イーベイ経済

日経産業新聞2004年7月6日に掲載されたコラムです。

 インターネットオークションのイーベイで生計を立てる人が増えている。昨年一年間に同サイトでの取引に参加した人の総計は三千万人で、取引額総計は二百四十億ドルに及ぶ。四十万人以上がイーベイでの取引を継続的ビジネスとして手がけ、うち十五万人はこれだけで生計を立てていると推測されている。

 その中には、育児のために仕事をやめ家庭に入った後、アンティークの販売で月商十万ドルを上げるようになった二児の母親もいるし、三人の子供を抱えて離婚した後、イーベイ・ビジネスの稼ぎで家を買った人や、音楽CDの販売で年収十万ドルとなった人もいる。

 ネット・オークションでの販売ビジネスが女性に人気なのは、時間が柔軟に使えるから。頻繁に顧客対応をする必要はあるが、ほとんど家でできるし、一日のうち自由になる時間を割けばよいので、子供の面倒を見て家事をする時間も十分に取れる。

 最初は、身の回りの不用品の整理から始め、かなりのビジネスになることに目覚めて、骨董(こっとう)・希少品、ブランド物など、分野を絞って商品を扱い事業を拡大する人が多いようだ。

 ビジネスに関心を持つ障害者にとっても大きなメリットがある。米国には、障害者にイーベイでビジネスする方法を教えるDisabled Online Users Associationという非営利団体まである。代表のマージー・スミス氏自身も障害者で、月商一万ドルの販売事業をイーベイを通じて行っている。

 こうしたビジネスが盛んになるにつれ、イーベイ上で「間違ったつづりで出品されている商品」を安値で買おうと目を皿のようにして探す人たちも現れてきた。

 名称のつづりを間違って掲載すると、買い手が商品名を検索しても見つからない。結果的に入札が少なくなり、市価より安くしか売れない。しかし、無論つづり間違いがあっても商品の中身は通常と変わらない。正しいつづりで再度イーベイで売ればもうけられる。

 「再販狙い」の人たちは、オンラインのみならず、現実の店舗でも「安く買える機会はないか」と虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。

 例えば、昨年末にデジタルビデオレコーダーのリプレイTVが間違って安く売られる事件があった。サービス年間契約料込みの価格体系から、ハードだけ売ってサービス料は別という価格体系に変更したのに、「サービス込み」という表示のままだったのだ。

 インターネット上では掲示板などを通じて即座に「お買い得情報」が流れ、「再販狙い」の人々が全米の店舗であっという間に買い占めてしまった。イーベイで再販すれば高く売れるという見込みがあってのことだ。
 イーベイ最高経営責任者(CEO)のメグ・ウィットマンは二〇〇一年に「イーベイはダイナミックで自律的な経済だ」とアナリスト向け発表で語ったが、ほとんどの人はそれを聞き流し、「ちょっと大規模な蚤(のみ)の市」くらいにしか思っていなかった。

 しかし、イーベイはその圧倒的な規模により、個人の零細事業者にも大企業並みに顧客に到達することを可能にし、主婦や障害者といった人たちにも新たな機会を与えつつある。

 インターネットが経済に本格的な影響を与えるのはまだこれから。「イーベイ経済」は、その影響の一つを垣間見ることのできる先端事例なのだ。

イーベイ経済」への2件のフィードバック

  1. Greetings,
    I am an Australian living in Fukuoka. I assume that you are able to communicate in English, however it is said that one should never assume anything. Anyway, I was connected to your site when typing in coffee cart in katakana on a search. I am trying to set up a coffee cart franchise from Fukuoka. I cannot read sufficient Japanese to understand what was written on your site however, if you have any information for me, I would be very appreciative. Sincerely Phillip

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  2. I think you probably came across my blog entry regarding career choice. Unfortunately, it was about an investment banker who decided to start a coffee cart business and miserably failed because she could not stand its lack of intellectual stimulation. I am not saying coffe cart business is bad, though. The purpose of mentioning the anecdote was to explain why it was usually a bad idea to radically change one’s career. Good luck on your venture!

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