シリコンバレーの投資増大

San Jose MercuryのVC numbers are looking up for the valley

2003年の第3四半期から第4四半期にかけて、シリコンバレーのベンチャー投資が大きく伸びた、という話。データの出元としては、 VentureOneとErnst & Youngが共同でまとめているものと、PricewaterhouseCoopersが中心となってまとめているものとの二つがあって、前者だと「全体では減ったが、シリコンバレーは増えた」という結果。後者だと、「全体も増えたが、特にシリコンバレーで増えた」という結果になっている。基本的にこの手のデータは、個々のベンチャーやベンチャーキャピタル(VC)の自己申告を総計する形になっているので、どの会社が誰に結果を報告したかによって差が出る。

Pricewaterhouseの方の結果はMoneySurveyサイトから、過去にさかのぼってダウンロードできる。それを見ると、2003年の第4四半期は、ベンチャー投資全体で49億ドル、約5200億円となっていて、第3四半期の44億ドルより増加。2003年全体では182億ドル、約2兆円が2715社に投資されたとある。2003年を通じて、全体での四半期ごとの投資額はかなり一定で、「ベンチャー投資の落ち込みがついに底を打った」ということがデータとして現れている。一方、シリコンバレーだけを見ると、第3四半期から第4四半期で2.7億ドル、約300億円投資が増加、当地では底を打ったのみならず、上向いているのである。

記事ではVCのコメントとして、
“It’s as though someone flipped on the switch in September,”
ともあり、「よし、そろそろ本腰を入れるか」という感じになってきている、と。

私の周りでも、シリーズB(二度目の資金調達)をしようとしている人がいるのだが、いわく投資をさせろとVC(投資家)がワラワラとやってきているとのこと。ここ数年なかなかなかった景気のいい話である。

VCのワラワラぶりは結構笑える。いわく
1)VCは護送船団方式。ある領域で強いVCが「すばらしい」と太鼓判を押したら、他のVCは「me too, me too」とやってくる
2)太鼓判を押されたその会社は、ビジネスプランも資金計画表もいまだかってまともに作ったことがないのだが、ほとんどのVCはどちらも見せろなどと言わない。会話はこんな感じらしい
会社「資金計画表まだないんだけど」
VC「うーん、まぁ結局大体集められる金額は決まってるわけで、その範囲でちゃんとやるでしょ。ちゃんとやるとわかってたら、計画表作るのは時間の無駄だからいいよ」
会社「OK」
3)その会社は、今回のシリーズBでは、前回のシリーズAのVCがほとんどを投資、新しく投資に参加できるVCは一社だけ、という暗黙の了解が既にあるので、その一社になりたいVCたちは必死。Time is moneyとばかり、ミーティングのその日にTerm sheet(投資条件がまとめて書いてある紙)を送りつけてきて、「due diligence一応するけど、まぁこんな感じ」とねじ込んできたり。Due diligenceも、「じゃ、明日これをして、あさってこれをして、来週月曜には終わり」みたいにサクサクその場で決定。

・・・と書くと、VCはまるでいい加減なようだが、キモは掴んでるのである。資金計画表などなくとも、会社側とのミーティングで、ビジネスモデルや顧客獲得の見込みをぐいぐいと聞き出して妥当性を判断、その場で大まかな収益計画や企業価値を暗算し、ほぼ決断を固めてしまう。due diligenceの過程で思いがけない事実が判明したらご破算だが、既存投資家(シリーズAのVC)は会社の経営を毎月のボードミーティングで詳細に見ているわけで、その内情を知ったVCが投資すると言っているのだから、変なことはあるまい、との心積もりがある。ここで大事なのは、シリーズAのVCが、VCコミュニティーで大いに信頼されているということ。

ちなみにここでいう「VC」とはVCの社名ではなく個人。個人的信頼が全てなのである。バブルの頃は、たくさんの人がVCになって「シリコンバレーの3大バカVC」なんていう可哀相なあだ名の付いた人たちもいたが、バブル崩壊後は淘汰が進み、あんまり変な人はもういない。とはいうものの、分野によって強みが違うので、「この領域だったらXXさん」といった核となる人は一握りだ。

もちろん、メジャーVCでも、大いなる大間違いベンチャーを産み出すことも多々ある。たとえばスクーターもどきのSegway。Segwayを大間違いというかどうかに関しては議論が分かれるだろうが、私は思い切り大間違いだと思っている。大体、大き過ぎ、高過ぎ。しかし、Kleiner Perkinsの超有名VC、John Doerrが自ら投資した上に、「世紀の大発明」とか「都市構造が変わる」とか、褒め言葉を大盤振る舞いしたので、なんだか妙に話題に。(なんと7600万ドル、80億円も集めたのだ。)

とはいうものの、ベンチャー投資は質も大切だけど量も大事。いろいろ変なものにも投資したりしながら走り続けることで大当たりもでる。Kleiner PerkinsはGoogleに投資、John Doerrは同社のボードメンバーでもあるのだが、Googleが上場したら、ちょっとした国家をひとつ作れるくらいの金額がKleinerには入るはずで、その前では、80億円なんて、マイナーな過ちとなってしまうのであった。

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