今日、アメリカ人の友達と会ったら、
「今朝の新聞のあの記事って、本当?」
と聞かれた。New York TimesのFreed From Captivity in Iraq, Japanese Return to More Painである。
「日本に帰った人質3人は、日本の『オカミ』に反してイラクに渡ったわがまま人間として国全体からバッシングを受けている」という記事。記者はNorimitsu Onishiさんという人。日本の文化をよく知りながらも、アメリカの視点に軸足を置いて書いている。
政治・外交的真相は何か、といったことは私にはわからない。わからないながらも、この記事を読んで、
「私にとって、この事件はどういう意味合いがあるか」
ということを考えた。
結論は「なるべく早くアメリカの市民権を取ろう」ということだ。
まず記事がどんな風にかかれているかについて。
“You got what you deserve!” read one hand-written sign at the airport where they landed. “You are Japan’s shame,” another wrote on the Web site of one of the former hostages. They had “caused trouble” for everybody. The government, not to be outdone, announced it would bill the former hostages $6,000 for air fare.
人質3人は、一般の人たちから叩かれるのみならず、政府から飛行機代6000ドルを請求される。非難は激しく、3人は家から出られない状態。
Dr. Satoru Saito, a psychiatrist who examined the three former hostages twice since their return, said the stress they were enduring now was “much heavier” than what they experienced during their captivity in Iraq.
人質になって命の危険にさらされたときよりも、今の方が3人のストレスは高い、と。
Pursuing individual goals by defying the government and causing trouble for Japan was simply unforgivable. But the freed hostages did get official praise from one government: the United States.
“Well, everybody should understand the risk they are taking by going into dangerous areas,” said Secretary of State Colin L. Powell. “But if nobody was willing to take a risk, then we would never move forward. We would never move our world forward.
“And so I’m pleased that these Japanese citizens were willing to put themselves at risk for a greater good, for a better purpose. And the Japanese people should be very proud that they have citizens like this willing to do that.”
日本では総すかんの3人だが、別の国からは褒め称えられている。言わずもがなだが、それはアメリカ。
Colin Powellは、「誰もリスクを取らなかったら、前進することはできない。よりよい世界を実現する目標のためにリスクを取ったこの日本市民の行いは賞賛に値する」と語る。
Here, the (Japanese) government is now trumpeting “personal responsibility” for those going to dangerous areas — essentially saying that travelers shouldn’t expect any help from the government to secure their safety or get out of trouble.
しかし、日本政府は、将来危険地域に渡航した国民を助けない、とすらいい始めている、と。
*******
どこかで違う道を歩んでいたら、私は今イラクに今いたかもしれない。
イラクの子供を自らの手で救うなどという崇高な目標は私には無いが、もしそういう信念があったら、どんなに危険だろうと、政府から絶対行くなというおふれが出ようと、必ず行く。というか、「行くな」といわれたら、むしろがむしゃらに行きたくなるだろう。
大学の頃、テレビのレポーターになって、銃撃戦の戦地の只中から報道する、というのに憧れていた。実際TBSのアナウンサーの試験を受けにいった。
「戦地レポートがしたい」
といったら、
「うーん、アナウンサーって、人前で水着で踊るような仕事なんだよね」
と言われて、そこで面接は終わりになってしまったが。(戦地レポートを目標にアナウンサー試験受けること自体、全く間違っていたのだが)そこでめげずにマスコミの道に入っていたら、これまたやっぱりイラクに単独乗り込むくらいのことは十分ありえる。
そもそも、本当に「渡航危険地域」に行ったこともある。イスラム原理主義ゲリラの潜む、フィリピンのミンダナオ島にバケーションでダイビングをしに行ったのだ。その頃ミンダナオがどれくらい危なかったというと、行く直前勤務先の商社で
「ミンダナオにだけは行ってはいけない。ビジネス・私用、いずれも厳に慎むこと」
という回覧板が回ってきたくらいだ。世界広しといえども、ここまで包括的な渡航自粛令が出る場所は限られていた。世界的に見ても最も危険なイスラム原理主義ゲリラが内陸にたくさん潜んでいる、というのが理由だった。
ミンダナオでは、クラブメッドのような3食アクティビティ付きのリゾートに泊まったのだが、部屋においてある冊子を何気なく見ていたら
「ご安心下さい。当施設の敷地境界線はマシンガンを装備した50名の私兵により守られています」
と書いてあった。本当に本当に危険なようだ。でも著しくコストパフォーマンスはよかったし(当たり前か)、ダイビングは最高だった。朝、ボートで岸を出てから夜戻ってくるまで、見渡す限り自分たちのグループ以外誰にも出会わない。
しかし、あそこでゲリラに捕まって人質になったりせずによかった。今回の人質事件のように慈善活動のため、報道の自由のために出向いている人ですら、ここまで総すかんなのだ。
「ダイビングしに行ってました」
などという渡航理由では、私はおろか、実家に放火され、親戚の子供たちは石を投げられたかもしれない。ゲリラに捕まるより、その後のバッシングの方が恐ろしいとは、常に最悪の事態を考えることが趣味の私も思いつかなかった。
***
日本というシステムは、かなりよくできた仕組みだと思う。国民の殆どに中流階級の幸せを与え、「最大多数の最大幸福」の実現では、稀に見る大成功を収めたといえるだろう。
私は、国・会社・家族といった、どんな「団体組織」も、基本的には内部にいる人がハッピーだったら、それでよい、と思っている。世の中にはいろいろなシステムがあるが、多くの場合、どちらが正しくてどちらが間違っている、とか、どちらかが良くてどちらかが悪い、ということはない。だから、「日本が間違っていてアメリカが正しい」とか、「日本が悪くてアメリカが良い」とは思わない。
しかし、「そのシステムが自分にあっているかどうか」という問題は大いにある。
私は、日本人はとても優秀だと思うし(世界を瞠目させる発展を何度も遂げた国だ)、日本の文化芸能は比類なく優れたものだと確信を持っている。だから、世界中のどんな人に対しても、自信を持って対応できる。が、残念ながら、日本というシステムは私にはあっていないようだ。
私は、自分の行動を誰かに命令されるのが大嫌い。子供の頃、朝親に起こされるのが耐えられないという理由で早起きするようになったくらい、人から指示を受けるのが嫌いだ。そして、私にとって一番大切なのは「自由」。自由の中には、「権力に屈しない」ということも含まれる。政府が「危ないから行ってはいけない」と言ったからといって、自分の信念を曲げるのは自由ではない。
今回の人質に関しては、「結果的に国全体に迷惑をかけた」ということで非難を浴びているようだが、これに関しても私は
「人間、時として他人に迷惑をかけなければ達成できないことがある」
と思っている。(過去に書いた、人の助けを請うことを参照下さい)
というわけで、今回の報道を読んで私が思ったのは
「資格ができたらすぐにアメリカの市民権を取ろう」
とうことだ。
その理由は三つ。
1.将来何かあったとき日本政府に助けてもらえないかもしれない
「危険な地域に行くのは自己責任だから、何かあっても助けない」という方向に日本政府は傾いているようだ。それはそれで、確かに論旨は整っているので、私がとやかく言う筋合いはない。が、アメリカ市民だったらアメリカが助けてくれるだろう。資本主義 続きにトラックバック頂いた、Think negative, act positive BLOGの海外逃亡を考えるでは
私的には、あんまり言いたくないけど、自国民を拉致されて話し合いで「冷静に解決に努めている」って、どーよ、ってことでもあったりします。アメリカだったら、どーするんだろ?? 空母出撃して、(ちょっと古いけど)ランボー200人、一気に投入して怒りの脱出っていうシナリオ以外、浮かんでこないです。
と書かれていますが、こういう感じでしょうか。
(なお、日本政府の皆さん、本当に「何かあっても助けない」というポリシーを実行する場合、せめてそれを世界のテロリストやゲリラ等々に広く知らしめる広報活動はしてください。「日本人を拉致しても何も得るものはない」と知れ渡れば、誰も興味をもたないと思いますので。)
2.しかし、もし何かあって、結果的に日本政府に助けられるようなことになったら、家族・親戚の隅々までボロボロに叩かれる危険がある
しかし、日本人というのは究極的には親切で丁寧だから、いざ本当に誘拐されたりすると、一生懸命助けてくれてしまう可能性がある。そうなったとき、私は日本にいる必要はないからいいとしても、日本の家族に被害が及んだら大変だ。こちらの方が上記1より怖い。
3.「迷惑だからしないでくれ」と明言されていることをあえてするような嫌がらせはしたくない
今回の事件の教訓は、私のような「納得できないルールは破る」ということを生きがいにしているような人間は日本国にとって大迷惑、ということだ。既に書いたように、私は日本というのはよくできたシステムだと思うし、「大勢で根気よく地道によい仕事をする」という日本の美徳は、上から与えられたルールをきちんと守る人たちがたくさんいるからこそ成立している。そういう自己完結したシステムにとって、私のようなのは破壊分子。迷惑をかけてはいけない。
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今回人質になった人たちは、アメリカだったらヒーローだ。真実を伝えるジャーナリズムや人道活動という、崇高な目的のためにあえて自らの命を危険にさらしたのだから。国中から励ましのカードが送られてくる、それまで会ったこともない近所の人までクッキーを焼いて持ってきてくれる、いろいろな会合でスピーチをしてくれという申し込みが引きもきらない、そんな光景が目に浮かぶようだ。
New York Timesの記事でも、こんなくだりがある。
Defying the okami are young Japanese people like the freed hostages, freelancers and members of nonprofit organizations, who are traditionally held in low esteem in a country where the bigger one’s company, the bigger one’s social rank. They also belong to a generation in which many have rejected traditional Japanese life. Many have gravitated instead to places like the East Village in Manhattan, looking for something undefined.
Others have gone to Iraq looking to report the true story, since Japan’s big media outlets have generally avoided dangerous places. (Almost all of them left Iraq over the last week on a government-chartered plane, leaving Japan’s most important military mission since the end of World War II essentially ignored by the news media.)
今回人質になった人たちのように、「おかみ」に組しない日本人の中には、マンハッタンのイーストビレッジとかに行ってしまった人も多い、と。納得。
私はと言えば、Colin Powellは非常にセクシーと思っているので、そのPowellに賞賛されたと聞いただけでポーっとなっちゃう。
多分、人質になった人の誰も、ナノテクも、ドラッグディスカバリーも、プログラマブルロジックも、セキュリティソフトウェアも、そういうシリコンバレー的なものにはなんの興味もないだろう。でも、それでももしこの辺に引っ越したい、ということがあったら、私はできる範囲で精一杯サポートします。
ハイテクオタクの土地ですが、とりあえず天気はいいですから。
<>
Hiro-san, Sadkato-san,
アメリカにテレビ裁判の番組ってありますよね。
視聴者が自分の身の回りの揉め事を持ち込み、ふんふん、と双方の言い分を裁判官が聞いて、少々不明なままでも、時間が来たら(たった10分くらい)いきなり木槌(っていうのか?)を鳴らしてその場で判決を下す、という超いい加減なもの。
ということで、いい加減なJudge Chikaです。(ダンダン←木槌)
「議論は出尽くした。後は、相互の議論マナーの問題となった。よって、これにて、閉廷。」
みんな、自分が好きな場所に住みましょうね。
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[system]システム・ゲーム・ルール・自在さと自由
-ON OFF AND BEYOND http://www.chikawatanabe.com/blog/2004/04/post_13.html -クライン孝子日記 http://www2.dia …
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>Norimitsu Onishiさんという人。
>日本の文化をよく知りながらも、
>アメリカの視点に軸足を置いて書いている。
この人は日本在住で、東京に居て記事を配信しているだけですが。
さらに、各誌をにぎわせているという記事は、全てこの人一人が書いたものです。
あと、NYタイムズ東京支局は朝日新聞と提携、
さらに支局を社屋内に間借りしています。
なお、ルモンド紙も朝日新聞の提携先の一つ
朝日新聞の政治スタンス程度は、すでにご存知ですよね。
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申し訳ありませんが本件閉廷しました。
私のスタンスは本文、および私が書いたコメントを読んでいただければお分かり頂けると思います。また、私もNYTの記事一本で判断しているわけではなく、この記者の方がどちらよりの思想だろうと、私の意見は変わりません。人間は殆どの場合、不十分な情報に基づいて判断を下さざるを得ないと私は信じていますが、本件に関しては、現時点において私なりの判断に至るために必要な情報は入手したと思っています。
本文から何度も繰り返しますが、「私が正しい」と申しあげているわけではありません。また、何が正しいかを議論するつもりもありません。
ということで、コメント受付・トラックバックも全てクローズします。
時間切れということであしからず。では。
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