ソーシャルネットワークはビジネスに使えるか?

日経産業新聞に2004年11月26日に掲載されたコラムです。

 シリコンバレーにアルファ・ディテールという医療関連のIT(情報技術)ベンチャーがある。一般に、薬の販売では、セールスマンが医師を訪問して効能を説明するディテーリングという手法が取られるが、これをインターネットで代用しようというものだ。

 薬や医療機器などのマーケティング調査もする。製薬会社等を顧客とし、医師や看護師などに情報を提供したり、彼らを対象としたオンラインアンケートを行う。

 さて、そのアルファ・ディテールが最近始めたサービスに「キー・オピニオン・リーダー調査」がある。特定の医療分野で、影響力を持つ「キーマン」のマッピングを行う、というものだ。「この分野の疑問は誰に聞きますか」といった質問をオンラインでアンケート。その結果を統合すると誰がキーマンかわかる、という仕組みだ。

 製薬会社が薬を売るとき、キーマンに「この薬はいい」と認めてもらえれば、そこから草の根的に情報が伝わる。情報が伝わるだけでなく、「あの人が言うなら」という「お墨付き」も加わる。製薬会社は、こうしたキーマンに集中的に営業をすることができれば、大勢のセールスマンを繰り出し、じゅうたん爆撃的にすべての医師にセールスをするよりずっと効率が良い。

 最近、「ソーシャルネットワーク」と呼ばれるオンラインサービスが盛んだ。「誰が誰と知り合いか」という人間のネットワークをオンラインに落とし込もうというもの。ユーザーは自分のプロフィルと、誰が知人かを登録する。

 結果として「誰かに紹介してもらうには誰に頼めばよいか」がわかることとなる。「デジタル芋づる」とでも言おうか。ソーシャルネットワークは、日本ではより「遊び」の色彩が強い形で進行中だが、アメリカではビジネスのネットワークを主体としたものが多く、企業内システムとして販売されるケースもある。

 アルファ・ディテールのキーマン調査は、ソーシャルネットワークが直接ビジネスになるという好例だ。

 しかし、このキーマン調査がそのまま日本で受け入れられる可能性は低いのではないか。というのも、日本では、医療のみならず多くの業界は一部の「著名人」を頂点としたピラミッド状になっており、その「著名人」が誰かはその業界の人なら誰でも知っている、ということが多い。であれば、あえてオンラインで調査するまでもない。

 一方、アメリカでは、専門領域が非常に細分化されており、それぞれの領域で権威が存在する。しかも若手でも短期間の間にめきめきと台頭する人がいるのに加え、大学・ビジネスの双方で人材が流動する。結果として、アメーバ式にネットワークが広がり、しかもそれが常に変化する。

 さらには、日本では肩書が重要だが、アメリカでは個人が重要、ということもある。どんな会社・大学のどんな肩書を持っているかよりも、個人としてどれだけ信用があるかが問われるのだ。

 そんな日米のビジネス慣習の差が見え隠れする「キーマンネットワーク調査」であった。

ソーシャルネットワークはビジネスに使えるか?」への10件のフィードバック

  1. SNSд╧▒№дм┐╝дд

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  2. chikaさん、こんばんわ、はじめまして、
    トラックバックだけさせていただいておりまして、ごあいさつがおくれてしてしまっておりました。
    SNSが今後どのようにすすんでいくか、非常に興味があります。先日、少々勉強会をさせていただいたのですが、日本でもビジネスベースでのSNSの利用を試みている企業があるようです。ついこの前、超ビジネスに特化したSNSを日本語で立ち上げようとしてる方に会いました。いまはまだぎりぎり水面下ですが、これから一気にいろいろな形で現れてくるのではないでしょうか?
    http://hidekih.cocolog-nifty.com/hpo/2004/11/talking_night_c.html
    また、昨晩たまたまYAMAHAのポータルサービスを使ってみたのですが、これなどは音楽をキーワードとする立派なSNサービスと言えるのではないでしょうか?特に自作の音源を作れる方達のコミュニティーにとっては、文字道理の「ソーシャルネットワーキング」になるのだと感じました。
    http://players.music-eclub.com/players/
    勉強会に参加してくださった手嶋さんが「SNSは単なる機能だ」と言い切っていらっしゃいましたが、昨今のビジネス的な動きを見るとに否定できないなと感じております。これからしばらくはSNS的な機能をもったネット上のサービスが主流になりそうですよね。いや、手嶋さんがそうするといってもいいかもしれません(笑)。
    http://blog.livedoor.jp/tejicube/archives/10015055.html
    日々の活動の中では、旧来型のネットワークにどっぷりとつかりながら商売にいそしむ私としてはSNSがこれからどうビジネスに生かせるかは目を離せないと感じております。
    p.s. もうひとつおわびしなければならないことがあります。昨日、木村剛さんの「トラックバック横丁」に一番のりがしたいがために記事を書き、その中でお名前を引用させていただいてしまいました。事後承諾となり、もうしわけございません。
    http://hidekih.cocolog-nifty.com/hpo/2004/11/sns.html

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  3. ひでき-san,
    SNSで金儲けができるか、ということに関しては、確かに日本でも十分可能性があると思います。ただ、[
    ビジネスでのキーマンを探す]という狭い目的に関してはどうかな・・・・、と思うのですが。
    日本はやっぱり消費者ビジネスの国。消費者向けのあっと驚くSNSビジネスモデルを日本発で世界に発信して欲しいですね。
    あ、あと、私の名前・ブログエントリー双方に関し参照・リンク頂くことは全く構いませんのでお気遣いなく。っていうか、よろしくお願いします。

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  4. ソーシャルネットワーク

    ITジャーナリスト渡辺千賀さんの記事に 「ソーシャルネットワークはビジネスになるか」というのがあり なかなか面白かった。   日本におけるソーシャルネットワーキングサービ��…

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  6. MIXIは20万人SNS

    Press: ソーシャルネットワークはビジネスに使えるか?こういう記事がありました。なかなか興味深いです。ユーザー数が1年で急増したソーシャル・ネットワーキング・サービス / デジタ�…

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  8. 「ポジタル」という位置情報利用のSNS&SBMサービスを始めました。
    ほぼ全機能が携帯電話、PHS対応となっています。
    どなたでも参加できます。
    よかったら使ってみてください。
    http://posital.jp

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