バクテリアとともに暮らす

MotherDirt

できる限りなんでも自分で試すことにしている。

そんな私の最近の実験アイテムは「バクテリア」である。ヤクルトさん(他)のおかげで腸内細菌の大事さはもはや誰も疑わないと思うが、私が今トライしているのは「皮膚」にふりかけるバクテリア入りのスプレーで、MotherDirtというベンチャーが作っている。

MotherDirtは去年New York Timesで取り上げられた。記者が1ヶ月間風呂に入らずシャワーも浴びずMotherDirtのスプレーだけを使った結果どうなるか、という感動のドキュメンタリーである。

ちなみに、MotherDirtの中身は「アンモニアを酸化する生きたバクテリア」だ(正式社名はAOBiomeで、AOはAmmonium Oxidizationからとられている)。創業者はMITの化学工学出身。

「馬は風呂に入らなくても臭わない」「馬は地面の土に体を擦りつけたがる」ということから、「土の中に臭わない秘密があるに違いない」と考え、汗の成分であるところのアンモニアで土から集めたバクテリアを培養。N. eutrophaというバクテリアが最も元気に育ったので、これを自分の体に振りかけて実験したところ臭わなくなり、なんと12年間シャワー無しで生きている、という超人である。

そして、製品化されたスプレーは彼の体に繁殖したバクテリアを増殖させたものである。

ちなみに、創業者氏の写真はリンク先に(恐縮ながらイギリスのタブロイドDaily Mailのサイトですが確かにご本人です。)想像通りの外見なのだが、この彼が12年間、文字通り全身で育てたバクテリアの恩恵を受けられることになって大変光栄である。

New York Timesの記者のトライアルの結果は、2週間ほどで「髪の毛は油でギタギタになったが、体臭はなんとなくいい匂いに、足は全く臭わなくなった」と。そして1ヶ月後には「お肌しっとり、ニキビはすっかり治り、毛穴が小さくなった」とのこと。「若い頃ニキビを治すためにたくさん使った抗生物質(バクテリアを殺す)はなんだったのか・・・」と書いている。ほー。

MotherDirtを作っている会社では、MRSAを減らしたり、糖尿病患者の傷を早く治す効果もあるとして、そうした効用についての医用許認可も取ろうとしているそうだ。

・・・というわけで、私もオンラインショップで買ってみました。

さすがに「まったく風呂に入らない」などという無茶は会社側も期待していないようで、せっかく培養して瓶に詰めたバクテリアが死なないように調整したボディソープとシャンプーも発売しており、まとめて購入。水道水やプールの塩素もバクテリアには良くないと思うが、創業者氏によれば普通の石鹸やシャンプーに比べたらそれほど問題ないとのことなので、とりあえず3点セットで頑張ってみよう、と。

MotherDirtのバクテリアは、10時間でやっと2倍になるくらいのスロー繁殖だと書いてあったので最初は全く効果を期待していなかったのだが、意外にもすぐに効果は現れた。「汗臭くならない」のである。とはいえ、あまり汗をかかないカリフォルニアで、しかも私は生来の汗かかずゆえ、効果のほどは微妙だったが、数日後に暑い日がやってきてかなり汗をかいても全然汗臭くならないのを発見。

頭も臭くならない。しかし脂っぽくはなる。なのでそれは市販されているドライシャンプーでケア。ドライシャンプーは、スプレーを髪の毛の根元の方にかけてブラシをかけるとさっぱりするという製品で、普通のアメリカのドラッグストアで売ってます。一応髪の毛を洗う回数を減らしていくと皮脂の分泌そのものが減るらしいが、それには時間がかかるようだ。

話を臭いに戻すと、MotherDirtのユーザフォーラムによれば消臭スプレー代わりに使っている人もいるらしい。

で、汗臭くならない代わりにどうなるかというと、「ひなたの土の匂い」になるのである。元が土からとったものだから当然といえば当然なのだが。これはまた「お日様に干した布団の匂い」とか「猫の匂い」でもある。(猫は、糞尿はたいへん臭いが、体自体に動物臭はほとんどない。そして、外に出すと土にグリグリと背中をこすりつけていることがある。)

Rolling musu
グリグリしている今は亡き我が家のムスビ猫

ということで、次はダンナ(40代)にもふりかけてみた。頭のてっぺんにふりかけたら、夜になっても頭が臭くない。すごい・・・。ニューヨークに住んでる知人男性(40代)も、「ふりかけたら、妻にsmell is goneと言われた」そうだ。

MotherDirtのフォーラムによれば、消臭効果があるというユーザは3人に2人。残りは効果なしと言っているそうなので万人にきくものではないらしい。何が効果の有無を分けるのかは研究しないとわからないとのこと。

しかし、加齢臭の原因物質はノネナールオヤジ臭(?)はジアセチル足臭の元はイソ吉草酸、とどれもMotherDirtのバクテリアが食べてくれるアンモニアと関係なさそうな気がするのだが、何か関連があるのでしょうか?化学な人、教えて。

最初は、朝晩2回、全身にシュカシュカとかけたら、1ヶ月持つはずのスプレーが2週間でなくなってしまった。その後は汗臭くなる要所だけにしたら、今度は6週間経ってもなくならない(まだ利用中)。なので、現在その中間くらいの分量を利用すべく調整中である。

して、使い始めて2ヶ月近くが経つが「汗臭くならない」という効果以外はとりあえず感じません。(というか、もともと特にお肌の悩みとかなかったので特に問題なし。)「本当は髪に悪い」というシャンプー回数を減らしたい、というのが最大の希望だったのだが、脂っぽくなるのはまだ続いており、ドライシャンプーは欠かせない。が、24時間で洗わずにはいられなかった以前に比べるとすこーし皮脂分泌は減ったかも。

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10年くらい前からの私の夢の一つに「頭の上に数滴垂らすだけで全身が綺麗になる魔法の液体が開発されること」というのがある。

夢のアイデアの元は犬猫のノミ取り。首の後ろにほんの少しつけるだけで30分後には全身のノミが死亡、効果は1ヶ月持続、途中風呂に入れても問題なし、というすごい液体の薬である。体内に吸収されて血中を循環するのかと思ったのだが、どうもそうではないらしい。どういうメカニズムなのか、知っている方がいたら是非教えて欲しいのだが、とにかく同じように「数的垂らす」だけで全身に回って清潔になるという何かを求めていた。

それでこのMotherDirtを試してみたわけですが、ちょっと違うけど割と満足。

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MotherDirt社のオンラインフォーラムにはいろいろなユーザの声があるが、そのうちの一つにこんなのが:

Last summer, I stopped using deodorant, soap, and shampoo and rubbed dirt into my armpits when I showered to see if I could get a poorman‘s AOB colony going. My armpits smelled pretty awful within a few hours of normal activity, and my head got really itchy and dandruff-y. That said, the rest of my body smelled and felt fine. After about 6 weeks, I gave up

「製品の話を聞いて、それなら、とソープ、シャンプー、デオドランドを使うのをやめ、その辺の土を脇の下にこすりつけてみたが数時間で酷い臭いになった。がんばって6週間続けたけど諦めた。(そしてその後MotherDirt製品を買った)」

うーん、「先進ユーザ」はかなりクレージーである。

しかし、「もう5日も風呂に入ってませんよ。でも全然臭わないはず。ちょっと嗅いでみてくださいよ」とか言って他人に体臭を嗅ぐのを強制している私も同じレベルなのかしら・・・・。

バクテリアとともに暮らす」への2件のフィードバック

  1. 人にはそれぞれの常在菌がいます。たぶん、そのエサになっているのでしょう。日本の風呂好きは異常で、動物にやったら死ぬんじゃないでしょうか。で、風呂嫌いのフランス人は、洗濯嫌いでもあって、皮脂が抜けたシャツとかは着ないみたいです。で、重要なのは、皮脂なので、食べ物も大きく影響していると思います。塩分が少ないと、臭くなるはず。ガマの油じゃないけど、皮脂に糖類豊富な体液が多くまざれば、悪玉菌が繁殖しやすくなってるはずです。アメリカ人が臭いとしたら、塩不足でしょうね。日本人は世界の中で塩を多く食べているので、それだけでも十分なのに風呂まで入るので、殺菌しすぎてるはずです。ちなみに、一ヶ月くらい風呂に入らないとカラダは臭くはなりません。なるのは、衣服です。雑巾が腐った匂いになります。ただ、カラダは拭くぐらいしないとダメですけど。ま、犬や猫みたいになめればいいのかもしれませんけどね。

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  2. ピンバック: バクテリアで体臭対策出来る商品、アメリカより現る。|臭いと戦う!

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