資本主義-続き

資本主義は気持ち悪いへのコメント、トラックバックありがとうございました。全部読みました。それを受け、私のエントリーがクリアではないところがあるので、追加でちょっと書きます。クリアでない点は次の二点。
1)生産性向上と海外アウトソースはどういう関係?
2)私自身資本主義の「気持ち悪いところ」のどこが好きなのか?

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その二点の前に、今日AeAが出したOffshore Outsourcing in an Increasingly Competitive and Rapidly Changing Worldというレポートについて。AeAは元々は American Electronics Associationと呼ばれていたもので、3000社ほどの会社が加盟している業界団体。「利益追求のために血も涙もなく社員を切って海外にアウトソースを進めている」と避難される会社側を擁護するレポートではある。とはいうものの、非常に正論。早速このレポートに関しての記事が出ている。例えば・・・

WiredのOutsourcing Report Blames Schools
San Jose Mercury NewsFears over offshoring inflated, says AeA

ポイントは
1)“the fear that we’re losing the high-level, high-education jobs is enormously exaggerated — it’s not really happening.” 
前回のエントリーでも書いたが、実は海外アウトソース問題は誇張されている

2)海外アウトソースはコストカットだけが目的ではなく、アメリカに適切な能力を持った技術系大学卒業生が足りていないのも原因。本当に職を失った人がより競争力ある能力を身につけるためにも教育は大切。だから国内の教育をもっと充実させるのが重要

ということ。具体的には、下のような施策を提案している。

• Holding a national summit on worker training and education.
• Reforming the K-17 educational system, with an emphasis on science and engineering.
• Increasing federal spending on basic research in physical sciences.
• Giving green cards to foreign master’s and Ph.D. students to keep their skills here.
• Adopting a national broadband policy that could act as an engine of job creation.

要は、保護主義ではなく、よりよい能力を持った人をどんどん育てて、ブロードバンド普及による需要喚起で新たな仕事を増やそう、ということ。また、アメリカの理系の修士・博士号取得者には、外国人が多い。そうした人を引き止めるために、どんどんグリーンカードを出そう、とも言っている。(これはJTPA的にはグッドニュース!)

Wiredは、AeAのレポートをグリーンスパンのコメントとも比較している。

the AeA is in line with Federal Reserve chairman Alan Greenspan, who said at Boston College’s recent Finance Conference that any government efforts to discourage overseas outsourcing could damage the U.S. economy instead of helping American workers.

“Time and again through our history, we have discovered that attempting merely to preserve the comfortable features of the present — rather than reaching for new levels of prosperity — is a sure path to stagnation,” Greenspan said at the conference

「保護主義はアメリカの労働者にとって百害あって一利なし。新たな繁栄の道を求める代わりに現状維持をしようとすると、必ず停滞が起こることは歴史的に立証されている」とグリーンスパンは言っているのだが、AeAの主張はこれと一緒だね、というもの。

*****

さて、話を戻して、私の元のエントリーの追記。
1)生産性向上と海外アウトソースはどういう関係?
どちらも国内の失業を一旦増やす。しかも、生産性向上の方がインパクトが大きい。しかし、政治的に「海外に仕事を移すな」というのは美しいが、「生産性をあげるな」というのはさすがに理不尽でバカみたい。なので、海外アウトソースが槍玉にあげられがち。

とはいうものの、どっちも「痛い」状態であることには変わりがない。そして資本主義は、どちらの痛さをも許容し、それによって人々がより付加価値の高いスキルを身につけることを望むわけです。

ここで大事なことは、国は他の国と競争関係にある、ということ。一国で独立した経済だったら、保護主義でボンヤリ様子見ということもできようが、保護によって他の国に劣ってくると、どんどん貧乏になってしまう(アルゼンチンみたいに、借金で首が回らなくなる、というのはその究極)。

一匹しかメスをゲットできないのに、集団でメスにもてるための勉強を重ねる、謎のアマゾンの鳥さんたちの生態をちょっと前のエントリーに書いたが、その鳥たちの行動原理は、(もしかしたら)自分の集団の中での自らの地位より、まず他の集団に自分の集団が勝つことが先決、という可能性もある。国同士もちょっとそれに似てる。

2)私自身、資本主義の「気持ち悪いところ」のどこが好きなのか?
これはちょっと難しいんだけど、「競争のルールが明快なところ」かな。資本主義では、「何をしたら痛いか」「どういうことをした人が成功するか」、ということが割合短期間の間に白日の下に曝け出される。だめになってきている産業はバンバン人を切るから、「あ、この産業斜陽だな」ということがすぐわかる。それによって大勢が「おっと、この方向に行ったら痛いぞ」と理解できないようでは、資本主義の意味がない。

もうひとつは、少なくとも今のところ税金を払う価値があると思える点。どうせ払わなければならない税金だったら、強い国で、その強さに基づいてきちんとした価値を提供してくれる国に払いたい。で、アメリカという国が(好き嫌いは別として)強さを保っていられるのは資本主義のおかげ。

後は流動性と知恵の価値が高いところ、でしょうか。その辺はまたの機会に。。。。

資本主義-続き」への6件のフィードバック

  1.  いつも興味深く読んでおります。Webでの情報収集についてはどうしても日本語のサイトの検索活動に比べ、英語で欲しいネタがなかなか探せなかったりするので、こちらの引用文献などは私にとって大変参考になります。
     前回のトラックバックでも書きましたが、アメリカの今後の施策として教育の充実というのは、果たして、今後アメリカが今のような魅力を維持するうえでどれだけ有効かなというのがちょっと気になってます。高校以下の教育の実態は良く知らないのですが、大学レベルの教育は既に現時点でも世界で最高の環境に近いと思います。(もちろん問題点もたくさんありますが、少なくとも他国の大学と比較すれば上をいっている。)問題はそこがほとんど海外からの留学生で占められていることにあるのではないでしょうか。産業技術面では、今後のアメリカは世界に優秀な人材を輩出しても、自国の技術が弱くなっていくのではと気になってます。日本人がアメリカの心配をしてもしょうがありませんが 笑)
     中国やインドなどが国内の力をつけてきて、アメリカのように移民に寛容な政策をもしとりきれば、経済の魅力もだんだんとそちらに流れていくような気も。そうなったら、アメリカにもなかなか乗り込みきれない日本にとっては、アジアの他の国相手では偏見もわざわいして、ますます国際的な競争力が弱くなってしまうかも・・・
     まあ、アメリカには巨大な軍事力とその巨額な研究開発予算という奥の手があるので当分は唯一の超大国は崩れないでしょうが。
     記事を読ませていただきながら、そんなことをちらちらと考えました。

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  2. アメリカにとっては競合が誕生するのは実はいいことなんじゃないかと、私は思います。70-80年代は、日本が世界経済の覇権を握る、とまで言われましたが、その日本の脅威に打ち勝つべく、真剣に改革を行って結果アメリカはものすごく強くなりましたし。
    留学生に関しては、ここは一発
    「成績次第でグリーンカード即日発行」
    とか、「アメリカで働いている間は学生ローンの金利タダ、でも海外に帰るときはその場で全額返済」
    など、いろいろな施策ができるかと・・・・。
    ちなみに、以前の「日本の脅威」と今の「中国の脅威」を比較して
    「中国人の方が野心溢れるアントレプレナーぞろいだから、今度の方がやばいぞ」
    といっている人たちは、アメリカ国内にもいますが。

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  3. 海外逃亡を考える

    マジに考えるとすごく大変な「海外逃亡」というお話です。考えている方、現役(?)の方、ぜひコメントを。
    ■2000年代初頭の「海外逃亡」という考え方
    日経ビジネスという雑誌があり…

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  4. アウトソースの件、興味深く読みました。The EconomistではOffshoringという形で扱われていましたが、騒がれている割に、数字的にはまださほどメジャーなものではないようですね。事態が手遅れになる前に騒ぐのって、中国脅威論とかでもそうですけど、アメリカの強みなんじゃないでしょうか。手遅れになってからやっと重い腰を上げる日本とは大違いですね。

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  5. <<HPのリストラについて>>この新聞記事によれば、リストラの対象は、主にBack Office(総務、経理、人事)などアウトソースし易い職種である。一方、営業職は増員して売上げアップしたと。R&Dなどの職種については触れていない。もちろん、一般論として、専門性の陳腐化は理解できるが。

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  6. 残業の多い方へ

     残業の多い私と同じサラリーマンの方へ。 不労所得を得たいと思いませんか? 不労所得・・・・美しい響きですよね。 私は営業職をしているのですが、毎日接待、事務処理の仕事で忙しいんです。 でもどんなにがんばっても、給料は控除、控除で手……

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