Vinod Khosla ナノテクを語る

vinod_khoslaKleiner PerkinsのVC, Vinod Khoslaのナノテク講演に行ってきた。Vinod KhoslaはSunのfounding CEOで、昨年Forbesで「The Man with the Golden Touch」という称号を受けたVCだ。とはいうものの、ここ数年、なんだかお疲れ気味コメントがメディアに載ることが多かったので、ナノテクで何を話すのかな、という興味でぶらぶらスタンフォードキャンパスで行われたセミナーに行った。(ぶらぶら、というよりボーっと歩いていたせいか、ちょっと道に迷ってしまった、)

(Vinod Khoslaがどんな話し方か興味のある方には今日のサウンドクリップ。QuickTimeで30秒弱です。)

シリコンバレーの一流どころのVCの人たちがすごいなぁと思うところは、よく勉強していることだ。

一流VCの言うことだったら何でも正しい、ということは全くない。彼らを神様扱いして、その言ったことをご神託のように信じてはならない(以前書いたエントリの『「シリコンバレーVCの評価」というのも、必ずしも実態を反映しない・・』というあたりをご参照下さい)のだが、勉強してるのは確か。今日も会場からSRAMだ、Spintronicsだ、Holographic Memoryだと質問があったが、ちゃんとこまごま答えていた。

数多くのビジネスプランを読み、世界の一流どころの研究をしてきた人たちがチームにいるベンチャーのプレゼンテーションを聞きまくっているのだから当たり前、と思うかもしれないが、その是非を理解するには、やはり自分でもかなりの知識がないとならない。Vinod Khoslaは莫大に専門書や学会誌を読んでいると自分で以前言っていたが、シリコンバレーVCには、大学の研究者などを家庭教師につけて、真剣に新しい分野を勉強する人もいる。

***

ということで、せっかく行って来たので、以下、興味を引いた点、Vinod Khoslaが特に強調していた点を順不同で列記します。セミナーは会場から質問を受け、それに答える形で行われたので、質問と、それに対するKhoslaの答え、という形式です。(複数の質問や答えを合体させたり、大幅に意訳していますのであしからず。)

ナノテクの定義は

材料科学の新たなフロンティア、というところ。

ナノテクバブルは既に起こっているか?これから起こるか?

まだだ。しかし可能性は大いにある。特にパブリック市場で話題になると危険。

アウトソーシングの是非は

アウトソーシングはGood。国は閉鎖的になるとダメだ。日本がなんでこんなに長い間復活しないかといえば、日本がClosedだからだ。They are closed to people, closed to ideas, and too parochial。国際的にオープンであることが成功の秘訣。

Vinod Khoslaが他のVCより優れている理由は

自分が優れている、というのは、きっと雑誌などの評判のことだろうが、Don’t believe what you read。大体ジャーナリストというのは、英文学を専攻して他に就職先が見つからないような人がなるものだ。彼らに技術や投資の何がわかるのか?たまたま数回ラッキーな成功をすると、祭り上げた記事を書く。そうすると売れるからだ。

ナノテクは危険か

いつも安全性に関する注意は必要だが、しかし新しい技術はいつでもみな危険だというものだといういことを忘れてはならない。人間は変化が嫌いだ。鉄道が発明されたとき、いかに鉄道が危険か綿々と唱え、船の方がずっといいと熱演したスピーチなど、今としてみればお笑い種。(当時のスピーチの抜粋をスクリーンに映しながら)

ナノテクのアプリケーションは

5年以内では、メモリ、電池、燃料電池、テキスタイル、それ以降だといろいろあるし、また大きな市場が狙える。新薬やバイオ素材など。

起業するなら、ビジネスプランにナノテクと書け、といわれたが

herd mentality(群れたがり、とでも訳しましょうか。羊が群れている感じ。)でナノテク流行なのは確かだが困ったことだ。流行狙いの会社が多くて辟易するので、会社名にNanoがついたら絶対投資しない。実際、nanoがついたベンチャーに社名変更させて投資したことはあるが。

VCになるにはどういうバックグランドが必要か

起業して、会社を大きく育てるのが一番。必要条件ではないが、本当に勉強になる。メディアでは、GoogleファウンダーのLarryとSergeiが失敗知らずの時代の寵児扱いだが、彼らだって本当にいろいろな苦難を乗り越えてきた。今日もちょうど戦略関係の話をするので2人とランチをしたが、いや、本当にいろいろあった。Building companyは本当に本当に大変なのだ。VCになるならそれを経験した方がいい。

(ちなみに、現状Kleinerでは、AssociateというMBAなどがなる職位からGeneral Partner(GP)へのキャリアパスはなく、GPは起業して巧なり名を遂げた人が外部からやってくるもの。他のVCでは、AssociateからGPへ、というケースは結構あります。)

Nanosysの上場をどう思うか
(Nanosysはナノテクで最初のIPO申請をした会社。製品ができるまでには最低5年かかかる、と堂々と発表してIPO申請した)

非常にすばらしい人たちを集めた会社だ。しかし、はっきり言って間違っている。彼らのIPOはshame(恥)。パブリックの株式市場をペテンにかけようとしている(defraud the public market)。製品がなければ上場してはいけないとは言わないが、しかし、せめて技術の方向性がわかり、何ができるかがはっきり予想できることが上場には不可欠だ。Nanosysは自分たちでも将来のビジネスが描けていない。投資銀行も、上場させれば6%の手数料が入るから無責任に上場をunderwriteしている。

これまでも何度もバブルがあった。それを実際に現場で見てきているはず。なのにまたナノテクバブルが起こるのを指をくわえてみているのか

人間の基本はfearとgreedだ。残念ながらこれが本質。怖いけれど欲はあるから、周りを見て同じことをしようとする。だからバブルになる。こればかりは残念ながらいかんともしようがない。民主的に市場を運営したらバブルは必ず起こる。しかし民主主義と資本主義は現状、一番上手くまわるシステムだ。これ以上のものがないのだから、仕方ない。

***

ビジネススクールの頃、Vinod KhoslaがSunの起業、というケースで授業に来ました。96年の終わりくらい。Sunの起業当初の涙ぐましい苦労話をしてくれました。こんな感じ:

「トップ金融機関のどこかで使ってもらわなかったら、Unixは過去の遺物になることがわかっていた。殆ど全ての金融機関で断られ、『これを落としたら会社は一巻の終わり』という最後の一社をセールスのトップに任せておいたら、知らない間に失注していた。矢もたてもたまらず、その会社のあるニューヨークまで飛行機で飛んでいって、本社が入った高層ビルの一階のロビーから電話した。自分は当時ひどいインド訛りで、失敗したら会社がつぶれる、という状態で、しかもアポもなかった。それでも必死に話した。『I will give you an irresitible offer. We will build your system for free』無料でシステムを全て構築するからSunを使ってくれ、と」

当時のイメージとしては「さすがにScott McNealyは忙しいだろうから、無名のKhoslaを呼びました」という感じで、実直そうな雰囲気だった。(McNealyもKhoslaもStanford MBA)今日の感じでは随分自信に溢れた感じになっていた。

こうして、数年の間に、人が大きく変化することが多いのがシリコンバレー。偉そうになる、ということではなくて、(それもちょっとあるが)、成功のオーラが出る、というか、迫力が出る、というか。人は成功によって作られるんだなぁ、と感じます。日本の大企業にいた頃は、何年たっても自分が一番下っ端で、物事は大局では殆ど変化がない、というのが当たり前。当時に比べると、
「周りもどんどん変っているのだから、自分もがんばらないといけないな」
と思わされることが多いです。

Vinod Khosla ナノテクを語る」への2件のフィードバック

  1. Chikaさん曰く:
    「ぼろくそに言ったVinod Khoslaに毒が送られてたりして」
    NanosysのVCが報復手段として、カーボン・ナノチューブを隣家からのバーベキューの煙を装って、Khosla邸の方に流すとか…
    http://www.sciencenews.org/articles/20040403/fob1.asp
    また、Khosla氏がパートナーのKleiner Perkinsが出資している某検索エンジンの強気の見込み価格設定のIPOに関して、市場関係者にFUD(fear,uncertainty & doubt)をばらまく事も出来ますね。 (^^;

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