先週のベンチャー投資とインサイダー取引

えー、これから(なるべく)毎週(なるべく)月曜、「先週のベンチャー投資とインサイダー取引」を書きます。内容は:

  • 前の週に発表されたベンチャー投資の総額
  • その中で一番多額に集めたベンチャー
  • 私が独断で選ぶ「ランダム・ピック」(個人的に興味がある・独特な・笑える・面白い他)ベンチャー

です。ネタ元はVentureWireです。最近「ほら、あの、最近投資を受けたベンチャーの、あのあのあの・・・」となりがちなので自分記録用。(なお、すべての投資がVentureWireで発表されるわけではなく、またアメリカ以外の会社も時々混じっています。)

おまけで、前の週に公表されたシリコンバレー企業の(合法的な)インサイダー取引の中で、額が最大のものも書いときます。こちらのソースはSan Jose Mercury Newsでございます。紙の同紙を購読している方は、"Tech Monday"の2面に一覧が出てます。公開企業のマネジメントや役員が自社株取引を行う際にはSECに報告が義務付けられていますが、それをまとめたもの。

というわけで、「先週のベンチャー投資とインサイダー取引」

  • 先週のベンチャー投資総額:5億9340万ドル
  • 投資額最大のベンチャー:Entrisphere-7500万ドル
  • 面白いベンチャー:Novariant-GPSで農作業
  • 最大のインサイダー取引:Gilead Scienceのdirector, George Shultzが730万ドルゲット

***

大規模通信会社向けブロードバンド・プラットフォーム(ハード+ソフト)開発。今回シリーズCで7500万ドル増資。これも含めてこれまでに集めた金額は1億7100万ドルと巨額。

なぜ、製品一つ作るのに100億円かかるのか、という素朴な疑問以上に、こんなに多額の投資で投資家は元が取れるのか、という問題はあります。今回のラウンドのバリュエーションは不明ですが、例えば30%分を新規投資分に割り振ったとしてpost money valuation( 投資後の企業価値)は7500万ドル÷30%=2億5000万ドル。ものすごく大雑把に「VCは最低10倍のリターンを希望」ということにすると、上場などのexitの際に25億ドルの企業価値にならないといけません。ネットワーク機器の類似公開企業としては、Ciscoのprice/sales ratioが6弱、Juniperで10弱。ベンチャーだからそれより高いとして、まぁ15とすれば、企業価値が25億ドルになるのに必要な売上は1億7千万ドル。200億円弱か。大変そう。Googleのように、起業5年で売上がbillion dollar (10億ドル台)となれば問題なし、なんですが、そういうのは10年に一回あるかないかですからねぇ・・。

「GPSで農業サポート」という渋いベンチャー。技術はStanford大学から、ですが。畑の地面が平らでなかったり、作物がきちんと等間隔に植わっていないと、生産効率が落ちる。それをGPSを使って精密に仕上げる、という技術。スキルが低い作業員を使っても、きっちり精密に植えられる、というわけです。アメリカの農園は移民(不法移民も多し。英語できない人も多々)がたくさん働いていて、あちこちを転々としながら働くという人も。なので、人にスキルを蓄積するのは難しいのでした。

さらに、アメリカの農園は広い。。。時々飛行機で農地の上を飛ぶと、いかに一つ一つの畑が大きいかに驚かされるます。しかも、最近は一つ一つの畑が「円形」ということも。いったりきたりするより、くるくる回って耕す方が効率がよいらしい。(詳細不明。ご存知の方がいたら教えてください。)

さて、同じ形の円を、重なりがないようにたくさん並べると、円と円との間には、ゆがんだひし形の「あまり」ができますが、そういう「あまり」がたくさんある。
●●●
●●●
●●●
↑こういう感じ。

一つ一つの円は多分1キロくらいあるので、「あまり」のところだけでも、日本の零細農家が丸ごと一つ入っちゃうくらいなのではないか、と思われます。しかし、その「あまり」は「あまり」として放置されているのでした。土地が余ってるから。この●●●というのが見渡す限り広がるのを飛行機から見るたびに

「こういう国と戦争してはいかんよ」

と思います、はい。

  • 最大のインサイダー取引:Gilead Scienceのdirector, George Shultz

Gileadはバイオ製薬会社。社員1600人、売上13億ドル。8つの薬が認可済み。エイズやB型肝炎といったシビアな病気がターゲット。最近好調。で、インサイダー取引をした人は、そう、あのシュルツ元国務長官。現在Gileadの役員なのです。同社のサイトによれば

Dr. Shultz joined Gilead’s Board of Directors in January 1996. He serves as Chairman of the Nominating and Corporate Governance Committee and serves on the Audit Committee.

とのこと。

ストックオプションを行使して株を購入・売却し、ネットで730万ドル利益を上げたそうです。ちなみに「インサイダー取引」といっても、きちんとSECに届け出ていれば合法ですのでくれぐれも誤解なきよう。

では。

先週のベンチャー投資とインサイダー取引」への7件のフィードバック

  1. >「こういう国と戦争してはいかんよ」
    飛行機から畑を見たことはありませんが。
    レストランにて、あまり腹が減ってないからスープとサラダ
    だけでいいや、と思って頼んだら、スープは軽くマグ2杯分、
    サラダはどんぶり二杯分のレタスに500gのチキンフィレと
    100gのチーズが乗って出てきたときに
    「こいつらと戦ったら負ける」
    と思いました。
    結局一人で全部食べたけど、死ぬかとおもった。
    (しつこい)

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  2. 円形の畑の理由は 確か大学の授業で
    灌漑用水用の設備による制約が一番大きかったように思いますが
    検索を簡単にかけても それ以外の理由は見当たらないようです。(現時点では)
    つまり散水用の機械がコンパスのように回転して灌漑を行えば、
    給水点を1点に固定して動かさずにすみ、かつメンテナンスも楽
    であるからです。
    (畑が長方形になると、
    水を機械へ注入する点もしくは水が出てくる点のどちらかが
    動的になりそれだけメンテナンスの手間が増える)
    水の供給制約条件が 他の制約条件より優位な場所に
    おきうる現象だったと記憶しています。
    昨年 海外で働くということ という 飛び込み記事を書いたのですが、
    そろそろ新しい話題が集まってきたので
    海外で働くということReturns 続けて
    海外で働くということBeginning でも書こうと思っているのですが...............

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  3. 今日イスラエルから帰ってきました。法廷での弁護士同士の論争を見て聞いて、(こいつら最強かも)と思っていたら、米国人弁護士が「ユダヤ人は米国人より自己主張が必要だと思ってるな。こいつら最強」とつぶやいていました。
     畑。以前Sanfrancisco(だったかな?)からSaltlakeに飛んだとき見た記憶があります。ただその時思ったのは、(落ちても助かるかも?)とアホな錯覚だけでしたが・・・
    テルアビブは空港もリニューアルされ、心なしか街中もキレイになってきたような・・・和平が進むといいのですが。

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  4. GPSとGISの研究してます.
    その農法はピボット農法ですね.
    アメリカの大平原には地上には水が無い代わりに地下にオガララ帯水層という巨大な地下水域が存在するのでそいつを井戸で引き上げてはコンパスの要領でまいてるのです.
    っていうかいつかは地下水かれるだろうと言われてますが…
    そんな感じです.
    とりあえず専門だったんでつい書いてしまいました(^_^;)

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  5. 私が、「こいつらと戦ったら負ける」と思ったのは、Arlington National Cemeteryに行って、衛兵が、そこを24時間365日守っている様子を見た時です…
    アメリカという国のため、あるいは、誰か大切な人を守るために戦った人たちへの感謝の気持ちというのでしょうか、そういったものをひしひしと感じ、そんなことを思いました。

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  6. ジョージsan
    食べ物はねー、そうですよね。よくあんなに食べられますよね。でも、肥満になって、糖尿病になって、心臓病になって、腎臓病になって「死ぬかと思った」となるのはアメリカ人の方かも。
    Hellsing-san
    おー、なるほど。これが日本だったら、「四角い畑にくまなく水がまけるマイコン散水機(ファジーロジックつき)」みたいなものが開発されてるんでしょうねー。。。
    あ、
    「海外で働くということReturns 続けて
    海外で働くということBeginning 」
    よろしくお願いします。
    emans-san
    ユダヤ人とインド人と中国人が世界3強だと思ってるんですけどどうでしょうね。
    まさき-san
    詳しい!!オガララとは何語??やっぱりインディアン系でしょうか。
    yoshinoriueda-san,
    確かにアメリカ人はまじめに愛国心ある人多いですよね。
    ちなみに第二次世界大戦では日本人も一致団結して「大事な人を守るために」と戦ったような気がするんですけど。精神論では押し切れないような気が・・・・。

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  7. Caspian Networks は資金調達に成功したようだが…

    $55Mの資金調達に成功したというから、バイオベンチャーか!?と思いきや、通信ベンチャーだった。通信といっても、民間ではなく、まずは軍関係への売上で生計をたてる模様。こ��…

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