[インターネットで聞ける英語素材を利用したヒアリング練習サイトListen-ITを作りました。このblogの英語関係エントリーもそちらにまとめてあります(2005年5月)]
私は英語を勉強するのが嫌いだった。暗記科目は退屈なので。しかし、英語を勉強するのは嫌だったが、英語を話せるようにはなりたかったので、泣く泣く勉強した。
嫌々やったせいで、逆に教わり方の問題点が目に付き
「こういう風に教えてくれればよかったのに」
と、後から思ったことがたくさんあった。というわけで、今日は特に「聞く・話す」に関して、
「もし私が今10歳だったらこう教えて欲しい」
という視点での、理想の英語教育です。ご参考まで。
1)12歳になる前に、とことん「耳から聞く英語」を教わる
人間の脳というのは、最初は何でもできるように生まれてきて、その後だんだんできないことが登場する、という発育の仕方をするらしい。やらなければならないことを効率よくできるようになるためには、何でもできる状態は無駄が多すぎるのである。「できないこと」が確立することで、「できること」がすばやくできるようになる。
で、「日常聞き分ける必要がない音を聞き取る能力」がなくなるのは、どうも10歳前後のようだ。このあたりまでに英語圏で暮らしたことがある人は、RとLの差が聞き取れる。13-4歳を越したらまぁNGである。
もちろん、個人差はあって、大人になってからでもできるようになる人もいるんだろうが、私の周りの帰国子女・バイリンガル・トリリンガルな人たちを観察すると、一般的には10歳あたりが峠のよう。
聞き取れない単語の正しい発音を覚えるのがいかに難しいか。VocabularyのようにLとRが混合する単語など、特に超難易度が高い。頭の中にスペルのテロップを流しているような感じだが、未だに時々どっちがどっちだかわからなくなって間違う。vocabularyは「vocab」のところにアクセントがあって、「lary」の方はどうでもいい感じなのでまぁよいのだが、LとかRを強調する単語など悲惨。
というわけで、12歳になる前に、文法もスペルもどうでもいいから、まずは耳から入る英語をひたすら学ばせる。ひたすら歌の練習だけでもいいかも。「ABCの歌」でもブリットニースピアズでもなんでもいい。中身はまぁ適当でいいから、丸暗記で覚えさせる、歌わせる。日本語にない音のところ(th/s, f/h, R/L, g/zなど)は特に重点的に聞きわけらられるまでゲーム形式でやってもいいかも。
このあいだどこかで、
「小さな子供に英語教育をしても無駄。I don’t know をI donnoとスペルしたりするようになる」
といったようなことを読んだが、いやはや何を言っているのやら・・・・。。。
「I donnoはI don’t knowと書くんだよ」
と教える方が、一生聞き取れない音があるのに比べたらずっとハンディ低いと思うんですが。
2)中学以降は、毎日10分でもいいから毎日リスニングの時間を設ける
普通の英語授業を一こま減らしてもいいから、その分を毎日に分散して、英語の文章を聞き取って穴埋めするとか、聞いたとおりに話すシャドーイングするとか、そういうことをする時間にする。
もちろん、この教育ができる先生を開発すること自体大変だと思う。
高校生のときホームステイから帰ってきてすぐ、英語のリーディングで当たった。当時の私は、日本の人が殆ど聞いたこともないオーストラリア英語バリバリであった。(私がホームステイに行く前など、オーストラリアがどこにあるか知らない」とか、「オーストラリアとオーストリアが同じ国だと思っている」なんてごく当たり前だった。私が行ってる1年の間にオーストラリア観光局が非常に力を入れて日本でPR活動を行い、一挙に人気渡航先になったのだった。帰ってきたとき「えー、オーストラリアに行ってたんだ、いいなぁ」といわれて驚いた。)
さて、リーディングの授業だが、読み始めたはいいものの、いつまでたっても先生からのストップがかからない。普通は、1-2段落で一旦きって訳に入るはずなのに、1ページを過ぎ、2ページ目も半ばになっても何も言われない。変だと思い、スローダウンして、上目遣いにちらちら先生を見ながら読んでいたら、
「あー、どこ読んでるのか、わからない」
と先生が告白。
まぁ、いきなりオーストラリア英語はハードル高すぎだとは思うが、それにしてもどこを読んでるかわからないほどわからないのは、英語教師としてはまずいんじゃなかろうか。
しかし、その辺の問題はテクノロジーでカバーできるはず。インターネットに接続したPCルームがあって、音声で流す教材は適宜配信される、とか。さらに、音声認識を使って、生徒が話した英語がどれくらい正しいか自動採点もできるかも。カラオケ自動採点ゲームのようなものだ。音声認識のコア技術は出来合いのものを使って、あとは採点方法とか、間違ったときの助言とかをカスタマイズすればいい。
この方法のもう一つのメリットは、一人でひっそり英語発音を学べること。
「英語を英語らしい発音で話すのは恥ずかしい」
という、謎の学習障壁がある。私も、上記のリーディングを当てられたとき、日本語風のカタカナ発音で言うべきかどうか迷ったのだが、なんだかそれもわざとらしいと思い、オーストラリア英語のまま押し切ることにしたのであったが、かなり迷った。しかしこの問題も、一人ずつブースかなんかでぼそぼそ練習するんだったら問題ない。
大きいところはこんなところでしょうか。これだけで相当成果に違いがでると思うんだけど。
渡辺さんへ
神谷です。今回こちらからメールです。
本コメント、西校時代を思い出しました?だれ?小菅先生?
勉強大切ですね。
ぼくも仕事(バイクエンジン)で壁にぶつかり、今日から高校・大学の教養時代の物理の本を開いて、力学基礎から見直しです。
なにせ泥臭い物理学の塊ですから。
あなたのおかげで、若返った感じです。
RとL、発音聞き取るの難しいですね。TOEICの引っ掛けに良く出ます。
ところで、最近日本は英会話学校がはやってますが?どう思います?私も行ってますが、ちょっとやめようかなって思ってきました。だってテキスト丸暗記学習だもん。確かに、外国の方としゃべれるのはいいですけどね・・・
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シリコンバレーにきて半年たちます。
33歳から必要にせまられてサバイバル英語を勉強してきた僕とネイティブの英語を自然に聞いてくる息子たち4歳、7歳では格段違いがありますね。
最初は家で英語の単語など教えていましたが、最近やめました。僕の発音を覚えることは何も意味がないようです。
Your english is pretty good. といわれて最初喜んでいましたが、最近やっと喜んではいけないことに気がつきました。
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chikaさん
以前,私のサイトにコメントを頂きましたどうもありがとうございます.
私の兄夫婦はHoustonに住んでいますが,その5歳になる子供の英語の上達度はすごいです.特に地元の幼稚園に行きだしてから,半年もすると後から入園した日本人の園児の通訳状態だそうで.やはり英語をしゃべらなくてはならない環境に放り出されるのが一番ということでしょうか.
私と話していると,時々混じる英語のところだけ完全に「英語らしい発音」するところがニクイです.
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>「英語を英語らしい発音で話すのは恥ずかしい」という、謎の学習障壁
あるある。いまだに、しゃべるのも聞くのも恥ずかしいです。
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> VocabularyのようにLとRが混合する単語など、特に超難易度が高い。
そうそう。squirrelなんて、難易度トップ3に入るんじゃないかって思います。girlなんかも、意外と難しい。
舌がつりそうになっているお父さんを尻目に、6歳までベイエリアで育った帰国子女の我が家の娘は、さらりと言ってのけちゃいます。耳だけじゃなくて、舌の筋肉のつき方とかもバイリンガル仕様になっているに違いない。
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こんにちは。
「土を作る」の時にコメントをいただきまして、ありがとうございました。梅雨の気候に助けられてか急にリッチな土っぽくなってきました。野菜のほかに朝顔を蒔いています。
このたびのお話を読んでいて、自分の経験した英語教育が走馬灯のように頭を駆けめぐりました。
外資の会社に勤めていた父は、事あるごとに「我流英語教育」を私に仕掛けてきました。
例えば小学3年生の時。
父はテープで私が英文を朗読しているを録音。
で、それを再生して聞いてみる。
聞き終わって、父は
「これが英語やと思うか~!なんやこれは!もっと英語らしく話さんか~!」と激しくコメント。
続いて、父の朗読を録音。「毎日聞きや」とテープを渡されて「ほう、これが”英語らしく”」か、と多少素直だった私はデッキを前に聞き続けたものです。
数年後、中学生になり、アメリカ人の英語指導助手に「アナタの英語はテキサス訛りだ」と言われました。
妹は父の英語の洗礼を受ける前に英語教室に通い、「ニューイングランド訛り」の英語を話します(と在住しているニューヨークの人に言われるそうです。)
三つ子の魂百までも・・・。に挑戦するかのように、ブリティッシュカウンシルでイギリス風の英語を聞きながら英会話の勉強をしています。効果はまだわかりません。トホホ
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高校生の時にボランティアで手伝いに行った老人センターに90歳を越すポーランド人のおばあさんがいました。その人は子供の時にアメリカへ来る前はポーランド語を話していたのですが、アメリカではずっと英語しか使わなかったそうです。それが歳をとって脳溢血になった後はポーランド語しか話せなくなってしまったそうです。その話を聞いて、人が話す言葉というのは一生を通じて変遷していくものなんだ、と漠然と思ってしまいました。
子供の頃から英語の勉強を始める人は発音は良くても、今度は逆に母国語もきちんと話すというチャレンジが待ち受けています。努力をしなければ英語しかできなくなってしまうし、いくら話せても読み書きを両国語で自信を持ってできるようにするにはやっぱり勉強するしかありません。それでもある程度の歳になると物忘れが多くなり、語彙が狭くなってしまうようです。だから、言葉を話すということはLifetime Processだと思います。
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外国語の発音を聞き取るというのは、その国の言葉を話す時に大変重要な問題ですね。私がいる香港では、広東語は7声とか8声とか言って発音の難しい言葉と言われています。香港には85年から居ますが、あるとき広東語の習得意欲を著しく殺ぐ事がありました。クントンという街の現地メーカーでエンジニアとして働いていたときのことです。
当時は香港に住み始めて数年以上経っており、広東語の音にはかなり慣れてきたという自負がありました。広東語は比較的簡単な話し言葉が中心なので、慣れてしまえばそんなに難しい言葉には聞こえないんです。
会社の同僚と話していた時に、発音の良く似たAという単語とBという単語を私が混同して使ってしまい、そのミスを指摘されました。そこで、何回もその発音を繰り返してもらいましたが、この2つの単語の音の微妙な違いがまったく聞き分けられなかったんです。
自分の耳で聞き取れない音の違いがあると認識した時から、広東語の習得意欲がすっかり無くなってしまいました。オフィスでは英語でも話しが通じていたので、それでいいや、と妥協してしまったわけです。英語ならRとLの問題だけです。
ちなみに私の英語はバリバリの香港イングリッシュです。いつぞやロスへ出張した時に、駐在生活が長い日本人から香港人みたいだと「お褒めの」言葉を頂きました。
インターに通う6歳の息子からも、つい先週に、お父さんの英語は下手だと言われてガックシしました。
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>「英語を英語らしい発音で話すのは恥ずかしい」という、謎の学習障壁
ありますねぇ、、、。日常でもあります。なぜなんだろう。
職場でも、英語で電話をかけなければならないときは極力、空いている会議室からかけています。
単なる自意識過剰なのですが。。。
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神谷さん
いえいえ、小菅先生じゃなくって、確か代用教官(というのか?)みたいなテンポラリーな人でした。小菅先生の英語は上手かったですよ。
英会話学校は暗記ばかり:暗記は基本ですので、暗記させること自体は王道です。。。。たくさん朗読すればおのずと暗記しちゃうもんなのでは。逆に暗記の量が少ないと、覚えるより忘れる方が多くて総和が増えないので、莫大に暗記を強制されるのがGoodだと思います。
CBさん ysakataさん
私の知人も、アメリカで子育てをしていて、家でしか聞かないような英単語に限り、子供がものすごい日本語訛りで
「そうか、俺の英語はこんな発音なのか」
とがっかりした、と言っていました。
Ideal Breakさん maruさん
英語発音恥ずかしい、はありますよね。あと、日本人なのにjimmyとかDaveとか英語名をつけてる人も恥ずかしかった。でも、うちのダンナのようにアメリカ生まれの東洋人で、当たり前のように英語名なのと接しているうちに慣れましたが。
Goさん
R-Lね。難しいですね。あと、Folkみたいに、「フォーク」なんだけど、実はちょっぴりLが発音されているらしいってのも、聞き取れないので難しいです。
pierreさん
いいお父さんですねぇ。すばらしー。テキサス訛りがまたかわゆいではないですか。
yukiさん
私も「年寄りになって、脳溢血とかで英語をすっかり忘れたらどうするんだ」と思いダンナに言ったところ
「あー、日本人もたくさんいるから、別に困んないんじゃない
という返事。オマエとの会話に困るのだ、と言ったら、「なるほど」で終わり。(夫婦で会話しなければならないという認識がなかったようです。家庭内無口夫婦なので)
新聞に載ってましたが、二ヶ国語話す人は脳が老化するのが遅いらしいですよ。一生勉強だけど代わりにいいこともあるかも・・・
bobbyさん
私なんか殆ど聞き取れない英語の音R-L以外に山のようにあります。ただ、R-L以外は、ある程度は上達していってますが。。。この間も、ラジオでOpen SourceをOpen sauceと間違って発音した司会の人が笑いながら、違う違うopen sourceといった・・・・のですが、早口だったこともあって、私にはその違いが聞き取れず、コンテクストだけで理解したのですが、結構基本的発音だけにショックでした。うーむ。
香港英語は、殆どイコールイギリス英語だと思いますが、言っている内容よりも頭よさそうに聞こえて、Good!ですよね。
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Chikaさん曰く:
「新聞に載ってましたが、二ヶ国語話す人は脳が老化するのが遅いらしいですよ。
一生勉強だけど代わりにいいこともあるかも・・・」
確かにそんな研究結果もありましたね。
http://www.apa.org/releases/bilingual_aging.html
しかし、研究対象のバイリンガルな人はみんな十才ぐらいから多言語環境で育ったらしいんです…
嗚呼、大人に成ってからの外国語を習得する努力は結局報われないのか?神様!そんな不公平な!
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もう結構前ですが、子供に”roads”と”rose”の違いを指摘されて唖然としました。その時まで全く区別していませんでしたので。。。
あと”ear”と”year”とかもダメですね。
分かれ目は、初めてその単語に出会うとき、カタカナで出会うか、英語で出会うかなんじゃないかと思います。3つ子の魂百までというか。。。
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Chikaさん
香港英語とイギリス英語には、残念ながら深くて大きな溝があるんです。
ローカル放送の英語ニュースキャスターはイギリス英語を話します。一昔前の資産家や高級役人の子弟は、みんなイギリスの大学に留学してイギリス英語をマスターしてました。
が、庶民が話す広東語訛りの英語は、とてもイギリス英語とはいえません。自分でいうのもなんですが、北米の方も英国の方も、聞き取りにくい事甚だしいと思います。
広東語はパッパッと切れるような音の積み重ねです。北京語のように流れるような音のつながりではありません。このように1文字ずつの漢字を区切って発音して話している香港人ゆえ、英語をはなしても独特の訛りが生じてしまいます。ロスには沢山の香港人が住んでいると思いますので、どこかでそれを聞く機会があるのではないでしょうか。
ところで香港英語にも良いところがあります。英語が苦手な日本人に聞き取りやすいんです。RとLの区別がいい加減で、現在と過去形の区別もいい加減です。発音は舌を巻かず、抑揚があまりありません。単語を一つずつ区切って発音するので、英語初心者の日本人にはとっつきやすいです。
いわゆるジャパニーズイングリッシュにかなり近いんですね。
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書き忘れたので、もうちょっと。
最近大活躍中のF1ドライバー、佐藤琢磨はイギリス英語を話していると思います。カナダGP直前に日本の民放で放映していた佐藤琢磨の特集番組で、琢磨が英語でインタビューに答えていました。
彼は20歳からずっと、イギリスでレース生活を送っています。英語もイギリスで覚えたそうです。
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素晴らしいアイデアだと思います。
刈り込み現象,臨界期など脳の発達と現在の学校教育の問題点を正確にとらえ,実現可能な方法を提案されていると感じました。
英語教育以外にも有効な汎用性の高いアイデアだと思います。
絶対音感とはは何か,記号認識過多による創造性の低下,プロプレムソルバーやクリエーターの低出現率などの謎を解明する可能性を含むアイデアでもあると感じました。
先日は関係のない書き込みをして失礼しました。 さかい
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MostlyVowels-san
いやいや、きっと大人になってからでも報われるものがある・・に違いない。でも最近私、固有名詞の物忘れが激しくなってきたのはやばいのでしょうか。
Naotoj-san
母音は最後の砦、、、じゃないや関門、ですよね。roads/rose系の微妙系単語は山のようにあります。英語って特にこういうのが多い気がします。スペイン語なんかあえいおう、だけだし。
bobby-san
あ、香港人の友達の英語思い出しました。あれですね。シンガポール人の英語というのもありますね。ちなみに、ロスはサン・フランシスコ・ベイエリアからは飛行機で1時間以上、車で5時間はかかるのでした。。。(当地は夏でも寒いです)
Sakai-san
私も、是非脳の発達に関する科学と学校教育をリンクさせるべき!と思います。。。
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