シリコンバレーは来ないと享受できないメリットが沢山あるが、来なくてもわかることが沢山あるー1

前回の「シリコンバレーで働く方法」は、「日本人がシリコンバレーで働くのに一番確実な留学→就職という方法をとる人が少ないね」というエントリーだったのだが、「そもそもシリコンバレーにどうしていかなきゃならないんだ」という思いがけない角度からの突っ込みコメントが複数きた。私は「相対的」に「留学→就職」比率が少ないということを書いたのだが、「絶対数」に関してのコメントが来た訳です。それも含めてなんだか沢山コメントいただいたので「続きエントリー」です。

最初に言っておくと、「どうしてシリコンバレーに行かないといけないんだ」という問いに対する答えは「いや、全然来る必要ないし」。面白いと思う人、来たいと思う人だけくればよいのではないかと。でも、何が面白いかは伝えたいと言うのがこのブログの基本の主旨だったりします。

というわけで続きエントリーその1の今日は「シリコンバレーに来ないと享受できないメリット」。

一言で言うとnetwork externality。ネットワーク効果、またはネットワーク外部性と訳される。奈良産業大学のサイトより

ネットワーク外部性とは、「同じ財・サービスを消費する個人の数が多ければ多いほど、その財・サービスの消費から得られる効用が高まる効果」をさします。たとえば、FAXが世の中に1台だけしかないとすると、その FAXは全く機能しません。利用者が少なければ、FAXを利用する価値は乏しいと考える人も多いでしょう。逆に、FAXの利用者が増えれば、通信できる相手が増えるので、それだけ FAXの価値が増すことになります。FAXそのものの性能とは無関係に、利用者の数に依存して価値が変化するのです。

Skypeを世界で一人だけがインストールしても使い物にならないが、100万人くらいがインストールすると、おお、こりゃ便利!となる。Skype自体の機能は変わってないので、大勢が使うというのは「製品の外側」にある変化な訳です。だからexternality。

で、シリコンバレーには人材のnetwork externalityが働いているのであった。いくつかあって、

1)採用候補となる人材の多さ

引っ越ししなければならないほど遠くの会社に転職するのは大変だが、同じ家から通える会社だったら気軽にできる。ということで、同じような人材を雇用する雇用主がたくさん集まっていると、会社は採用がしやすい。

というわけで、技術系の会社がシリコンバレーに集まっているわけだが、もっとローカライズされた傾向もあって、例えばIntelの周りには半導体ベンチャーが多い。Intel社員に夜バイトに来てもらう、そのまま転職して正社員になってもらう、てなことが容易なので。

(これは逆向きも真なり。「転職先の会社が沢山ある方が、働く側も住んでて安心」となる。)

2)エンジェル投資家の豊富さ

エンジェル投資家は大抵自分も起業して成功した人なので、技術も起業家の気持ちもよくわかる。過去の成功の蓄積のかいあって、特にここ10−15年くらいエンジェル投資家の層が増してきた。

3)投資家と非投資家が近くにいることによるコミュニケーションの円滑化

ベンチャーキャピタルは、軽やかに車で行ける範囲の会社への投資がメイン。投資先の管理・指導といっても客観的に点数でするものではなく、会って話して臨機応変に対応していかないとならので。どんなにいい技術を持った
ベンチャーでも遠かったら投資しない、というVCは沢山ある。

4)知恵の伝播の容易さ

属人的に蓄積する知識が、face to faceで会えることで伝わりやすい。増資の際の交渉の仕方とか、採用の仕方とか、プロダクトマーケティングのあり方とか、いろいろ。

5)アイデア共有の容易さ

アイデアは多くの人に共有されることにより、より価値が増す、という不思議な財。上記の4の延長線上にあるのだが、「近く出会えることでアイデアの共有がより容易になる」ということがある。(特にまだ秘密に近いアイデアでは、メールで文章にして出したくはないが、会って話す程度には開示できる、というレベルものが多々ある。)参照:Paul Romer

***

というわけで、

「アーラ不思議、自分個人の能力は変わってないのに、シリコンバレーに来るだけで価値が上がる!」

ということが人によってはあり得る訳です。通信のnetwork externalityはわかるけど人のnetwork externalityはピンと来ない方は、自分が電話機とかファックス機になったところを想像してみてください。え、余計わからない?ううむ。

もとい、locationによるnetwork externalityは、「先行者利益」とでもいいますか、「先に集積したもん勝ち」。

(人間に依存するので、イノベーションに必要とされるスキルが大幅に変わる時が、新しい場所に優位性が移るターニングポイントになります。)

前エントリーのコメントでshiroさんがリンクしてくれたPaul Grahamのエッセーの和訳もよろしかったらご参照あれ。

「シリコンバレーが出来るには」
http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20060802

「ベンチャーがアメリカに集中する理由」
http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20070204

「なぜスタートアップハブに行くべきなのか」
http://www.aoky.net/articles/paul_graham/startuphubs.htm

「シリコンバレーは金で手にはいるかも」
http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20090301

***
次回は「来なくてもわかることが沢山ある」の方に行きます。

シリコンバレーは来ないと享受できないメリットが沢山あるが、来なくてもわかることが沢山あるー1」への24件のフィードバック

  1. シリコンバレーではないですが、アメリカのコンピュータサイエンス系の博士課程に留学中のものです。「どうしてシリコンバレーに行かないといけないんだ」という問いに関連して、なぜアメリカに来たのか聞かれたときに私がよく使っている寿司理論をご紹介します。
     
    寿司理論とはつまり、
    「寿司職人になりたければ日本に行け、コンピュータサイエンスの研究者になりたければアメリカに行け」
    ということです。
    アメリカでちょっとアメリカナイズされたおかしな寿司を出す職人がいたら、日本に行って修行してこいと言いたくなりますよね。インターネット時代に寿司レシピが自在に手に入ろうとも、実際に本場に行ってみないとわからないことってかなりあると思います。で、これはIT系でも通じる話じゃないかということです。
    例外として、実際に日本に行ったことなくてもうまい寿司を作れる外国人なんてたくさんいるかもしれませんが、ともかく、チャンスがあるなら本場、梅田さん流にいうと一番「見晴らしの良い場所」にいって、いろいろ見てくるのが一流への近道なんじゃないかと、そういう理論です。
    長々とすみません。

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  2. 日本で燻って虚しい日々を送っているIT技術者ですが、上記寿司理論は全くその通りだと思います。
    私のはジャンボ機理論でしたが。
    「あなたが自動車の技術者ならば日本から出なくてもいいけど、
    あなたがジャンボ機の技術者ならばアメリカへ行け。」
    或いは高校球児とか。
    「甲子園を目指して努力してきたなら、野球の名門校を目指せ。」
    野球の名門校に行ったからレギュラーになれるとも甲子園にいけるとも限らないけれど、あなたが甲子園にいけるだけの素質があるならば、それを最も活かせる場は名門校以外にない。たとえ予選敗退したとしても万年補欠だったとしても、野球部さえない高校で草野球をしているよりずっと有意義な人生だろうと。
    IT技術においては日本は化石レベルの『後進国』です。あなたに『人並み』の才能があれば、日本にいてもその才能を持て余すだけでしょう。まるで野球部のない高校にいる高校球児のように、その人生は虚しいものになります。
    米国に渡るのが唯一の希望です。そして行くならば当然シリコンバレーになるということです。

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  3. 千賀さん、いつも楽しませてもらっています。
    日本の方からシリコンバレーの起業についていろいろ質問をいただくことが多いのですが、最近は逆質問として、以下の問題に答えてもらうようにしています。
    問題1:ソニーやトヨタのような会社を作るために、日本で是非起業したい!というインドの一流大学を卒業した元気なインドの若者があなたにアドバイスを求めてやってきました。あなたならどのようなアドバイスをしますか。ちなみに、日本語は片言話せます。
    問題2:インテルやアップルのような会社を作るために、シリコンバレーで是非起業したい!という日本の一流大学を卒業した元気な日本の若者があなたにアドバイスを求めてやってきました。あなたならどのようなアドバイスをしますか。ちなみに、英語は片言話せます。

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  4. 一方、日本には ネットワーク内部性 という別の優れた仕組みがbuilt inされているので,外部性と内部性 どちらか自分にフィットする方を選べば良いと思います。

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  5. >日本には ネットワーク内部性 という別の優れた仕組みがbuilt inされている
    たちの悪いジョーク?それは単なる閉鎖的な島国根性でしょ。
    そんなに鎖国がしたけりゃ一人でやってろと。

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  6. ほうほう。
    シリコンバレーうんぬんは
    渡辺女史の次の記事まで待つとしても、
    アメリカ留学についてちょっと。
    まず大切なのは、
    英語だの留学だのにかける手間ヒマカネを
    考えて、
    リターン > コスト
    でないと意味がないってこと。
    本当に、ペイしてますか?
    たとえば、やはり本場で修行しろ、
    との意見が二人の方からついています。
    たしかに、本場の意味は
    ゼロではありませんが、
    フランス料理などに比べれば
    コンピュータでは
    本場の意義ははるかに薄れます。
    アキバで買うPCとシリコンバレーで買うPC、
    なにが違うんでしょうか。
    シリコンバレーで購読するLKML(Linux開発者のメーリングリスト)と
    東京で購読するLKML、この二つに何の差が?
    本場の意味がないとは言いませんが、
    コストに見合うリターンは本当にあるのでしょうか。
    個人的経験ですが、
    留学経験者などにいろいろ触れても、
    いままで、ひとりたりとも、
    「さすがアメリカ。本場仕込みのウデは違うな」
    とおもったことはないんですが、、、。
    留学組がダメといっているのではなく、
    留学組*だから*凄い、と思ったことがないんですよ。
    「この留学帰りはすげぇや」と
    思ったこととはあります。
    その逆もありますが。
    ただ、使える留学組に共通することは、
    「じつは、この人、日本で勉強していても
    (英語力以外は)
    一緒だったんじゃあ?」
    「この人が優秀なのは、
    あくまで素質と努力の賜物であって、
    アメリカにいったから、とは無関係では?」
    という疑念。
    で、「まるで野球部のない高校にいる高校球児のように」という意見があります。
    こちらは、それなりに賛成なんですよ。
    今の日本には、そのような面があります。
    で、じゃあ、いまできる解決策は、
    となればシリコンバレー移住も、
    いま現在、一個人にできる策としては、
    現実的な策の*ひとつ*ですし、
    (もちろん、移住が唯一の策ではなく、ほかもありますが)、
    とにかく、それに対し尽力されている
    渡辺様のような存在は貴重でしょう。
    そこで疑問なのは、
    やはり、
    なぜシリコンバレーはすごいのか。
    その本質とは何か。
    それは、日本では不可能なのか、、、。
    という一連の疑問です。
    今現在、一個人にできる策としては
    シリコンバレー移住がひとつの策だとしましょう。
    で、そのために、留学だのビザだのがある。
    そして、その方向性を紹介するために、
    渡辺様の活動がある。
    ここまではOK。
    しかし、
    やはり、
    なぜシリコンバレーはすごいのか。
    その本質とは何か。
    それは、日本では不可能なのか、、、。
    この議論をすっ飛ばすわけには行きません。
    ご紹介いただきましたポールグラハムの
    一連の記事などは示唆に富むもので
    感謝いたしますが、
    とにかく、このような議論は非常に大切だと思っております。
    この議論抜きでは、
    「とにかくシリコンバレーに行こう」
    「とにかく行けばいい。」
    といった感じの、シリコンバレー憧れ組や、
    あとは、
    日本にもシリコンバレーを、とかいって、
    なぜか、山の中にわけのわからない
    建物を建てたりする政治家とか、、、
    などと、とかく不毛な状況になります。
    シリコンバレーの本質って、
    山の中の建物なんですかね。
    グラハムも指摘してますが、
    それはさすがに違うでしょ。
    逆に、シリコンバレーって、
    行けばどんな夢もかなう魔法の地なんですか。
    そんな訳ないですよね。
    じゃあ、何が本質か・・・。
    集積効果?
    であれば、横浜みなとみらい21じゃダメなのか。
    どうすれば、日本にシリコンバレーが作れるのか・・・。
    有限会社デジタルインフラ 岡島 純

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  7. あ、ちなみに、
    ・ネットワーク効果
    ・集積効果
    ・空間経済学
    ・・・このあたりは同じことを言っています。
    そして、その内容は、
    渡辺氏の解説に同じ。
    彼女の解説は、
    この手の効果の中でも、
    人的なものに最大の価値を
    見出しているみたいです。
    そのあたりは、やはり、実際に
    現地でやっている人の貴重な証言でしょう。
    が、それなら、横浜MM21地区の
    ゴーストタウン状態の高層ビルに
    1万人とか全国からヲタクを集積すれば
    おんなじなんでは?
    1万人ヲタクビルって、想像すると
    良くも悪くも実にアレですが・・・。
    有限会社デジタルインフラ 岡島

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  8. 連投失礼。
    とにかく、私としては、
    ・シリコンバレー1万人移住計画(某梅田氏)
    よりも、
    ・LKML日本人1万人計画
    ・MM21オタクビル計画
    のほうが、容易というだけではなく、
    有益だと思っております。
    皆様のご意見は?
    有限会社デジタルインフラ 岡島

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  9. 時間軸ベースで考えると現在のシリコンバレーはグローバルなサービスを提供して(現役である間に)世界に大貢献して大成功したいという野心に満ち溢れたスーパーエンジニアにとっては天国のような環境だということを1)~5)のポイントを用いてchikaさんは端的に説明されていると思います。
    前回のエントリーは、それが例えば日本人だとしても、こういう経路でアプローチすれば参戦出来ますよと。
    要はその意思があるかないかでエントリーの見え方が全く変わってくるかと。
    okajimaさんは今から同じ環境を日本で再現出来るのではないかということを主張されているのだと思いますが、過去のビットバレーやヒルズといった系譜が、その限界(個人や国内ベースでは成功出来るが世界への波及力という点においては限りなくゼロ)を物語っている気がします。
    個人での満足や国内市場での満足を追求するならば別にシリコンバレーに行く必要は無いということで良いかと思いますが、日本市場よりも英語圏をベースに世界市場で魅力あるITサービスを提供したいと考えているならば、今日時点で最強最適な開発リソース投資環境はシリコンバレーとうことではないでしょうか。
    ゲーム業界にまで視野を広げれば、日本の京都で開発しているにも関わらず任天堂は業界内で世界トップレベル(このご時勢に通期営業利益の見通しが5,000億円と発表)とも言えますが。

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  10. シリコンバレーがすごいのではなくて、最初にすごい人達がすごい密度で集まった場所がシリコンバレーだっただけなのだは?今他の場所に多くのすごい人達を集めてもすでに”シリコンバレー”とゆうブランドには簡単には太刀打ちできないとおもいます。

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  11. 千賀さん
    >最初に言っておくと、「どうしてシリコンバレーに行かないといけないんだ」という問いに対する答えは「いや、全然来る必要ないし」。面白いと思う人、来たいと思う人だけくればよいのではないかと。
    全くおっしゃる通りでして、私も「世界の中で住みたいところに住めるのがいいね」という趣旨のブログをやっていると、「世界級ライフスタイルを広めることに疑問がある」というコメントをもらったので、「全然薦めていません、共感する人同士だけ仲間が見つかればよい」、という趣旨のエントリーを書いたところです(↓)。
    http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2009/03/post-148.php
    なお、私はシリコンバレーに仕事で少し住んだことがありますが、全然合わないわ、と早々に気づいた1人です。
    ものすごく荒っぽい議論ですが、合うか合わないか、すごいと思うか思わないかは、1週間くらい行って人に会いまくれば感覚でわかると思いますねー
    実際、本当に興味を持っている人はそうするだろうし、JTPA(でしたっけ?)も興味を持っている人を助けるための活動では?

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  12. > シリコンバレーがすごいのではなくて、最初にすごい人達がすごい密度で集まった場所がシリコンバレーだっただけなのだは?
    なんだか良く分かりませんが、そういう評価軸のベンチマークとなるような事柄をChikaさんは散々列挙されているので、今日時点ですごい環境が整っているのはシリコンバレーという事で良いのでは。
    ボストンで起業したFacebookも本社がシリコンバレーに移動してますし。

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  13. 私も、Y Combinatorで見たあの熱気が何とか日本(とか、私が今住んでいるハワイ州)で再現できたら良いなあと思っています。ベイエリアは住環境としては私に合わない感じなので…
    >・LKML日本人1万人計画
    >・MM21オタクビル計画
    >
    > のほうが、容易というだけではなく、
    > 有益だと思っております。
    これに加え、
    (1) 非日本人の高度技術者へのビザ発行・永住権発行をうんと容易に。
    (2) Paul Grahamが”Can you buy a Silicon Valley? Maybe.”で書いていた政策を実行。
    すればいけるんじゃないでしょうか。私は日本で大学・大学院を出ましたが、当時の同級生の今の活躍ぶりをみても、技術者として米国に遅れを取ってるとは思えませんし。
    障害はどっちかというと政治的なところにあると思うんですな。(2)の政策は最終的にはかつてのシグマ計画とかICOTとかと同じくらいの予算規模になると思うんですが、それを日本のメーカーではなく海のものとも山のものとも知れないベンチャーにつぎ込むというのはほとんど無理そうな。

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  14. 訂正。 s/遅れ/後れ/
    あと、予算規模もそこまで大きくないですね。$1Mx30社を5年やるとしても$150M相当。それで持続する連鎖反応が起きてくれれば公共投資としては安い部類に入ると思います。

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  15. $150Mではムリ、といいきりましょう。
    ”スジの良い30社を継続的に生み出すには、アメリカのようにeeCSのPhDの学生がわんさいて、ある程度の教育と時間をもらってアイデアを追求している土壌が必要”と思うので。
    それを買うためには、
    1、学生1000人の年間コスト1千万x1000=100億
    2、彼らを指導する教授を100人ひっぱってくるため 最低2000万給料X100=20億(これじゃあ日本には来てくれないかな。)
    さらに諸経費を加えて最低でも年間150億必要です。
    その中から年間30社x3人(ほぼ10%)が企業してくれたらラッキーとして、さらに確率的に大ラッキーだったら30社x10年続ければGoogle, Yahoo, VMwareクラスのビッグIPOが1社出て”ちょとおもしろいサービスの先行例”を買ってくれるようになり、生態系としての持続性が出てくるかも。
    しめて最低1500億。東京都もへんな銀行に投資するぐらいなら、このぐらいしたほうがよっぽど産業育成になったかも。(あれはいくら使ったのでしょう?)
    ちなみに、実はこれらのコストの大部分はアメリカ政府がグラントという形で税金から負担しています。(私立大学でも理系大学院はそう。)その他SBIRとかでも相当つっこんでいます。こういう投資をしている国に対抗しようとしているのですから、はした金でなんとかしようとする竹やり特攻隊的発想では苦しいかと。個人の能力の優劣(多分それは変わらない)の問題ではないのです。

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  16. えりさん、私の議論はPaul Grahamの”Can you buy a Silicon Valley? Maybe.”を下敷きにしています。まずそちらをご参照ください。
    http://www.paulgraham.com/maybe.html
    Paulはその前のエッセイで、大学が必要という議論は既にやっていて、このエッセイでは「でも、大学から作らないでも何とかできないか?」という疑問から出発しています。一種の思考実験ですね。
    日本の大学院に関しては鶏と卵の問題があると思うんですよ。起業意欲のある学生がいても、ロールモデルに乏しい。本来の意味でのベンチャーに投資してくれるところが極めて少ないので、結局、起業してもスモールビジネス的展開になる。それなら既存企業に行った方がいいやってことになる。
    原理的には、大学院にテコ入れして人材供給からなんとかするのが筋ですが、成長のフィードバックサイクルをブートストラップしとかないと供給側も充分にモティベートされないんですよね。
    私は天邪鬼なので、既にうまく回っているシステムを見ると、そのシステムに乗っかるよりも別の方法でハックすることをつい考えちゃいます。シリコンバレーはうまく回っているけれど、全てが理想的ではない(最大の障害は米国のビザ政策かなあ)。そこに付け入る隙はあると思います。

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  17. このエッセーは読んでから前のコメントを書きました。私の感想は「Paulさんは日本の大学はアメリカの大学とAPPLE TO APPLEではないなんて夢にもおもっていないだろうから、あんまり日本には適応できないな。」でした。アメリカ人は日本の住宅ローンがNON-RECOURSEじゃないなんて夢にも思わないので、日本のバブル後の議論をする時にトンチンカンになってしまうように。
    ”既に起業ネタがスタートアップに流れる仕組みがある”アメリカ国内で人を金の力で移動させるのと、そもそも供給がつまっている日本に無理やり産業を興すのでは、かかるお金も桁が違うと考えるのが自然ではありませんか?
    後、実はひも付きでないお金をあげる(VCマネーではない政府グラントのようなもの)って、ベンチャーを駄目にする場合も多いのですよね。プロトタイプに時間がかかるので、VCマネーが入るまでの繋ぎ資金が必要なタイプの事業(半導体とかバイオとか)を除いて。アメリカ政府のSBIRもこういうのに使われます。投資家がお尻をたたいて走らせないと、ビジネスじゃなくてリサーチに終わってしまうのです。もしくは、EXITを狙える大型ベンチャーではなく中小企業に終わるか(それはそれで生き残れればハッピー・エンディングですが。)そういう意味では、そもそもPaulさんのアイデアは弱いと思いました。
    私はshiroさんのおっしゃる日本の大学鶏卵悪循環を断ち切るには、お金というリソースを大量投入してそこから出てくるネタの量・質を桁違いに上げるというやり方しかないと思います。
    vcマネーについては、いいネタが出てくれば世界中のvcがすりよって来るでしょう。実際、日本で投資先を探してみたけれどピカピカの技術ベンチャーが見つからないのでやめたという話も聞きますし。
    スモールビジネスに終わってしまうのは、そもそもスモール・ビジネスネタしか出てこないからであって、技術のパラダイム・シフトを作れるような研究体制でない、そういう震源地にいないことが原因では。(少なくともCSに関しては。)
    Googleじゃなくても、Youtube, Twitterが作れればいいじゃないか、という反論もあるかもしれませんが、あれはGoogleが買ってくれるかもしれないかもしれないから投資が集まるわけで、そういう会社はGoogle城下町にいてそれなりの血筋であることが超有利ですよね。Googleのような殿様のいないエリアではsustainableなモデルではないでしょう。
    最後に、アメリカのビザ制度は学歴ハンサム(理系有名大学院卒とか)にはけっこう優しかったりするので、それだけで突破口にするのはちと弱いなという気がします。むしろ馬鹿高くなってしまった生活コストのほうが弱点では。住宅バブルがはじけてこのへんは改善されるかもしれませんが。
    なんてことごとく否定しましたが(和を大事にしないでもOKですよね?笑)、out of boxの解を思考実験してみるというのは大事だと思います。ただ、この”大学発ベンチャー、産学連携”まわりの議論では、システム・デザインの違いを完全に無視して(というかそもそも知らなかったりする)、ちょっと入れ物や制度をマネすればなんとかなるのではという議論が多すぎて、日ごろからイライライライラしているので、つい熱くなってしまうのでした。

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  18. うーんやっぱりそうかあ。
    ひも付きでないグラントの問題はわかります。IPAの未踏事業みたいに、とっかかりを作れても、そこから先の資金を集めて軌道に載せるところまでなかなか行かないという (これについては、私自身が軌道に載せ損なった立場なのであまり言えないんですが)。
    ビザについては、H1Bのキャップが増えてた頃は楽でしたが、昨今は少々窮屈だと思いますね。「誰か良い人知らない?」と声をかけられることは度々あって、日本から連れてきたい人がいても、今の情況だとタイミングが合わないんですね。
    私は米国に移るコストがそんなに大きいとは思っていないので、個人レベルならどんどん移れば良いと思うのですが、日本の経済があんまりにも沈んでしまうとマーケットとしても困ってしまうのでどうにかできるならどうにかしたいものです。

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  19. >(1) 非日本人の高度技術者へのビザ発行・永住権発行をうんと容易に。
    ビザだけの問題ですか?日本は外国人にとって世界一住みにくい国だと思いますが、ビザ政策だけで本当に解決するとお考えですか?

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  20. ふむふむ。
    非常に参考になります。
    これがタダで入手できるんですから、
    ネットはいいですな。
    ただ、この3月10日の渡辺氏の
    記事を読んでも、
    そして、ご紹介いただいた
    ポール グラハム 氏の記事を読んでも、
    「じつは横浜MM21地区でもOKなんでは?」
    という気がしてきます。
    たとえば、渡辺氏の今回の記事の要約は、
    ・日本で英語を学んで
    ・月1ぐらいでベイエリアに行けば
    ・移住なんてしなくても
    あとはなんとかなるでしょう、
    ということですよね。
    まあ、そこまでするぐらいなら
    いっそのこと留学すれば?
    という意見もあるでしょうが、
    しかし、日本に残る利点もあるわけで、
    留学、移住の利点 > その手間
    となる場合がどれだけあるかは結構疑問なんですが。
    もっと具体的な例を出しましょう。
    「矢野さとる」という人がいます。
    「予告.in」というサイトがあります。
    なんと、Wikipediaに記事が。
    ちなみに、いま調べたら渡辺女史にも記事があるんですが、
    誰が書いてるんだ?これ。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A2%E9%87%8E%E3%81%95%E3%81%A8%E3%82%8B
    http://yokoku.in/
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0806/12/news036.html
    で、その矢野氏。
    まだ20代の若者ですが、
    日本のWeb2.0界隈では、、、という
    非常に狭い限定をつければ、
    ちょっとした有名人です。
    (もちろん、そこまで都合のいい限定をつければ
    だれでも有名人という気もしますが)。
    で、矢野氏が、これから、facebook や Techcrunchなどで
    「英語で」アピールしまくったとします。
    当然、過去の全作品も英語化する。
    もちろん、滅茶苦茶な英語なんでしょうが、それは気にしない。
    もう一人、仮に、こんな人がいたとします。
    ・日本国籍だが、帰国子女で英語ぺらぺら。
    ・スタンフォード大学工学部でドクターを取ったばかりの27歳。
    ・ただし、博士論文を書いた、という以上の実績はない。
    この二人、
    ・変な英語でMLで暴れる矢野氏
    ・英語ぺらぺらで博士号の帰国子女、
    とにかく、この二人がシリコンバレーの有名VCに
    押しかけたとします。
    具体例としてはKPでもなんでもいいですよ。
    じゃあ、あなたがKPなら、どっちを相手にしますか?
    ヘタすりゃ、矢野さんでしょ。
    で、一番ポイントは、
    そこにいたるまでにかかっている手間は、
    帰国子女 > 矢野さんなんですよ。
    たとえ帰国子女でも、一流大学の博士を取ってくるのは大変。
    ましてや、帰国子女じゃなければ、
    もう滅茶苦茶大変。
    そんな手間をかけた秀才が、
    こんなニート(失礼!!!)に負けるかも。
    そうやって考えてくると、
    シリコンバレー1万人移住計画よりも、
    ・LKML日本人1万人参戦計画
    (英語は滅茶苦茶だが気にしない)
    ・横浜MM21オタクタワー1万人計画
    (月1とかで代表団をベイエリアに送る)
    こんな感じのほうがいいんじゃねえの?と思うんですが。
    皆様のご意見は?
    有限会社デジタルインフラ 岡島 純

    いいね

  21. okajimaさん、その比較は2つの点で無理がありますよ。
    (1)「学位だけの秀才」というのは最初から対象外だと思います。わざわざ留学という手間をかけて、何年も使って、「実績は博士論文を書いただけ」なんて、留学のアドバンテージを全然活用していないじゃないですか。学生のうちから色々ものを作って発表するなり現場経験を積むなりしておくのは前提だと思います。
    (2)ここでは、個人個人のレベルがどうの、という話ではなく、シリコンバレーに見られるサイクル (技術スタートアップで成功して財をなした人が優れた「目利き」「メンター」となって次のチャレンジャーを育てる) についての議論だと理解しています。そのサイクルを個人が利用したいと思った時に、既にあるところにわざわざ行くべきなのか、バレーではない別の場所にそのサイクルを起こせるのか、という話ですね。
    個人のレベルで優れた人は日本だろうがアメリカだろうがいるんですよ。その点は問題ではない。問題は、その個人に「地元で」投資できる人がどれだけいるか、そして投資された個人のうち少数でも、どかんと成功して次の世代に投資できるようになるまでに至れる人がどれだけいるか、ということだと思うんです。

    いいね

  22. もうひとつ、ネットワーク効果について付け足すと、Y Combinatorのウィークリーディナーに行って思ったんですが、出来る若者+企業経験者/エンジェルの集積効果というのは侮れないです。頭のギアが勝手に上がっていつもより余計に回りだします。あれは地理的に離れていては無理です。
    今ここで話しているのは、留学経験だとか学位だとかいうのを取れば何とかなるとかいう程度の話じゃないと思うんですよ。(1)どこにいても個人でそれなりにやれる人達が、一ヶ所に集中することでその能力にレバレッジをかけられる。(2)その集中に必要なingredientsとして、優秀な技術者以外に必要なものがある。ってことだと思うので。
    移住のコストvsみなとみらいのコストという話をするなら、バレーでは既に起きている連鎖反応を日本で起こすまでのコスト、臨界に達するためのコストを計算しないとなりません。個人個人の留学費用という話ではなく。

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  23. 頭のギアが上がる瞬間って楽しいですよねぇ。
    留学は「一番確実なエントリーチケット」(かつ実はみっしり学ぶこともあるんですが)。でも勝負はそこから・・・。日本のソープのサイトで、借金に追われたOLがソープ嬢になって、お金を貯めて海外留学するところで終わるマンガが載っていて、それを見ながら、こちらに住んでる日本人同士で
    「ここから先が問題なのに!!」
    と話したのを思い出しました。笑いつつ、ですが。

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