アメリカの保守

明日はついにSuper Duper Tuesday。24の州が同時に予備選を行う、上を下への大騒動の日。ここ数日、テレビは候補者のCMで満載。共和党の富豪候補、Romneyは、一日$1 million宣伝広告に使ってるという噂。

さて、で、共和党では、今のところMcCainがトップ、ちょっと離れてMitt Romneyという感じになっている。で、この二人の争いは「どちらがよりconservativeか」ということなんですな。「私は保守的!」と叫ぶことが選挙にプラスというのは変な気もするのだが、しかし、アメリカの「保守」は日本人がイメージする「保守」とは全然違うのであった。

「なるべく何もしないのが良い政府。産業界に干渉せず、税金はなるべく少なく。産業保護・育成なんてとんでもない。」

というのがアメリカの保守の王道。

日本だと、なんとなく自民党=保守、というイメージで、自民党と言えば、国家介入による産業保護、という印象がありませんか。

・・・とはいうものの、最近の自民党の「保守」は、アメリカ型の自由主義的保守が主流だそうですが、それにしても、アメリカの王道的保守派は極端。

こんな感じ。

「政府のやることは悪いこと。国が税金を集めて行う福祉は愚かな行為。年金も、貧困者向け保険(Medicaid)も、老人向け保健(Medicare)も、とにかく福祉は悪。ビジネスの自由な営利活動を推進するのが一番お国のため。」

ま、もうちょっとオブラートに包んだ言い方をしますが。

例えば、インターネット上では絶大な人気を持つ(でも、実際の選挙で選ばれることは絶対ない)Ron Paulは経済政策的にはスーパー保守。Ron Paulの主張はヘルスケアについて

  Our free market health care system that was
once the envy of the world became a federally-managed disaster.(中略)Government health care
only means long waiting periods, lack of choice, poor quality, and frustration.

「アメリカの自由市場に基づいたヘルスケアは、世界にうらやまれるものだったが、国が運営するようになってからは大惨事。(中略)政府によるヘルスケアは、長い待ち時間、選択肢のなさ、医療の質の低下、フラストレーション以外の何者でもない。」

さて、経済以外での「保守」の王道的信念としては、pro-life (中絶反対)、同性愛者の結婚は認めない、なんていうのもあり。その手の、

「結婚するまで純潔を守るべし」

みたいな伝統的な価値観を重んじる人たちが

「福祉は悪なり!」

「神の見えざる手、万歳。規制しなければ産業はどんどん発展する」

と信じてる訳です。ま、これは、ちょっと単純なステレオタイプではありますが、すごい国ですのぉ。

さて、で、conservative=保守の反対はリベラル、なんですが、リベラルの王道は、福祉万歳!政府は大きくしよう、中絶賛成、移民に優しく、、、といった感じ。で、共和党トップ争いのMcCainとRomneyは、わりあいリベラルな意見を持つ領域もあるため、「本物の保守じゃない」と言われることもあり、双方

「私はホントの保守」

主張してるのでした。それだけ「保守」の有権者が多いと言うことでありましょう。

たとえばMcCainの広告(YouTube)

John McCain:A Clear Record of Conservatism

「John McCainのクリアな保守の記録」という文字が出たあと、他の人がMcCainについて語っているコメントとして、

"He wants flatter, fair, simpler tax rate system."
"Senator McCain is a genuine conservative."

「金持ちと貧乏人の税率に差を付けない、公正でシンプルな税率を支持」
「McCain議員は、筋金入りの保守」

金持ちからたくさん税金を取って貧乏人に還元する、いわゆる所得の再配分は「保守」に反する。なので、フラットな税率、と。

アメリカの自由市場への信念は筋金入りであるのぉ、としみじみ思う今日この頃なのでした。

とはいうものの、保守の方々の名誉のために言いますと、保守派は

「貧乏人は死んじまえ」

と思っている訳ではなく、

「政府が税金で集めて福祉をするより、民間の寄付による慈善活動で困った人を助ける方が良い」

つまりcharity > taxと考える傾向が強い。こちらにある通り、

Not only do conservatives give more to charity than do liberals, they
give much more: a whopping 30% more, and this while conservative’s income
is less as a whole than liberal’s

「保守の人の慈善団体への寄付金額は、リベラルを圧倒的に凌駕する。しかも、保守の収入は総額で見ればリベラルより低い。」

というわけで、アメリカの保守は慈善活動で社会のバランスを取ると。実際国中で慈善行為がものすごく盛んな訳ですが、これを見過ごして自由市場だけ導入したら殺伐とした社会になりますですよ。はい。

+++

ちなみに、選挙資金が無尽蔵にある富豪Romneyに対し、McCainは去年の7月頃には選挙資金が底をつき、スタッフが解雇され、もはやこれまで、と世の中に思われたのに、その後、地道な活動で巻き返した、という偉い人ではあります。

ヒラリーはもはや声が出ない状態になってますが、さて、明日はどうなることやら。

アメリカの保守」への12件のフィードバック

  1. えー、絶対になんて言わないで下さいよ。Ron Paul は、ネバダではなんと二位だったし、蓋然性はほぼないけれど可能性はゼロじゃないはずだと思って淡い期待をしている人もいるのです :p
    ぼく的には、Hilary Clinton が火曜日に勝ちを決めるかどうかよりも、Ron Paul が火曜日を間違って生き残ってしまえるかどうかの方がだんぜん興味津々です 😉

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  2. [床屋政談]アメリカの保守=日本の左翼?

    自分がいつも書いていることの再確認として。 とはいうものの、保守の方々の名誉のために言いますと、保守派は 「貧乏人は死んじまえ」 と思っている訳ではなく、 「政府が税金で集めて福祉をするより、民間の寄付による慈善活動で困った人を助ける方が良い」 つまりcharity…

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  3. >この二人の争いは「どちらがよりconservativeか」ということなんですな。「私は保守的!」と叫ぶことが選挙にプラスというのは変な気もするのだが、しかし、アメリカの「保守」は日本人がイメージする「保守」とは全然違うのであった。
    「私はコンサバ」とずーっと言い続けてきたのだけれど、どうも誰も納得してくれていなくって、なぜじゃぁ〜と思っていたのが、ここで、「なるほど〜」と妙に納得してしまいました!!
    解説ありがとうございます。なんだかとってもすっきりしました。
    今回の大統領選を見ながら、やはりアメリカってとっても保守的な国だよなぁと思うと同時に、「本当のことが言われない選挙ってどうよ!?」と、機密ばりばりな世界に生きる友人/家族と電話で話していたところ、電話が遮断されるという...とてもアメリカらしい出来事が尽きない大統領選ですわ。

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  4. チャリティ

    アメリカの保守党についてのあるご指摘。
    >保守派は「貧乏人は死んじまえ」と思っている訳ではなく、「政府が税金で集めて福祉をするより、民間の寄付による慈善活動で困った人を助ける方が良い」つまりcharity > taxと考える傾向が強い。
    「アメリカの保守」 [渡辺千賀]テクノロジー・ベンチャー・シリコンバレーの暮らし
    アメリカではチャリティ活動が盛んだという話はよく聞きますが、保守党支持の人こそチャリティに熱心だというのは保守党に対する遠い日本からのイメージを覆しますね。
    人助けが悪いわけ…

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  5. それ以外にも、保守は愛国心に満ちていて軍事賛成!っていうのもありますよね。そこが私は全く分からない。。。政府には干渉して欲しくないけど、軍事は強く!っていったい。。。

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  6. > それ以外にも、保守は愛国心に満ちていて軍事賛成!っていうのもありますよね。そこが私は全く分からない。。。
    軍事は本来国民に介入するものではないですよ。
    政府に干渉されずに自由に議論・活動する場を確保するための軍備という考え方ですから、民主党だって軍備には賛成しています。
    イラクや行き過ぎた軍拡には両党ともに反対意見もありますが。
    また愛国心については民主共和ともに持っていますよ。

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  7. リベラルと保守の寄付金額に関する統計ですが、個人で巨額の寄付をしているトップ層(例えば$1 millon以上とか)を取り除いて計算しなおすとどうなるんでしょうね。 ビジネスで成功した経済的保守層の寄付が、平均を押し上げているような気がします。

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  8. なるほど・・・。保守というのは、政治は必要悪だと考えているんですね。道徳の問題はさておき、Change The World!よりも、その基本姿勢で攻める方が、21世紀のリーダーっていう気がします。

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  9. chikaです。
    >最後のトンデモ系CMは???
    毒食らわば皿まで、ですw
    >可能性はゼロじゃない
    そうですねーwwしかし一部ですごい人気ですねPaul。
    >電話が遮断される
    電話盗聴も保守系が推進したがることですなぁ・・。
    >軍事
    愛国=国力は強くあるべき=国の力は経済で決まる=経済を強めるには自由市場導入
    という一応一気通貫した考えがあるようですが・・。
    >ビジネスで成功した経済的保守層の寄付が、平均を押し上げている
    党別、年収別、という統計を見たことがないのですが(でもどこかにきっとあるはず)、どうも一概にそうでもないようです。確かに総額では超富裕層の寄付金額の割合は大きいのですが。
    というのも、アメリカでは、低所得者は年収に対する寄付金額割合が大きく、所得が10万ドルを超すあたりで割合が減り、超リッチになるとまたあがるという傾向があります。Googleが委託したこちらのレポートなどご覧くださいませ。
    http://www.philanthropy.iupui.edu/Research/Giving%20focused%20on%20meeting%20needs%20of%20the%20poor%20July%202007.pdf
    低所得者ほど信心深く、教会への寄付が多い、ということもあります。とはいうものの、教会っていうのは、まじめに慈善活動をしているところがたくさんあるので、「なんだ、自分の教会への寄付かよ」とはなかなか侮れませんが。
    以前、精肉工場で働くブルーカラーの人たちの寄付にまつわるインタビュー番組があって、かつかつの暮らしから、年収の数パーセントを寄付している人たちが何人も出ていました。そういった層の方が
    「本当に貧しいことがどれだけ大変か知っている」
    からこそ、ちょっとでも余裕ができたら寄付するんだそうです。
    >保守というのは、政治は必要悪
    確かに政治家がsmall governmentと連呼しているのを聞くと、「あんたもgovernmentの一部じゃないんかい?」と不思議な気持ちになるんですが、政治は行政を小さくするために必要である、と思ってるみたいです。三権分立・・・

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  10. 確かに税金として徴収されて何に使われているのかハッキリしないよりは(どっかの官僚のテニスラケットだのマッサージチェアだの・・・一般庶民の想像を超えている!)
    寄付として自分の納得できる事に出資する方がいい場合もあるかもしれませんね。

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