シリコンバレーのベンチャーの買収にかかるよしなしごと

遅ればせながらあけましておめでとうございます。久しぶりのブログ書き。今年もゆるゆるやりたいと思います。

さて、先日2009年から手伝ってきた会社が買収されました。めでたい。シリコンバレーの会社だけど、日本人エンジニア3名、アメリカ人デザイナー1名でやっていた会社で、Twitterのクライアントを作るのが事業内容。

細かい具体的な話は当然秘密なのですが、買収に関連して面白かったこと、なるほどど思ったこと、そういえばこれって日本の人知らないことが多いよねと思い出したことなど、よしなしごとをいくつか。

Let's discuss how we can work together=買収に関心あり

複数の会社から買収の打診があったのですが、パターンはほぼ全て一緒で、まず

「御社の製品に関心があります。いろいろ将来の協業の可能性を検討しませんか」

みたいなメールがきます。ちなみに、「協業の可能性」のところは「how we can work together」やら「how you can partner with us」またはその派生型の表現です。

これ、日本だと超当たり前のお近づきメールで、これを見て瞠目する人は誰もいないと思いますが、アメリカベンチャー界においては、

「買収に興味あり」

と脳内変換してほぼOK。

基本的に、「どうやって協業できるかわからない会社に話を持ちかける」ということのないお国柄なので。「とりあえず会って話して知り合いになってお く」みたいな動機でのミーティング設定はしないのです。(その手の「雑談出会い」が許されるのは、展示会やパーティーなどのイベントに限られます。)

(なお、「既にビジネスの関係のある相手を買収する」というケースでは、「ちょっと会社来てよ」みたいに呼び出されていきなり、という感じになるかと。今回は、それまで全く関係ない会社からのコールドコール買収打診が多かったので、「work together」メールが舞い込んだのでした。)

Corporate Development=買収担当

これは業界を超え普遍的にそうですが、Corporate Developmentという部署は「買収担当」です。時々、日本の会社で「全社企画室」とか「社長室」的な部署の英語名をCorporate Developmentとしているところがありますが、あれ、交渉を持ちかけた相手に期待を持たせてかわいそうかも。アメリカではCorporate Developmentの人からコンタクトがあったり、その部署の人がミーティングに出てきたりしたら

「相手は自分たちを買収しようと考えている。よっしゃーがんばるで」

と考えるのが普通なので。

ただし、小規模な会社だとCorporate Developmentがないこともあるし、たとえあったとしても最初は事業部門からのコンタクトがあることも多いので、まずは how we can work together 的表現に注意。

なお、ばりばりと買収しまくってる某大手ベンチャー(最近日本でもお買い物)は、流れ作業で深く可能性も考えずにかたっぱしからいろいろな会社にコンタクトしてます。Corporate Developmentのお兄ちゃんから打診あり、電話で話していたら、向こうでキーボードをぱちぱちと入力する音が聞こえました。スクリーニング質問の答えを、その場でデータベースに打ち込んでるんですな。

(ちなみに、ベンチャーキャピタルでもこういう「流れ作業方式・投資先探索営業」があるらしい。「若造が電話してきて、電話の向こうでキーボード叩いてたら、真面目に相手するだけ時間の無駄」というブログがあった。)

シリコンバレーではTalent Buyが盛ん

シリコンバレーのソフトウェア産業はバブル。クラウド化が進んだソフトウェア産業では、資金を投下できる先は人材がメインゆえ、技術者人材難はみるみる激しくなってます。

エンジニアとかデザイナーの報酬はみるみる高騰中で、Googleが社員一律給料10%増という荒業に出たのはニュースになりましたが、他の会社でも人事が必死に給与体系をいじって社員流出を防ごうとしているところは多い。最近転職した人だと、前職の数割増みたいなオファーが最初から出てびっくり、なんていう話もちらほら。(ここ1-2年でいっきに給与相場が高騰しているので、コンサバな会社でしばしボーッ勤めていると、世間相場から乖離してしまう模様。)

(ただしソフトウェア系に限る・・・そういえば、昔「ただしイケメンに限る」ってのがありましたが、シリコンバレーの超高待遇は「ただしソフトウェアエンジニアに限る」という傾向が。)

そういう状態で、どうやって良い人材を確保するかというと、ベンチャーをもまるごと買ってしまうのですよ。で、中の人が働き続けたら、1年目と2年目にまとまった額のボーナスを出すといった約束で引き止めると。こういうのをtalent buyといいます。あからさまなケースだと、買収後、即座にサービスは潰しちゃったり。

ただし、talent buyでの買収金額はそれほど高額にはなりません。

エンジニア一人当たり50万ドルドルくらいが相場。ビジネス系の人はさらにその半分くらい(とほほ)。サーチなどの高度な技術者だと一人100万ドルくらいになったりする模様。talent buyでは、あまり人数が多い会社の買収は少なく、多いのは2人~4人くらいの会社を☓(50万ドル~100万ドル)というケース。要は2-4億円くらいの買収ですな。(もっと多人数のももちろんありますが)。基本的にはニーズが高いのはエンジニアなので、ビジネス系の人(営業とか)がごっちゃりいる会社がtalent buyされることはあまりありません。

(ちなみに、私が手伝っていた会社の買収はtalent buyではありませんでした。念のため。)

おまけ:世の中は狭い

さて、冒頭の案件で、買収される側の交渉の窓口は私だったのですが、相手側の交渉担当の人が、

「いやー、買収の交渉相手日本人なんだよ」

みたいなことを知り合いに話したそうな。そうしたら、その知り合いが

「だったら、僕の友達に日本人でその手の仕事をしてる人がいるから、彼女に手伝ってもらったら?」

と言われ、「なんて名前」と聞いたら、Chika Watanabeだったという・・・・笑。たまたま「相手側の交渉担当の人の知り合い」が私の大学院のクラスメートだったのでした。悪いことはできん。

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シリコンバレーのベンチャーの買収にかかるよしなしごと」への9件のフィードバック

  1. 1年前にAppleにQuattro Wirelessを売った時は、確かにサービスつぶされてiAdだけになりました。それはそれで切ない。たまたま$275Mで買ってくれましたが、Talent Buyとしては確かに例外ですね。

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  2. Quattro潰しちゃったのはうーん、って感じでした。(iAd悪くないけど、publisherとしてはQuattroのほうが実入りが何倍も良かったのに・・・・。Quattroであがっていた広告収入返せApple!って感じw)。なんかあれは、Googleに買われるくらいならいくらでも出す、みたいなdealだったのでしょうか。
    逆にGoogleは、Mobile Adsenseに最近気合が感じられないので、もしかしたらモバイル広告はAdmob一本にしようとしてるのかも。(その際にはAdmobがMobile Adsenseという名前になるのでしょうが・・・)

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  3. Quattroのほうが質がいいという事で評判よかったのでつぶされて残念でした。
    どちらかというとGoogleがAdmob買った後だったのでSteveがブチ切れてたのと、iPadに組み込みたいということでiPad発表直前になんとしても買いたかったというのがポイントじゃないですかね。でも振り返ればこれのせいでAdmobのDealがanti-trustにならなかったので、Steveが勝ったのかは微妙でござんす。

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  4. 2つお聞きしたいことがあってコメントさせていただきました。
    >シリコンバレーの超高待遇は「ただしソフトウェアエンジニアに限る」という傾向が。
    とありますが、ググってもしっくりしなかったので『ソフトウェアエンジニア』を具体的に教えていただけませんか。
    今大学でプログラミングを勉強していてとっても興味があります。
    また、3/10のカンファレンスに合わせて、ネットオタクな学生何人かでシリコンバレーに行きます。もしお時間ございましたらお話きかせて&させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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  5. >『ソフトウェアエンジニア』を具体的に
    ?どんなソフトウェア書ける人、ってことですか?ウェブ系・モバイル系全般、かな。
    > お話きかせて
    多分Facebookで、カンファレンスの前後に、お茶会的集まりを募集すると思います。私のみならず、いろんな会社訪問とかあれこれ企画されると思いますのでFacebook見るようにしててください。

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  6. 以前、シリコンバレーのベンチャー投資は年間5000億円程度というお話がございましたが、ややバブっている2010年の年間投資はどれ位の規模だったのでしょうか。

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  7. ご丁寧なコメントありがとうございます。
    facebookは随時checkしています :)) 初西海岸なので本当に楽しみです!
    もう2つお尋ねさせてください。
    ・web系ということはデータベース周りは指していないという理解でよろしいでしょうか?
    ・またデータベースやセキュリティーまで話が及んでいるのですが、Quora内で以下のスタートアップの回答に関する渡辺さんの考えをお聞かせ願えませんか?
    What are the most important tech skills for a non-technical founder/early employee at a startup?
    A few other suggestions as one non-technical founder to another 🙂
    1. Learn about the software development process. You don’t need to be a computer software major to learn about the steps a developer/team need to go through to bring an idea to life. An understanding of the pain points in this process will go a long way towards connecting with the technical side of the startup house.
    2. Learn about how developers like to code ie. the process of coding. Once you understand this, you will appreciate things like hardware “asks”, environmental conditions, being in the ‘zone’, start-times and all-nighters. It will help you be more supportive of your technical colleagues.
    3. Learn about the basics of infrastructure: storage costs, scaling, bandwidth loads, content distribution networks, etc. This will help you understand more about how your business scales and what to expect, what to budget for, etc.
    4. Learn about the basics of software security: what data is vulnerable? what are the data archiving and backup processes? what are the intrusion techniques we have in place? what are you doing to protect personal identifiable information? Etc
    お手数おかけいたしますが、どうかよろしくお願いいたします!

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  8. まぁ、ソフトウェアエンジニア全般です。Craigslistとかで世の中の求人情報見てみたらいいかがですか?
    Quoraのは、ケースバイケースじゃないでしょうか。何開発してるかによると思います。でもこれ、「非」技術者に望まれることなので、今プログラム勉強してる人だったら関係ないと思うのですが。
    今学生さんだったら「何が望まれてるか」「何が必要とされてるか」よりも「何がやりたいか」を考えた方がいいのではないでしょうか。

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