RFIDのAlienがシリーズH

先週最大の投資を集めたのはAlien Technology。RFIDのタグを作っている会社ですが、今回の増資金額は$66 million、という巨額なのに加え、シリーズH、というのがキモです。スタートアップができて最初の増資がA、製品ができたところでシリーズBを集めて、セールス・マーケティング、事業が伸びてきたところでシリーズCを集めてどーんと拡販し上場、というのが美しい姿。

以降、シリーズD、Eと進むごとに「この会社大丈夫?」といった危機感が高まります。シリーズFともなると、かなり崖っぷち。それがHです。すごいですね。しかもリードインベスターは、日本のサンブリッジ。(正確に言うと、サンブリッジがシリコンバレーに持つVCのSun Bridge Partners。)サンブリッジはOracle Japanで財を成したアレンマイナーさんの会社ですが、 $66 million中$15 millionを出しています。勝負に出た、という感じですね。

ニュースソースのVentureWireでも

Alien just took in $66 million in Series H financing –
yes, that’s the eight letter in the alphabet – and one has to wonder
how investors in the round expect to make a sound return at such a late
stage. SunBridge Partners, a new investor in Alien that led the round
and kicked in $15 million, says this round is finally the company’s
last before an IPO, which will likely be a rather popular one.

ということで、「もうこれが最後のベンチャーキャピタルからの投資。次はIPO」と。しかし、既にAlien Technologyは$200 million以上集めてしまっているので、果たして投資家にどんなリターンがあるかが見ものです。ここまで来た以上、上場するなりbillionドルの桁の企業価値にならないと・・・。

なお、Alienの売りは、UC Berkeley発「Fluidic Self Assembly(FSA)」製法でタグ製造のコストを下げ、アメリカの流通の王者たるウォルマートに採用されていること。FSAは、同社がNanoBlocと呼ぶICを、液体に混ぜてタグとなる素材の表面の上に流し、その結果ICがタグの所定位置にはまっていく、という製法で、これにより100万個以上のオーダーであれば一個当たり20セントでできるとしています。

RFIDの使い道は無限にありますが、アメリカでまず実用化されているのはサプライチェーン系での用途が主。変わったところでは、カジノでチップにつけてユーザーの利用具合を見る、という目的のトライアルも行われたとのこと。Technology Reviewの8月号のThe Digital Pit Bossいわく

While a few casinos are testing prototype RFID-chip systems, none has yet implemented them, says John Kendall, president of one RFID-gaming chip maker, Chipco International of Raymond, ME. When Garrow investigated RFID chips, he concluded they were too costly, though he acknowledges that prices have since come down. (The newest versions add about 50 cents to the 80-cent price of a traditional casino chip, Kendall says.) Moreover, while RFID technology provides detailed information about players’ betting patterns, it reveals nothing about the cards they base their bets on, and therefore nothing about their skill at blackjack.

高すぎるというのに加え、細かいプレーヤーのスキル判断ができない、という問題があり、RFIDを実際に使うにはいたっていないそうですが。カジノというのはすごいハイテクで、「顔で認証」というのを取り入れて、犯罪者やいかさまを行う人を見張っているカジノもあるそう。

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先週のインサイダー取引1位はOracleのBoard of Chairman、Jeffrey Henleyで$2.8 millionでした。

それでは。

(情報ソース:VentureWire, San Jose Mercury News)

RFIDのAlienがシリーズH」への3件のフィードバック

  1. いつも楽しく拝見させてもらってます。
    そこで、いつも気になっている事なのですが、今週のインサイダー取引というのは、全部逮捕されているということなのでしょうか?

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  2. ふふふふ、やっとその質問が!!Thank youです。
    インサイダーでも、株の取引をするときに、SEC(米国証券取引委員会)に取り申し出ていれば合法です。
    とはいっても、「世間が知らず、内部の人たちだけが知っている会社の実情」がある際に売買すると違法なのですが、(たとえば予測されているより売り上げが少ないことを社内情報で自分は知っているが、それがまだ世に発表されていないところで株を売るとか)、大量の株を売るには、そういう状況を避けるのが大変。そういう際は、一旦株をまとめて預託、予め設定した条件で機械的に売っていく、という方法が取られます。これも、SECの10b5-1という規定に基づく合法的な方法で「blind trust」と呼ばれます。
    なおこのあたり、ちらりちらりと、過去の「先週のベンチャー投資とインサイダー取引」のエントリーで説明してあります。。。このページの右上のArchivesをクリック、そのページの下のほうにカテゴリーごとのアーカイブがありますので、そこで「先週の・・・」をクリックすると、このカテゴリーのみの過去のエントリーが出てきますのでご興味があればどうぞ。

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  3. 解説ありがとうございます。恥ずかしながら聞いてよかった…気になっていたもので。
    ちょうど2ヶ月前のエントリーで「blind trust」の説明があったのですね。見逃してました。ありがとうございました。

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