PC vs ダム端 そして囚人のジレンマ

昨日、「100ドルPCが来年にはできる」と発表された。ぜんまい仕掛けで一分ほどくるくる回すと40分使えるそう。MIT Media Labのchairmanでもあるネグロポンテがリードを取るThe One Laptop Per Child Projectによるもの。ちなみに、この団体の短縮名は「OLPC」。非常にGeekっぽい。もっとかわいい名前にすればいいのに。

さて、これは「貧しい国の子供たちにもコンピュータを」という大変志の高いプロジェクトなのであるが、「安い端末」で思い出したのが、最近$35Mも増資したSan JoseのWyse。25年前からある、ダム端末、通称「ダム端」の老舗。「ダム端」は、スクリーンとキーボードしかなく、「考える」能力のないコンピュータ端末。「考える」は遠くにあるホストコンピュータ君が行ってくれる。だからdumb(=バカ)端末。

「そんなこと知ってるワイ」と思われる方も多いと思うが、でも、ふと
「うーむ、最近のワカモノは『ダム端』という言葉をl聞いたことがないのでは・・・・」
と思ったので ;-p

ダム端、聞こえが悪いこともあって、クライアント・サーバ時代以降は、Thin Clientと呼ばれている。実際、Wyseもそれなりに考える能力もあるマシンも作っているようだ。

さて、100ドルPCプロジェクトがもてはやされるのは、今のPCが高いから。そしてそれは高機能だから。「考える」能力が要らなければ、ずいぶん安くできるはず。そもそも、そんなに処理能力が必要ない使い方って、最近多くありませんか?

たとえば、JTPAの「PCのカッコいい使い方」では、こんな使い方をする人も:

去年までまだモノクロのパワーブックを使っていた人もいる。ハードドライブをスッカラカンにしてテキスト・エディタ、軽いFEPとEmail巡回ソフトだけが入っている。実はそれだけしか入っていないから、結構動作が速い。

これで十分ですよね・・・。最近処理能力を食いまくりのantivirusソフトも、超thin clientという前提があれば、もっと軽いものが作れるハズ。外部へのDOS攻撃だけストップするとか。

ファイルも、ローカルにおく必要・メリットはどんどん低下している。GMailとかFlickrとかで、インターネットの向こう側においておけばよい。

まぁ、1台くらいは、びっしり高機能なマシンがあってもよいと思うが、それ以外は、ダム端で十分。我が家にも、無駄にキャパシティの高いラップトップがごろごろしている。

ということで、細々とダム端を作ってきたWyseも、「また自分たちの時代が!」とばかりに増資して、事業拡大中とのこと。売り上げも、今$200Mだが、2010年には$1billionと5倍増を目指すんだそうだ。話半分としてもすごい。今年の7月のSan Jose Mercuryの記事では、こんな風に書かれている。

At the core of the company’s strategy is
bringing Wyse’s "thin client” technology — computer devices that
have no processing power and store information on servers, not hard
drives — to the booming consumer markets in Asia.

In addition to producing its traditional thin-client terminals,
which sit on desks and look a lot like PCs, Wyse hopes to create the
software code that leads to a new generation of low-cost thin-client
handheld devices. These new pocket-size gadgets will not be equipped
with expensive flash memory but will operate off of a network, which
will store the data, from address books to music files.

Google世界制覇の野望でも書いたが、「有線、無線を含め、自在にインターネットにアクセスできるようになれば、個々の端末でソフトを利用する必要性は薄れる。すべての情報はデータセンタ内に集約されたサーバー上で処理され、端末はそれにネットを介して接続するだけで事足りる。」で、こうなったら、ユーザーの手元にはダム端があればよい。(まぁ完全に「能無し」ってことは、もはやないと思いますが、とってもthinなclient。)

というわけで、時代は今、70年代-80年代のSFよろしく「ホストコンピュータが集約的に知能を管理」という構造に向かっているのか。(そして、そのホストコンピュータさんの運用費は広告費でまかなわれてしまうのか・・・。椎名誠のアドバードのように?。)

・・・というここまでが、「PC vs ダム端」議論。長くなってしまったので、続きの「囚人のジレンマ」はまた次回とします。

PC vs ダム端 そして囚人のジレンマ」への14件のフィードバック

  1. ダム端って、初めて聴きました。解説がついていてありがたかったです。パソコンは度素人で、高校ぐらいからウィンドウズ98でメールとかネットする程度。今も進化なくその程度。
     って、話がずれたので戻すと、日本の新聞でも100ドルPCの記事は載っていました。デジタル格差を無くそうという、その活動には賛成です。ですが、不満を言えば、日本のトロンというOSも世界中の人に貢献するため、リナックスと同じように無償で公開していたにも関わらず、アメリカの圧力のせいでパソコンOSとしての未来が閉ざされたのを思うと少し複雑な気持ち。

    いいね

  2. ダム端末は今となってはTeraTermなどTELNET機能などがあるので、PCに必ず入っているものだとおもうけど。
    それでいて、あえてダム端末とは。。。
    自分はダム端末といてはVT100やVT220などDECのPDP-11などに命令を与え答えを返すものだとおもっているけど、それからグラフィックが発展したので、あえてキャラクターベースのダム端末はPCを越えることはできないとおもうけどなぁー
    年々、PCの性能が上がっているので、一般のコンシューマーレベルではことは足りるので、あえてスーパーコンピュータなどのホストにログインする必要はあんまりないし、P2Pの発展で分散環境もあるし。
    ダム端末のダム端末であるべき今後の発展系はいったいあるのかという疑問がでてくるとおもうけどねぇ。。。

    いいね

  3. イルカ-san
    おーやっぱりダム端って、死語だったんですね・・。
    >アメリカの圧力のせいでパソコンOSとしての未来が閉ざされた
    このあたりは、私かなり意見があるんですよねー。
    圧力をかけられたくらいで負けるのは、自分の責任である、と思うんです。条件が揃ってないと勝てないのはただの弱さ。そんなことで文句を言うのはおかしい、と。がんばれベアーズじゃないけど、どんなに悪条件でも打ち勝っていくべきでは。
    別に、あくどい圧力をかけられたら、もっとあくどいことをしよう、というわけではなく、きちんと勝つための方法を考え、勝つための政治力を身につけ、必要とあれば上手に駆け引きするのが、勝つための努力である、と。
    「いい技術を開発したのに負けたのは、相手が悪いから」
    ではなく、
    「今度いい技術を開発したら、こうやって立ち回ることで、世界を制覇しよう」
    という前向き、かつ相手から自分に責任を引き寄せる発想が、私は好きなんが・・・・。
    まさ-san
    >PCの性能が上がっている
    まさに、この今の性能があがったPCがいらないっ、ていう話です。よく考えたら、Web2.0系のサービス使うのに、何万円・何十万円もする端末は必要ないですよね?
    一方、P2Pの話はご説ごもっとも、で、このあたりは「囚人のジレンマ」で触れる予定ですので、またそのときに。

    いいね

  4. TRONはそもそもたいしたOSではなかったとの意見もある。真相は分からない。しかし、それでも、TRONがUSTR(ヒルズ代表)によって最大限の敵視政策を受けたという事実は残ると。

    いいね

  5. 確かに、ちょいネガティブ発言だった。ぺこ。
    chikaさんのいうとおり、圧力かけられたくらいで負けたのは日本自身の弱さでもある。ココを認めなければ、未来はひらけない。
    知っておられるかもしれないが、トロンを開発した坂村健教授は、過去の失敗を反省し、ユビキタス・コンピューティングの国際標準を目指して、明確な戦略を練り、確実に実行している。ユビキタス・コンピューティングを通して、日本が世界に貢献できる日は近いのではないかと思っている。
    トロンプロジェクトがオープンなリアルタイムシステム標準開発環境を提供するため、T-Engineプロジェクトを発足させた。そのホームページ
    http://www.t-engine.org/japanese.html
    坂村健氏の最近の言葉
    http://www.personal-media.co.jp/book/tw/tw_index/231_f.html#1

    いいね

  6. “ダムたん”っていうと3270ってヤツですね。弊社では6680でしたけど。
    「Wyse」さんちもWeb2.0で大よろこびなところなんですかね。
    $100PCは↓んなのと結び付けられるとさらにおもしろくできそうな気がしたり。まあ、ネットも繋がらないといけないですが。
    – Amazon Mechanical Turk
    http://mojix.org/2005/11/05/112320

    いいね

  7. >>chikaさん
    PCが性能あがるというのはどうゆうことか?
    表現力が増すということですよ。
    なんで、通常のCPUと別にグラフィックのためにGPCなる別の専用CPUを入れるわけ?
    表現力を上げる必要があるため性能があがる。表現力をあげる方向は今後のメディアへの新たなる取り組みを進展させるためにも大事なことだとも思うけどね。
    マーケティング的にダム端末的なPCはいままで成功してますか?
    何度かは出ては消えているかとおもいますけど。。。
    結局のところエンドユーザがダム端末的なものが必要となるのは、余計なことをさせないためと指定操作させない場所に限るかと思うのですが。。。
    Web2.0が騒がれているけど、自分はよくわからないです(汗
    つか、関連記事は読んでいないですし。
    まぁ、前からIEでの表現力の制限でVBやJAVAなどで画面を作ることは多いけど、Web2.0でどのようなメリットがでるのかわからないです。。。。
    つか、関係記事を読めよというつっこみは重々わかってます(大汗

    いいね

  8. 私もダム端で十分派です。
    そもそも,IT業界全体が消費者のニーズを大きく越えたところで競争してるように思えて仕方がありません。
    Internet+ワープロで十分という消費者が,Intelの3.0GHzを必要としているわけがない。
    一方で携帯などの組み込み機器は真っ当なところで競争しているように思います。
    彼等はいかに限られたアプリケーションを省電力,省CPUで性能保障するかに注力しています。

    いいね

  9. Consumerの分野はわかりませんが、Businessとしてはこれからダム端的なクライアントの要望は増えてくるでしょうね。
    なまじPCが賢いものだから、通常業務以外にもインターネットもメールもゲームもなんでもつなげて遊ぶことができてしまう。
    それどころ簡単に会社のデータがPC経由で持ち出されてしまうため、セキュリティの問題もある。
    よってPC普及が企業内の生産力を上げるどころかむしろ下げる要因となりつつあります。
    >>takanoriさん
    >そもそも,IT業界全体が消費者のニーズを大きく越えたところで競争してるように思えて仕方がありません。
    私も同意なのですが、その一方「こんなの広まっているんだからCatch Upしないと」と煽られてしまうのも、また消費者心理だったりしませんか(泣)

    いいね

  10. >みなさん
    シリアル通信でキャラクタ表示・入力する本来のダム端とXターミナルやWindowsクライアントなんかのGUIターミナルが、ITRONとBTRONの失敗と成功の記憶がごっちゃになってない?

    いいね

  11. 皆さんコメントありがとうございます。taka-san
    のおっしゃるとおり、ダム端の定義が曖昧ですね。。。続編にてコメントのお返しはしたいと思いますのでお待ちくださいませ。

    いいね

  12. 「ダム端」という言葉は知りませんでした.
    Networkがカバーエリア,速度や利用コストの安さに関してrichになることによって2つの方向性があると思います.
    一つは,chikaさんのおっしゃるThin Client(ダム端)です.これはコンピュータやさんの発想でしょうか?
    いつでもどこでもユビキタス的な環境で繋がりNetworkのbottleneckがなければダム端で十分.処理はサービスする側がしてあげるから端末は楽しててねというものですね.複数端末のデータを共有できる点もいいですね.Google Services/Toolsの発想の根底にあるものだと思います.端末はINPUT(keyboardなど)とOUTPUT(displayなど)さえできればいいというWearable computingなどにも繋がります.
    外食派になって主婦が家事から解放されるような感じでしょうか?
    もう一つは,既にまささんのコメントにもありますP2Pです.これはネットワークやさんの発想でしょうか?
    Wearable/mobile端末はサーバサービスやさんのサーバだけではなく,見知らぬ人のサーバや端末も利用したいというものです.skypeなどが代表例でしょうか?
    お葬式を出すなどのイベントの要求があれば,近所の人が手伝いに来てくれるというような感じでしょうか?
    私の意見では次の通りです.
    Networkのbottleneckから開放されつつある以上,これら両方を使い分けるにしろ融合するにしろThin Clientには進んでいくと思います.
    しかし,このどちらも著作権問題があるかも知れませんし,仕事データを他社のサーバサービスに置けないという問題もあると思います(私はBloglinesを仕事では使いません).

    いいね

  13. ディスクは持たないが処理はする端末、はいかが?
    サーバサービスまたはファイルサーバを使用します。
    これだとP2Pもマルチメディアも可能ですよ。
    既に商品化されてないかしらん?
    また、Wearable/mobile端末では、特定のストレージをネット上で利用すると考えると、業務ではP2Pよりサーバサービスに近くなるような。
    いずれにしてもダム端というより、インテリジェントな端末、だけど軽量、っておしゃれじゃない?

    いいね

コメントする

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中