Bio 2004コンファレンス

月・火とBio2004というサンフランシスコで行われているコンファレンスの周辺に行ってきた。「周辺」の意味は、月曜は、コンファレンスにちなんでいろいろな企業・団体が行うパーティーに行っただけで、火曜はコンファレンスに来ているベンチャーと、クライアント企業とのミーティングをしただけで、コンファレンスそのものには行っていない、ということ。

ちなみに、バイオは「製薬」についたファンシーな新名称ではない。製薬は伝統的には化学品を作る産業。バイオでは、遺伝子を利用してたんぱく質を作る。シリコンバレーのGenentechが先駆けとなって誕生した産業だ。薬以外に、農作物の改良にも使われる。改良の結果できた作物が遺伝子組み換え食品。用途が薬の時はred biotech、農業の時はgreen biotechとも呼ばれる。加えて、洗剤などの性能向上のために酵素を作る、という工業用途のバイオもあり、これが密かに注目株だったりする。

今回のコンファレンスはred biotechが主体のもの。以下見たこと・思ったこと、です。

1)世界中から人が集まっている

このコンファレンスはバイオ界のワールドシリーズみたいなもので、ありとあらゆるところから人が集まっていた。昨日会議をした会場のホテルでも、ドアの前では大勢がスパスパとタバコを吸っていて、インターナショナルな集客を実感した。ベイエリアの公共の建物(つまり、個人の家でないもの)の中は禁煙。ベイエリアの人はタバコをすわないし、それ以外でも、アメリカ人のビジネスマンでタバコを吸う人は少ないので、普段はそれほど気にならない。しかしヨーロッパやアジアから来た人はドアの外で休憩をかねてタバコを吸うので目立つ。

Bio 2004主催者発表によれば61カ国、アメリカの49の州、カナダの10プロビンスから1万7千人近くが参加したとのこと。コンファレンス会場に行かずに周囲のイベントに参加したり、コンファレンスに来る会社を目当てに会議をしているだけの私のような人にも大勢会ったので、実際にはもっといるはず。San Francisco市のホテル、レストラン、タクシーはこのコンファレンスで3500万ドル、約4千億円の増益とのこと。

2)少々お門違いのデモが行われている

バイオ研究に反対するデモが会場周囲であり、150人以上が逮捕される事態になっている。デモをしている人の殆どは、遺伝子組み換え食品に反対しているのだが、コンファレンスのメインは製薬目的のバイオであり食品は関係ない。この記事のような感じの、ちょっとすれ違うデモが。

Most of the protesters, such as Kamala Stuart, 53, of Oakland, were demonstrating against genetically modified food.
“They should label the food, if they think it’s so good,” she said. “We want people to know, to question this stuff.”

But conference organizers said most attendees were affiliated with the pharmaceutical industry.
“This is a protest rooted in ignorance,” said Jeffrey Feldman, a merchant banker from Philadelphia attending the conference.

3)警備が厳しい

デモを行っている人より警備にあたる警察官の数が多い。パトカーも数多く徘徊、5-6台列になって走っているパトカーも見た。おかげで会場周囲は激しい交通渋滞で、すっかり「細長い駐車場」と化した道路で瞑想にふけることができた。

恐らくテロ対策。ホテルでも、「今は地下のホールでは厳重警戒中のイベントが行われているから入れない」などといわれた。恐らく政府要人などが来ていたのであろう。Bio 2004は、世界中から要人が集まっているので、テロに成功すれば告知効果は高い。プレスリリースにあるとおり、少なくとも15カ国の50人のかなり偉い人(首相や大臣)が集まった。

アメリカでは、「今秋の大統領選前に、深甚なテロが起こる危険大」という諜報情報が公表されており、各種イベントは著しい警備がひかれており、今回の措置もやむなしか。(危険大でもイベントを中止しないガッツが私的には気に入っている。)

3)あちこちでみなアクセクミーティングをしている

いつものことながら、コンファレンスそっちのけであちこちでみな会議を行っている。以前も書いたとおり、

「アメリカの展示会は、会場でブースを見て回るよりも、そこに集まってくる企業とのミーティングを近くのホテルなどでひそひそと行うためにある。広大な国土に分散して企業があるアメリカでは、face to faceのミーティングをするのは結構大変。たった2時間程度のミーティングでも、往復で丸一日つぶれることも多い。東海岸の会社だったりしたら2日はかかってしまう。ということで、対象業界のコア的な展示会では、その業界に属するほとんどの企業が集まってくるのを利用して、一気にこれはと思う多くの企業とのミーティングをこなすのが米国企業がよく使う技だ。」

国土が広く、産業が点在しているのはアメリカの特徴だが、その裏には、移動コスト(時間もお金も)もある。そのせいでコンファレンスに活気が出るというのは副産物か。

4)展示する側は企業誘致、企業側はお客さん、という風情

上記3のせいで、金のかかるブース出展などもうやめて、ただ単に会場の周辺を回ってミーティングをこなしているだけの会社も結構あるのが通常のコンファレンスなのだが、今回のコンファレンスはそれが極まっていて、出展する側は、バイオ企業誘致を狙う世界の自治体が殆どという感も。私は会場は行ってないのだが、行った人からは「あんまり見る製品のネタはなかった・・・・」と聞いた。出展者リストにも世界の自治体、企業誘致団体、リサーチパークなどが名を連ねる。

今回会議をしたベンチャーのうち1社の事業開発担当者は、
「先週木曜から入って、今週木曜までひたすら会議続きだ」
と目をくぼませていた。(コンファレンスは日曜から水曜まで)しかし出展はしておらず。

一方世界の国や自治体はこの記事の通りパビリオンを設け、バイオ産業誘致に気合が入っていた。

The overseas companies and governments are coming to BIO 2004 to convince U.S. companies to consider opening manufacturing plants and research facilities on their shores. They also want to attract investment for their own emerging companies, and to find partners who can help them develop and market their products in the huge and lucrative U.S. market.

Every developed country in the world wants to have a biotech cluster like those in the Bay Area; San Diego; Cambridge, Mass.; and Cambridge, England, says Lorna Jack, the North American director of Scottish Enterprise.

***

世界の交流は高まり、その心理的距離は狭まり、産業はグローバルに奪い合う時代になった。insularではいけませんね。

Bio 2004コンファレンス」への8件のフィードバック

  1. January 11, 2003
    天才はどこからやってくるか
    Phychology Todayという雑誌に「ノーベル賞受賞者は普通の科学者と比べてどう違うか」という記事が載っていた。記事はまだオンラインにないので、リンクが張れない。
    美術教師をしています。
    この記事について詳しく教えていただければ幸いです。
    関係のない話題ですみません。

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  2. その通りです。すごいですねーMostlyVowelsさん。
    (全然関係ありませんが、mostlyvowelsという言葉から、友人のRay Eeという人のことをいつも思い出します。でも、彼はAllVowelsか。)

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  3. はじめまして。現在、タンパク質のX線結晶構造解析の研究に携わっている者です。Bio 2004コンファレンスについての記事を興味深く拝見させていただきました。「製薬は伝統的には化学品を作る産業。バイオでは、遺伝子を利用してたんぱく質を作る。」という文章に目が止まりました。製薬はたしかに化学合成が中心ですよね。最近になり、タンパクの構造からドラックデザインすることが目立つようになってきましたが、現場にいる者としては、まだデザインだけでは難しい点も感じます。生物学は比較的新しい学問であり、化学、物理出身の研究者が中心になり、始めたようなところがあるので、総合科学分野、みたいな印象が今でも強いです。そのようなことを考え、学部では、化学、特に生体内分子の化学合成をし、院では現在の研究を選択したのですが、化学、生物、では分けられない領域も多いことを感じる日々です。つまり、どちらも学ばなければ、と。研究室にいると、視野が狭くなりがちで、特に経済には本当に疎いので、これからも拝見させていただき、勉強させていただきたいと思います。夏休みをエンジョイなさってくださいね。

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  4. 急に思い出してしまいました。
    そういえば、某企業で菌を集めてる先輩は、
    女子大前で菌を採取したので、「女子大前菌」と
    名付けてました・・・。その後、女子大前菌は、
    どうなったのかしら?

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  5. 学際の勉強、がんばってくださいね。
    女子大前菌、いいですねぇ。そういえば、病気に発見者の名前をつけることありますけど、あれって子孫が困ったりしないのでしょうか?アルツハイマーさんとか。

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  6. chikaさん、お返事ありがとうございます。
    とても嬉しかったです。研究も頑張りたいと思います!
    毎日のように新しい発見が論文になるので、
    私の頭では付いていけず、ショートすることもしばしばです。
    でも、好きなことを仕事にできたことは幸せだと思うので、
    続けていきたいと思います。よく泣き言を言ってますが、
    聞いてくださる先輩方がいらっしゃるのが有難いです。
    女子大前菌について、今度、先輩に聞いてみますね。
    病気や菌、化学反応に自分の名前を付けてしまう人って
    多いですよね。たしかに病気の名前だと、子孫は嫌かも。
    すぐに覚えてもらえる、という利点?もありますが。
    研究をしていると、高額な機器や試薬に囲まれて、
    金銭感覚がおかしくなりますねえ。企業にいらっしゃった
    先生から、相見積もりくらいは取ろうね、と言われ、
    少ーしだけ、金銭感覚が出てきたところです。ほんとかしら?

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