MITが最近、MIT Technology Insiderというニュースレターの発行を始めた。MITでの研究、大学からのスピンオフなどの「MIT Insider情報」だけの9ページほどのもの。
技術や企業の評価にはこんなマークが使われている。
■$マーク:調達資金(一つは200万ドル以下、二つが1000万ドル以下、3つがそれ以上)
■紙マーク:パテント(一つはコアパテントなし、二つはコアパテントあり、三つは業界で優位なポジション)
■時計マーク:製品化までの時間(一つは1年以下、二つは1-3年、三つはそれ以上)
ちなみに例として上げたのは、MITからのスピンオフCurl Corporationのもの。World Wide Webを全く新たなものに置き換える、という壮大な目標の元に世界のコンピュータサイエンスの中核人材が集まって1998年に設立したが、VCから集めた500万ドルをほとんど使い切ったところで、ほとんどビジネスとならないので、ビジネスプランを変更し、今は大規模企業向けに鞍替え中、勝負はこれからだ、という話。
これ以外でも学内の新設ラボも同じマークを使って、「調達資金」「パテントポジション」「製品化までの時間」が説明され、その活動内容の詳細な説明がある。
さらには、MITが持つパテントでライセンス可能なもののリスト、など。
何が凄いって、「自分たちの技術が、世の中でどういう評価を受けるか」「事業性の観点から見てどういう位置づけか」ということをわかってるのが見どころ。もちろん、間違っている可能性だって十分にあるが、少なくとも「世の中から見たらうちの大学の研究やスピンオフはどういうレベルか」ということを分析し、それをきちんと発表するのは、大学にとってはなかなかたやすいことではないだろう。
今subscribeすると、過去5年間にMITからテクノロジーライセンスを受けたスタートアップ100社リストも付いてくる。(100社もある・・・とはいえ、まだつぶれてないスタートアップだけだろうから、元は100社よりもっと多かったんだろう。)月刊で、1年95ドル。
お試し、ということで一号だけ無料でダウンロードもできます。
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なお、Technology Insiderの発行元は、同じくMITの刊行するTechnology Reviewという雑誌。Technology Reviewは普通の本屋でも売っている月刊誌で、イノベーティブな技術が好きな人にとっては面白い読み物として仕上がっている。MITの卒業生であるうちのダンナのところに、毎月送ってくるのだが、驚いたことに、商業雑誌のクオリティをもったこの雑誌が卒業生会報も兼ねている。最後に各年次の卒業生の動向など、卒業生専用のコンテンツも入ってます。(普通の本屋で市販されているものには入っていないんだろう、多分)
ちなみに、2年ほど前まで、Technology ReviewのサイトのURLはIPアドレスで数字が列挙してあるだけという超オタクぶりであった。(まぁ、MITといえば、Cal Tech(カリフォルニア工科大学)と並んでオタクの殿堂なのでヤムナシ。)GoogleでTechnology Reviewとサーチしても出てこなかったくらい。(IPアドレスがわからないやつは見るな、ということだな、と理解していた。)それが今では豊富な有料コンテンツを提供するほどになっている。個別記事も買えるし、subscribeすれば全部を見ることもできる。
Nano Materialsとか、Defence Technologyとか、トピックごとに記事がまとまってるところもあって、なかなか使えます。
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秘密が多い日本の大学(や企業や個人)に比べて、MITに限らずアメリカの大学(や企業や個人)はハイテク情報はどんどんオープンにする。もちろん秘密は秘密。守るべき秘密の守り方の激しさは、外国人による産業・学術スパイ問題などでみなさんご存知の通り。だけど、あんまり語られないのは「アメリカでは、秘密にする必要がないこと・パテントで守れるものはどんどん開示する」ということ。それがハイテク産業が栄える秘密。
実はTechnology Review、MIT Technology Insiderともに、MITが主体のNPO(英語では”An MIT Enterprise”と表現してますね)であるTechnology Review, Inc.が発行元です。
Technology Reviewは、1998年に新創刊する前は、隔月刊のMIT同窓会誌で、主に技術論文なんかを掲載していました。1996年にイーサネットで有名なBob MetcalfeがこのTechnology Reviewの存在に目をつけ、発行人から編集長までを一新して、今のスタイルになりました(新創刊の寄せ書き( http://www.syncworld.net/blog/nob/archives/DSC02836.JPG )には、左上にBobの寄せ書きがありますね)。
chikaさんの予想通り、MIT卒業生に配られているのは、巻末に同窓生の情報をつけた特別バージョンで、ニューススタンドで売られているバージョンとは、ちょっと違います。
Technology InsiderとTechnology Reviewの大きな違いは、Technology Reviewが世の中全般を取材対象にしているのに対して、MIT Technology Insiderは「MIT Insider情報」だけが取り上げられています。
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正確に言うと「MITの外郭団体であるTechnology Review Inc.」ということですね。Metcalfeが首謀者とは知りませんでした。どうもありがとうございます。
なお、Technology Reviewは、Technology Partnersと共同でSemiconductor innovation Letterというのも出し始めました。紙面フォーマットはTechnology Insiderと同様ですが、こちらは半導体関係専門です。subscriberにはAdobeのebookで送られてきて、フォワード禁止・プリントアウトは3回まで、という厳重管理のもの。でも面白いですよ。
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『Technology Review(テクノロジー・レビュー)日本版』試作版を5月に発行(http://www.nikkeibp.co.jp/info/newsrelease/newsrelease20030310.html )
というニュースが先週出ました。
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