポールではベンツタクシーが増えてきたため、タクシーと同じ型のベンツオーナー(Eクラス)は「せっかく買ったのにタクシーと同じだよ」と冗談を言って、買い替えを考えている人が多かったです。

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  5. シンガポールや香港だけでなく、最近では韓国や台湾、メインランドチャイナ(上海、北京)など非英語圏の富裕層も、子供はアメリカの大学に行かせるというのが一つのパターンとして定着しています。
    日本人だけが、いまだに東大、京大、あとは世界ランキングにも入らないような私大へと子供を行かせようと小学校から受験させたり必死です。あのラサール学園でさえ、ハーバードやケンブリッジに進学するのは年間1人いるかいないかです。親も教師も勧めないのです。日本は確実にアジアで取り残されています。
    グローバル化の波に、完全に乗り遅れてしまった感じですね。

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  6. シンガポールは教育水準も高く、加えて、コンセンサスを得やすい条件を持っていると思います。金融市場関係でヒアリングをしても(1996年から10年余りほぼ毎年一度は顔を出していました)、当局者と民間の市場参加者の意見がドンピシャということが多くて驚かされることがあります。かつては、物言えば唇寒しという側面もあったのでしょうが、普段からオープンな意見交換を重ねていること、常に小国としての危機意識があることも大きいと思います。

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  7. 先日はありがとうございました!
    >後2時間で出ちゃいますが。
    なのに、ブログ書いてるchikaさんがすごすぎる。
    いやー、その運転手さんはかなりeducated & intelligentですよ。ちゃんとタブロイドじゃなくて、Straits Timesとか読んでるんでしょーねー
    空港で拾うタクシーの運転手さんは英語できる人多いけど、私の住んでるあたりで流しの人は全然しゃべれない人が多い。 ちゃんと自らの英語能力に合わせて営業エリアを決めてるのかも!

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  8. うちのばあちゃん(ドメスティック人間ですが海外旅行にハマってた時期があった)が、よくシンガポール良かったわあまた行きたいわあと言ってました。関東に引っ越して長いんですが、なにかにつけ「京都ではこうじゃなかったのにブツブツ」とか言う人だったんですけど、シンガポールの何かが性にあったみたいです(笑)
    アジア的に面倒くさい猥雑さが一番ストリクトに規制されて、見通しが良くなっている都市(けどアジアらしさも楽しめますよ)・・・・なのかな?「ディズニーランド的に脱臭殺菌コーティングされたアジア」みたいな。欧米人がアジアに住みたいとなったら、一番居心地良いかもしれないですね。(意地悪いような言い方ですけど最近そういうのに憧れる気持ちも確かにあります)そういやジムロジャーズが移住したという話も聞いたな。税金も安いんでしたっけ?
    でも、そういう都市に住んでるアジア系住民(パンピーを見下して自我を保てるトップ富裕層以外)は、どういう気分で生きてるのか、ちょっと興味あります。日産GTRとか、仮面ライダーとか、オラオラ系の(萌え系オタクでないという意味で)日本のコンテンツのユーチューブ動画にやたら親日的なコメントを書いてるシンガポール人を見たことあるんですけど(これはサンプル数1ですが、その他でも結構全般的にシンガポールからは好意的なコメントが多い印象はあります)、そういう潜在的な「アジアで最も欧米的な現体制への不満」も半分、でも「アジアで一番先進的(欧米的)な自分たち」へのプライドも半分、両方あるような感じなのかなあ。

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  9. これは言わずもがなの追伸ですけど、こういうシンガポール型の経済発展をするということは、独自コンテンツというか、「そこならではのもの」を産み出す力を捨てるということでもあるので、アイスランドが一時期ウハウハだったけど突然ダメになった的なリスクもあるんだと思います。(アイスランドほどではないでしょうが)
    基本的に僕は「多様な人間が集まれば新しい価値が生まれる」説はマヤカシだと思っていて、アメリカが強いのは、「”アメリカっぽい人”ばっかり集まっている」からであり、シリコンバレーが強いのも「ギーク(とそれを理解するカルチャーのあるマネジメント系の人間)ばっかり集まってる」から、「同じ価値観で結集した同質性の高い集団」が形成され、ツーカーで物事が進むからなんだと思います。
    そういう意味では、今の日本の状況から見るとこういうシンガポール形オープンさというのはとても眩しく見えてしまいがちですが、「あえて逆に特化」することが本当の正解なんだというか、「日本みたいなのをちゃんと海外に開くには、閉じるべきとこ完全に閉じないとダメ」っていう・・・・・いや、しつこいですね。いずれ仕事で結果出して変えることにします。
    ただ、「シンガポール的なものに惹かれる人間」という軸が強力に巻き込む人々の集まりが、発酵して何か新しいものになっていけば面白いんですが。でもなんか、アジアにあるという優位性だけを持つプチアメリカにしかなりそうもない印象は受けますね。しかし「プチアメリカ」というのは非常に有効な戦略手段だということも言えるんで、他人がどうこう言える話ではないんですけど。

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  10. 横レス失礼します。
    rakoさんが言う、「もう一つのアジア語」というのはやはり中国語になるのでしょうか?
    他のアジア諸国、例えばベトナムやマレーシアでも中国語は通じるのでしょうか?

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  11. あー、シンガポール来られていたのですよねぇ。
    La Dolce Vitaさんから、千賀さんにお会いしたとお聞きして、かなり羨ましかったです。。
    それにしてもタクシー運ちゃんがそんなに情報通だとは知りませんでした。いっつもそんなにしゃべんないからなー。
    次からは極力話すように心がけてみます。

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  12. 香港在住9年目、中国に語学留学と駐在、マレーシアでも駐在経験をしていた者です。
    自分の英語力のせいでもあるのですが、どうしてもシンガポール人の英語(シングリッシュ)が聞き取れず、シンガポール人とはマンダリン(北京官話)で話す方が楽です。
    各人の家庭環境、語学力にもよるのでしょうが、シンガポール人の若い世代になればなるほど、マンダリンは学校で習った言葉であり、シングリッシュの方がより母語に近いようです。
    アジア各国でも華人が多い地域ではマンダリンが通じる地域が多いです。(以前は広東語が優勢でしたが、中国本土が経済大国になりつつある今日ではマンダリンを使いこなせることは大きなアドバンテージですから)
    マレーシアで華人の顔をした人がマンダリンができないことはほぼありえません。(漢字の読み書きは人によって異なります)
    ベトナムでもチャイナタウンではマンダリンと広東語が通じます。
    しかしながら、現地化が進んだタイやインドネシアでマンダリンが通じた場合には、よっぽど中国や台湾の観光客が多い場所ということでしょうね。

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  13. 昔、子供の時に親戚一同でシンガポールに行ったことがあります。
    その時、みんな一人づつ、オジサンがこぐ三輪自転車のタクシーに乗って、観光しました。
    夜風が気持よかったのですが、突然、僕の自転車だけ、日本でいう、ど演歌調の曲が流れてきたのです。それも大音量で。
    僕の自転車だけ、下にスピーカーが積み込んであったようです。
    恥ずかしくて、景色が見られず、下を向いていたことを思い出しました。

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  14. 事の真偽は知りませんが、以前利用した運転手さん(女性)が言うにはシンガポールでタクシーのライセンスを取るのは非常に難しくドライバーは(ほとんど?)皆シンガポール人だとか。その方も非常に饒舌でした。

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