上を見たらきりがない:Del Biaggio詐欺事件

しばしブログを休んでいた間にシリコンバレーで話題になった事件がDel Biaggioという人の詐欺事件

「嘘ついてお金を借りた」

という、まぁありがちな話なのだが、その桁と目的とで話題に。Del Biaggioは、親の代からの当地の資産家で、本人も銀行やらベンチャーキャピタルやらをもち、慈善活動にも熱心、見た目もさわやかそうな40歳。架空の担保を捏造したりしてお金を借り、最終的に今年の6月に自己破産した時には、資産5千万ドルに対して借金が7千万ドル、と2千万ドル、約20億円強足りない状態だったのでした。

そして、そこまでして借金して買ったのが「ホッケーチーム」。

ホッケーチームを買ったのが去年の11月。総額$193 millionのうち、27%をDel Biaggioが買ったとのことで、彼の分は$52 million (50億円強)。これさえなければリッチなままだったのに・・・・、という痛恨のお買い物。少なくともハタから見る限り

「なぜそうまでしてホッケーチームが欲しいかな?」

という疑問が。

昔Economistに、

「世界のサッカーチームの値段を足すと、サッカーからの収益総計から算出される価値より高くなってしまう。オーナーがエゴで欲しがるので、実際の価値以上に値段が上がってしまうから。」

といった記事がありましたが、価値以上の値段を払うのもさることながら、それを払う元手が無くてもうっかり買ってしまう位、ある特定の人たちにとってスポーツチームというのは大事なものなのでありましょうか。

もとい。

「あぁ、あとXYZくらいお金があれば、こんなことで頭を悩まさずに済むのに・・・・」

と思ったことがない人、いますか?いますか。そうですか。

私は今家を改築していて、あれこれ部材やらデザインやらを選定してきたのだが、建築にはかなり無限にお金をかけることができる。そして、多くの場合高い値段を払えば払うほど良いものが手に入る。きりが無いので、あれこれ妥協しつつ選ぶことになるわけだが、その過程において

「あぁ、あとXYZくらいお金があれば、こんなことで頭を悩まさずに済むのに・・・・」

と思うわけですわい。

ここからは勝手な想像だが、Del Biaggioさんも

「あぁ、シリコンバレーの大金持ちのように$1 billion(1000億円)くらい資産があれば、ホッケーチームの一つや二つ、何も悩まずに買うことができるのに」

と思ったのではあるまいか。昔、元インテル重役が、New York Timesの取材に答えて、

「シリコンバレーで本当に自分が金持ちだと感じるには自己資産$100 million以上必要」

と言っていたが、確かにDel Biaggioの資産$50 millionっていうのは、なんとなく微妙かも。華やかにビリオネアと交流しつつも、彼らのような金遣いは無理。

というわけで、人間上をみたらきりがないというありきたりな教訓です。

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・・・ちなみに、小学校の2年か3年の頃読んだお話でこんなのがありました。

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あるところにてっぺんが見えないほどの高い塔がある。中に入ると、どこまでも螺旋階段が上に伸びている。あるワカモノが

「この塔の一番上まで行く」

と宣言。しかし、それを聞いた老人が

「無理だからやめろ」

と止める。しかしワカモノは

「いや絶対に行く」

と言い張る。老人は

「それならこれを持っていけ」

と、小さな小さな金平糖を渡す。

いぶかりつつも金平糖をリュックサックにいれ、水と食料も詰め、ワカモノは階段を登り出す。上にあがるにつれ、だんだん塔は細くなっていくが、いくらたっても螺旋階段の頂点は見えない。

そうこうするうちに、リュックサックの金平糖がだんだん大きくなっていく。そのうち、水や食料をリュックサックから出さなければならないほどに金平糖は大きくなる。

そして最後には、リュックサックは金平糖で一杯になる。そこでワカモノはついに気付く。

塔を登れば登るほど自分が小さくなっていくので、一番上に達することは決してない、ということに。

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・・・・てか、これ、小学生に読ませる話か、と今にすれば思いますが。あんまり夢がないですよね。確か学校の図書館で借りた本に入ってた短編でした。

上を見たらきりがない:Del Biaggio詐欺事件」への6件のフィードバック

  1. 凄く面白いお話ですね。
    むしろ、老人がくれた大きな金平糖を塔を登らずに舐め続けていたbiaggioさんが、金平糖を食べ尽くしデブになり、ついでに虫歯や糖尿病にもなった、とも当てはめられるのでは、と思いました。
    上に登る活力の為の糖分補給用以外は、あまりにも大きな物を持っていても邪魔になる+大きさに安心して立ち止まって舐め過ぎるから、塔の窓から蒔きなさい、みたいな。
    登り続けて自分の小ささが見えて不安になっても、それだけ昔より高い所に来たということだから全然OK、なんてポジティブには考えられない様になり、塔を登るのは無理だと思ったときに、若者は老人になり、それでもちょっぴりの希望を託して、次の若者に金平糖をあげる役になるのかも。

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  2. 金平糖の話は「なぜ光速で移動できないのか」という物理学(?)での解を、御伽噺に転化したのかもしれませんね。

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  3. >建築にはかなり無限にお金をかけることができる。
    だからって安藤忠雄を雇うのだけは思いとどまった方が良いと思います。家の中に球体突っ込まれたら困るでしょ?(笑)

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  4. ブログ復活おめでとうございます。そして取り上げられているお話のあまりのなつかしさに辛抱たまらずコメントに来てしまいました。
    おっしゃっている短編は佐藤さとるの短編集『宇宙からきたかんづめ』の五番目「とんがりぼうしのたかいとう」ではないでしょうか(本が手元にないのでうろ覚えですが)。
    佐藤さとるは大人になった今読み返すと理系スピリットあふれる硬派な童話が多く(ご本人も工学部出身)、なかなか読み返しがいのある作家だなあと思っているので、こういう例に上がっているところを聞くとファンとしては訳もなく嬉しいです。
    これからもブログ楽しみにさせていただきます。お邪魔いたしました。

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  5. chikaです。
    安藤忠雄好きですが・・・住吉の長屋もあるし、意外に普通なものも作ってくれたり?もう無理かもしれませんが。
    物語の作者は佐藤さとるさんでしたか。グーグルしたら「コロボックル物語」の方ですね。コロボックルと同じ人だ、というかすかな記憶があったのですが、間違ってなかったとびっくり。あの頃は、どこかにコロボックルがいないかと、雨上がりにこっそり葉っぱをひっくり返して裏を見ていたりしていたものです・・・。

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