Newspaper in US

アメリカの新聞って楽しい。まず新聞によって扱っている内容が全然違う。同じニュースの書き方が違う、というレベルではない。全く違うテーマ・事件を取り上げるのだ。しかも基本はローカル紙で地元密着。Wall Street Journal, New York Times, Washington Postなど、全国的に売られているものもあるが、それだって昔はローカル紙だったわけで。

私の住んでいるところだとSan Jose Mercury Newsか、San Francisco Chronicleのどちらか、というのが普通なのだが、この二つだけみても全然違う。前者はシリコンバレーに住む移民とハイテク労働者のための新聞。後者はサンフランシスコという都会に住む都会人向けの新聞である。

San Jose Mercuryがすごいなぁと思うのは、日本人でアメリカにトータル4年しか住んでいない私でも共感できる記事が多いこと。例えば、先週も「年末年始には、移民が子供をつれて3週間くらい自分の国に帰省してしまうことが多く、小学校は困っている」という記事が出ていたのだが、大きく写真入で取り上げられていたのは、香港出身のダンナを持つ日本人女性とその子供だった。ふむふむ、と感情移入して読んでしまう。スペイン語とベトナム語のバージョンまである。ワールドカップのとき、サッカーの記事を読もうとしたらそこだけスペイン語で断念したこともあった。

移民and/orハイテクの仕事をしている人という、「全国的に見たら超ニッチだけど、このあたりではマジョリティ」という人たちにに見事に対象が絞られているのである。さらに、長期的な取材に基づく記事が多いのにも驚く。1週間とかじゃなく、1年以上、特に長いものだと3年近い取材の成果の記事があるのだ。最低でも1-2週間に1回くらいは、その手の記事が掲載される。2-3週間前も、一人のアルツハイマーの男性とその家族を追って、男性まだ自分で判断ができた頃から、歩く事もおぼつかず完全介護になるまでの数年間の記事が出ていた。

日本人女性で自閉症の子供を育てている人の記事が出たこともあるが、これはこの女性本人にお話を伺ったところやっぱり1年がかりの取材だったそうだ。彼女はその記者の根気と深堀りにいたく感動していた。後日談としては、その記事を読んだ某日本の新聞社の記者から彼女の元に電話があり、「San Jose Mercuryを読んだんですが、取材させてください」と言われ、その電話一本で記事を書かれてしまった、なんてlazyな取材なのか、と憤慨していた。(ちょっと名前は伏せるが、かなりメジャーな新聞である)

今日のSan Jose Mercuryには、Birth of a Chip/A tale of innovation in Silicon Valleyと称して、Bay Microsystemsというネットワークプロセッサチップのスタートアップの、過去1年間の苦しい発展を追う記事が出ている。Bayの歴史を追ったより詳しいコラムがウェブに載っているので参照してください。

一方、San Jose Mercury Newsはニュースの遅い新聞だ。本当にNEWSなのか、といいたくなることもある。早起きが多いシリコンバレー向けに、どこの家にも夏は5時、冬は6時(どちらも、当地では真っ暗の夜中)には配達されるようになっている。そのため、夕方以降に起こったことは2日後の新聞にしか載らない。しかし、別に「早く何かを知る」ために新聞を読むわけではない。そういう「NEWS」はインターネットでリアルタイムでわかる。それよりSan Jose Mercuryにしかないコンテンツを求めて読むのである。多分そういう人が多いのを見越した紙面づくりなのだろう。

まぁ理由はともあれ、日本の新聞の記事で1年がかりで一つの物事を追ったものって見ない。日本の新聞記者の方に聞くと「それは雑誌の仕事です」とおっしゃるのだが、雑誌だって、日本では数年がかりの取材にもとづく記事なんて見かけないような気がする。もしかして私が気が付かないだけなんだろうか?

新聞の話に戻ると、発行部数で言えばSan Jose Mercuryはたったの30万部。朝日新聞なんかは800万部を越している。これだけでみれば、朝日新聞はSan Jose Mercuryの20倍以上濃厚な取材ができる余力(つまり記者への人件費支払能力)があるような気がするんだけど。

それとも、読者がそういう濃厚な記事を求めてないからそんな取材しても仕方がないってことなんだろうか?以前、日本の週刊誌の記者が「日本はアメリカと違って定期購読が少ないから、店頭で見かけて買ってもらえるような一発勝負的キャッチーなネタが多くなってしまう」と嘆いていたが、新聞だったら日本でも定期購読が多いはず。でもやっぱりどの新聞に早くニュースがでるか、というので競ってるような。

なんでなんでしょうか?

Newspaper in US」への3件のフィードバック

  1. 私はA新聞出版の雑誌とかY新聞とT新聞にコラムとか書いたことがありますが、そのときに編集の人たちとやり取りした感じでは、日本の新聞記事に長期追跡したものがないのには、いくつか複合した理由があると思います。
    記事には、スタッフ記者の書いたものと外部のコントリビューターが書いたものがありますが、外部ははっきり言って安い。コラム一つ1万から3万くらいです。こんな金額では長期追跡は採算以前の問題なのでやる人はいないでしょう。
    またイヤな言い方ですが、スタッフ記者はサラリーマンですから、とりあえず紙面を埋めていればサラリーがもらえます。だから特に頑張って取材する気もおきなくなる。(たまに意識の高い人もいるけど)
    大新聞は大企業なので、当然社内ストラクチャーの問題がありますね。現場の記者が書きたくても編集デスクがOKしない限り記事にはなりません。
    また日本の新聞社は、新聞とそこの出版物に全社的な方針による縛りがあったりします。例えば、今年の夏の例の住民基本台帳ネットワークについてだと、M新聞は反対、Y新聞は賛成、A新聞は話題性のある期間は反対、といった態度で、記事の内容にバイアスがかかっていました。これは各部署の編集デスクがそれぞれ全部全社的方針でコントロールされていたわけです。
    そして大新聞はそれぞれが帝国と貸しているので、自分たちが世の中に唯一存在すると考え、その中で記事の構成バランスをとろうとするので、他紙でカバーしてるから違う記事を入れようとは考えません。結果これでどの新聞も扱うトピックスはほとんど同じになってしまう。
    などなど。

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  2. San Jose Mercury News は、Venture Business, Venture Capital 向けの話題が豊富で、僕も Silicon Valley に長期出張しているときはいつも読んでいました。
    紙面も面白いし、Web もよくできていますね。
    Tech Writer の Dan Gollmor 氏が、自分の Blog をマスメディアである Silicon Valley.com の中に持っているケースは、マスメディアと個のメディアである Blog が共存して行く可能性を示していて、面白いですね。
    http://www.siliconvalley.com/mld/siliconvalley/business/columnists/dan_gillmor/ejournal/

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  3. gtさん
    低いフィーと帝国化、ですか・・・。でも、それでもきちんと売れるんだったら、変わるべくもないですよねぇ。
    この間、日本の子供の感じ読み書き能力が向上している、という調査結果が出ていましたが、実は子供たちの読解力はインターネット時代を反映して著しく向上していて、情報の取捨選択能力のある日本人がたくさん育っているのかも。そういう人たちが将来「こんなのつまんない」と言って読むのをやめれば、新聞も変わっていくのでしょうか。
    Minamiさん
    San Jose Mercuryって、時には2人のコラムニストが、一つの問題に関して、全く異なる論説を隣り合わせに掲げたりしていることもあって、個人の見解と新聞としての論調が共存しているのが興味深いところです。日本も記名記事(しかも写真入り)が増えて、個々の記者の人が個性を持った記事を書くと楽しくなるんじゃないのかな。。。。とはいえ、同じ新聞社に勤める記者は全て同じ文体・意見だったりすると怖いものがありますが。

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