ダンナは「日本語学習テープ」を持っている。そのテープで彼が覚えた数少ないフレーズの一つが
「よいお年を。」
「そんな、一年に一回しか使えないセリフを覚えてどうするんじゃ」
といつもバカにしてきたのだが、この年末・年始、ついに利用の機会に恵まれたダンナは奮起した。
まずは年末、近所のアキさんのおうちの玄関で、ドアを開けてくれたアキさんに
「ヨイオトシヲ」
アキさんは「??」。
そりゃそうだ。ダンナは「よいお年を」を「Happy holidays!」みたいな「出会いの挨拶」と勘違いしている。しかし、突然ドアを開けた瞬間に片言で「ヨイオトシヲ」と言われても、わかる日本人はいるまい。
全然関係ないが、私は「♪もろびと、こぞりて~」というクリスマスの歌の「主は来ませり~」というところを
「シュワッキマッセリ」
という謎の呪文だと思っていたが、「ヨイオトシヲ」の片言も、そんな感じでしょうか。
というわけで、ダンナの「ヨイオトシヲ」活用トライ、第一弾はあえなく敗退。
次が元旦にお招き頂いたエミコさんのおうち。「御節パーティー」だったのです。またもダンナは、ドアを開けてくれたエミコさんに
「ヨイオトシヲ」
エミコさんは「??」。
懲りないヤツである。私が前回、「出会いの挨拶じゃないんだよ」と説明してあげたのに。
ちなみに、これ以外にダンナが日本語テープで学んだ日本語は
「船便でいいです」
「白ワインか赤ワインか」
「薔薇」
(もちろん、これ以外にもいろいろなフレーズがあったが、全て忘れたみたい。)
「薔薇」は音の響きがとってもおかしいのだそうで、時々1人で「バラ」とつぶやいてクスクス笑っている。
だが、しかし。
「白ワインか赤ワインか」
はまぁ、もしかしたら使う機会もあるかもしれないが、それ以外はいつ使うのでしょうか。(ダンナの日本語ボキャブラリーは30語くらい)。
「貧乏学生が日本にクリスマス休暇を利用して行く」
という設定のテープなのかしらん?
だが、上には上があった。
元旦にエミコさんのお宅でお話した、やっぱりアメリカ人のダンナさんがいる日本人の方いわく:
「うちのダンナの日本語教材には
『シベリア抑留から帰って来て、トランジスタラジオを売っています』
という例文があった。」
ひえー。
シベリア抑留からの最後の帰国がいつか調べたら、昭和31年だそうです。1956年か。この方のダンナさんが日本語を勉強したのは30年位前かもしれない。とすると、1970年代。うーむ、当時、アメリカ人が出会う日本のビジネスマンには、シベリア抑留帰りでトランジスタラジオを売っている人がたくさんいたのか?・・・んなはずはない。
ちなみに、10歳を過ぎてから外国語を勉強するというのは、とっても大変なことである。覚えられるボキャブラリーには限りがある。日本語のネイティブスピーカーだったら、「シベリア抑留」とか「船便」という言葉も、もちろん知ってはいる。が、外国語として日本語を勉強するんだったら、もっと優先順位の高い言葉から覚えるべきでしょう。
で、優先順位は、目的によって異なる。旅行して楽しむためだったら、買い物、ホテル、交通機関で使える単語を覚えるべきだし、ITで仕事をするんだったら、IT関係用語が必要。
というわけで、自分の目的とする用途に絞った言葉を覚えましょうね、というのが教訓です。
> 日本語のネイティブスピーカーだったら、「シベリア抑留」とか「船便」という言葉も、もちろん知ってはいる。
うぅ、知らなかった。。。orz <シベリア抑留
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大学のフランス語の授業で、教授が例文を書いた後、
「これは年がばれるから止めよう。」
と言って、黒板に書いた例文を消しました。
「今のどういう意味ですか?」
「『私は警官に石を投げた』だ。」
すっと出てくる一行の例文に、その人の人生が映し出されてしまうことって、よくありますよね。
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昨年末、会社の最終営業日の前日に課内の打ち合わせがあって、その最後に「それでは、よいお年を」とつい言ってしまったら「まだ明日があるじゃん」と返されてしまったことを思い出してしまいました。
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新年、明けまして、おめでとうございます。今年もchikaさん独特のユーモアが効いたブログを楽しみにしています。
この記事も、おもしろくてサイコー!です。『シベリア抑留から帰って来て、トランジスタラジオを売っています。』という、日本語のフレーズには笑いました。
二十代の人間相手に話せば、単語の意味さえ、理解してもらえないかも。今なら、『ツタヤに行って、シベリア超特急を借りてきて、オリエンタルラジオを返します。』と言ったほうが、通じるかも。って、通じないか。
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思わず家でひとり大爆笑してしまいました。
うちの旦那は日本人で、外国の方に英語を使ってみたい病(今も)らしく、学生時代コンビニでアルバイトをしていた時に、来店したお客さんに突如 “うぇるかーむ!” といって素無視されていました。見ていてかわいそうでした。。
P.S.
今年もエントリ楽しみにしています(^^)
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トランジスターラジオが出る頃まで抑留されてた人はけっこういたようですね。
イギリスで出版されたフランス語の会話本にはずいぶん後まで「助けてください。私の馬車の御者が雷に打たれました」なんて例文が載っていたそうです。
ちなみに私が今でもすらすら言えるフランス語は「今晩2人分の席を予約したいんですが」くらいだったりしてw
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初めまして。
SOMAの記事を検索してこちらに参りました。
本日の記事なかなか面白かったです。
しかも本まで書かれているなんて。
SOMA Networksの情報ありましたら、またご紹介いただきたくよろしくお願い致します。
http://ameblo.jp/logos-sequence
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はじめまして^^
しばらく前にこちらを見つけて以来、毎日楽しく楽しくおじゃまさせてもらっています。
むかし同じ職場にいたアメリカ人の女性が、ある晩タクシーに乗ったそうです。
日本語があまり得意ではない彼女、運転手に行き先を告げたあとは黙っていましたが、目的地に着いて料金を支払い、タクシーを降りるときになって、運転手に向かってひとこと、
「こんばんは」
と言ったそうです。
当然のことながら、運転手さんはぎょっとなさったそうで。。。
今年の暮れには、千賀さんのだんなさまが 「ヨイオトシヲ」 をみごとに使いこなされることを祈ってます^^
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東海岸より、Blogをいつも楽しく読ませていただいています。
うちの夫も日本語を勉強中で片言を話します。あるとき、私の知人に街で出会い、先方が「いつもお世話になっています」というようなことをおっしゃったのですが、それに対する夫の返事が「ごちそうさま」。「こちらこそ」と言いたかったらしいのですが、出てきたのは「ごちそうさま」でした。あわてて私も横から訂正し、夫も気づいたらしく、顔が真っ赤でした。今思い出しても、あれはおもしろかったです。バス停でいきなり「ごちそうさま」はないでしょう。。。
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そういや昔、英語のテキストに
「アナタはジョンさんですか?」
「いいえ、私はマイクです」というような(名前はあやふや)
例文があったのを思い出しました。
冷静に考えたら、そんなやり取りないだろう!と
思うような文章が結構ありますよね、外国語教材って。
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こんにちは。ムギさんのところから来て、お気に入りblogにして楽しませていただいてます。
「シュワッキマッセリ~~」私もそう思ってました!!(30年以上も・・)
あと、I’m sorry. に対して、That’s all right.というところをNot at all. と言ってヘンな顔をされたことがありました。私たちの英語は、ネイティブのかたにとってはボビー・オロゴンの日本語みたいなもんなのかなあ。。
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ちかさん
こんにちは。私はM社時代にちかさんと一緒にお仕事をさせていただきました(退職時に金色の象さんのマスコットいただきました。チカちゃんと名づけて可愛いがってます)。M社の方より、シリコンバレーでご活躍中と聞いていましたが、お元気そうで何よりです。
M社卒業後、もともと言語学で修士を終えていたこともあり、日本語教師の免許をとりましたが、本当にテキストって、それぞれ目的がはっきりしているので、序文や本書の使い方といった部分を購入時に読むことをお勧めいたします。
ちなみに、有名な某日本語教科書は、日系ブラジル人や、中国人を対象としているため、例文のそこかしこに、工事現場や作業場で働いていると思われる「ビジネスシーン」が盛り込まれ、かつ、家族に仕送りしています、といった目頭が熱くなるような例文が出てきます。
ちかさんのおしゃるように、ターゲットを絞り込んだテキスト選びをなさるよう、強くお勧めします。。。
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ちかさん、こんにちは。
Happy new year.
はどういうニュアンスですか?
さっき年明け後、初めて会った人に出会いがしらに言ったら変な顔されました・・・
日本だと、「明けましておめでとうございます」なタイミングだったんですけど。
年末年始はSFに行ったので、ちかさんらしい人がいたらすかさず声を掛けようと思ってドキドキしていたのですが、お会いできませんでした。
今年も楽しく拝見させていただきます。
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>Happy new year.
>はどういうニュアンスですか?
ジーニアス大英和辞典によると
「新年おめでとう
(1)返事はHappy New Year。
(2)1月2日以降には用いない。年の瀬の1週間ぐらいの期間には『良いお年をお迎え下さい』の意で別れの挨拶に用いられる」
だそうです。あらあら。
「ダンナは「よいお年を」を「Happy holidays!」みたいな「出会いの挨拶」と勘違いしている。」の間違いも、この辺りの違いによるのかもしれませんね。
ところで「ヨイオトシヲ」は、ニュアンス的には”happy new year”より”good luck”に近い側面はないでしょうか。
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chikaです。
そ、そうか、シベリア抑留を知らない世代が!!うむむむ・・・。昭和は遠くなりにけり~。
>「助けてください。私の馬車の御者が雷に打たれました」
は笑いました。絶対使えないよなぁ・・・と思って、Googleしたら、なんと、いました、現代の職業御者
http://www.gothamist.com/archives/2005/03/09/joe_horsedrawn_carriage_driver.php
ニューヨークのhorse-drawn carriage driverさんです。そういえば、観光用の馬車がいますよね。携帯で911に電話して「助けてください。私の・・・」とか?
「こんばんは」「Not at all」とかはムズカシ~。挨拶って、意味関係ないんですよね。もう体で覚えるしかないという。Thank youって言われてyou are welcomeってのも、よく考えたら変です。
「ごちそうさま」はうちのダンナに言ったら大変受けておりました。
>「アナタはジョンさんですか?」
>「いいえ、私はマイクです」
私の中学の教科書には確か、
「それはオレンジですか?」
「いえ、これはスイカです」
ってのがありました。ありえねぇ・・・。
lakmeサマ・・・えっと、多分、会社を辞めた後翻訳をしてた方ですよね・・・??「仕送り」はかなり切実な単語ですねぇ・・・。
Happy New Yearは、ダンナに聞いたところ、彼は「元旦から1週間の間、初めて会う人にはみんなに言う」とのことでした。ま、どれくらい彼を信用するかという問題はありますが。。。
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面白すぎます・・・。今ちょうど、年末年始日本に遊びに来ているニューヨーカーがいるので、、、日本語覚えようとしているのですが、すごく面白い。何が面白く聞こえるかが面白いです。
繰り返しの擬態語(コロコロとかもしもしとか)は楽しいらしいですが・・・。
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シベリア抑留を知らないのは、世代というより興味のベクトルによるのかも。先日、同僚(30手前)と話をしていて、彼女がカンボジアの内戦もポルポトの虐殺も知らないことに愕然としてしまいました。
ところで、現代東京には、御者は居ないけど人力車の車夫ならいっぱいいますよ。こないだ秋葉原に行ったら、猫耳の車夫なんてのもいました。
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私はネイティブな日本人です。
お正月3日、毎年恒例の新年会が終わり別れ際、”Good luck”のつもりで”良いお年を。”と言ったらその場の全員に突っ込まれました。
その中の誰とも来年の新年会まで会わないないのに。
来年は、なんて言って別れよう・・・
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・私も「いただきます」のつもりで「Bon Appetit!」と招かれた先で言って笑われました。シチュエーションしか覚えないと、文化によって誰がいつ言うかで間違うんですよね。ダンナさま、笑えません。笑ったけど。
・トルコ人日本語学習者に2月頃、「あけましておめでとうございました」という年賀状をもらったことがあります。
・スペインで日本語のテキスト「アニメで学ぶにほんご」というような本を見せてもらったら「血のイニシエーション」というフレーズがありました。数ヵ月後、日経新聞に、スペインではそのテキストが爆発的に売れたという記事を読みました。もう、どうしましょう。
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