Microsoft pays dividend

Microsoftが配当を出すことが正式に発表された。多くのメディアで取り上げられたが、詳しいものとしては例えばCNETの記事がある。
いわく
「Microsoft set its first-ever annual stock dividend Thursday and said it will split its stock as quarterly earnings surpassed expectations.
In an unexpected move, the software titan announced an annual dividend of 16 cents per share prior to a 2-for-1 stock split. The total payout will be $870.6 million, a fraction of its $40.5 billion cash reserves. 」

約5兆円の莫大なキャッシュリザーブから1000億円ほどを放出するだけではあるが、これは「ソフトウェアの歴史の転機」になるのか?

「配当金を払わない」ということは「私の会社は、あなたのお金を、他の運用方法よりずっとたくさん増やしてみせます。」ということのシグナルである。高成長分野のソフトウェア産業では、もちろん配当金を払う企業などまずなかった。その業界トップのMSが配当金を払うということは「もはやソフトウェア事業では、他の業界(や国債やその他もろもろ)を大幅に凌駕するようなリターンを提供できなくなりました。」と言っていることになる。

もしこれが、グローバルなIT不況が続く間だけの一時的なもので終わらない場合、「ソフトウェア産業の、高成長期から成熟期への転換点」となることが考えられる。

一方、もう一つの解釈として、配当金はMSのモノポリーによる違法な利益を象徴していると考えることもできる。違法なモノポリーによる尋常ならざる利益を得ているために、配当金でも払わなければ説明できないだけのキャッシュがどんどん溜まってしまう、という解釈だ。

2年前の裁判の半ばまでは、MS分割が真剣に語られ、Bill Gatesがボードミーティングで涙を流したというまことしやかな噂が流れるほどに追い詰められていたMSだが、今ではすっかり力を取り戻している。

そもそも、いったん製品を開発してしまえば、一つ一つの製品を新たに作るコストがただ同然のソフトウェアは、規模の不利益が少なく、たくさん売れば売るほど効率が上がっていく。通常の産業は、どこかで「規模の不利益」が生じるため、「神の見えざる手」に任せておけば、自然と複数の競合がせりあって、よい製品を安価に出す、という構造になる。しかし、「規模が大きいほど儲かる」場合は、「神の見えざる手」に任せたらモノポリーが誕生してしまう。こうした業界は資本主義経済にあっても、政府の介入の対象になるべきものである。しかし、ソフトウェアには、「技術革新の速さ」という、規模の利益とは別の競合促進要因があるため、裁判の結果でも結局政府の規制下におかれることはなかった。

しかし、実は今も着々とMSが「世界のモノポリーの勝者」として成長しているのではないか、もしかしたら配当金はその象徴なのではないか、という懸念を消し去ることができない。

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