米国企業のデジタルトランスフォメーションとはソフトウェア企業になること

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アメリカ企業の「デジタルトランスフォメーション」は本気である。やっと最近独禁法適用も含めたGAFA規制の話が出てきているが、こうしたデジタルネイティブな企業が超国家レベルになるまで放置してしまった余波で、既存企業が壊滅的被害を受けているからだ。

新聞、音楽、DVDレンタル、書籍、リテールときて、次にまずそうなのは金融と医療である。さすがに、これまでの様々な業界の壊滅ぶりを目前で見てきたので、「デジタル化でどれくらい既存企業が壊滅するか」を疑う人はそうそうおらず、結果として、Amazonが新事業向け(と思われる)求人広告を出すだけで、対象業界の合従連衡が雪崩のように起こるレベルで恐れられている。

そして、アメリカのビジネスは、本気を出すと信じられないぐらいドラスティックな手段に出る。そしてアメリカ企業のデジタルトランスフォメーションとは、ソフトウェア企業として生まれ変わること

例えば投資銀行のゴールドマンサックス。2017年2月時点で、社員の3分の1がコンピュータエンジニアになってしまっている。2000年に600人いた株のトレーダーはこの時点で2人だけ。代わりに200人のコンピュータエンジニアが構築・管理する自動トレーディングシステムが粛々と稼働している。もともと株トレーダーの平均的な給料は50万ドル(5500万円)だったので、その3人を1人のエンジニアで置き換えるとなれば、高騰しているエンジニアの給料とはいえ、十二分に相場以上払える。(なお、ウォール・ストリートでも、カジュアル化が進み、みんな制服のようにパタゴニアのフリースベストを着ているようだ。冒頭のイメージはそういうニューヨークの情景ばかりのインスタアカウント。シリコンバレー指定靴のallbirdsもよろしくね。)

リテールも、ウォルマートは@Labsという組織を本社の既存開発部隊とは別にシリコンバレーに立ち上げ、ベンチャー買収と雇用の両輪で10年かけて6000人体制にした。当地的には必ずしも評判がいいとはいえない@Labsなのだが、33億ドルでのJet.comの買収を含め、買収した会社の社員が辞めても、辞めても、辞め続けても、ひたすら莫大に資金を投下し続けた結果、ついにオンラインとリアルストアの連携が業績に効果を及ぼし始めてきている。

(個人的に、この莫大な資金を投下し続けるウォルマートのデジタル化を「ノルマンディー大作戦」と呼んでいる。最終的に200万人の兵士をナチスドイツ占領下のフランスに送り込んだ史上最大の上陸作戦である)。

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なお、以下おまけで、アメリカの新聞、音楽、DVDレンタル、書籍、リテールがいかに壊滅してきたかについての歴史です。

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■ 新聞

まず最初に壊滅したのが新聞。最初はCraigslitsが最大のデジタルプレーヤーだったが、その後Google、Facebookに広告収入を奪われる。紙媒体の新聞の広告収入は2000年をピークに一気に奈落へ。

File:Naa newspaper ad revenue.svg

新聞社の数も2000年から10年ほどで1000社以上減った。(ソース

■ 音楽 (原因:Napster / iTunes)

新聞の次に壊滅的被害を受けたのは音楽。(ソース

US Music Industry - RIAA

1978年から2018年で、青がレコード、カセット(!)など、オレンジがCDなど、物理媒体でのセールス。右側で出てくる紫はダウンロード、緑はストリーミングでデジタル。こちらも2000年あたりから減り始めて、2005年くらいからどっとデジタルになった。

レコード業界は、1999年にNapsterがリリースされて違法ダウンロードが蔓延、それを法的に叩こうと、Napsterを訴えたり、違法ダウンロードしたユーザを摘発したり、と「デジタル叩き」に躍起になったが、結局CDの売り上げが戻ることはなく、「デジタル叩きは自分の首が締まる」という教訓を残して海の藻屑となった。

■ DVDレンタル (原因:Netflix)

Blockbusterチェーンの終焉とともに終わった。オレゴン州に最後のBlockbuster店舗があり、プチ観光名所化している。なお、一応、まだ存続するDVDレンタル事業としてはスーパーの入り口などにDVDレンタル自販機を置くRedboxという会社がある。

■ 書籍 (原因:Amazon)

Amazonの成長とともにアメリカから本屋は消えた。アメリカの場合まず、独立系地元の本屋を全国チェーンが駆逐、そのチェーンをAmazonが駆逐、という2段階構成で、本屋自体の数は1992年から毎年減り続けている(上図)。90年代から2000年代にかけてはどこにいっても2大全国チェーンのBarnes & NobleとBordersという二つばかりだったが、2011年にはBordersが倒産し、Barnes & Nobleの店舗数も2008年の726店をピークに630店まで減少。

■ リテール (原因:Amazon)

家電量販店、メジャーなブランド、デパート、などなど、諸々のリテールが過去15年に渡り倒産し続けている。倒産は2019年に入ってからも続いており、中にはおなじみジーンズブランドのDieselもある。2018年にはSeers、Brookstone、Nine West、2017年には、ToysRus(全店舗閉鎖)、RadioShack(2度目)、Payless、2006年にはSports Authorityなどなど。家電量販チェーンに至ってはもはやBest Buyしかない。そのBest Buyも先月CEOが首になった。

しかしリテールは、新聞・音楽・DVDといったデジタル化できるコンテンツと違うこともあり、冒頭で書いたウォルマートのように、いくつかは健闘中で、去年あたりから成果が実って業績が上向いてきているところもある。

なお、医療系も色々起こっているのだが、その辺りは去年書いたAmazonの噂で一気に下がるもの: Amazonのマーク・トウェイン化 などご参照ください。

 

>>もう一回

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