村上ファンドとCerberus

先月ちらりと日本にいたのだが、ホテルでテレビをつけたら村上ファンド(と呼ばれてるようですね)の村上さんが大写しになっていた。至近距離でたかれ続けるフラッシュをものともせず、声高に阪神電鉄の筆頭株主になったことについて語っている。

なんだか、とても不思議な感じがした。ヘッジファンドの主がお茶の間向けのテレビ番組で芸能人みたいに扱われているわけで。日本では、ヘッジファンドなんていう玄人ビジネスをするのでも、スポーツ新聞からテレビ番組まで、ありとあらゆるところに露出しないといけないんですねぇ、疲れるねぇ、というのが正直な印象。

(ちなみに、最近アメリカでは何でもかんでもヘッジファンドと呼ばれてマス。元々は、ちゃんと損をしない「ヘッジ」をかけるからヘッジファンドだったのですが)

村上さんとは、一度だけ知人のパーティーで会ったことがある。確かM&Aコンサルティングを立ち上げたばかりで昭栄を手がけていた頃かな。にこにこして、物静かで温厚そうな感じの人だった。そのとき話した感じと、テレビに映っている姿が、随分違って見えたのも不思議さに輪をかけた。

で、ちょっと古いが10月3日号のBusiness Weekの記事:
What’s Bigger Than Cisco, Coke, Or McDonald’s?
Steve Feinberg’s Cerberus, a vast hedge fund that’s snapping up companies — lots of them

ヘッジファンド、CerberusのトップのSteve Feinbergについての7ページの特集。Cerberusといえば、確か日債銀を買ったファンドですな。

Cerberusは、バリバリと世界の会社を買いまくっている。現在進行中の話だけでも、Albertson’sというスーパーのチェーン、Morgan Stanleyの航空機リース事業、イスラエルで二番目に大きい銀行、Leumi。Albertson’sだけで、買収額は160億ドルと、2兆円近い。・・・以上記事の受け売り。

ファンド総額160億ドル、過去10年間で28社を買収、これに加えて15%以上の株式を取得した企業は15社、だそうだ。傘下の企業の売上合計は300億ドル、3兆円超。(・・・と聞いても、実はたいしたことがないような気がするんですが。三菱商事は、売掛金だけで2兆円とかあったしなぁ。とはいうものの、シスコの売上より大きいんですね。)

で、そのトップのFeinberg氏は1960年生まれ、ということで、多分村上さんとほぼ同じ年。何が違うかというと、全くメディアに顔を出さないこと。

Business Weekの記事も本人へのインタビューは拒否されたとのことで、なし。ファンドのスポークスマン的存在はNo.2に任せているそうな。記事中「大学の卒論は『売春とドラッグの合法化』」とあるが、他にあんまり書く事が見つからなかったのか。記者泣かせですね。去年の推定年収は5千万ドル(55億円)。ブルーカラーの育ちで、飲み物はバドワイザー、乗ってる車はFordのピックアップトラック、という、ファンドマネジャーとしては異色の人。

しかし、Albertson’sという庶民に馴染み深いスーパーの買収をはかっているというのに、テレビとか新聞でこの人が出てくることってまずない。まぁ本人が出たくないから、ってこともあると思うがそれにしても。

例えば、日本でどこかのファンドがセブンイレブンを買収しようとしている、てなことになったら、テレビから雑誌から新聞から、大騒ぎですよねぇ。「メディアに顔を出したくない」と本人が思おうがなんだろうが、絶対付きまとわれるだろう。それだけで疲れちゃう、と思うような人は、日本でヘッジファンドなんかやんない方がいいんでしょうねぇ・・。

日本とアメリカで、どうしてこんなに違うんだろう。まぁ、きょうび企業買収なんてアメリカでは全然珍しくない、ということはある。もはやノベルティがないんですね。

とはいうものの、じゃぁ、KKRがNabiscoを買収したりして、アメリカでのファンドによるM&Aのはしりだった80年代には、アメリカでも普通のテレビにKKRのトップが登場するようなことがあったんだろうか。イマイチ想像できないですけど。アメリカの普通の人が、企業買収なんていう複雑なことに興味を持つとは思えないので。

そもそも、一般的なアメリカ人はあんまりニュースに興味がない。「アメリカのテレビ局にとっては、ニュース番組は採算が取れないビジネスになってきている」とラジオのトークショーで聞いたこともある。政治・経済ニュースはまだしも、芸能ゴシップ・ニュースにすら関心薄らしい。以前Economistで、「アメリカの芸能ゴシップ雑誌の売上は、イギリスの半分」と書いてあった、と記憶。(単にイギリス人が異常に芸能ゴシップ好きなのかもしれませんが。)

うーむ。しかし、80年代当時実際の姿を知らなければ、真実はわからない。アメリカの一般メディアで、当時、企業買収がどんな風に扱われていたか、覚えている方がいたら教えてください・・・。

(ちなみに、Businsess Weekで村上ファンドの最新の記事もあり。High Season For Raiding フリーで誰でも読める・・・と思います。多分。)

村上ファンドとCerberus」への16件のフィードバック

  1. 以前任天堂がマリナーズに資本協力しようとして(当時は
    マリナーズが資金難だった)すごい問題になったと日本で
    報道されたのを思い出しました。
    報道されたのは日本で、だけで、アメリカでは静観だった
    のかもしれませんね。

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  2. (このBlogを読んでいる読者の一人から聞いた話なのですが)
    日本に進出をしようとしているファンドが必要とされることは、知名度とのことです。
    いかに提案の条件が良くとも、知名度が低いと躊躇されることが多いですが、
    知名度があることで、話が進みやすくなるため
    日経ビジネスなどに特集を書かせると よい、と
    助言のひとつにあったそうですが。
    (D.Iさんフォローお願いいたします。)

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  3. 村上氏はメディアを巻き込むことで、MAを有利に進めようという考えがあるのではないでしょうか
    確か、100億の部長、清原さんはTVにでていなかったような気がするのですが

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  4. 遠藤-san
    多分、地元シアトル(でしたっけ?)では報道されたのではないでしょうか?アメリカって、違う場所に行くと、ぜんぜん興味がなくなってしまうので、日本みたいに津々浦々で語られるニュースになるには、ハリケーン、カタリーナくらいの規模にならないと。。。。。
    Simon-san,
    あー、そういえば、アメリカから日本にソフトウェアを持っていくときも、まずメディアに働きかけるのが大事で、日経BPとか(古いか?)に載れば売れる、っていうのがありました。日本では何でもそうなんでしょうか。
    さえぐさ-san,
    清原さんって誰ですか?

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  5. 日本は、TV、銀行など政府規制や既得権益でガードされた、「護送船団方式」の業界があります。従って、これらを規制緩和する、小泉首相は「遅れてきたサッチャー」と呼ばれています。いずれ、その後にバランサーとして、「遅れてきたブレア」も登場するでしょう。なお、ホリエモンや村上ファンドは「一時的現象」であろうと。割安な株価を持つ企業は、種切れになるので。なお、アメリカでは、例えば、以前は、Carl Ichanなどによる航空会社の買収は、BWのトップ記事でした。

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  6. 原さんは昨年度納税額37億のふぁんどまねーじゃーです。
    ちなみにかれは東大卒、スタンフォードNBAです。

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  7. snowbees-san,
    アメリカは
    既得権益の増大による産業・経済の硬直化(日本の護送船団方式)→ LBOによる革命 → ベンチャーの台頭、という流れで今に至っています。日本では、LBOとベンチャーが合体して起こっているところが特徴でしょうか。(楽天とかライブドアとか)アメリカでもAOL・Time Warnerがありましたけど。
    Icahn、今はFairmont Hotelsを攻撃してるみたいですね。数ヶ月前は、Blockbusterを揺さぶってましたが・・。
    ただ、この手の話がBWのトップ記事になるのは、日本で言えば日経ビジネスに載るのと一緒では?それなら納得。でも、「Icahn乗っ取り!」なんていうテーマのが、アメリカのタブロイド紙とか、フツーの主婦が見るようなテレビのトークショーで語られたりしたんでしょうか・・・。そうだったら、私にとっては、アメリカについての目からうろこの発見なんですけど。。。。
    あつし-san
    なるほど、先輩なんですね。そのよしみで、私にも納税してくれないでしょうか;-P
    昔MBA受験の時、渋谷の本屋で
    「MBA受験関係の本はどこにありますか?」
    「スポーツはX階です」
    「・・・???あ、NBAの本じゃなくて、ビジネススクールの参考書です。」
    「専門学校はY階です」
    という会話をしたことがあります。疲れました。ちょっと。

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  8. 日本のマスコミ報道は、視聴率稼ぎのIQレベルです。政治報道は、NHKを含めて、小泉・自民党への提灯記事・ヨイショばかり、経済報道も、トヨタ自動車へのヨイショ以外に、ホリエモン騒動から楽天騒動です。アメリカのマスコミは、”question authority”を原則にして、良心的な報道番組や姿勢があり、また、多様性を求める風土の様ですが。

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  9. > snowbees様
    アメリカのマスコミについて下記の様に考える次第です。
    1.911以降かなり右傾化が大きいと思われます。
    2.報道番組と専門番組の質は確かに高いです。
    3.CNNでもトピックがアメリカ中心のニュースに偏っています。
    日本におけるマスコミが 
    総合的に品質が低い
    ということに対しては、両手を挙げて賛成します。
    だから今はCSのBBC JapanとFrance5の
    契約を渇望しているところです。
    (以前The Economistの日本における契約購読者数が
    少ないという話が出ましたが
    )
    BBCJapanはどうなのでしょう?)
    どっとはらい

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  10. 80年代にまだM&Aがアメリカでも目新しかった頃はCorporate Raidersと呼ばれる人たちも大衆向けのメディアで良く取り上げられていたような気がします。その頃のアメリカは70年代の不況からやっと抜け出そうとしていたし(あの頃のアメリカの貧乏感はここ数年の日本と同じ感じでした)、今みたいにアメリカ中でビリオネアが誕生する以前の事ですから、一夜にして大富豪になる人も珍しかったんだと思います。NYで取り上げられるのはHenry Kravisのような人たちで、カリフォルニアで話題になったのは、Aaron Spellingでした。シリコンバレーも今よりずっと小規模だったので(インテルが386をやっと出した頃で、Windowsはまだ登場していませんでした)、カリフォルニアでお金持ちの上位に上がっていたのはハリウッドの人たちだったんです。当時のTimeやNewsweekのようなメジャーな雑誌でもCaroline Rohm(Kravis氏の元夫人)や、Ivanna Trump(懐かしいですね)、Candy Spellingが開く超豪華パーティーを取材した記事がしょっちゅう出ていたと記憶しています。
    でもそのうちMichael MilkenやIvan Boeskyのスキャンダルが表沙汰になり、87年の株の暴落やS&Lの破綻で80年代のM&Aブームも幕を閉じて、ウォールストリートの人たちもなりを潜めてしまいました。でも映画のWall StreetにMichael Douglasのような大スターが主演していたのですから、今よりは一般的な関心も高かったんだと思います。
    そのうち日本の景気が今よりうんと良くなって、企業買収も珍しくなくなったら村上氏や堀江氏のような人たちへのメディアの関心も薄れていくのではないでしょうか。

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  11. snowbees-san, Simon-san,
    日本の報道関係者がアメリカの報道関係者よりモラルが低いのか??
    1)個人の報道人としてのモラルを自分で背負うか、企業のモラルを背負うかの違いはあるかも。
    2)それ以上に、特定の、いわゆる「高度な」報道を好む人をターゲットとするメディア(専門番組、CNNなど)を成立させるビジネスの仕組みが違うのでは。
    2)については、CNNの放送設備を見学にいった日本のテレビ局の人たちが「設備がぼろい」という印象を受けて帰った、なんてこともあったらしいですが、「設備に金をかけずに質の高い報道をする。しかもターゲットは一部だけ」みたいな新しい方法がなりたっているのがアメリカの放送業界では・・。
    専門性の高い番組・局というのは、日本で言えば「日経ビジネス」を読む層だけを対象にして成り立っているわけで。(グローバルに配信しているとはいえ)
    日本でも、「対象は、日経ビジネス読む人、および、それに類する人だけでよい」というテレビ局があれば、そこで働く報道ヤさんたちも、かなり高度なシゴトを見せるのではないでしょうか。
    ちなみに、BBC、いいですよねー。BBCラジオのインタビュー番組とか好きです。あまりに辛らつで。イギリス人って、歯に衣着せないところがすごい。
    Yuki-san,
    そうか、昔はもっと華やかだったんですね。確かにTrumpさんは話題でしたね。
    日本で私がびっくりしたのは、、アメリカで言うところの昼のトークショー(Rossie・・・っていうのは古いのかな?)とか、雑誌のPeopleとか、ああいうB級メディアも「ホワイトナイトとは」などと解説してあっちゃうところですが・・・。とはいうものの、そもそも、日本のスポーツ新聞に対応する紙媒体、日本のワイドショーに対応する番組って、アメリカにないで、1対1比較ができないのですが。

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  12. 18年、ロンドンで生活し、最近、日本に戻ってきました。確かに、村上氏が芸能スター並にとりあげられているのは、一種の驚きと戸惑いを感じますが、KKRが、RJRに敵対的買収をかけたときは、もっと、派手派手の米国マスコミネタだったように記憶しております。

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  13. どうもー。
    村上ファンドで検索したらたどりつきました。
    おねーさん、すごいね。
    めっちゃかっこいいな。

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  14. kentaro aoki-san,
    なるほど、やはりRJRの時はすごかったんですね。ちなみに、ビジネススクールでRJRの資金調達がらみのファイナンスのケースがありました・・・。
    通りすがり-san,
    🙂

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