日本は復活するか?

Business Week6月14日号のIs Japan Back?(要subscription)。デフレと高負債の日本の経済指標が上向いているのはなぜか、という記事。

上向いている原因と、それぞれに関する疑問があげられている。

ポイントは、一部のトップ企業の業績は向上しているが、小売や建設などの「社会のバルク産業」は非効率なままであり、その生産性は横ばい、または下落している、というところ。今年のMcKinsey Quarterlyに掲載された生産性に関する分析では、「バルク産業」の効率こそが、国民の豊かさを決める、と。ということは、日本の小売・建設が効率化するまで日本の生活水準は上がらないということか。

というわけで、以下、Business WeekとMcKinsey Quarterlyの記事の概要です。

Business Weekでは、景気が上向いている理由としてはこんなことがリストされている。

-アジア諸国間の貿易が増加、日本の輸出も増えた
-DVDなど、日本が強いデジタルコンシューマ機器の需要が世界的に増えている
-長引く不景気でついに緊密な系列関係が崩れ、弱い企業が淘汰されてきた
-著しいデフレで消費者の需要が喚起されてきた
-銀行が新たな自己資本比率基準を満たすため、所有する株を売却、昨年1年間だけで770億ドル(8兆円超)を日本の株式につぎ込み、東証で取引される株の30%が外国資本によるものとなり、結果としてより厳しい会社経営が迫られるようになった

その後、「でもほんと?」と続く。

ほんと?の中身は

1:中国景気は水物だから頼るのは危ないのでは?

  これに関しては、Business weekの見解は、いやそんなことはない、というもので、いわく:
a) 中国とアメリカが同時に不況にならない限り大丈夫
b)しかも日本は中国を市場として捉えているだけではなく、安く生産して日本や世界で安い製品を売るためにも利用しているから、中国が不況になっても、日本企業にとってのメリットはなくならない。
  
2:日本企業は本当にグローバルな競争に打ち勝てるリストラをしたのか?

これがポイント。

記事内では、日産や松下の例を挙げ大企業のリストラが進んでいることに触れ、さらにGoldman Sachsの分析として、金融以外の上位400社の自己資本利益率は7%と、1998年と比較して7倍になり、2006年までに10%まで向上する、としている。また、トヨタやキャノンといった大企業の効率向上により、労働生産性は2003年に2%向上した。

しかし。

サービス、小売、建設、食品加工、といったバルクの産業(国民の60%はこうした産業についている)の生産性ははるかに劣る、と記事は続く。しかも、セクターによっては、生産性は劣化している、と。日本の昨年のトップ300社の税引き前利益の25%は、トップ5社によってたたき出されたもの。つまり、ごく一握りの企業は高効率・高利益だが、その他の殆どがダメな状態。

(記事全体の論調としては、日本の景気は本格的に上向きつつあるようだ、ということなのだが・・・)

***

McKinsey QuarterlyのThe Power of Productivity(registrationが必要ですが、無料なので、経済に興味のある方は是非。知的好奇心をぐりぐりと刺激される記事です。以下、少々長くなりますが、引用します。)

the income level of a country is determined, above all, by the productivity of its largest industries. High productivity in the unglamorous “old-economy” sectors—retailing, wholesaling, construction—is most important, since more people work in them. The fabled high-tech enclaves and financial markets are less so. MGI’s study of rapid US productivity growth in the 1990s found that it was caused by just six industries, including retailing and wholesaling, not by the vaunted “new economy.” IT investments played a modest role. In India, the fast-growing IT industry has yet to raise the living standards of more than a minuscule part of the population.

国民平均所得が高いかどうかは、目立つ産業ではなく、小売、卸、建設、といった「地味」な産業の生産性で決まる、というのが結論だ。1990年からオーストラリア、ブラジル、フランス、ドイツ、インド、日本、オランダ、ポーランド、ロシア、韓国、スウェーデン、英国、米国の13カ国を調査した結果に基づく。1990年代の米国の生産性向上は、小売・卸を含む産業で起こり(その結果米国の所得水準は向上)、インドのIT産業は国全体には殆ど影響を及ぼしていない。

Differences in productivity also explain the persistence of disparities in wealth among rich nations. Twenty-five years ago, the economies of the United States, Europe, and Japan were generally expected to converge because technology, capital, and business practices flowed freely among them and their workforces were healthy and well educated.

In fact, significant disparities of wealth remain even among rich countries. Despite Japan’s world-class automotive and consumer electronics industries, for example, its average per capita income is about 30 percent below the US average. Japan has followed a path different from that of the United States and Europe (Exhibit 3): economic growth during the past 30 years has been generated more by massive increases in the number of hours worked and the amount of capital equipment used than by an increase in the productivity of the workforce. South Korea has followed a similar path. But there is a limit to the number of hours that can be worked, and massive inputs of capital that don’t earn an economic return eventually lead to diminished growth. Since 1990, Japan’s real per capita income has barely grown. South Korea’s tiger economy is running out of steam as well.

(文中、Exhibit 3とあるのは、生産性向上の歴史を国ごとにプロットしたもの。中々面白い表になっています)

25年前、ヨーロッパ、アメリカ、日本の生活水準は同じようなものになるだろうと思われていたが、収入格差はいまだ確実に残っている。自動車と電機という世界レベルの産業を持ちながら日本の平均年収はアメリカより30%低い。過去30年の日本の経済成長は労働時間増と設備投資で実現されたもので、生産性向上から来てはいないからだ、と。

Competition is the mechanism that helps more productive and efficient companies expand and take market share from less productive ones, which then go out of business or become more efficient. Either way, consumers benefit as companies offer better goods at lower prices, and this may in turn unleash a burst of new demand.

で、じゃぁどうやったら生産性があがるのか、というと、それは資金力でも教育でもなく、競争だ、と記事は続く。

In Japan, a combination of zoning laws, tax policies, and government subsidies has allowed the smallest, most inefficient retailers to thrive. Today they account for slightly over half of all retailing employment, compared with less than 20 percent in the United States. In one small shop in central Tokyo, I have seen the same hat sit unsold on a store shelf gathering dust for the past 15 years. Every time I’m in Tokyo, I check to see if the hat is still there. It is. The proprietors don’t have to sell it to stay in business, since they get subsidized loans.

日本の小売は大店法(ゾーニング、とあるが、大店法のことといってよかろう)、税制、助成金により、最も非効率な店でも生き残ってしまっている。政府が競争を抑制するとこういうことになる。(しかし、この筆者も凝り性だ。過去15年間、東京に行くたびに、ある店の売れ残りの帽子がまだあるかチェックし続けているそうだ。ずっとある、と。確かにそういう店はあるな。)

***

以前、資本主義は気持ち悪い、を書いたとき、「資本主義は気持ち悪いのに好き」ってのは、単に仕事中毒じゃないのか、というエントリーを書かれた方がいたが、ちょっと違うんですよね。

資本主義社会は競争社会だが、その競争の結果、全体のパイが広がる。平均が底上げされる。つまり、全体がよくなっている、という安心感がある。「成長なんかしなくても、今のままでシアワセ」というのは、言うは易く、行うは難し。世の中がだんだんちょっとずつ貧乏になっていくのに、不安を感じないでいられる人はどれだけいるのだろうか。いるのかもしれないが、私は違う。やっぱり不安になる。競争社会のアメリカでは、誰もが競争に参加しないといけないのだが、その競争はまぁ基本的に公平だし、その結果、社会全体も豊かになる。そのあたりが、資本主義は気持ち悪い、だけど好き、というところなんですね。

日本の小売・卸・建設はどこへ行くのでしょうか。

日本は復活するか?」への4件のフィードバック

  1. で、話はそれますが

    ■ [疑問]で、話はそれますが
    上のエントリーでHKSIさんが指摘されている問題はとても重要で、公共セクターに限らず効率化したい部分はいろいろあれど人間そうばっさばっさ切れないと思うのです。とここから雇用の話になっちゃいますがそこをどうやっていくか。って�…

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  2. 続・ネット世代のビジネスモデルとは?

    先日あげた「ネット世代のビジネスモデルとは?」。 トラックバックをいただいている部分への返答も含め、前回舌足らずだった部分を補いたい。 企業の「儲け」とか「利益」という言�…

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  3. こんにちは。ここにくるのは久しぶりです。私はNHKの英語講座のテキストを購入していた関係でこのサイトを知りました。当時まだインターネットというものをやったことがなかったのですが、パソコンが家にあったので始めるきっかけになりました。windowsのリカバリーを重ねるうちに縁どうくなってしまいました。
    日本でも利権まみれの国内産業がいまいちなのは話題によくのぼります。地方ではだいたい自営業者が議員をやっていて、県議会でも土建屋議員が半分ぐらいいます。私はこんなの捕まえるべきだと思うのですが、談合で仕事を取るために政治活動をしている彼らは、いまだのうのうとしています。アメリカでは土建屋が議員をやっていたりするのでしょうか。
    おかしいのは地方だけではありません。国会議員のほとんどが二世議員と官僚あがりです。小泉純一郎も確か三世議員だったと思います。彼らの仕事は地方の自営業者相手の利権わけといっても過言ではありません。
    このように地方では自営業者が議員をやり、中央の二世議員がその利権わけをするといったことをやってるうちは、本当の意味での日本経済の復活といったものはないんではないでしょうか。
    http://www1.odn.ne.jp/~cjs11870/newpage1.html
    ひどいサイトですが始めたばかりです。文章力が欲しい!
    このページのふちになんで色がついているのかもわからない状態です。

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  4. 功徳見聞録/40

    カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上〉 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈下〉 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」 カテゴリ: 本 制作者: 佐野 眞一 状態: 未 コメント: …

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