Linksys再び・・・

今朝の新聞のビジネスの一面にでかでかとLinksysオーナー夫婦のにっこり写真つき記事が。

前に、Linksysの売却価格の対売上げ倍率がドーナツ屋にも及ばないというentryを書いたが、$500M分で売り払ったのはこの記事のタイトルにあるような、”A COUP FOR WIRELESS NETWORKING LEADER”もんであろうか、と疑っている。(Coup、はクーデターのクーだが、Coupだけだと大成功というような意味となる)キャッシュだったら話は別だが、Ciscoの株での$500Mである。私はCiscoの株もまだまだ何割か(もしかしたら100%くらい)over-valueだと思っているので、正味売上げ比率1以下で売却したということに近いと思う。

しかし、写真は本当ににっこりしている。にっこりの理由としては2つ考えらる。一つは、オーナー兼ファウンダー夫婦が会社の大きなパーセンテージを持っており、Cisco売却益はほぼ全てこの夫婦の手に入るのではないかということ。「そんなの当たり前じゃないの?」と思われるかもしれないが、ファウンダーが会社の6割以上持っていても不思議じゃない日本のベンチャー(や中小企業)と違って、シリコンバレーのベンチャーでは、ファウンダーの持分が一ケタ台(のそれも下のほう)ということは往々にしてあるのである。

Linksysは夫婦で手持ち資金で始めて、10年以上かけてだんだん大きくした会社ということで、恐らく自分たちでほとんどの持分を握っていた可能性がある。しかも、基本的には迅速にユーザーニーズに合致したものを開発・販売するという、operation excellence型の企業で、IPOを狙うような差別化された技術があるわけではないので、恐らくストックオプションなんかも少なかったのではないかと想定される。というわけで、全体としての売却価格よりも、ファウンダー個人へのインパクトがでかいという可能性が一つ目。

二つ目は、ちょっと重複するが、operation excellence型というのはある意味しんどいビジネスである。上場したら、情報開示で企業秘密が丸出しになってしまって大変だ。(特許なんかで守れるものがあれば話は別なのだが・・・)上場というexitが困難な以上、network機器メーカーとしては、Ciscoに買ってもらうのは、最上のexit。

ということで、(しつこいようだが)Donuts屋よりprice sales ratioが低くてもやっぱりにっこり、なのであろうか・・・。

(ちなみにCiscoのP/Eは32で、マイクロソフトの28より高い。そんなはずはあるまい、と個人的には思うのであった。)

Linksys再び・・・」への2件のフィードバック

  1. LinkSys はいったいどれくらいの現金を持っているんでしょうね。
    Apple Computer は、2002年第4四半期の 10-Q レポートに因ると、手元の cash+
    cash equivalents の合計が45億ドルらしいです。AAPL株の時価総額が4月18日の
    終値で48億ドルですので、市場は年間売り上げ60億ドルの Apple は事業体としては
    3億ドルの価値しかない、と見ているようですね。
    この様な市場状況では LinkSys の株主に支払われる5億ドル相当の Cisco 株はまあ
    良い方ではないでしょうか。
    LinkSys とは関係ありませんが、Apple の Steve Jobs にして見ては、市場に Apple 社
    の事業がこれほど評価されないと手持ちの45億ドルの現金をもっと株主利益の向上
    が望める投資に回したいと考えるのは当然かもしれません。
    Vivendi Universal は200億ドルの有利子負債で首が回らなくなっていますし、Universal
    Music の2002年の売り上げは前年比9%も落ち込んでいるのでUM を今売却しようとしても、
    この業界最大手の音楽会社の買収に名乗りを上げるほど潤沢な資金を持っている候補者も少ない
    でしょうし Apple にも勝算はあるかもしれませんね。
    Vivendi に30億ドルぐらいの現金を渡し UM の過半数の株式を取得すれば Apple は自前
    の .mac オンラインサービスで UM カタログの音楽を自由に有料配信を行えるかもしれません。
    iPod, iTunes, iMac 等のハードとソフトの組み合わせは既存のどのオンライン音楽配信
    サービスよりもエレガントで、一般人にも使いやすい end-to-end の新しいモデルになる
    可能性が有ると思います。
    Macintosh 及び .mac オンラインサービスの使用者は世界的に見て少数なので UM の既存
    の販売チャンネルに殆ど悪影響を与えず、カタログオーナー自らの上記のような音楽のソース
    から末端の再生ハードも網羅した実験的な提案として興味深いです。「定額35ドルで毎月500
    時間相当の音楽を自由にダウンロード」なんて結構訴求力があるかもしれません。
    どうなる事やら。
    ではでは

    いいね

  2. 私はこれからは、ハイテクでもPERが重視される時代が来ると思っています。成熟産業ではPERはせいぜい5-6程度。Cisco 33,Intel 40, Microsoft 29というのはちょっと高過ぎでしょう。Microsoftも配当金を出す時代になったことですし・・・。
    Apple-Universalディールは私も期待しています。そういえばちょうど、Napsterの興亡を追った本が出ましたが、その本の主張は「Napsterは要はgreedでつぶれた」ということ。ファウンダーのおじで、犯罪暦のある社長のエゴとモラルのなさゆえに全てが台無しになった、ということであり、決して世の中で言われているようなレコードレーベルの圧力でつぶれたわけではない、と。死んだ子の年を数える様なことをしても仕方がありませんが、今重要なのは、過去何があったかより、今後どうなるかということ。音楽のデジタル配信がユーザーフレンドリーになれば、killer appとなることは間違いないのではないでしょうか。

    いいね

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