アメリカの報道

土曜日にBTKという連続殺人犯が捕まった。70年代から80年代にかけて10件(以上)の殺人を犯し、警察に自ら通報したり、ニュースメディアに証拠写真を送ったりして関心を集めたが、今になってやっと逮捕された。BTKという名前は犯人自らが”bind, torture, kill”の略として名づけたもの。「縛って、拷問して、殺す」。しかし、逮捕された犯人は、教会のPresidentを勤めたこともあるという人で、周囲には衝撃が。

かようにおどろおどろしい連続殺人犯なのだが、うーむ、と感心したのは、ローカル新聞であるところのSan Jose Mercuryには全然この件の記事が載らないこと。かろうじて日曜版の6面には載っていたが(ただし他の新聞からの配信記事)、今日月曜は全くなし。

最近、日本では子供の犯罪、悲惨な事件が相次いでいると、みな嘆いているようだが、犯罪大国アメリカでは、国内(アメリカ)で起こる悲惨な事件の話が身近に感じられない。テレビも新聞もローカルニュースがメインで、遠くで起こった悲惨な事件より、身近なたいしたこと無い話題の方が主体なので。悲惨な話に耳をふさげばいいというものでもないが、あんまりネガティブに衝撃的なことばかり集めたニュースは見たくないので、個人的好みに合っている。

San Jose MercuryがBTKのかわりにどんな記事を一面に載せたかというと、大きい順に下記の通り:

1)昨日のアカデミー賞の話
2)サダムフセインの兄弟が捕まった話
3)ベイエリアの公立高校のロボットクラブが活動停止になった話
4)ベイエリアの議員がカリフォルニア州の財務ディレクターになった話
5)ベイエリアのインド人の家が強盗に狙われている話

以上。(念のため、これ以外に「Peninsula」という、地元のニュースばかり集めたページがあります。そちらの方はさらにローカル度が高まり、パロアルトの公園に市外の人が入れない話し、などなど)

しかし、上記3なんて、「それなんだよ」ですなぁ。しかも、かなり長い。パロアルトのGunnという名門公立高校のこれまた名門のロボットクラブで、生徒同士のいじめ・ストーカー的行為があり、その対処に失敗した顧問の先生は心労で休職中、クラブは活動停止でロボット選手権に出られない、という話。

でも、まだこれは事件といっても良いかもしれないが、この間なぞ、「とある小学校でお弁当の交換が禁止になった」という話が延々書かれていた。San Jose Mercuryは学校新聞か。

しかし、ふむふむ、と読んで納得してしまうのであります。不思議なもので、BTKみたいな恐ろしい事件が報道されても、ローカル新聞の一面に出ていないと、「なるほど、世の中には狂った人間がいるものなのだな」と第三者的な感慨で終わり、それほど暗い気持ちにならない。

こうしてみると私という人間はずいぶんメディアに感化されやすい。日本で、電車のつり広告、本屋に並んでいる雑誌、新聞の一面などを見れば、「あー、悲惨な世の中だ・・・・」と感じ、電車にのらず本屋にもいかず新聞が学校新聞チックだと心が平安。だからといってアメリカの方が日本より平安な社会というわけでもないのだが。というか、全然そうではないのだが。ということは単なるメディアの影響。

ちなみに、なぜアメリカの(多くの)メディアが「遠くで起こっているセンセーショナルなことより、地域内の雑事優先」なのか、という点について私が想像するのは・・・

1)社会構造

いつも本屋・新聞スタンドの前を通って、目に付いた記事・雑誌を買う、という「移り気な消費者」は少ない。車社会なので、家から目的地に直行してしまうから。(もちろん、マンハッタンで働くような人は別ですが、それは特別)なので新聞・雑誌は定期購読中心。定期購読だと、新聞だったら少なくとも一ヶ月、雑誌だったら一年単位で好ましいものを選択する。一方、一つ一つの号を見比べて目に付くほうを買う、という場合は、よりセンセーショナルなほうを買ってしまう。(「高校のロボットクラブ活動停止」という見出しの新聞と「BTK連続殺人犯捕まる」という見出しのもの、どちらを買うかといわれれば、やっぱり後者を買うに違いない。)

2)地理構造

国がでかくて遠くの地域は同じ国としての連帯感が薄い。距離で言えば、日本で香港とかフィリピンの事件を聞くようなもの。BTKなんていうカンザスのド田舎の殺人犯が捕まろうが、自分に関係ない。

他にどんな理由があるんでしょうね?

日本でもSan Jose Mercuryのような「ほのぼの新聞」があったら受けるかな?「××社の社員食堂に新しいシェフ登場!」みないなのが一面になっちゃうようなの。だめそうだなぁ・・・・。

アメリカの報道」への6件のフィードバック

  1. 高校のロボットクラブの記事を読みたいかどうかは微妙ですが、殺人犯などばかりのセンセーショナルなメディアにはうんざりです。もうテレビも見ないし、新聞も購読しなくなりました。
    殺人犯と自動車(煙草でもいいけど)のどちらが危険かということを考えてほしいものです。まあ、人間にはルール違反を叩く本能があるという説もあるので、殺人事件を取り上げるのが人間の本質かもしれませんが。
    地域の取り組みを紹介してもらえれば、実際のつながりなども期待できますし、いいんじゃないでしょうか。ボランティアやビジネスなどへの貢献が期待できますよね。
    新聞よりも地域のフリーペーパーのほうがよほど好きです。

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  2. ジャーナル系のフリーペーパーがちょうど同じような紙面構成ですね。コーヒーショップで一服しながら読める、嫌な気分にならない記事が多い。それはそれ、全国ニュースはネットで見ればいいや、っていうことなのかも知れません。

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  3. 地域の記事を優先する理由として、インターネットで大概の地方紙が読めてしまうということも挙げられるのでは。他所の記事を載せるよりもローカルのニュースに専念する事でCore Competancyに集中して付加価値を高めるという編集方針だと思います。
    BTKの話はやっぱり現地のThe Wichita Eagle (Kansas.com)に一番詳しく載っています。警察が30年も昔の犯罪の張本人をどうやって突き止めたのかすごく知りたいのですが、詳しい捜査の経緯はまだ発表されていません。代わりに家族や隣人や教会やボーイスカウトの人たちのコメントが載っています。他に犯行場所の分布図とか犯人がボーイスカウトで縄結びの名人だったとかいう記事も出てますが、こちらは気持ち悪くて読んでいません。

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  4. 新聞もそうですが、アメリカのニュース番組もなかなか地域色が強いですよね。日本のニュースを見て初めて知ることってけっこう多いです。特にヨーロッパとかアジアのニュースってよっぽど大きなニュースじゃないと報道されないですよね。日本のニュースだとスペインの牛追い祭りとかけっこう他愛もないニュースはやってますが。だから、アメリカの田舎に行くと日本人は毎日寿司食べてるって思われるんですかね。。。

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  5. arai-san, Kaz-san,
    実はフリーペーパー(Palo Alto Dailyなど)もあって、こちらも、なんと100ページ近くある日もあります。フリーペーパーは市単位なので、さらに情報がローカルで、市議会の内紛とかがやたらと。ただ、ロイターの配信なども受けていて、国際ニュースまでありますが。ちなみに、Palo Alto DailyはSan Jose Mercuryの発行元の会社が先月買収しました。
    Yuki-san,
    確かにインターネットは大きいですね。我が家も実際そうです。新聞が来る頃には、ニュースは既にニューじゃないですものね。新しい、ということより、独自な情報が大切なんですよね。
    Toshi-san,
    そうそう、興味ないんですよね。アメリカ人って、あんまり広いことに。アメリカだけでも、わんさか人種が居て、国土も大きく、街も一杯あるのに、そのさらに外側まで構ってられない、って感じでしょうか。まぁでもアメリカに限らず、オーストラリアやらインドやらで「日本は中国にあるのか」と聞かれたこともありますが・・・・。

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