シリコンバレーIT業界転職率

驚くなかれ。

IT業界で働く4大卒以上の男性の一社当たり平均在職期間は、全米で4-5年。シリコンバレーだけだと2-3年しかない。

「転職ばっかしてる人もいるよねー」という「自分の周りの人に聞きました的調査結果」ではなく、Current Population Surveyという、国勢調査のようなものから丹念に拾った数字。2005年11月に出たJob-Hopping in Silicon Valley: Some Evidence
Concerning the Micro-Foundations of a High Technology Cluster
というレポートからのもの。母集団の数は44,202人。
(男性に限っているのは、調査の目的が地域間格差を導くものなので、性差の影響を防ぐため。)

カリフォルニアでは、「競合企業に転職してはいけない」というnon-compete規定は違法。19世紀以来あるルールである。結果として、シリコンバレーのみならずSan DiegoやLos Angelesなどでもシリコンバレー同様のハイパー転職状態になっている、と。

「そんなにみんなが転職したら、企業秘密が守れないから、発明の意欲が薄れてイノベーションが起こんないんじゃないの?」

という疑念は米国内でも強くあった。だが、2004年の全米で申請された特許のうち、45%はシリコンバレーからのもの。なぜ~という疑問に関しては、去年の12月のNew York Timesの記事

when there is a lot of technological uncertainty, the fastest way to
find the best solution is to permit lots of independent experiments.
That requires modular designs rather than tightly integrated systems.

"By
having a lot of modular experimenters, you can take the best, which
will be a lot better than the average," Professor Rebitzer said.
Employee mobility may encourage productive innovation, as people
quickly move to whichever company comes up with the best new technology.

But
you would not expect to find people moving around all the time in every
industry, only those where technical uncertainty justifies spending
lots of resources on experiments – including many that will not pan
out. "In most other settings," said Professor Rebitzer, "it’s going to
be easier simply to design things with special purpose parts that fit
in."

技術的不確実性が高いときは、技術コンポーネントをモジュール化し、それぞれのモジュールで、ありとあらゆるトライアルを大勢がガッシガッシとすることで、より優れた開発が起こる。そして敗れ去った技術の会社からすぐれた開発をした会社へどんどん人が移れることが、この「大勢でがしがし」を促す、というわけですな。

確かに、

「当たるかどうかわからんこの開発をこの先10年やれ。失敗したらキャリア一巻の終わり。」

といわれたら結構びびりますよね。でも、

「とりあえず1-2年やって、ダメだったらその間に得た経験で、より優れた競合に転職できる。」

となったら、まリスクは少ないな、となる。シリコンバレーでのベンチャーに入社するときの発想はこういう感じで、ベンチャー固有のリスクもさることながら、そのベンチャーが属する領域全体を丹念に見る人も多い。

「大勢でがしがしやると、より優れたものが出る」
サーチ・独立・株式市場でも書きましたが、Wisdom of Crowdsみんなの意見は案外正しい)の発想ですね。ご存知の方が多いと思いますが、まだだったらこの本をチラーリかつパラパラと読んでみるのもよろしいかと。

(注)最初の年数は、マックスでも、という但し書きがつきます。というのも、オリジナルの調査の結果は、「一ヶ月の間に仕事を変った人の割合は全米で2.41%。ということは、1年間同じ会社で働き続ける人の割合は(1-0.0241)の11乗で76%。」というもの。でも、76%の人が1年後も同じ会社で働いている、っ直感的じゃないので1÷76%=4ちょっと、というので勤続年数に直したんですが、本当言うと、「1年間同じ会社で働き続けない人」が何回仕事を移っているかわからないので、本当はこれより短くなる可能性があります。同様にオリジナルの調査の結果では、シリコンバレーで一ヶ月の間に仕事を変った人の割合は2.41%+0.8%だそうです。

シリコンバレーIT業界転職率」への18件のフィードバック

  1. 「私がマイクロソフトですごした日々」というジュリー・ビックさんという人が書いた本を読んだ時、仕事には「開拓者」と「定住者」があってそれを使い分けろと書いてあり、へー、ちょっと前の時代のマイクロソフトで働いていてもちゃんとそういう感覚をもつんだと思ったことがありました。。。

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  2. 日の丸が親方である限り

    禿同なのだが、なぜそうなったのかの考察も欲しい。
    池田信夫 blog:消えた国策プロジェクト私は、政府が科学技術に資金援助することがすべて悪だとは思わない。他ならぬインターネットも、国防総省とNSFの予算でできたものだ。しかしNSFでは毎年プロジェクト評価を行い、不……

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  3. なんかシリコンバレーで働く人って、海賊みたいですねー。
    宝物(特許)を求めて、多くの海賊船(ベンチャー企業)が航海(経営)をしているカリブ海(シリコンバレー)。その海賊船で働く船員(社員)は、生き延びるため、生き残りそうな海賊船を渡り歩いていく。
    そんなかんじ。

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  4. いつも楽しく読ませて頂いています。『しあわせのくつ』というブログを書いているwanwangorogoroと申します。千賀さんの文章とても読みやすくて大好きです。
    人材の流動性が『大勢でがしがし』となりイノベーションを促進する、という話とてもよくわかりました。
    さて、労働者側としてはそれでいいと思うのですが、企業側としてはどうなんでしょうか? いい線まで開発が進んでいたのに引き抜かれた、みたいなケースは多発しないんですかね? スポーツ選手みたいに「○年契約」とか「知的財産権」でうまくポイントを抑えているんでしょうか? ご存知でしたら教えてください。

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  5. とんぽーろーsan
    MSは、AppleとかAdobeとかと同様長く働いている人が多い会社ですよね。SunとかHPも同様だったんですが、レイオフで働いていたくても働けなくなった人がたくさんいたので・・・長いって言っても10年くらいかな。
    団長san
    keira knightleyはワタクシよっ:-p
    wanwangorogoro-san,
    ども~。企業側としては、よい社員が逃げていくのを心配する前に、よい社員を採用しなければならないわけです。流動化はこの最初のステップを促します。あと、ビジネスがうまくいってたら辞めたがる人少ないですよね。(Googleを想像してみてください。)○年契約というのはありますが、拘束力はありません。(○年いたらボーナスが出る、とかそういう金銭的なリターンと、まぁ精神論)あとはストックオプションかな。通常4年にかけて段階的にもらうので、それをもらいきるまで、というincentive to stayはありますね。

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  6. 追加ですが、「鍵となる社員に辞められる」という痛いことは結構おこります。で、「辞めます」と言われた後に、「ちょっとまった~」と追加ボーナスを出したりベース給料をアップしたり、といういたちごっこもあちこちで起こっています。完全にうまくいくシステムはないですね。

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  7. 日本だけで働いていると、「ボーナス出すから転職待ってよ」と言われちゃうと、当分(数年?かな、一生かも)は転職できないと思ってしまったり、転職しすぎるのもマイナス評価だったりするのですが、アメリカではその辺だいぶ違うようですね。
    精神論、ってやっぱりアメリカでも感じるものでしょうか?人間だからある程度はあるんでしょうけど、アメリカは結構ドライなのかと思っていました。

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  8. 精神論、ありますよ。単に、「無駄だけど(または、意味不明だけど)とにかくがむしゃらにがんばる」とか、そういう特攻隊精神が日本より少ないだけで、アメリカにはアメリカの精神論がビッチリとありますです。
    「転職しすぎるのはマイナス」は当然アメリカでもあります。問題は、どれくらいで「しすぎる」と足切りするかですね。3年一つところで働いた経歴があれば、腰が据わったヤツ、という感じがすると思うんですけど、シリコンバレーで働いている皆さん、どう思います?
    シリコンバレーにある某IT系大企業に勤める知人は最低5年、できれば10年くらい一つの会社にいてほしいなぁ、っていってましたけど、ベンチャーだとそんな基準で切ってたら誰も採用できなくなっちゃうと思います。

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  9. 米国でも精神論はあるでしょうが、(外資の募集要項なんかでも、「活動的」だとか「自主的に行動できる」みたいな表現を見かけることは良くあります。)精神論が出てくるのは普通は最後の最後なのでは?あらゆる手を尽くし、技術面でも法律面でも可能な手を全て尽くした後に、最後の最後で勝負を決めるのが精神論の部分であると。
    スポーツなんかだと分かり易いですよね。科学的に分析して筋力トレーニングなどの各種トレーニングを行うし、カロリーや栄養バランスも考慮した食事をとるのも、寝ることさえもプロ選手にとっては仕事のうちです。そして最後の最後で、技術的肉体的に互角の時に、最後に勝負を決めるのは精神的な部分ということはあるでしょう。
    日本企業だと、技術も何も知らない素人が最初から失敗していて、その失敗の穴埋めのために精神論を振りかざすことが非常に多い。「あんたの初歩的な小学生レベルの失敗さえなければ、この死に物狂いのデスマーチなんて最初から必要なかったんだよ。」というときに、そのA級戦犯の口から言い訳じみた精神論を聞かされることがどれだけ虚しいことか。

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