昨日朝起きたら、ダンナが背を丸めてテレビに見入っていた。何事かと思ったら、Space ShuttleのColumbiaが爆発したのだった。
ダンナは、元々人工衛星のエンジニアだった。宇宙にあこがれて、MITで宇宙工学と天体を専攻、Orbital Sciencesという「人工衛星を作るスタートアップ」というかなり毛色の変わった会社で働いた後、停滞した宇宙産業全体に嫌気が差してキャリアチェンジをした。
今回のColumbiaの爆発も、宇宙産業の停滞を体現するような事故だ。Columbiaが作られたのは、なんと1981年。20年以上前だ。以下はダンナの受け売りであるが、
1)Columbia(と全ての現バージョンのSpace Shuttle)本来試験的に飛ばすために作られたデザインなのだが、その後反復飛行に耐えられる新たなバージョンの開発がなかなか行われなかったため、いまだに飛んでいた
2)現バージョンのSpace Shuttleがデザインされたのは、宇宙開発が盛んだった60年代
2)試験用であることもあり、理論的にみた事故発生確率は100分の1と高く、今回の事故もある意味予測されていた
ということ。
ダンナは、子供の頃に「科学の進歩の象徴としての宇宙」に憧れて、20代後半までをまっすぐに宇宙産業エンジニアへの道を歩んできた人である。しかし大学の頃には既に宇宙は斜陽産業で、MITの宇宙工学でも卒業しても就職できない人がほとんどだったとのこと。
そうしてやっとの思いで入った衛星作りの現場は、60年代に全盛を迎えた残り火のようなもので、その当時に活躍した人たちが上につかえていて、どんなに優秀でも若い人のアイデアが通ることなどまず期待できない硬直したものだった、という。私が言うのもなんだが、うちのダンナはすごいオタクである。一応それなりに一般社会に同化しているが、宇宙工学のエンジニアとしてオタク道を極められていたら、きっとものすごい幸せだっただろう。
ここで、宇宙産業を日本経済のアナロジーとすることもできるが、まぁそれは置いておいて、「宇宙」が子供たちに与えた夢はとても大きかったと思う。宇宙を舞台にしたSFがこれだけ世にあふれたのは、そのストーリーを通して、宇宙が持つ美しさと虚無さ、不思議さが心の琴線に触れたからだろう。私たちの年代は、理系的志向のある人の多くが子供の頃宇宙に憧れたと思う。私も随分長いこと宇宙飛行士になりたいと思っていた。
それが結局30年たってもあんまり進歩しなかった。
地球生還が絶望視されながら、逆転のハッピーエンドで戻ってきたアポロ13号の事件が起こったのは70年代最初だった。この話は映画にもなったけれど、それを見て私が心から仰天したシーンがある。「もしかしたら軌道から大気圏に突入できる瞬間がくるかもしれない」ということがわかった瞬間に、NASAの地上ステーションの何十人ものエンジニアたちが、一斉に計算尺で計算を始めるところだ。「計算尺」っていっても最近の若い人は知らないだろうな。というか、私も自分で使ったことはないのだが、定規みたいなものを動かすと複雑な計算ができる、という「手動計算機」である。こんなマニュアルな技術レベルで、宇宙船を飛ばしていたのである。だったら、現代のテクノロジーで当時と同じくらいの予算を使ったら、どんなことができているんだろう。「宇宙ステーションでバケーション」くらい夢じゃなかったかもしれない。
宇宙の後は、ビジュアルには全くつまらないITが科学の進歩を代表する時代になった。ビジュアルのないITをグラマライズして子供たちに夢を与えるのに最大の貢献をしたのはWilliam Gibsonだ、と私は思っている。彼のNeuromancerを読んで「クールなハッカーになりたい」と思った人はたくさんいるんじゃないか。Neuromancerが出たのは84年だ。
しかし、今からComputer Scienceではもう遅すぎるだろう。次はやはりバイオ系か。とすると、「圧倒的な夢を与える力を持つ、未来の遺伝や医学に関するSF」が出てくるのはいつになるだろうか・・・・。(もし、既にそういう本があるのをご存知の方がいたら教えてください。)
space shuttle
なんで、満天かっていうと、あらぬ時間に起きてたりするので、つい朝の連ドラを見ないとダメな人になってます。満天は、宇宙飛行士になりたい女の子の話です。 そんな訳で、宇宙飛衮..
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最近の宇宙開発ののんびりさを見ていると、宇宙は永遠のフロンティアのままか、と思ってしまいます。また核エネルギー開発も同様に感じています。いったいいつになったら核融合発電できるのやら。
予算を多量投入すると無駄も発生しますが、日本などは、無駄ばっかりなんですから、まとめて夢のある浪費に走ったほうが、次につながるはずです。
で、最近読んだ、SF でよかったものを少々。読書量が減っているので最近といっても、結構前のものもありますが。
Robert J. Sawyer “Frameshift”(フレームシフト), “The Terminal Experiment” (ターミナル エキスペリメント)
Connie Willis “Passage” (航路)
Frameshiftは遺伝子、The Terminal Experimentは「脳」、Passageは「臨死体験」ネタです。圧倒的な夢ほどではありませんが、お口にありますかどうか…。
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Thank you ひらたサマ
Amazonのshopping cartに入れておきましたので、次回のバッチで購入して読んでみます。
ちなみに、火星に有人飛行するには90年ごろの試算で4000億ドルかかるんだそうです。50兆円。今だとその2倍以上かかる可能性もあるということで100兆円として、銀行への公的資金投入を止めて、新たな日銀券を発行してもらうといけるかもしれない額ですね。
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火星とは壮大ですね。アポロ計画の10倍くらいお金がかかりそう。SFで、映画会社が買収した宇宙船で火星に撮影旅行、というのがありました。
Terry Bisson, “Voyage to the Red Planet” 「赤い惑星への航海」 コメディタッチで面白かったです。
日本の宇宙開発予算はNASAに比べると小さいです。10倍くらいにして、月に基地を持ってもいいと思います。そんなことでもしないと、本当に Entertainment 目的でしか、イノベーションがおきない社会になってしまうのでは…。予算が増えれば増えたで宇宙族議員とかが誕生してしまうのかもしれませんが…。
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はじめまして。シアトルに住んでいます。
朝から一斉特番、一瞬9月11日の朝の気分を思い出した日でした。
文系型の私にとって、サイエンスはちょっとかじるくらいが、
楽しい分野です。
ニューズによって知らされる情報、速度や温度、あるいは大気圏再突入時の方向や角度などは「事故」という要素を省けは非常に興味のあるものです。そしてご主人のご意見など。
車は未だに4隅にゴム製の車輪をつけて、内燃機関で走っていますよね、旅客機もコンコルド以外は、未だにあの形。鉄道も蒸気からディーゼル、電気になってからは素人的にみて分かるほどの進化(普及レベル)はないようですし。
色々な分野で、色々な意味で、頭うちなのかもしれませんね。それが鉱物的、燃料的、機関的なものなのかは分かりませんが。
重要な何かの誕生が、色々なことを次のステップに進めてくれる、そんな気のした今日この頃でした。
では。
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ひらたさま
「宇宙族議員」というので、なぜかエイリアンの議員を想像してしまったのは、StarWarsの見過ぎでしょうか。
seakeiさま
私は実は、この先宇宙産業が発展することはまずない、と思っています。技術発展が止まってしまったわけではなく、宇宙の次はITが進展し、今またITから次の何かにバトンタッチしようとしており、宇宙の技術牽引の役割は終わってしまったのだと。
宇宙については、もはや発展させる動機付けがありません。「イスカンダルにコスモクリーナーを取りに行く」くらいのインセンティブがあれば違うと思いますが。。。。
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