Nanoってなんナノ・・・・

なんだかオヤジくさいダジャレタイトルであるが、ここ1年ほどのナノテクの将来性のあおりかたはひどいなぁ、という感慨を込めたもの。

例えばですね、Venture Reporterというところが去年の9月に出したInvesting Nanotechnology Startups between May 1, 2001 and Sept. 30, 2002というレポートがある。695ドルで買えるのだが、買うべからず。

ナノテクのベンチャーで増資を受けた会社のリストと、そうした会社の地理的分布、アプリケーション、増資ステージなどの集計結果なのだが、その多くがナノテクの会社ではないのだ。どうしてこんなことが、、、というくらいいい加減な会社の羅列である。50社ほどの「ナノテクベンチャー」のうち、本当にナノテクなのは半分もない。

例えば、かなりの会社はMEMS関連だ。MEMSはMicro Electro-mechanical Systemの略で、超小さいデバイス。車のエアバッグを起動させるための加速度計なんかによく使われているものだが、マイクロっていうくらいだから、スケールは小さいといってもマイクロレベル。ナノとは桁が違う。うーむ、、、このレポートを書いた人は、ナノというのが、mili, micro, nano, picoという順で1000分の一になっていく単位の一つであることを知っているのだろうか・・・。

しかし、まぁ、MEMS系はその上で動き回る物質の単位がナノレベル・ピコレベルのこともあるので百歩譲ってナノテクだとしよう。

しかし、MEMS以外にも例えばNanoMuscleという会社もリストに含まれているのだが、この会社のホームページのトップに行っただけで、これがナノテクでないことは一目瞭然である。圧電素子を使ったアクチュエータを作っている会社だが、そのデバイスは長さが27ミリもある。単に名前にナノがつくだけである。これがナノテクだったら、私という人間だって構成単位は分子だからナノテクだ。ということは私が「自分への投資」とか言ってエステに行ったらそれはナノテク投資なのか。

もっとひどいのではVordelという会社。ウェブサービスのセキュリティーの会社。ソフトウェアである。何がどうナノテクなのかどう頭をひねっても理由がわからない。

まぁ、しかし、世の中というのはえてしていい加減なものである。こういういい加減なレポートを元に「おお、ナノテクに7億ドル近い資金が流れ込んでいる」などというまことしやかな噂が流れ、それを元に大企業がナノテクに莫大な資金投下をする戦略を立ててしまったりして、それを元に本当にナノテクの時代がやってきたりしてしまったりすることもないとはいえない。

とはいうものの、やはり情報のユーザーとしては全て疑ってかかり、何事も自分の目できちんと検証するのが大切、というのが教訓でしょうか。

Martha Stewart

Martha Stewartがインサイダー取引疑惑でindict(インダイト、起訴)された。事の顛末はNew York Timesのeditorialによくまとまっている。ImClone社のガンの薬に、FDAの認可が降りないという知らせを受けて、株を売り、45,000ドル売り抜けたというもの。たったの500万円ちょっと。個人資産数百億円もあるというのに、、、、。

Martha Stewartはqueen of perfect household。料理からインテリア、おもてなしなど、生活に関する完璧さを追求してMartha Stewart Living Omnimediaという大事業を打ち立てた人である。モデルからスタートして、次は株のセールス、その後センスのよいケータリングビジネスをはじめ、そこから現在の姿にまで事業を拡大した。テレビ、雑誌、通販、店舗を全て自分の名前のブランドで展開、それまでいかなる大メディアでも実現し得なかった異なるメディアの相乗効果を成功させた。

ところが、ここ数年その嫌な性格ぶりが執拗に攻撃されていて、例えばMartha Inc.という悪意に満ち満ちた本も去年出版された。ひどい本である。読んでいて、こんな鮫のような作者にネタとして利用されるMartha Stewartに心から同情した。

例えば、Martha Stewartがあちこちを飛び回って勢力的に仕事をしているのを称して「Gal-on-the-go」という表現が何度も出てくる。馬鹿にしているではないか。Martha Stewartは若々しく見えるが、もう60台半ば。例えば、Jack WelchとかAndy Groveが同じように飛び回ったとして「Boy-on-the-go」とか「Kid-on-the-go」と言うか。言わないはずだ。加えて、作者はMartha Stewartの近所に住んでいるらしいのだが、「自分が見に行って余りにぼろぼろなので買うのをやめた家を、その後Martha Stewartが買った」なんて自慢も出てくる。(その家は、その後Martha Stewartが丹念にリノベーションをして一世を風靡した邸宅となる)

極めつけは、Martha StewartがMartha Stewart Livingという雑誌を始めた頃の話。出版社側は、Marthaの名前を借りるだけのつもりで契約したのだが、Martha Stewartは紙面決定の全てのミーティングに出てきて、内容はもちろんのこと、写真の一つ一つ、レイアウトの隅々まで口出しをし、メンバーを辟易させた、とある。しかし、自分の名前を冠した以上、ディテールに気を使うのは素晴らしいことではないのか。Martha Stewartの鉄壁のディテールで、名前を借りるだけのつもりだった出版社が流れ作業で作るより、ずっとずっとレベルの高いものになったのは、その後の成功に証明されている。(最近はちょっと苦戦しているが)

書いたのは男性なのだが、もう明らかにMartha Stewartの成功に対する僻みと感じられる。一読して、「だから嫉妬深い男はやだねー」と思ってしまったのだが、こういう風に一般化するのは男性に対するセクハラであるな。

ちなみに、Martha Stewart Livingは細やかな手芸・料理などなど、決して普通のアメリカ人ができそうもない手の込んだ芸当がこれでもか、これでもかと出てくる。そのパロディーで、Is Martha Stuart Living?とかMartha Stuart’s Better Than You at Entertainingという本も出てて、こちらはただもうひたすらおかしい。「お客様が来たら、プールの水の上を歩いておもてなししましょう」みたいな、決してできないことが、これでもか、とばかりでてきます。

アカデミアとビジネス

とある仕事でスタンフォードのPh.D.の人と一緒に働く機会があった。

私の専門はハイテクのビジネスディベロップメントである。会社と会社を繋げるのが仕事。しかし、もちろん対象となる領域の技術を理解した上での競合環境の分析ができなければお話にならないので、それぞれの分野の専門家の方とチームを組んで働くことになる。特に車で5分のスタンフォード大学の研究者の方々は素晴らしいリソース。通常はprofessorと名のつく方に仕事を依頼することが多い。アカデミアでもジュニアであればあるほど、非常に深いが狭い専門領域のことしか見ておらず、またビジネスの世界とも縁遠いので、結果的にそれなりに経験を積んだ人にお願いすることが多い。よって、アカデミアとしてはジュニアもジュニアなPh.D.に仕事をお願いするのは大変まれなケース。

今回のPh.D.氏は、最初に会って話をした時に、かなりの数のベンチャーや大企業を知っていたので驚いてしまった。聞けば3年前にビジネススクールのアントレプレナーシップのクラスを取って、MBAの生徒とチームを組んでビジネスプランを書き、その時に競合調査として世の中のスタートアップを調べて興味を持ち、それ以降継続的にベンチャー事情をフォローしてきたのだという。

ちょうど知り合いがMITのPh.D.数名と一緒に仕事をしているのだが、
「驚くほど何もビジネスの世界を知らない」
といって頭を抱えていた。その知り合いは、
「Ph.D.とビジネスの話をするなんて時間の無駄だ。調査を依頼するなら時給10ドルくらいの価値しかないぞ」
とボロクソに言っていたが、決してそんなことはなかった。

これは、スタンフォードとMITの違いを象徴した出来事といえよう。ビジネスとアカデミアが近くて、早くからビジネスの世界と関係を持ちつつアカデミアの道を進む人が多いのがスタンフォードの特徴だが、MITでは「教授は神様、Ph.D.等々は平伏して仕えるしもべ、学問追求以外は邪道」という感じが未だあるらしい。

ちなみにアメリカで理系のトップといえばカリフォルニア工科大学かMITである。(細かくいうと、学科によっては違う大学が秀でているものもあるが、大雑把に言えばこの二つ。)
そのMIT出身者が
「スタンフォードの生徒で超一流なのは数えるほどしかいないが、『やればできる』とおだてられて、いい気になって起業にトライする。そのトライの母数が多いから成功例がたくさんあるだけだ」
というようなことをぶつくさと話していることもあるが、起業の秘訣は「質も大切だけど数はもっと大切」ということ。以前のエントリーで「マクロ予測に比べてミクロ予測は難しい、なぜならミクロは偶発要因に大きく左右されるから」ということを書いたが、起業はまさにミクロ中のミクロ。人事を尽くしても天命で吹き飛ばされてしまうことがたくさんある。だから、とにかくたくさんのトライが起こることが大切。

スタンフォードの「やればできる」(本当はその後に「かも」が入るのだが・・・・)という雰囲気は、やっぱり重要なシリコンバレーのファクターと言えるだろう。

ネットワーク(人)

最近なんだか公私ともどもバタバタしている。仕事では複数まとめて進展があったり。運営しているNPOでも、今週の金曜は設立1周年記念カクテルパーティーである。「カクテル」というところがポイントで、ちょっとおしゃれだったりするのだが、いろいろと準備することがある。NPO関連では、IRS(国税)にも追加書類を提出することになって、いろいろドキュメントをそろえたりもした。こういう時に限って日本から知人が立て続けにやってきたり、昔からの友人がスキューバダイビングを始めて我が家の水中写真を見に来るのでディナーを準備することになったり、ニューヨークから知り合いが引っ越してきたり、とあれこれある。運がついてくるときを「男時」、引いていくときを「女時」というらしいが、きっと「男時」なんだろう。運が乗っているときにいろいろと仕掛けないと・・・なんて思うとさらに忙しくなってしまうのだが。

さて、いろいろと旧交を温めたり新たな知り合いとであったりと動きの激しい昨今なのだが、ここシリコンバレーは超がつくネットワーク社会である。ここでネットワークとは「仕事で役に立つ人脈」を指す。一緒に遊びに行って楽しいのは友達で、これはネットワークではない。もちろん、ネットワークの中から友達が誕生することもあるし、逆もある。でも、一般的にはしっかり境界線がある。

ネットワーク構築にはいろいろな手段があるのだが、かなり有効なのが同じ会社に働いていた人たちの繋がり。元SUN、とか元Apple、といった人たちがメーリングリストを持っていたり定期的に集まっていたりする。私が昔働いていたことのあるマッキンゼーでもベイエリアだけを対象としていろいろとイベントがあるのだが、この間始めて顔を出してきた。元サンフランシスコオフィスのディレクターが引退してはじめたNapaの農場Long Meadow Ranchでのピクニックランチ。100人以上が集まったのだが、私にとって直接的に仕事に役に立つ人とも知り合うことができ、早速後日ミーティングをセットアップ。有効かつ楽しい1日だったのだが、元ディレクター氏の精力的引退暮らしも印象的。農場は
■有機栽培のワイナリー
■オリーブオイル
■牛
■馬
■有機野菜
といったものを作っていて広大。それをせっせと運営している。週末は自らファーマーズマーケットに野菜を持っていって売ることもあるという。ワイナリーツアーでは、力が入ったのかなんと2時間に及ぶ説明つきで、昼食前だった私は空腹でふらふらになってしまった。
「有機栽培の葡萄は、コスト度外視ではビジネスとして成り立たない。一番大切なのは適切なコストでの顧客満足の最大化。」
みたいなコンサルタントトークも満載で、
「うーむ、人間やはり何十年もコンサルタントをやっていると、骨の髄までそうなるんだなぁ」
と感動した。

ちなみに、マッキンゼーという会社はアメリカではやたらといい人がたくさんいる会社である。人格温厚で人当たりがいい、にこやかな人がいっぱいいるのだ。客商売だからだろうか。日本のマッキンゼーとはイメージが随分違う。。。などというと、モノ言えば唇寒し・・ですね。

なお、真偽の程は定かでないのだが、マイクロソフトを辞めた人の集まりは、参加者(マイクロソフト退職者)から会費を取ると聞いた。本当だとすれば、恐るべし、マイクロソフト、である。(もちろん普通は無料です)