Innovative Silicon(とコンデンサとキャパシタ)

今日とあるマッキンゼーのヒトからメールをいただいたのですが
「ONの方は私の軟弱頭では、煙が出そうなくらい難しい」
と書いてありました。これはつまり
「お前の書き方は要領を得てなくて頭に入ってこない」
ということでございましょう。ふむ。しかし、最近Onと言えば、「先週のベンチャー投資」しか書いてないなぁ。というわけで、「先週一番たくさん増資したベンチャー」と「先週一番たくさんストックオプションを現金化したシリコンバレーの人」だけに簡単化します。7月で、バカンスシーズンということもありますし。

さて、先週一番たくさん増資したのは、Innovative Siliconという会社で、増資額はUS$16Mでした。Innovative
Siliconは新しいメモリ技術を開発する会社。通常のDRAMに比べ面積が半分で済むので、小型化できる、というのが売り。半分にできる理由は、普通
はトランジスタと電荷を蓄積するコンデンサ(キャパシタ)でできているDRAMを、キャパシタなしでできるから。これを同社では、Zero capacitor DRAMということで、Z-RAMと呼んでます。

メモリは、古いけれど新しい領域で、いろいろな新技術が出てます。たとえば、分子レベルで記憶させる、molecular memoryなるものを開発するZettacoreもあり。電荷蓄積を行うキャパシタの役割を電子が果たす、と。分子から電子を奪うことで「記憶」させ、どれだけ電子が奪われているかを読み出すことで「記憶読み出し」。一つの分子から複数の電子を奪うことができるように設計してあるので、1と0という二つの状態よりも多くの情報を記憶することができるとのこと。(つまり、一つのセルで複数ビットの情報を保持できる)。Zettacoreはナノテクのチアリーダー的ベンチャーキャピタル、Steve Jurvetsonの投資も受けており、「今すぐにでも製造可能」と、一昨年くらいから言ってますが、今でもまだ「2005年後半には製造可能」とか言ってて、ちょっと蕎麦屋の出前気味・・・ですが、そういうベンチャーは多いですから、資金が続く限りよいのですが。

ちなみに、コンデンサは、最近は、日本語でもキャパシタということが増えていますが、英語ではcapacitor一本やり。Wikipediaを見ると、condenserは"another (old-fashioned) word for capacitor"とのことで、アメリカでは日本より先に古語になっちゃったということでしょうか。なぜ、condenserからcapacitorに変わったのか、ご存知の方がいたら教えてください。

話を戻すと、Innovative SiliconもZettacoreも、「既存のCMOSプロセスで作れる」と言ってます。これ、半導体の世界では重要なキーワード。「CMOS=安い」ということで、「新しいけど、安い」ということ。安いということをプッシュしなければならない成熟産業は大変だなぁ・・・

  • 先週の最大のインサイダー取引

これまた半導体のTrident MicrosystemsのCEO、Frank LinのUS$6.6M。Tridentは、バブル崩壊前の株価にほぼ完全に戻った珍しい半導体企業の一社。Sunnyvaleにあり、社員300名、企業価値US$600M強。

95年に25ドルだった株価が、一旦1.5ドルまで落ちこんだものの、今では24ドル超。競争が激しいラップトップ向けをやめ、デジタルテレビ向けにフォーカスしたのが成功の秘訣。LCDテレビメジャー6社中4社が顧客だそうです。

1.5ドルといえば、上場取り消しのがけっぷち。Tridentは「よく生き残ったで賞」の会社ですね。

Innovative Silicon(とコンデンサとキャパシタ)」への7件のフィードバック

  1. capacitorはcapacity (静電容量)を持った部品だから、そのほうがゴロが馴染んだんでは? それに元々capacitorの機能はcondense(凝縮する、濃縮する)ことではないので。ただし、capacitorを物理的に作成するときは、大きな静電容量を小さいサイズにcondenseして作りますが。
    「分子から電子を奪うことで「記憶」させ、どれだけ電子が奪われているかを読み出すことで「記憶読み出し」」などというものが安定化できるんですか?! う〜む。しかもCMOSプロセスで出来る?! うう〜む。私もハードウェア離れて久しいので、驚異に感じてしまいました。

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  2. > 元々capacitorの機能はcondense(凝縮する、濃縮する)ことではない
    どうして、最初にコンデンサーという名前がついたんでしょうか??腐った豆と書くと、ナットウではなくトウフを意味するのと同じくらい不明(?)な出来事です。
    Zettacoreは、1セルにたくさんの分子がある、ということで、一つの分子で1セルではないので、個別にはばらつきがあっても、セル全体としては安定するんじゃないでしょうか?電子を奪うってことは、要は酸化ですから・・・。詳細は不明ですが。。
    ではー。

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  3. どもー。capacitorを最初にcondenserと名付けた理由として、私が怪しーと思ってるのは、その作り方です。特に真空管エレクトロニクス時代のcapacitorを見てみると解りやすいのですけど。capacitorというのは基本的に平面電極が2枚ごくわずかな隙間を置いて接触しないように平行に向き合って形成されるのですが、chemical capacitorなどを例にとれば、電極になるfoil2枚の間に誘電率を増加させる化学物質を染み込ませた紙を挟み、これをjelly rollのようにクルクルと巻いてギュッと締め、金属の缶の中に封印して作るんですよ。この「巻いてギュッと締め」る感じがcondenseぽいなー、と私は勝手に思ってますけど(笑)
    「電子を奪うってことは、要は酸化ですから」でハタと気がつきましたが、このメモリー素子はシリコンなど半導体モノではないということなのかしら? 半導体は最初がP型とN型を組み合わせてPN接合を作るところから実用化され、FETとその後継のMOS FETが開発されてから電界制御が普通になってたわけですが、一度半導体を忘れてもいいなら、他の手段はあるかもしれないですね。しかし、酸化・還元をメモリーとして使うとなると、温度の影響がまた興味深いですが。

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  4. Innovative SIlicon社の製品は基本的にはPierre Fazan氏のアイデアを実用化した物みたいですね。
    http://people.epfl.ch/cgi-bin/people/showcv?sciper=113285
    SIlicon-on-Insulator基盤上に形成されたFETのドレーン・ソース間の寄生静電容量(parasitic capacitance)が、当該トランジスタのスレッショルド電位を変位させる事に着目し、書き込みはゲート電位を変化させ”1″と”0″をD・Sチャンネル内の電荷の量として、単一トランジスターで記録する。読み出しは、チャンネル内の電荷がスレッショルド電位に影響するので、D・S間の電流を検出・比較すれば”1″と”0″が区別出来る。
    IS社はこの技術を使えば、組み込みDRAM(Embedded DRAM)に必要なダイ・スペースを大幅に縮小し、EDRAMを混載したASICの製造コストを大幅に削減出来ると謳っています。既存のCMOS半導体製造技術で簡単に実施できそうなエレガントなアイデアですので、説得力がありますね。
    Condenserについては、個人的には18世紀にLeyden jarが発明され、希薄・微弱な静電気を凝縮・蓄積するのが可能になったのが語源だと思います。独、蘭、仏語等でも、今でもコンデンサーと云う言葉を使っている様ですね。

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  5. gt-san,
    >「巻いてギュッと締め」る感じがcondense
    ナルホド。。。巻き寿司!
    あと、確かに電子の量を測るっていうのは「半導」じゃないですよね。
    MostlyVowels-san,
    おお、詳しい・・・!!また、感動したのが、スレッショルドというカタカナ。こういうカタカナって、タイプするの大変じゃありません?
    コンデンサーは、18世紀の言葉ですか。。英語以外では、また通用してるんですね..私も学校ではコンデンサーと習いましたが、最近はどうやって教えてるんでしょうね。

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  6. うう。日本語でのカタカナ言葉の蔓延を常々苦々しく思っている私とした事が…
    m(_l_)m
    英語の文献、論文等に目を通す機会が増えると、気をつけないと「スレッショルド」等と云う望ましくない表現に自然と言葉が汚染されてしまいますね。抽象的な物理概念を「言語」での表現に置き換える無意識の過程で、たまたま周辺を浮遊していた英語の”threshold”なる言葉が日本語の「敷居」より先に選択された様な…
    この現象は、鈍いメーン言語メモリーをアクセスする過程で、英語の「cache memory」が偶然先に「hit」してしまった例かもしれませんね (ワハハ)

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  7. いえいえ、別にそういう意味では・・単に、タイプが難しいだろうナーと、そう思ったのです。Schwarzeneggerとか、カタカナでは書けない・・・

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