危機感を共有するだけでは改革は起こらない

よく「日本は、みんなが問題に直面し、危機感が共有されれば、そこから向上していくのだ」みたいなことを最近耳にする。。。。んだけど、私はひとり「ふふふ、甘いな」と思っています。はい。

だって、もう既にかなーりにっちもさっちもいかないでしょ?

少子化。国の借金のとんでも対DGP比。デフレ。円高。特に少子化が、例えウルトラ級の改善策を今打ち出しても、効果がでるまでに何十年もかかるというのが痛い。

既に平均ではこんなに貧乏になっている・・・。

そんな今の状況を見て危機感を感じてないんだったら、この先少々のことがあっても危機感を感じたりしないことでしょう。

多分、戦争になって敗戦する、くらいの「ほんまものの絶望」がこないと、どうにもならないのでは。

「人が変革のための行動を起こすには二つの理由が必要だ。ひとつは問題を認識すること。もうひとつは実行可能な解決策を知っていること」

とむかし、とある人にいわれた。その人は例として関東大震災をあげていた。

「東京に大地震がくることは誰もが知っている。しかしだからといって他に住むこともできないから、誰も何もしない。」

これで、思い出したのが別の人の話。前もどこかで話したことがあるとおもうのだが、旦那さんがアメリカのMBA受験中の奥様が

「夫にはスタンフォードとバークレーにだけは行って欲しくない」

と強く言っていて、その理由が

「サンフランシスコは地震があるから。」

で、それだけサンフランシスコ地震が怖い彼女は、当時は東京にお住まいでした。東京の方がサンフランシスコより危ないのにも関わらず。

(ちなみに、再保険会社、Munich Reの発表した自然災害リスクインデックスでは、一位の東京はスコア710点。二位のサンフランシスコの167点を大きく引き離している。こちらのリンク先のPDFファイルの12ページ目にグラフがありますが、東京のリスクはでかすぎて、チャートを突き破っている。)

でも、彼女にとっては、サンフランシスコは「行かない」という対策が具体的に講じられる場所であり、東京は「そうはいっても住まずに入られない」場所。(他にも彼女がサンフランシスコを忌避する理由は挙げられますが)。

えー、話を戻すと、人は「問題を認識する」だけでは行動をとらないのです。それに加えて「どんな実現可能な解決策があるか」を知っているのが必要。で、私の仮説は、

「日本の構造上の問題については、問題は認識しているが、解決方法がわからない(または面倒くさいと思っている)人のほうが多い」

というものでございます。(本当に解決出来るポジションにあるお年寄りは、「問題がより深刻化する頃には、自分はもう働いてないし。死んでるかもしれないし」てな感じでしょう。)

とはいえ、うら若き学生さんでは、「日本の問題の根の深さ」に気づいてない、ということもあろうかと「海外で勉強して働こう」というエントリーを書いてみたりしたわけですが。

しかし、このブログ全体では、ばか話も含め、「海外で住む・働くのも悪くないで」という、私がわかる・説明できる「個人としてとれる解決策」を提示しているのでありました。「海外」はなにもアメリカに限りません。最近、香港とシンガポールと行ったけど、景気良さそうだったし。

他の解決策だってもちろん、あると思いますが、それは他の人にお任せします。

危機感を共有するだけでは改革は起こらない」への18件のフィードバック

  1. いつも楽しく拝読させていただいています。
    今回のテーマ、行動経済学を持ち出すまでもなく、「問題を認識」していて「実行可能な解決策を知って」いても改革は(改善でも)起こるとは限りませんよね。
    でも、その(経済的な)不合理性が「逃げたほうが得」という場合にも「踏みとどまって死ぬのも本望」というような「感情」をうみだすこともあるわけで……
    なかなか興味深いと思います。

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  2. 「日本の問題の根の深さ」、政治的物理的なことはもとより、その根底にある物事に対する全体的な意識の低さを帰国して1か月、入社1週間で身に染みて感じています。脱出計画を今から検討中です。外に出てみないと見えない部分って予想以上にありますね。

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  3. 「蜘蛛の糸」は、たんなる個人のエゴですよ。滅ぶ人は滅べばいい。助ける必要ありません。もし、助けたいのならば、「タイタニック」 (1997年の映画)の主人公のように犠牲になれる人だけが、誰かを救うことができるのです。それと、サバイバルというのは、こういうことですよ。助かる見込みがあるならば、サバイバルとはいいません。

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  4. 海外で働く場合に、たとえばアメリカの場合だったら、アメリカの大学院で学位を取得するのが近道だとのお話が依然あったと思いますが、
    大学のランクってどのくらいが無難なんでしょうか?
    あまりにランクの低い大学院だと就職に苦労するとは思いますが、これくらいなら大体大丈夫だとか、そういうラインをご存知だったら教えて欲しいです。

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  5. 僕の場合は危機感を共有すれば向上するなどと思っていませんが、なんにせよ問題認識はしておいたほうがいいとは思います。
    日本をなんとかする道は二つあると思っています。
    1:問題認識→解決策発見
    2:日本が早めに駄目になる→再構築
    優秀な人々が海外に出るのは、2に貢献するので、ありだと思っています。1は、みんなが海外に出られるわけじゃないので「個人として取れる解決策」以外を考える人を増やす以外の選択肢が現状残っていません。確かにもう手遅れかもしれないとは思っていますけど・・・。
    でもほら、僕がアメリカ就職を目指しているときも「まず無理」って言ってましたよね・・・だけどできたし!まぁ僕は楽天家なんですよ、きっと。

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  6. 数年前にNZに移住し、現在フリーランス(IT)で生きている者です。
    私は日本がだめだからという理由よりも自分の「世界競争力」を上げてゆかないと生きて行けないと思ったからではあるのですが、最近の流れを見ていると日本に関してかなり危機感を持っています。
    既に設定された「正しい」答えを目指して育った世代が多くなってしまい、自分のおかれた状態での最適解を見出す力(姿勢)があまりないようにも思いますが、基本的に労働力の質の高さ、学習能力の高さは優れたものがあるので、何かのきっかけで大きく変わるのではないかと期待しています。
    日本国内での「このままじゃダメだ」というのも最近口癖になって、ゆでガエル状態でちょっと悲しいです。
    と、自分も「個人としてとれる解決策」しか考えることができず、悩んでおります。

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  7. 私の場合、日本を出たときの危機感は、周りの状況についてというよりは、自分の実力の無さだったと思います。あんまり日本の大学の悪口は言いたくないけど、先生たちは学者としては優れていても。。という人多かったし。だから、とにかく自分に実力をつけたかったくて、その結果が留学だったと思います。
    ただし、今はアメリカの大学、どこでもかなり大変みたいです。経済危機のあおりで、州立大学は教師一律給料カットとか「ざら」だし、私立も色々財源が減ったという話を聞きます。そうなると、教師間の関係もギスギスしてきて、学生との関係にも響いてくる。それでも千賀さんの地震の例じゃないけど、日本の大学よりはいいかな、って思うけど、留学を決めるときは、以前よりも気をつけてshop aroundした方が良いだろうって、思います。

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  8. chikaです
    >「踏みとどまって死ぬのも本望」というような「感情」
    そうですね、確かに。リスクニュートラルにモノを決めるなんてできないように我々の脳はできている・・・・・。
    >大学のランクってどのくらいが無難なんでしょうか?
    「無難」なランクなどありません。トップ校をでれば、その学校のレベルに相応しい能力が求められる。そしてその学校を出た他の人との競争になる。それはそれで大変です。「自分が入れるベストの学校を選ぶ」ということしかないのでは。ただ、どの学校で何を選考するかという問題はありますが、これも、個別に「この学校のこの学科を出たらどんな職が自分にはあるだろうか」と一つ一つ調べていくしかないです。
    >みんなが海外に出られるわけじゃない
    そうですけど、今の日本の問題はトップ0.1~1%くらいのテイタラクがひどい、というのが大きいと思っていて、その層が変わるだけで社会が大きく動くと思ってます。「ゴーンさん一人来たら日産が変わる」みたいな。
    >「個人としてとれる解決策」
    個人としてとれる解決策をみんながきちんと実行することが、世の中を良くすると思いますヨ。3KのIT企業なんて、みんなが残業拒否して帰っちゃえばそれで3K解消です。
    >以前よりも気をつけて
    そうなんですが、結構、人間、一度踏み出すと、その一歩が失敗だったとしても、一歩踏み出したことで力がついているわけで、その力をもってもう一回リカバリーの方向転換ができるものだと思います。若ければよりそういう「リカバリーショット」は容易です。よく調べるのはもちろん大事ですが、あまりリスクばかり見ないで、とりあえずサクサクとやってみる、というのも大事だと思っています。

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  9. いいんじゃないですか、一度とことん破綻してしまえば。
    新陳代謝、デトックスは必要です。
    人口が減って、収入が減って、政府が疲弊して、またゼロから新興国として始めれば良いのでは。
    どちらにしても国をマネジメントしている人たちの脳が腐っているんで、今更どうにもならないかと。
    組織は頭から腐ります。
    それこそチカさんがベンチャー立ち上げで述べているように、優秀なCEOを日本のトップに据えて、優秀な組織に変えていくようにしないと変わらないでしょう。

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  10. 確かにとりあえず、最初の一歩を踏み出すのは、大事ですね。私も日本を出たとき、そんなに先を考えていたわけではなく、「とにかく、ここにいては、先が見えない。」という感じで出たわけですから。
    ただ、日本でもアメリカでも、指導教官と院生の関係って、exploitativeになりうるから、例えばIvy Leagueの学校と、そこまでではないけど評判の良い学校の両方に合格した場合、絶対Ivy Leagueを選ばないとといけない、という風に考えないほうが良いだろう、ということは言えると思います。やはり教育の上手・下手ってあるし、大学側も教師を評価するとき、研究成果だけを見るか、教育への熱心さも考慮するかとか、そういうことによっても、色々違ってくるので。
    ちなみにアメリカ人の大学生が大学院に行くかどうか迷っているときに、私が勧める本で、The Chicago Guide to Your Academic Career: A Portable Mentor for Scholars from Graduate School through Tenure という本があります。違う分野を専攻する3人の先生が、院生が遭遇するであろう各場面で、状況をどう把握し対処するか、鼎談方式で書いた本で、結構面白い本です。千賀さんに、というよりは、このサイトを見ていて、アメリカの大学院って、どんな感じだろうって、思っている方にお勧めします :-)!

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  11. 個人が海外に出る時のリスクを考えた時、一番着実な方法は企業派遣じゃないかなと思いますし、実際Chikaさんも最初はその手法を使われたわけですが、なぜそれをもっとオススメしないんでしょう?
    一昔前に比べれば企業内での倍率も下がっていますし、給料保証で勉強できるのはすごくうれしい。
    というか、これは言っちゃいけないお約束?
    こっそりやるほど特別なものでもないと思いますが。

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  12. chikaです
    >政府が疲弊して、またゼロから新興国として始めれば
    「疲弊」と「新興国」の間に「戦争」が入らなければ。誰も取り合ってくれないけど、私は戦争が怖いんですヨ。
    >The Chicago Guide to Your Academic Career: A Portable Mentor for Scholars from Graduate School through Tenure
    よさげですね。高いですがw「大学の図書館で借りて読め」っていうことなのかな。推薦ありがとうございます。
    >一番着実な方法は企業派遣
    「企業派遣で留学」ということをおっしゃっているのだと思いますが、自分自身がそれをして「社費派遣で行くべきではなかった」と思うから人にも勧めません。理由は、それまでと違う新たなチャンスに挑戦出来るのがMBA(やほかの社会人の大学院留学)の特徴なのに、社費派遣だと、派遣もとの会社に戻らなければならないから。(私は戻って2年働き+会社に学費を返済しました)。借金して自腹で行くべきです。20-30代はコストカットしてる場合じゃなくて、打って出るのが大事。そのためには「時間」が大事です。時間が無駄になることはなるべく避けないと・・・。

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  13. アメリカの出生率も、人口置き換え水準に達していない。それなのに日本の少子化を心配する。
    言われるとおりですね。

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  14. 繰り返すが、出生率はアメリカやフランスも、人口置き換え水準に達していない。(しかも移民を大量に受け入れているアメリカでは、人種構成が代わるという問題も存在する。)出生率世界地図を見ると、少子化に関係ないのはアフリカと中東・南アジア。近い内に世界人口も減少予測に変わるかもしれない。
    1人当たりだと、世代間格差も大した事無いのね。
    >世帯主の年齢階級別の所得の状況http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa08/2-3.html

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  15. >アメリカはほぼ2.1
    日本ですら2.07なのに、乳児死亡率が途上国並で新型インフルエンザの死亡率も日本の10倍のアメリカが、その数字はあり得ないように思うのだよね。

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  16. 出生率は別にして、周知の様に、アメリカの幼児死亡率は高い:
    + CDCの統計では、2006年の乳児死亡率は6.71で、前年よりわずかに減少。2004年は6.78だった。報告書では、米国の乳児死亡率の改善が2000年から2005年にかけて足踏み気味だとしている。
     乳児死亡率が世界で最も低い国はシンガポールで2.0。2位以下には香港、日本、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなどが続いている。

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