以前、スタンフォード大学でアリ研究をしている教授のセミナーに行ったらとっても面白かったという話を自動的専業分業アリ社会というエントリーで書いたら、ブルーのジェルでアリが飼えるアリハウスの話をトラックバックいただいたので、さっそく購入、アリを取ってきて入れたら全員逃亡して、そして誰もいなくなった顛末を書き、もう一回採集しなおして入れたが、一匹しか掘らず、残りは会議に明け暮れている、、、というアリのその後の話を書いた。
全然だめじゃ、、、、ということで、アリハウスはそのままお蔵入りになった(=捨てた)のだが、数ヶ月前、ダンナが
「セールで超安かったから」
と、別のアリハウスを買ってきた。前回とは別のメーカーのものだが、原理は一緒。NASAが開発した(ほんとか)というブルーのジェルが入ったプラスチック容器の中にアリを入れると、縦横無尽に巣穴を掘ります、というもの。
しかし全然掘らない。というわけで、現在までの涙のトライアルの歴史です。
1)ダンナが家の周りに無限にいるアルゼンチンアリを5匹ほど獲得して入れる
「君の様に、すぐに逃げられるようなドジはしない」
と、やる気満々なダンナであったが、ほんの5分で全員がフタにあいてる空気穴から逃亡。この段階でダンナは興味を失う。以降、全てワタシ1人の格闘の歴史です。
2)アルゼンチンアリを10匹ほど捕まえて入れる
→すぐに、2匹ほどが穴を掘り出し、せっせと「U」の字を形成。しかしその後全員がフタの裏側に張り付く。じっと我慢してそのままにしておくが、4-5日すると、1匹、また1匹と餓死。(正確な死因は不明だが、おなかのところが段々透明になったので、恐らく体内の栄養が全てなくなったのだろうと推測。)
これはイカン、とバナナの小さなかけらをケースに入れる。しかし、誰もやってこないので、バナナの上に、さらに蜂蜜を一滴たらす。1時間ほどして見てみたら、5匹ほどが蜂蜜の中で溺死。アリは体の表面全体で酸素を取り入れるそうなので、蜂蜜は鬼門ということでしょうか。
あきらめて、残っていたアリを全て家の外に逃がす。
3)公園でアリを取ってくる
「穴を掘らない原因はアルゼンチンアリではないか」
という仮説の元、別の場所で違うアリを探すことにする。違う場所には違うアリがいるだろう、という発想。
ちょうど15人ほどでピクニックランチをする機会があったので、アリハウス、竹串、蜂蜜持参で登場。一緒のグループに、幼稚園~小学生位の子供が4人ほどいたので、全員引き連れてアリ探し。しかし、せっかく山の中に分け入ったのに、アルゼンチンアリしかいない・・・・・。(アルゼンチンアリは、カリフォルニアの方がアルゼンチンよりも見つけやすいそうです。)
しかも、蜂蜜+竹串+小学生というコンビネーションは失敗で、捕らえられたアリさんたちは、ほぼ全員溺死または圧死。
(その後、ピクニックランチに参加していた方から、「うちの子と遊んでくれてありがとう」というメールを頂いた。別に遊んであげてたわけじゃなくて、一緒に遊んでいただけなんだが・・・・。)
4)家のデッキで黒アリ発見
2ミリほどしかないアルゼンチンアリの倍はある黒いアリを発見!!!デッキの上に弱弱しく3匹ほどが歩いていたので、捕らえてアリハウスへ。しかし、えさを探しに回っているアリは穴を掘ったりしない。よって、当然のことながら、うろうろ歩いていたエサ探しアリはアリハウスでも役立たず。フタの裏側に張り付いて、何とか外に出ようと試みている。
この辺のアリの役割分担、キャリアパスについては、自動的専業分業アリ社会に書いたとおり:
- 働きアリには、食べ物を探したり外部の異常を感知する偵察アリ、食べ物を運んでくるアリ、巣の修復を行うアリ、ゴミ掃除をするアリ、の4種類がいる
- それぞれのアリは専業で、修復アリが食べ物を探しに行ったりしない
- 特定業務に特化したアリが生まれるわけではなく、約1年の生涯を通じ、一定のキャリアパスに従って仕事を移っていく
- 巣の表にいる時間が増えると、その風に当たることで体の表面が乾き、体表面の化学組成が変化する。で、その化学組成によって、違う「匂い」が生じる
- 体の匂いによって、どの仕事をするか決まる。例えば、巣の中にいることの多い修復アリが、外に土を運び出したりしながら表にいる時間が増えることで、食べ物アリ、偵察アリへと「昇進」していく。
やはり、「修復アリ」を探し出さなければならない。そのためには巣を突き止めないとならない。
5)黒アリの巣を発見
「絶対近くに巣があるはず」と何度も探した結果、ついに家の影に黒アリが出入りする巣を発見。ここで「修復アリ」をゲットすることとする。しかし、巣のそばであっても、外を歩いているアリは、「偵察アリ」かもしれない。そこで、中にいる修復アリをおびき出すこととする。
修復アリをおびき出すには、修復アリの業務を作り出すべし。というわけで、入り口をピンセットでちょっと壊して、かつ水を巣に注ぎいれ、そのままヤンキー座りで待つこと5分。しかし何も起こらないのであきらめる。
翌日、巣に行ってみると、おおお、修復アリさんたちがせっせと穴から土のかけらを運び出しているではないか!
さっそく捕まえる。また、これまで5匹とか10匹程度しかアリハウスに入れなかったのが敗因かもしれない、と今度は20匹以上捕まえてアリハウスへ。ただし、全員修復アリさんではなく、恐らく他の種類も交じっているはず。
アリハウス内は、最初は動乱状態だったが、そのうち落ち着いた。数匹が、アルゼンチンアリが掘った「U」字型の穴の底の方を、5ミリほど掘り進む。また、穴の中で死んでいたアルゼンチンアリの死骸も知らぬ間にジェルの上に運び出された。さらに、(ジェルの)地表に散乱していた、これまでに掘り出されたジェルのかけらをせっせと運び周り、堤防状のものを作るアリも出現。
「これは、幸先がよい!」
と喜んだのだが、この辺でなぜか作業は中止される。その後は全員がフタの裏に張り付いてジッとしている。数日すると、また餓死しはじめた。
YouTubeには、アリハウス内でアリが巣を掘り進む様をTimelapseで撮ったビデオが複数ある。くやし~!どうして私のアリは掘らないのか・・・。
さらに、SixApartの関さんから、女王アリをアリハウスに入れたら卵を産んで、それが孵ってアリコロニーができた、という記録ブログを教えてもらう。
「なんですってっ」
闘争心むき出しのワタシ。女王アリは難しいが、卵をゲットするくらいならできるはず。大勢のアリがせっせとタマゴを運んでいる時に、きゃつらを捕らえればよいのである。というわけで、アリのお引越しが家の周りで起こるのを待つことに。
(関さんからは、
「この記録ブログ書いた人、アリにのめりこんで社会から解脱しかかっちゃったんですよね~」
というためになる寓話を伺ったのだが、もはやアリ中毒状態なので聞く耳を持たず。)
しかし、ただ待つのはつらいもの。そこで、アリの引越しを待つ間、平行して、再度穴掘り業務を行う黒アリをゲットしようと、黒アリの巣穴をさらに激しく破壊。10センチほど掘ってホースで水を注入。そうしたら全然アリがいなくなってしまった。過ぎたるは猶及ばざるが如し。すまん、黒アリさんたち。
6)そして今日、ついにアリの引越しに遭遇。
ガレージの脇を、アルゼンチンアリが5センチほどの幅で激しく移動。「アリの川」は、10メートルほども続いている。もちろん、大勢が白い卵や幼虫状のものを運んでいる。
千載一遇の好機。
(以降いつかに続く)
うっ、続きが読みたい…
「千載一遇の好機」という文で終わるというのは、すばらしいと思います。
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一昨年我が家でも蟻の観察キットを買いました。
途中までは頑張っていたのですが、ある時を境に、ぱたっと穴掘りを止めて天井に張り付いて餓死するんですよね。
「そのままヤンキー座りで待つこと5分。」
ここ気に入りました。
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アリキット買いたいと思ったことがありましたが、千賀さんの試行錯誤の日々を読むと、買わなくて正解だったかも・・・などと思ってしまいました。この後成功したのかどうかが非常に気になるところです。
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長かったので1/3ほど読んで書いてます。
”餌を探しに遠征する蟻は穴掘りの役目を終わっている世代的なので、巣穴の入から遠くにいけない比較的に若い世代の蟻を捕獲しないとうまく穴を掘らない。できれば穴の中で実際に掘ってるやつらがいい。”とかなんとか聞きかじったことがあるような、ないような・・・
興味あればお試しください。
私のは一応成功しましたがやはり入り口で捕まえたやつらでした。
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今、最後まで読みました。
おお、確実な方法で成功されていたのですね。
大きなお世話、失礼いたしました。
続編楽しみにしています。
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イヤー、楽しそうですね。
そのキット、日本でも発売されたけど、確か注意書きに
女王アリを捕まえて、入れてくださいとあったような。
女王アリはいままで見たこと無いし、捕まえることできるのか!?
と思ってます。
chikaさんの千載一遇の好機、続きが楽しみです(笑)
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ダンナ様興味失うの早っ!
過剰に真剣な、計画→実行→検証・改善サイクルが素敵です。
ずっとROMだったのですが、今回のエントリーがあまりに傑作だったのでコメントさせていただきます。
続編、熱望します。
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なにごとも極めようとするヤンキー座りな姿勢に感服です。
蟻タイムラプスの作者によるCat Napビデオ、いいですね。
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ヤンキー渡辺です。
おほほ、これって、「読むと面白いかもしれないけど、私が口角泡を飛ばして語るのを聞いたらたいていの人がドン引きする」という、まさにブログ向けトピックですね。読んでもドン引きしてるかもしれませんが。
Cat napいいですねー。うちにもウェブカメラがあります。簡易カメラ兼ウェブサーバーってやつで、ネットワーク経由、家で何が起こってるか見える。旅行の時、猫が普段寝てるところにセットして行きます。リアルタイムでビデオでみるのと、30分おき(だったかな?)くらいに撮った過去の静止画をコマ送りで見ることができるんですが、このコマ送りがちょうどyoutubeのcat nap状態。同じ場所でクルクルしてるだけ、という。。。。
あと、関係ありませんが、今日は家の中でカエルを捕まえました。ここんとこ1ヶ月くらい、家の中にある鉢植え(複数)を行ったり来たりしてたカエル君です。
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乞う、続編。
日本ではバンダイさんがデジタル化してくれました、楽チン。:p
ant’s life studio(アンツライフスタジオ)
http://catalog.bandai.co.jp/item/4543112440693000.html
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ディスプレイの前でゲラゲラ笑いながら読みましたww
今SVウルトラクイズの下調べのため、さかのぼって読んでいるのですが、この記事は傑作ですね!w
(そしてSVウルトラクイズの出題範囲はSVの隠れスポットからということを知りました。。)
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