ASPの時代は本当に来るか

日経新聞が日本株式会社の社内紙とするなら、シリコンバレーの社内紙はSan Jose Mercury Newsである。ビジネス欄といえばまぁ基本的にはハイテクのことしか載っていない。「ものごとは専業化することで進化する」と言ったのはドラッカーだが、アメリカという国は都市ごとに産業が特化している。SVでパーティーをしたら会話の内容はハイテクのことばかりだが、Washington DCでは政治のことばっかり、とはDC出身者の談。

さて、そのSan Jose Mercury Newsの今日の朝刊には、企業向けSFAソフトをASPで提供するSalesforce.comのCEO、Marc Benioffの記事が出ていた。「数千万円、数億円という価格帯で、しかも導入に何年もかかるような大規模企業向けソフトウェアの時代は終わり、安価にASPでソフトウェアレンタルをする時代が来る」とBenioffが宣言している、というもの。「The days of mega-sales that once fueled the growth of the $41 billion enterprise software industry are gone, Benioff said. In the new era, software programs will be sold in mass quantities for low prices like any other commodity. 」と。salesforce.comは、まだ未上場ながら2001年の売り上げが$60Mというから、日本のちょっとした上場企業よりずいぶん多い。

この記事の内容の面白い点は次の二つ
1)BenioffのOracleでの経験。彼はOracleがまだ売り上げ$55mだった80年代なかばにセールスマンとして入社、3年後にはセールスのVPをしていたTom Siebel退職を受けて、若干20代なかばにしてVPとなる。(このTom SiebelはあのSiebel Systemsの社長)「早い時期に大きく成長する会社でもまれる」というのは当地で確立された成功パターンの一つだ。ちなみに、Benioffはいまだ38歳。
ちなみに、Tom SiebelとBenioffは犬猿の仲で、Siebelが一等地に家を買ったら、Benioffはすぐその隣により大きな家を買ったとか。一方、BenioffとOracle社長のLarry EllisonとBenioffは犬猿の仲と言われているが、実は今でも一緒に休暇に行くような仲良し、とはSalesforceのインサイダー情報。

2)ソフトはまだまだ未成熟。記事内に、「Companies didn’t dig wells to get their water, he thought. They didn’t build power plants to get their power. So why should they spend years implementing software packages and fixing bugs, only to have to do it all over again each time they wanted to upgrade to a new release?」とあるが、私が以前建設関係からソフトウェアの仕事に移ったときにまさにそう思った。建築では設計図が書けたら、さくさくと建物が建つ。(失敗するのはトンネル工事くらい。それだって、まれだ)ところがenterprise softwareときたら、まったくそうではないのだ。「世界で最初の2階建ての家を建てたとき、階段の設計を間違って、二階にいけない家ができてしまった」と聞いたことがあるが、現代のソフトウェアはまだその段階に近い。

ASPで果たしてこれが解決するのだろうか?

いずれにせよ、米国ではCorioなどの第一期ASPはほぼ全て敗退したが、これからどうなるのだろうか。米国ベンチャー事情の項でも触れたけれど、「長い間ずっと唱えられてきているがなかなか実現しないことこそ王道の技術」である。何度も何度も失敗して、やっと花開くのが本物の大きな変化なのである。(逆に言えば、失敗せずにできるくらいの簡単なことだったら、それほどの大きな変化ではない、ということだ。)

そういえば、このBlogも、JoiがホスティングしているMovableTypeを利用させてもらって書いているのだった。こうしてじわじわとASPが浸透していくのだろうか。

ASPの時代は本当に来るか」への2件のフィードバック

  1. 日本でも Broadband アクセス・ユーザー数が ADSL の普及で急激に増えて、ASP ビジネスの時代はもしかすると、日本市場の方で、しかも Consumer 領域から来るのかな、という気がしています。
    僕は自分の Blog や他の人の Blog へのコメントでデジカメ写真を多用していますが、かなりさくさく使える様になって来ていますよね。
    今は SuperNova のカンファレンス会場にいますが、こういう米国カンファレンスでも 802.11b へのアクセスが提供されて、(このカンファレンスの参加者層はかなり先進的なこともあるでしょうが) 1/3 以上の人が Note PC + Broadband Wireless でアクティブにカンファレンスに参加しています。カンファレンス参加者向けの Multi-author blog も提供されていて、これもカンファレンス主催者が用意した、一種の ASP サービス、といえますよね。(これは米国のカンファレンスでも最初の試みらしいです。Decentralized Future、を技術・エンドユーザー側面から探る面白いカンファレンスなので、こういうことになっています。)
    Blog も、こういう ASP 環境 / インフラの整備の中で、個人個人のデジタル・コンテンツ・マネージメント・ツールとして、広がりを見せるのだろうと期待しているところです。

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  2. 「法人向けはアメリカから」「個人向けは日本から」というのが、先進的ビジネス発祥のルール。
    アメリカの企業は新しいものでも積極的に取り入れるもの。最近大手の病院をいくつか仕事で訪問する機会があったのですが、病院ですら例外ではありません。「たとえ名もないスタートアップの機器であっても効用が証明されれば躊躇なく買う」と誰もが断言。日本とはえらい違いです。
    一方、アメリカの消費者の財布の紐は固い。超固い。300ドルちょっとのTivoだって、なかなか買いません。
    ちなみに、平均的アメリカ人は異常なほどテレビを見ています。成人男性の週末は、朝から晩までスポーツのテレビ観戦で終わる、とされるくらい。日本人がわいわい飲みに行って過ごす時間を、代わりにテレビの前で使っているわけです。友達のうちに集まって、だらだらスポーツを見る、というのが男性の娯楽。スポーツも野球・ホッケー・バスケ・フットボール、とメジャーなものだけでもたくさんあるし、それ以外だってバレーボール、ゴルフ、テニス、加えて高校や大学のリーグ戦(テレビ放映される。熱狂的なファン多し)などなどなど、とにかく満載。
    そういうテレビ好きにはTivoはとっても役に立つものです。実際、持っている人のほとんどは「Tivoなしでは生きていいけない!」というくらいの忠誠心を語るほどの人気。それなのに、やっぱり300ドルは高いのでした。テレビにビルドインされるまでは広まらない、というのが大勢の見方です。
    というわけで、少なくとも個人向けエンターテイメント系ASPでは日本が世界に先駆けて栄える、と私は思っています。というか、日本で栄えなかったらどこでも栄えないでしょう。

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