- Business2.0 11月号のHow to Land Your Dream Jobは、夢のような仕事を見つけた人たちの話だが、その冒頭は31歳でドジャースのGMになった人の話。
- Washington Post 11/7のSome Shoppers Find Fewer Happy Returnsは、Expressという洋服のチェーンで、一部の顧客のみ、商品返却が断られるという話。
- Wall Street Journal 11/8のAnalyzing Customers, Best Buy
Decides Not All Are Welcomeは、電化製品全般を扱うチェーンのBest Buyで、顧客の購買パターンを分析してみた、という話。
共通点は「理論に従ってデータを大々的に解析したら、理論どおりにメリットが出た」ということ。
DodgersのGM氏は、野球と統計が趣味、という人。(アメリカ人にはこういう人が多い。私の友人でバークレーの理系の教授をしている人も、ひたすらスポーツ選手の統計データをフォローしている。日本はどうなんだろう??)
彼は、ハーバードの経済学科を卒業した後、野球チームでインターンをし、その後選手の統計データを利用した「選手トレード理論」で頭角を現す。「ホームランやヒットの数という派手な数字が選手の価値を決めているが、実はチームに最も貢献するのは安全にベースに戻ってくるかという地味な数字」という分析結果を元に、安くて役に立つ選手を集めて、功績を挙げる。1998年にはOakland Asにスカウトされ、今ではDodgersのGMに就任。年俸80万ドルで5年契約、ということだから、総額4億円超の契約金だ。
二番目の記事では、毎年2000ドル、20万円強の買い物をExpressというチェーンでしていた人が、ある日買った商品を返却しようとしたら断られた、という話。
ちなみに、「一度買った商品を返す」というのはアメリカでは非常に多い。プレゼントには、「Gift Return」なる、値段の書いていない領収書を同封、もらった人は、そのプレゼントが気に入らなければ店で別のものに変更できる。愕然とするところでは、
「昼買ったフランスパンを『しけったから』といって、夕方新しいのに交換」
「『1週間前に買った野菜が家に帰ったら腐っていた』という理由で返金請求」
などというのも実際に見たことがある。
ビジネススクール時代に読んだ会計学の教科書には、アメリカのデパートの売り上げの2割とか3割が結局返却される、と書いてあったような記憶が。(ご存知の方がいたら、教えてください)
この「何でも返せる仕組み」を利用して、洋服を一回だけ着て返還する、という「Wardrobing」という行為が蔓延しているらしいのだが、これを防ぐために顧客データベースを駆使、やたらに返却している人には返却拒否をする、というもの。
As the holiday shopping season gets into full swing, a number of major retailers … are rolling out electronic systems that weigh the number of returns and exchanges a person has made, the dollar value of the items, and the dates of the transactions to decide whether a consumer should be granted another. The systems are designed to catch shoplifters and those who "wardrobe," wearing clothes and then returning them for a full refund.
最後の話は、Best Buyがコロンビア大学のビジネススクール教授の理論に従って、利益率が高く好ましいトップ20%の顧客と望ましくない客の底辺20%を分析、前者をAngel、後者をDevilと呼んで、いかにAngelを呼び込み、Devilを撃退するかに注力し始めた、という話。
Mr. Anderson says the new tack is based on a business-school theory that advocates rating customers according to profitability, then dumping the up to 20% that are unprofitable. The financial-services industry has used a variation of that approach for years, lavishing attention on its best customers and penalizing its unprofitable customers with fees for using ATMs or tellers or for obtaining bank records.
ということで、銀行などのファイナンスの世界ではこうした顧客の差別待遇がアメリカでは当たり前だった。望ましくない顧客からはATMを利用するだけでフィーを取るのである。
同様の顧客セグメンテーションをリテールでも適用しよう、というもの。Best Buyでは、これで、利益率を向上し、迫り来るWal-mart、Dellとの戦いに打ち勝とうという気構えである。
というわけで、ビジネススクール的(小僧的)理論アプローチ、数字アプローチが本当に利益を生み出す、という3話でした。
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ちなみに笑ったのはBest BuyのDevil顧客の記述。いわく
The devils are its worst customers. They buy products, apply for rebates, return the purchases, then buy them back at returned-merchandise discounts. They load up on "loss leaders," severely discounted merchandise designed to boost store traffic, then flip the goods at a profit on eBay. They slap down rock-bottom price quotes from Web sites and demand that Best Buy make good on its lowest-price pledge. "They can wreak enormous economic havoc," says Mr. Anderson.
「安く買ってebayで売る」というところを除いたら、わが配偶者氏のやってることそのままなのである。常に底値狙い。Best Buyのように「最低価格保証」をしている店に、インターネットで調べたこの世の最低価格のプリントアウトを持ち込み「この値段とマッチしろ」と迫る。
データベースによる顧客データマイニングがさらに進み、RFIDや顔認識システムなども導入されてくると、うちのダンナなど、ほとんどの店に足を踏み入れただけで「ビー」っと警報が鳴り、係員に制止されることになりかねない。しかし、だからといって、代わりに買い物に行ったりしてやらないぞ、と今からかたく決意を固める今日この頃であった。
DodgersのGM氏のA’s時代の話はベストセラーにもなった「Money Ball (by Micheal Lewis)」で読みました。Billy Beaneの片腕として、詳細な選手のデータ分析を武器に、貧乏球団を常勝球団に変えた人ですよね。当時のA’sは20連勝も記録しました。
日本では楽天がプロ野球に新規参入しましたが、古い体質でなくA’sのように違ったやり方を試して欲しいもんです。楽天ならWebログや購買履歴のマイニングなど、データ分析ノウハウを持ってるはず。三木谷社長もハーバードだし。
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楽天のプロ野球経営、楽しみですね。
「根性でがんばる」なんて、プロだったら当たり前。それを凌駕する科学的球団経営ができることを期待して・・・。
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