アメリカ病院豆知識:urgent careとemergency roomの違い

今日Twitterで「urgent careでだんなが出てくるのを待ってる。1時間もたつのに出てこない」と書いたら、いろいろな人から「大丈夫~?」と心配していただいたのだが、いえ、単にせきがひどい、というただそれだけの理由でした。ご心配おかけしました。

で、「あ、もしかしたらemergency roomにいると思っている人もいるのでは」、とちょっと心配になったので、一言解説です。

アメリカで急に具合が悪くなって初めてお医者にかかる、という場合、どこに行ってよいかわからず困る人も多いと思いますが、その場合もこのurgent careが役に立ちます。

emergency roomは略称ERで、同名の人気ドラマの舞台にもなったもの。(もうドラマはシリーズ終了しちゃいましたが。)

イメージ的には、救急車で死にそうなけが人が運び込まれてきて、待ち構える医師等が大勢よってたかって救命する、、、という感じもあるかもしれないが、予約なしで登場して、普通に受付で名前を入れて、控え室で待っていると呼ばれる、というプロセスもある。

しかし、このERの問題は「バカ高い」ということ。とげを抜いてバンドエイド貼ってもらって200ドル!なんてことは大いにあり。(というか、バンドエイドだけで200ドルするかも)。

なぜかというと、ERは、法律で「来た患者を拒んではいけない」というルールになっているから。無保険の人がわんさとやってきて、治療を受けて、結局その代金は払えない、ということが多々起こる。

こちらの資料によれば、アメリカでは、病院から見ると、無保険者への医療行為代金の80-90%が取り立て不能と。)

で、その取り立てられない分を見越して値付けがされてるわけです。

しかし、その代わり、24時間オープンだし、心臓発作から脳卒中から何でもフル体制で治療に当たってくれる。

一方urgent careは、「予約なしで登場して、普通に受付で名前を入れて、控え室で待っていると呼ばれる、というプロセス」はERと一緒なのだが、

  • クローズしている時間がある(営業時間は朝8時から夜9時まで、とか。日曜はお休み、とか)
  • 心臓発作とか脳卒中、みたいな一刻を争う重い病状には対応不可

という違いがあり、かつこれは大事なのだが

  • (ERよりは)安い (普通に予約して医師と会うのと同じ料金)

なぜなら

  • ERと違って、保険がないと受付で断ることもできる

からなんですね。なので、urgent careは「普通のお医者さんに、予約なしで診てもらうためのところ」なのでありました。つまり、日本でイメージする「病院」がこれ。

なお、アメリカのhospitalは、予約・主治医等からの紹介なしで行っても誰も診てくれない。(そういう人を受け付ける機能が存在しない)。

一方、clinic等にいたり、自分で開業したりしている「普通の患者を診る医師(primary care physician)」にあうには、何日(時には数週間)も前から予約が必要。そのうえ、「現在、新しい患者は受け付けていない」という医師も場所によっては沢山いる。(ベイエリアにはそういう医師が沢山)。

なので、日本のイメージですぐ医者に会える状態にしておきたかったら、まずは急いで医者を探す必要がないときに、一回どこかの医師にかかっておくのが大事。

「annual check up(1年に一度の検査・・といっても検査1-2項目だったりしますが)お願いします」

で可。そうすると、それ以降は「自分はXX先生の患者だから」と電話すると、少々は無理を聞いてくれることもある。(どうしても今日診て欲しい、とか。ただし、urgent careに行け、とけんもほろろに断られることもよくあるが)。・・・し、具合が悪くなってからあわてて診てくれる医師を探す苦労をせずにすむ。

この「診てくれる医師を探す」という苦労をバイパスしたい人はurgent careに行くとよいわけです。料金等は、普通の医師に会うのと一緒。2-3時間待たされることも優にあるので、「風邪ひいた」くらいで行くのはお勧めしませんが。(バクテリア性の喉の感染、とかじゃない限り、薬も何もくれないので損した気もする。)

Google Mapで"urgent care center"と検索すると、近所のurgent careが出てきます。

(ERとurgent careの違いって、意外にアメリカ人でも知らない人もいます。アメリカの医療は複雑だ・・・)。

アメリカ病院豆知識:urgent careとemergency roomの違い」への15件のフィードバック

  1. おー、そうだったんですか。そのくらいでよかったです。
    ウチはしばらく前にKaiserにしたんですが、ここだと少なくとも「診てくれる医師を探すのが大変」という心配はしなくていいです。週末も開いてるし、担当医師にこだわらなければ急な予約でも大丈夫。高度なケアはどんなもんかわかりませんが、普通に健康だったら、Kaiserも悪くないと最近思っています。

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  2. あ、Kaiser、「普通の人の健康管理」では、中々素晴らしい模様です。うちの義理の両親もKaiserです。。

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  3. インフラもボロボロで政治も醜悪な悲惨な国に住んでいますね。
    ほんとにそう思うんですが・・・

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  4. ふふふ、千賀さんのメールを読んで、都会は大変よね、って思いました。中西部の地方都市の場合、交通渋滞もほとんどないし、urgent careも同日予約が可能で、その場合待ち時間はほとんどなし。予約なしで行っても、30分以上待たされたことは無かったと思います。もちろんその分、日々の生活は退屈だし、おいしいアジア料理もあんまり無いし、不満は色々あるんですけどね。

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  5. はじめまして。
    Kaiserって、Kaiser Permanente (kp.org) のことですか? 残念ながら私の住んでいるNCの片田舎にはないのでわかりませんが・・・。
    私はUNCに留学中なので、何かあったらStudent Careに行っています。「(カネのない)学生相手だから、治療がそっけなくて薬も出さないのか?」と思っていましたが、そういう訳でもなさそうですね。良かった良かった。
    問題は学生じゃないかみさんのほうで、病気になったら州のHealth Department(保健所?)かUNC Hospital(大学病院)に直接駆け込むのか?と心配してます。
    まぁ、健康が一番、ってことで。

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  6. chikaです
    >インフラもボロボロ
    あ、通信もひどいです。「通信と医療は自由化してはいけない」と時々書いてますが。
    >都会は大変
    中西部!!恐るべしっw
    >問題は学生じゃないかみさん
    ちょ、ちょっとまった!!!もしかして奥さん無保険で滞在してるんですか?それはものすごくリスキー。。。学校が提供している、学生の家族用保険とかないんでしょうか。あと、日本に行った時旅行保険買うとか(数ヶ月しかききませんがたぶん一番安上がり)。(ちなみに、Kaiserは保険会社もかねていますので、Kaiserの保険に入っていなければ行くことはできません。)

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  7. おお、Urgent careというものがあったのですね。次からは出先でググります(笑)。直近のERにいったら脈だけで250ドルでしたよ。ありえません。日本だったら病院に2泊くらいできそう・・・

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  8. >ちょ、ちょっとまった!!!
    同感です。それ、本当に洒落になってないと思います。
    確かに家族保険も安くはない(というか、私が行った学校の片方では本人より割高でした)と思いますが、何かあった時、一気に学費の何倍もの騒ぎになるリスクを考えたら安いものです。
    人生、取ってみるべきリスクと、そうでないリスク、があるはずです。何でもRisk Takeすればいいってもんじゃない。

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  9. ベイエリアには日系のお医者さんもいらっしゃいまして、日本とほとんど同じ感覚で診療が受けられます。

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  10. 数年前に肩が痛くて我慢できなくなったときに、整形外科的な所に電話して予約しようとすると、「じゃあ、二週間後が空いています」なんて平気で言ってきました。
    その時には、治ってしまってるって。
    その後O’connerに問い合わせると、予約なしで来てもいいというので行きました。
    1時間くらい痛みに苦しみながら待合室で待った後、レントゲンを撮られただけで「何もない」と言われました。
    そして$400取られました。
    保険が効いてこれですからね。

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  11. アメリカは周知のとおり健康保険の無い人がゴロゴロいて、そういう人のためにお医者さんがボランティアでやっているfree clinicがうちの街にはあるし、多分他にも探せばあると思います。でももちろん質の高いケアをしてもらえるとは思えないから、健康保険は入っておいた方がよいですよね。
    それから学生の家族って、大学の保健センター使えないんでしたっけ?いずれにしても、家族もちの学生って、アメリカでは当たり前だから、大学なり、保健センターの事務の人に相談したら、教えてくれると思います。
    それにしても、アメリカの医療費は高い!というか、日本が安すぎるのかな?一度日本で病気になってお医者さんに行ったとき、待たされたけど、診察してくれた女の先生が、とても丁寧に私の病歴とかも聞いてくれて、的確なアドバイスをしてくれたのに、あとで保険料を入れても、大したこと無くて、とってもびっくりしました。

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  12. ER高すぎでひっくり返りますよね・・・少し前にびっくりした経験があります。
    奥さんが強い腹痛に見舞われ、年末の夜中にElCamino HospitalのERで、血液検査と超音波検査(と準備のためのカテーテル)をしてもらいました。奥さんのほうは妊娠初期の疼痛で大丈夫だったんですけど・・・後日に来たInvoiceをみたら費用総額が11000ドルでした。幸い保険が99%カバーして持ち出しは100ドル程度でこちらも事なきだったんですが、高額請求の割には詳細は全く書いてないし、過剰請求じゃないか保険会社に問い合わせてみました。そしたら治療内容からすると適正な金額とのこと。
    アメリカ中産階級の破産理由の一番が高額医療費だとか。なるほどなあ。
    あと噴飯ものなのは、さらに後日El Camino Hospitalから寄付を募るメールが来たこと。「地域医療レベル向上に貢献する当病院になんたらかんたら」って、氏ねと思いました。

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  13. 費用対効果を考えると、日本の医療が一番よいです。脱水であるアメリカの大学病院に一泊したことがありますが、3000ドルの請求書が来ました。幸い、保険でカバーされたのですが、救急で飲んだTylenol一錠に$10がチャージされていました。「次回は自分で薬を持っていこう。」なんて思ったりして。ちなみに保険会社は支払いを病院と交渉するので、請求額を支払っているわけではありません。でも、保険を持っていなくて交渉力が弱い人が、一番高額な費用を払う羽目になります。支払えなくて踏み倒す人がいるのも、無理ありません。
    >あと噴飯ものなのは、さらに後日El Camino Hospitalから寄付を募るメールが来たこと。
    これは大顰蹙ですね。私の住むトロントの総合病院では、チケットが200-300カナダドルのチャリティーのwine tastingなどを催していました。癌専門病院は、リサーチの資金を稼ぐために宝くじをしています。一枚100カナダドルで、一等は「一軒家と車(BMWかメルセデスだったと思う)」です。景気が悪いので、宝くじの値段をもっと下げて多くの人に参加してもらったらいいのに、、、。でも、面白いアイデアです。

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  14. chikaです。
    >氏ねと思いました。
    高額医療費は病院だけが儲けているせいではないんですよね。医療訴訟、保険事務オーバーヘッド、薬代、末期治療あたりがかなりのガンとされています。まぁ、最後のはかなり病院に入る部分もありますが、そこで消費される薬代も半端ないので、一概に病院のものではない。保険事務オーバーヘッドについては、全米で異なる保険プランが1000以上あり、それぞれカバレッジが違うので大変。つわけで、あまり足蹴にせずに、優しい気持ちで助けてあげようではないですか、と私は思いますが。
    あと、無保険、または保険に入っていても、対象医療行為が求償外だと割引があるのが普通です。この辺りでは、無条件に3割引、くらいかな。一度保険対象外の高額の検査が幾らになるのか電話で確認したら、なーーーんと67%引きだったことがありました。(El Camino Hospitalでしたw)。なんじゃそりゃ、です。あまりにびっくりして
    like, six seven?
    と聞いてしまいましたですよ。他にどんなsixty sevenがあるのか、自分。笑

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  15. 67%引き。。。それは値段があって、無いようなものですね。あと、私の結局死んじゃった友達が白血病にかかったとき、最後の2ヶ月に受けた過激な治療は保険でカバーできず、そのときは転院した先の大学病院の「実験的治療」っていうことで、治療費を免除してもらっていたみたいです。
    アメリカの医療費が高いのは本当にびっくりだけど、日本の病院の荒廃ぶりっていうか、お医者さんの使い方も、かなりまずいみたいですよね。それを考えると、千賀さんの言うとおり、一方的にアメリカの病院・医療制度を批判したりもできないし。難しいですね。

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