神経経済学

最近耳にする機会が増えてきた単語がNeuroeonomics。脳がどう機能するか、という神経学的見地から人間の経済的行動を理解しようという、超ミクロ経済学。これまでの「金で全ては割り切れる」という前提の経済学では説明しきれない行為を解明しようとするもの。

例えば、Business2.0のWhy the Caveman Loves the Pitchmanでは、芸能人が出ているコマーシャルがなぜ購買行動を変えるのかに触れている。

Neuroscientists call this the “mere exposure effect”: The more we see a face, the more we like it. Brain scans would show that when Beyonc�pops up again and again in L’Oreal advertisements, dopamine and phenylethylamine flood our brains, triggering positive emotional states. The result: “If we see a celebrity time and time again, we start to like them,” Bailey says.

「繰り返し見ると、それだけで好感を抱いてしまうから」と。で、その好ましい親しみを感じる芸能人が勧める製品がいいものだと思うようになる。(しかし、見れば見るほど嫌いになる、ということもあるかと思うのだが。)ちなみに、「芸能人(的な目立つ存在)が見たい」という欲求は猿にもあるのだそうだ。

rhesus monkeys will give up cherished treats — in other words, they’ll actually “pay” — to peek at photographs of dominant troop leaders.

群れのリーダーの写真を見るためだけに、好きなおやつを諦める(=人間で言えば金を払う)と。

また、Business WeekのWhy Logic Often Takes A Backseatは、これまでの経済学では「例外」として処理されてきた人間の非論理的経済行為も、神経経済学で説明できるのでは、としている。

Brain scans show that when people feel they’re being treated unfairly, a small area called the anterior insula lights up, engendering the same disgust that people get from, say, smelling a skunk. That overwhelms the deliberations of the prefrontal cortex.

「理不尽な扱いを受けている」と思うと、脳の(情動を司る)前島が活性化、スカンクの匂いをかいだような嫌悪感が沸いてきて、理論的に物事を判断する前頭前野より強力に働く、と。(記事では、「選手側が強硬にストライキを続けて、結局シーズンが丸ごとキャンセルされたアイスホッケー」を例に挙げている。以前Negotiationというビジネス交渉の専門誌でも同じように経済的に理不尽な決断で決裂する交渉についての例が挙げられていたが、そんなことをいわれるまでもなく、
「スカンクの匂いをかいだような嫌な気持ちがして、自分が損をしてでも相手に得をさせない行動を取る」
といった例は枚挙に暇がないだろう。)

One of the most fruitful avenues of neuro research is “time inconsistency.” When people decide about the distant future, they’re roughly as rational as economic textbooks assume. But when faced with a choice of whether to consume something now or delay gratification, they can be as impulsive as chimps.(中略)So Laibson and others scanned people inside MRI machines and discovered two parts of the brain operating in radically different ways. For decisions about the far-off future, the prefrontal cortex takes a long-term perspective. But for decisions such as whether to buy another chocolate bar right now, the limbic system takes over and demands immediate gratification.

遠い将来のことだと理性的に判断できるのに、近い未来のこととなると、突然チンパンジー並みに刹那的になるのは、前者では前頭前野が働くのに、後者では原始的な大脳辺縁系が働くから。

男性は魅力的異性を見るだけで刹那的になり、遠い将来の見返りより、少なくてもすぐに手に入る見返りを求めるようになるという実験についての話は以前書いたが、野生がより活性化するということか。

昔、村上春樹が、初対面の女性を見て「この女が好みだ!」と唐突に心を揺すぶられる体験をし、それはまるで自分でも知らない別の人格が自分の中に潜んでいて、それが突然出現してきたようだった、というようなことを書いていましたが、これも辺縁系に乗っ取られたのでしょうか。

神経経済学」への6件のフィードバック

  1. 人間の非論理的経済行為に関しては、行動経済学なんていうのもありますよね。

    クリックしてikeda.pdfにアクセス


    この資料を見ると”遠い将来のことだと理性的に判断できるのに、近い未来のこととなると、突然チンパンジー並みに刹那的になる”という現象は時間割引率(時間選好率)という概念で説明されていますが、なるほどさらに詳細に突っ込むと、実は脳のレベルでのお話になるのですね。。

    いいね

コメントする

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中