日経産業新聞に2004年10月18日に掲載されたコラムです。
作成者: cw
宇宙室伏化計画
シリコンバレーはMountain ViewにあるNPO、The Spaceward Foundationが主催する懸賞。その名も、Elevator2010。宇宙に行くエレベーターを作ろうという計画。そのための技術を募集する。
地上のアンカーと軌道を回る「重り」の間にナノテクのリボンを張って、それを伝って「エレベータ」を動かし、宇宙ステーションに人や物資を送ろう、というものだが、イメージ的には「ハンマー投げ」。室伏が地球、ハンマーが重り、その間のヒモにそってエレベータが動く、と思えばわかりやすいでしょうか。ただし「ヒモ」は62000マイル、約10万キロもあります。民間初の有人宇宙飛行をしたScaled社の到達距離がたった100キロだったことを思えば大したもんです。実現すれば、だけど。
われはと思わん方はElevator2010にご応募ください。
大統領選でブッシュが背負うもの
大統領選は接戦になりそうだ。
「テレビ討論会」が選挙の鍵を握る。言っていることは特に目新しいことではないが、音声を消して表情だけ見ていると、結構面白い。一回目の討論では、だんだんブッシュがおされ気味で、ケリーが自信を増してくる様子が見受けられた。(討論の中身そのものは、決してケリーに有利なものではなかった、と思うが。人間は言葉だけでコミュニケートするのではなく、表情、しぐさ、全てが肝要、というのはその通りだ。)
直接選挙で一国の長を選ぶ、というのはなかなかエンターテイニングである。なお、ブッシュはあまり頭の回転が速くは無いことで知られるが、テレビ討論では、「カンニング受信機」を背中にしょって、誰かの指示を受けながら話していたのではないか、という疑惑が。PoliticalCow.comの証拠写真は左。ローカル新聞でも取り上げられていたが、どうでしょうね。
ラジオを聴いていたら、「接戦になりそうだから、4年前同様、開票結果をめぐる争いが起こる可能性があると両陣営想定、いざというときのための弁護士を各州で手配したりして準備を進めている」ということであった。投票の数も満足に数えられない国とはどのような未開国かと疑うが、事務作業が苦手な国民性ゆえ仕方ないか。
弁護士を手配する金があったら開票システムを整備しろ、と思いますが。
去るべきものは去った
San Jose Mercuryの今日の朝刊の記事
Tech workforce’s ranks shrinking
Battered by the technology bust, half of the Californians working in tech in 2000 have left the field, a new landmark study of 1 million workers shows.
Nearly one-fourth of the tech workers have taken non-technology jobs that often pay less, according to the study by the Sphere Institute, a Bay Area public policy research firm. Another 28 percent have fallen off California’s job rolls altogether — having fled the state, joined the ranks of the unemployed or become self-employed.
2000年にカリフォルニアでテクノロジー関係の仕事に従事していた人のうち半分がいなくなった、という調査結果。4分の1はカリフォルニアのテクノロジー以外の仕事に転職、28%は州外に出て行った、と。
暗い話のようだが、そうでもないのだ。
Higher-skilled, higher-paid tech workers were more likely to hang on through the bust and remain in their jobs or the tech industry in general. Those survivors saw their wages rise 8 to 14 percent even during the bust from 2000 to 2003.
スキルが高い人の仕事キープ率は高く、生き残った人たちの間では2000年から2003年の間に8-14%給料が上がっている。
この間、Palo Alto Daily Newsという無料ローカル新聞を読んでいたら、今年の新学期、Palo Altoの公立学校の生徒数が急増して、学区側は対応に追われている、という記事が載っていた。去年の同じ時期の増加数より数倍増えたのだそうだ。
恐らく、去る人は去り、残る人は残り、残った人の中では引越しも含め新たな活動が起こっている、ということか。
ちなみに、前述のSan Jose Mercuryの記事で、「生き残り」として取り上げられているソフトウェアエンジニアの男性いわく:
He also knows tech workers who have tried almost every strategy in the book to cope with the downturn, from moving out of state to becoming the stay-at-home parent. “I wish I could do that,” Sneiderman jokes. “My wife is a storyteller, folk singer and teacher. We kind of depend on my salary.”
「州外に出たり、奥さんが稼ぎ頭になって自分は育児する、といった人たちがうらやましい」と。「うちの奥さんは、ストーリーテラーで、フォークシンガーで教師。僕のサラリーが無かったらやっていけない」と。
彼の場合は、これでもう踏みとどまるしかなかったわけで。(ソフトウエア・エンジニアがシリコンバレー以外で仕事を見つけるのはそんなに簡単ではない)その根性が成功の秘訣といえばそうなのだろうが、リスクも高い。1989年から今までの間にレイオフなどで6-7社を転々としたということで、一社平均2-3年。家族を養わなければならないのにそういう状態なのは、かなりのプレッシャーであろう。
やはりシリコンバレー(もしくはスタートアップ)の呪文は
「人生のリスクヘッジは共働き」
なのであります。
隣人はコールガール
いや、9-11Commission Reportの感想どころではありませんのですよ。
シリコンバレーに引っ越した当初住んでいたアパートのお向かいさんのCristina(写真)が「コールガール」で、警察と税務署の調べを受けているということがニュースで判明。
しかも彼女はただのコールガールではないのであります。
1)Harvard→UCLAで大学に行き、StanfordのLaw Schoolを卒業
2)それを公言して全米あちこちの都市に出向いてはコールガール業を営んでいた
3)今年の4月にはAsk JeevesのファウンダーDave Warthenと結婚、
4)最近は、さらにWarthenが運営するCameracafe.comというサイトで、毎週木曜と日曜にライブチャットのホストをしていた
とのこと。
San Jose Mercuryの記事はこちら
Oakland Tribune(の記事をコピーした別のサイト)も詳しい
それによれば、2時間1,300ドル、週末全部だと15,000ドルという高額料金だったとのことで、これで彼女は30万ドル(3千万円超)の学費ローンを全額返却したそう。
Stanford Law Schoolで、彼女と一緒に勉強したという人のblogでは、「学費ローンが返せるなら俺も(コールガール)やるぞ」という切ない訴えも。(彼は、日系アメリカ人みたい)。彼のサイトの写真を見る限り、うーむ、ちょっと難しいかも、残念ながら。
いわく・・・
Quite honestly, if I were single and I had the capacity to make $15,000 in one weekend (and no other way of making the money), I would be a prostitute. I say this tongue-in-cheek, but if I could magically get out of debt in a month, hell, I would put my tongue in anybody’s cheek.
$100,000 worth of debt is an oppressive overlord for a university lecturer. I probably won’t be debt-free until Halley’s comet comes round again.
Sadly, the rich perverts out there willing to pay $15,000 for a weekend of escort services are unlikely to have a fetish for stocky, lumpy Asian American males. “Brazil” will always command a much higher rate than “Japan.”
私たちの住んでいたのは、Palo Altoのダウンタウンから歩いていけるこじんまりしたアパートで、私の部屋への階段からは、Cristinaの部屋と私の部屋にしか行けないという構造になっており、よく顔をあわせた。
彼女は当時、バリバリ全開でコールガール業を営んでいた模様。記事によれば、アパートのゴミ捨て場で警察がCristinaのごみを調べたら、法律の本に挟まった2400ドルのキャッシュも出てきたとか。
確かに変だと思ってたんですよ。たとえば:
- 派手目の女友達と、巨大な荷物を持ってよく旅に出ていた。一度週末Cristinaが留守にしている間頼まれて、ペットの鳥の餌を取り替えてあげたら、お礼にといって、高価な箱入りのシャンパンをくれた。鳥の餌を変えたのはたった一回だけなのに。。。
- 旅行をやたらにする理由について本人いわく
「New Yorkで靴屋を始めた。お友達のLarryが出資してくれたから、ファッショナブルな靴専門の店を開いた」
「Larry who?」と聞いたら、
「あ、OracleのLarry、Larry Ellison」
だそうでした。ほんまか・・・。(しかし、彼女はあんまり嘘をつかない人で、別のアパートの隣人には、「エスコート・エージェンシーをやっている」と明言してたそうな。アメリカのエスコートエージェンシーは通常コールガール屋さんです。) - Stanfordの城下町、Palo Alto周辺ではついぞ見かけないタイプの見知らぬ人がやたらと出入り
- 駐車場でショッキンググリーンのベビードール(「エッチなシミーズ」だな)で、陽も高くなってから見知らぬ中年白人男性を見送っているのに遭遇。
まぁ、隣人が何をしていようと私に危害が無い限り別に良いのですが、そのうち犯罪が起こり始めました。
- 「留守の間に部屋においてあったキャッシュが3000ドル盗まれた」と警察を呼んだ。(元々犯罪で手に入れた金なのに警察を呼ぶか!普通・・・)全てクレジットカードと小切手でOKのアメリカ、手持ちのキャッシュは普通多くても2-300ドル。3000ドルも部屋に置いたまま留守にするなんて・・・・、っていうか、キャッシュでそれだけ持っているのはドラッグディーラー・売春婦など非合法な商売の人くらいじゃないか。
- 「週末留守にしている間に駐車場の車を盗まれた」とこれまた警察を呼んでいた。この車というのがベンツCL500という時価7万ドル超。(この話を聞いた、アパートの別の隣人は自分のPorsche Carreraを守るべく防犯カメラを取り付けていた)
いやーしかし、今回の報道で驚いたのは、本当にStanfordのLaw Schoolをちゃんと卒業していたということです。時系列を見ると、Law Schoolに通いながらビジネスを立ち上げていたようで、結構大変だったのではないかと思うんですが、意外にまじめな人だったのでありましょう。
いまだに、ご本人のサイトもアクティブです。ヌード系写真もありますが、ご興味のある方はどうぞ。
9/11 Commission Report
休暇の帰りの飛行機の中でThe 9/11 Commission Reportを読んだ。
アメリカというのは(やっぱり)たいそう変わった国だ、というのが最大の感想。
以前のエントリーで、
9-11でアメリカが変わったわけではなく、9-11という稲妻で、一瞬本来のアメリカの姿が照らし出されたのだ・・・・アメリカは強力だから変わっているのではなくて、変わっているから強力なのだ。そして、他の国との相違点こそが、アメリカを豊かで強力にしている。
というEconomist誌の記事に触れたが、この「変わっている」ところが遺憾なく発揮されたのが9/11であり、このレポートである。
Commission Reportは、議会と大統領によって設立されたNational Commission on Terrorist Attacks Upon the United Statesという組織が、9/11の顛末、その対応で明らかになった問題点、その問題点への対処方法をまとめたもの。250万ページの資料と、10カ国、1200人以上へのインタビューを元にしている。
さて何が「変わっている」かといって。
1)読み物として面白い
国の委員会がこんな面白い物を書いてくるとは侮りがたし。
いきなり冒頭から手に汗握る展開なのだ。レポート全体が、時系列に沿って淡々と続くのではなく、一番衝撃的なテロの当日から話は始まる。1章目のタイトルは「We have some planes」。複数の飛行機がハイジャックされるという異常事態の中、ハイジャック実行犯のテロリストが言った言葉「We have some planes」から取られている。「a plane」ではなくて「planes」と複数の戦慄。
話はテロの実行犯が搭乗するところから始まり、世界貿易センター、国防省への攻撃、4機目の墜落まで、分刻みで展開する。調べ上げただけあって、まるでその場にいて見て来たような臨場感で、ハイジャックされた飛行機の中の恐怖が手に取るように伝わってくる。
テロリストと戦おうとした乗客がのどを裂かれて殺された、とか、乗務員も殺されたとか、いろいろな情報が客室乗務員からの連絡や、乗客が家族にかけた電話で語られる。世界貿易センターに突っ込んだ一機目のスチュワーデスは、衝突の寸前まで地上と連絡を取っているが、「Oh my God, we are way too low」という言葉を最後に通信は途切れる。
レポートはまた、細かなディテールが満載。たとえば、テロの実行犯の一人はディスコ通いに明け暮れ、ガールフレンドのアパートに入りびたっていたとか、パイロットとしてアメリカでトレーニングを受けるテロリストが、英語が習得できずに脱落、インターネットで花嫁探しに励んだり。
Al Qaedaの組織とBin Ladenについても細やかに触れられている。いわく、9/11自体は40-50万ドルという低予算だったと推定されているが、Al Qaedaを運営するには年間3千万ドルかかるらしい。これはBin Ladenが個人資産でまかなっていると思われていたが、実は彼は年間100万ドル程度しか収入(遺産分配)がなく、Al Qaedaは寄付で成り立っている。ということで、fund raisingが重要な仕事。テロだろうがなんだろうが、組織を運営していくのは大変なのである。(ちなみに、Bin Ladenが、スーダンの仕官と称する人物からウランを150万ドルで買ったら、偽物だったということもあったそうだ。世界は魑魅魍魎にあふれている。)
その後、本では、CIA, FBI, FAAからニューヨークの消防署、警察まで、「どう組織が動いているか」「何が問題だったか」「どうしたらそれは改善されるか」が延々と語られる。
とにかく、Amazonのベストセラーリスト1位になるだけあります。
他人を説得するには、データを並べるよりも、心に訴えかけるストーリーを語りかけることが効果的だが、まさに、9/11という国家の一大事を物語にして、根本的改革を訴えかけるのがCommission Reportなのであります。
長くなってきたので、続きはまた後日。。。。
Vacation
I am on an Caribeean(訂正→Caribbean!) island called Banaire off the coast of Venezuela for a week. Bonaire is a scuba diving paradise and I am writing this entry from an internet cafe on the beach.
See you in a week.
追加:帰ってきました。で、自分のBlogを見て気がつきましたが、本文のCaribbeanのスペルが間違ってましたね。どの文字が二つあるかわからなくなりがちな単語ではMediterranean というのもありますです。ダイビングのし過ぎで脳細胞が死んだようで、ぼうっとしますので、復活したら旅行記など。。。
PC環境
皆様からの推薦や暖かいサポートにより、MS OutlookからOperaにメールクライアントを変更したのは今年の初め。
おかげさまで死ぬ思いをしました。ありがとうございました。
なんといっても、アドレスブックをインポートするのに丸二日かかりました。(Outlook→Plaxo.com→Freeware経由でやっと)しかもその後、ある日メールサーバーに700通のメールが溜まっているのを発見したり、いろいろあって、一旦Outlookに戻ったのですが、やっぱりまたOperaメールに戻りました。ブラウザもOpera。いろいろ細かい使い勝手が良くて、安定しないのは重々承知の上、使っております。
なお、今年春ごろからメールが不安定で、出したはずのメールが届かなかったり、私に送って頂いたはずのメールがなくなったりする事態が頻出しておりましたが、これはメールクライアントではなく、ホスティング会社のせいではないかということになり、8月末にホスティング会社・ドメインRigistrar共に変更しました。この変更も、相手の対応のひどさに怒りで手が震えましたが、何とか成功。「メール出したのに返事が無いよ」という方、申し訳ありませんが、私を恨まず、メールを再送してください。
しかし、このインターネットの不安定ぶりは何かに似ている、と思ったら、これはアメリカ社会そのもの。California裁判所が「California」のつづりを間違える国ですから、メールが届かないくらいでびびってはいかんのですな。
なお、我が家は写真のごとくデスクトップ、ラップトップがごろごろしています。見えているもの以外にラップップがもう一台とデスクトップが一台、(これ以外にパーツの入った箱が二つ)あります。ゆえに、ワイヤレスLANを利用。ですが、肝心の大本のDSLが150kしか出ません。山暮らしのつらいところでございます。
マイクロソフトに聞け
Ask MSR(Microsoft Research)というマイクロソフトが開発中の「インターネット利用回答システム」についての記事を日経産業に書きました。こちらにアップしてあります。
九仭の功を一簣に欠く
Genesis Capsule Slams Into Utah Desert
Nasaの無人探査機Genesisは、過去3年間宇宙で太陽風の粒子を収集、ついに今日地球に戻ってきた。総予算2億6千4百万ドル。大事なデータがなくならないように、なんとハリウッドのスタントパイロット(複数)を雇って、ヘリコプターで地面に落下する前に収集する計画を立て、映画のスタントさながらの特訓が行われていた。「落下する物質をヘリコプターでピックアップする手法はこれまでに5万回も行われ、どれも成功している」とピックアップ受託会社は自信満々だったのだが・・・・・。
結果は冒頭の写真の通り、ユタの砂漠に墜落。ヘリコプター部隊は万を帰して待っていたが、パラシュートが開かず、ヘリコプターも手の施しようが無かったようだ。200キロ以上ある物体が時速300キロ超にて落ちたゆえ、思い切りめり込んでいます。
九仭の功を一簣に欠く(きゅうじんのこうをいっきにかく):【意味】「九仭」は「とても高い」こと(仭は中国の高さの単位)。九仭の山を築くためには、最後の一杯のもっこの土を欠いても完成しない。九割九分完成した大きな仕事が、最後のわずかな油断のためにすべてだいなしになること。仕事や勝負事で、最後の最後まで気を緩めるなという戒めに引用される。
「話芸“きまり文句”辞典より