中3を家庭教師した頃の話

大学時代、死ぬほど家庭教師をしてました。週8回とかやってたからな。疲れたデス。特に、

「中3の子の偏差値を、1-2ヶ月で40台から50台に上げる」

ってのが、私の得意分野でございました。高校受験目前であわてた親に泣きつかれる、みたいなケースですね。

で。当時(80年代)の中3で、偏差値40台ってのは英語で言うと大抵こんなレベル。

1.文法という概念がないので、時制といわれてもなんのことやら
2.っていうか、動詞と名詞の違いもわからない
3.もっというと、アルファベットもうろ覚えだったり

というわけで、まず最初に、どのレベルかを見極める。こんな感じです。

私 「犬って英語でなんていうかわかる?」
生徒 「うーん、ドッグ?」
私 「お、よく知ってるじゃん。じゃ、それ、この紙に英語で書いてみてよ。」

ここで、アルファベットの難関、「d」と「b」の違いがわかっているかどうかが判明する。できない子が結構います。

もしちゃんと書けたら、「本=ブック=book」も書かせて再確認。

ここがクリアできない子には、最初の1-2週間、ひたすらアルファベットと基本単語のスペルをやらせる。「この50個の単語を、毎日ノートに100回書け」みたいな。

次が文法。

私 「私は東京に行く、って英語でなんていうかわかる?」

生徒 「I go to Tokyo」
(えー、アルファベットができないからといって、文章が作れないわけじゃなかったりする。ひとかたまりとして文章を丸ごと覚えてるんですね。正しい言語習得の方法ではある。)

私 「そそ、よくできました。じゃ、それ過去形にしてみて。」

生徒 「か、か、過去形っ?????」
(顔が恐怖に引きつる。「過去形」という文法用語に拒否反応。)

私 「うん。じゃね、日本語でいいから、言ってみて。『私は東京に行く』を過去形にするの。」

生徒 「・・・・・・」
(そもそも「文法」がどういうものか皆目わからないので、何を聞かれているかわからない。)

私 「『私は東京に・・・・』。これに続けて過去のこととして言ってみて。」

生徒 「私は東京にいきますでしょう。」 
(完全に惑乱。)

私 「いや、そうじゃなくてね、昔したこと。今じゃなくて前のこと。」

生徒 「・・・・私は江戸に行く。」
(↑実話。)

(さすがに一瞬凍るが、「過去」という概念が通じた、これはブレークスルーだ、と思い直す私。)

私 「そそ、そういうかんじなんだけどさ、もう少し最近の昔のことなんだよね。じゃ、『昨日』ってことにしてみよう。『私は東京に昨日・・・・』に続けて言ってみて。」

・・・・うーむ、私はヘレンケラーの先生かよ、という感じですなぁ。

ま、こうやって、「一体何がわかってないのか」を探り出し、その根元のところから教えてあげると、偏差値40を50にするのはそれほど大変ではありません。小学校の国語とか算数まで戻ることもありましたが。(ドラゴン桜みたいなもんですね。)

あと、中には、

「あまりにシャイで気が小さいため、間違った答えを書くのが怖いばかりに点数が伸びない」

という子もいました。「絶対にあっている」と本人が心から安心できることしか書けないから本番に弱いわけ。その子には、

「正解なき問題を解く」

ことを特訓。例えばノートに私が

「このうさぎは●●●に生まれました。」

といきなり書いて、●●●を埋めな、とか言うわけです。

「今私が適当に書いただけだから、特に正解は無い。文章として変じゃなければそれだけでいいんだよ。」

と。

「あてずっぽうを書く」という行為を人生においてしたことがない真面目な子だったので、気の毒なほど冷や汗をだらだら流していましたが、これを何回もやって、「何でもいいからそれっぽいことを書く」訓練。何の前置きもなく、「この三角形の鋭角の角度は●●度である」とか。(ちなみに、確率統計的に、角度を聞いている問題の答えの多くは30度だ。わからなかったら30度と書くべし。これ本当。)

ま、これは別に「あてずっぽうでもいいから書く」だけが目的ではなくて、クリエイティブに解にたどり着く思考法の訓練でもあるんですが。

・・・てな感じで短期間偏差値向上をはかったものでございます。懐かしい話です。

中3を家庭教師した頃の話」への23件のフィードバック

  1. 初コメントです。
    面白くて大笑いしながら読みました。
    僕も今友達の子供(中1)に数学を教えているのですが、等式や方程式や比例という中1で習う新しい項目は分かっていても、小学校でやる分数や桁の多い計算がダメダメで足を引っ張っているようです。
    科目は違いますが、大変参考になりました。

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  2. おもちゃで遊ぶのに、まず説明書を読む子供達

    中3を家庭教師した頃の話(On Off and Beyond) 「あてずっぽうを書く」という行為を人生においてしたことがない真面目な子 これを読んでなんとなく思った。 さすがに低年齢ではタイトルのような事はないでしょうけど、自分の子供におもちゃの正しい遊び方を教え込もうとする…

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  3. >偏差値40を50にする
    ↑のようなノウハウって、実は(筆者様のような)
    一部の家庭教師経験者しか知らない
    のではないでしょうか。
    本に書いたら売れそう。

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  4. 江戸ってのは長島茂雄が立教大学時代にやった
    解答で有名ですよね?まぁわかって書いてると思うけど。

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  5. ハハハ〜!友達の元彼女(アメリカ人)が子供の頃に、”I bou’t know.”と書いた話を思い出しました。
     ”Those who can’t do, teach.”という言葉がありますけど、そんなことないと思います。ほんとに。上手に教えられること、キレないで教えられること、それ自体貴重な才能だと思う。Chikaさんの生徒はラッキーだったね。

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  6. 私は東京に行く
    ↓過去形
    私は江戸に行く
    は家庭教師とか塾講師の間では有名なギャグネタですが・・・
    その子がわざと言ったかブログ主が拝借したかどっちかですね。

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  7. 家庭教師やってたけど、頭良い子より、根本から判ってない子を教える方が面白かったなぁw
    私も中3相手に算数ドリルからはじめた口ですわw

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  8. 私 「私は東京に行く」
    ボタン(英語)
    コンピュータ 「I go to Tokyo」
    私 「私は東京に行く」
    ボタン(過去)
    コンピュータ 「私は江戸に行く」
    私 「私は東京に行く」
    ボタン(過去)
    人間「私は東京にいきますでしょう。」 
    人工知能と、人間の見分け方にゅ。

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  9. chikaです。
    「江戸」は結構普遍的間違いなのかも。「赤い靴」を「いいじいさん」「ひいじいさん」と聞き間違える人が多いみたいな?(私は「にんじんさん」だと思ってたが。)
    ノウハウ本は・・・うーむ、もはやディテールを忘れてしまいましたので、無理かなーと。とにかく、わからなくなった原点に戻るという、ただそれだけです。ちなみに、中三で偏差値50を切るレベルでは、数学だと「分数」という概念が全くわかってなかったり。二分の一足す二分の一は4、とか。
    ここまでわかってないのに、よく偏差値40超すなぁ、とびっくりしたものです。付け焼き刃でテストを乗り切ってきたみたい。さぞやつらい暗記をしたんだろうなー。「わかる」という喜びなくひたすら暗記で乗り切るだけでは、勉強が嫌いになるのがよくわかります。
    とにかく「まさか、これくらいわかってるだろう」という思い込みは捨てて、原点に立ち戻りませう。「何もわかっていないはず」という期待値を確立しておけば、そんなに怒りは感じませんヨ。生徒がdogを書けるとマジうれしい、という状態になります。
    私はそれより、それなりにまともな成績の高校生が「何のために大学に行くかわからない」とか言う方がイラっときたなぁ。行きたくないならやめたら〜、勉強したくなったら呼んでね〜、と思いました。やる気を出させるところから始める人は尊敬します。
    king・・・www

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  10. 中三の
    >さぞやつらい暗記をしたんだろうなー。「わかる」という喜びなくひたすら暗記で乗り切るだけでは、勉強が嫌いになるのがよくわかります。
    >それなりにまともな成績の高校生が「何のために大学に行くかわからない」とか言う。
    この二つって、単にひたすら暗記で乗り切り始めた時期のちがいだけの様な気がする。

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