adorableという単語がある。小さい子供が純真でかわいらしいときに、adorable childといったりする。辞書にも
lovable especially in a childlike or naive way
と書いてある。naiveは、ナイーブは現代米語ではバカという意味です、というエントリーでも書きましたが、特に大人を形容して使うときは、「純粋な」というより、「世間知らずの」という意味となる・・・・が、子供だったらnaiveでlovableってのもOKで、=adorableなんですね。
ところが一方で、adoreと動詞にすると、自分より格上の人を崇拝・尊敬する、という意味になる。
(いちおう、adore=like very muchという意味もあるので、adorableな子供をadoreする、ということもできるのですが、一般的には、adorable=自分より小さいもの、adore=自分より上のもの、というニュアンスが強い。)
Ryan adores his older cousinsみたいに使う。revere=崇拝する、の同義語でもあって、神様もadoreできるらしい。でも神様をadorableとは言わない。というわけで、私が微妙に不思議に思っている単語なのでした。
1次元的スケールで「上か下か」を判断しようとすると、adorableとadoreの意味を理解するのは難しいでしょう。
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「微妙に不思議」とのこと、話者の関係を整理するとすっきりしませんか。
adoreは
ad- ‘to’ + orare ‘to speak, pray’
で(Longman)、神を敬う行為をそもそも指す。
他方 adorableは、
worthy of being adored
で、その価値があってそうするもの。
adorableは本来adoreする義務はないんだけどついついadoreしてしまうもの、あるいはadoreに値するもの、このような人間の価値判断が入っているのだと思います。
とすれば、神にadorableを使うのは人間の分際で畏れ多い(だから使われない)ってことになりませんかね。
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アメリカで赤ん坊連れて買い物しているとき、見知らぬ人から何度もadorableが飛び出し、初めて知った単語でした。赤ん坊〜幼児を形容する際には高頻度で使われていた実用英単語。
純粋無垢な赤ちゃん達への賛辞表現と受け止めましたデス。
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確かに微妙に不思議ですね。子供のなげかける疑問に似て、こういった素朴な疑問が一番やっかいだっりするのでは?
語源が同じでも、時の洗礼を受けて意味が大きく変わってしまうことは実際あるので、語源からだけでは読み解くことのできない深さが、この疑問の背後に潜んでいるのかも知れませんね。
たとえば、語源がknave は「悪漢」とう意味ですが、その語源はドイツ語の Knabe(子供)だそうです。ゲーテの詩で「ワラベは見たり、野なかのばら」と訳されているワラベはKnabeですが、それが「悪漢は見たり・・・」ではゲーテも真っ青ですよね。
どうやら、ドイツ語から英語にインポートされる過程で、その当時の荒廃したイギリス社会の状況を反映して、「子供」はとんでもないことをする–>「悪ガキ」–>「悪漢」という変化したようです。
このように語源の外にあるコンテクストの影響を強く受けて、「風が吹けば桶屋が儲かる」的に驚くような語意変化をすることもあるので、adorableがどういった歴史を背負って今に至ったのか知りたいですね。
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超カワイイ とか 萌えー と訳せますか?
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Trinityさんがおっしゃるとおり、多分言葉の歴史に関係あるのだろうと思ったのでOxford English Dictionaryを見てみました。
案の定、OEDには、過去の様々な用例を含め、色々長い説明が書いてありましたが、要約すると、やっぱり昔はadoreもadorableも神様に使った。ところが時代を経るつれて、trivialなことが好き・好ましいことを強調するために、adoreとかadorableが使われるようになった、という感じのようです。
ちなみに、この辞書によると、adoreですら神様に使うのは、今は詩の中くらいしかないそうです。じっさい、私もadoreを神様に使うの、聞いたことありません。ただし教会では、聖書の古めかしい英語に影響されて、言葉の用法も日常とはちょっと違う時もあるので、adoreも神様に使っているのかもしれませんが。
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