以前、非科学的男女的考察というエントリーで
「熱帯の鳥の中には、集団でオスが暮らし、踊ったり、きれいな羽を見せたりしてメスの気を引くものがいる。しかし、メスをゲットできるのは、そのうちのごくごく一部のオスだけ。なのになぜに集団で暮らすのか」
という話を書いた。(ちなみに、これ、われながらかなり面白いエントリーなので、読んでない方は読んでみてください。)
加えて「元ネタが書いてあった本がなんだかかわからなくなった」と記したところ、コメントで「それはKricherのNeotoropical Companionと教えて頂いたので(Blogは便利)、再度買って読みました。
いや、10年以上前に最初に読んでから大幅に加筆されているのではないかと思われる充実振り。面白かったです。
冒頭のエントリーでは
「なぜ一部の『もてる』オスしかメスをゲットできないのに、『もてない』オスも『もてる』オスと共同生活を続けるのか」
ということを書いた。これに関し、原著では、いくつかの仮説が記されている。
1)female preference model
メスが集団でいるオスが好きだから、という簡単至極なモデル。
2)hotspot model
メスと出会いやすい「hot spot」にオスが群がるので、自然と集団になってしまう、というモデル。
しかし、この二つとも単純すぎる、ということで出てきたモデルが:
3)hotshot model
集団をしきる「hotshot(ブイブイ言わす、みたいな感じ)」なオスがいて、メスはhotshotを選ぶ。hotshotに仕切られている部下のオスたちは、集団を外れるとメスが興味を示してくれないので、仕方なく集団に属し、「いつかはおれも」と思いながら、だんだん集団内の地位を上げてトップに上り詰め、メスをゲットする日を目指し努力する。
おお、hotshot modelは、まさに「会社」ではありませんか!!極楽っぽく見える熱帯の鳥さんも、陰で上司の悪口を言ったりしているのであろうか。「チッ」とか言いながらマンゴーをつまんだりとか。
***
ちなみに、EconomistのGirl powerは
「シングルマザーは女の子を産む確率が高い」
という話。イギリス、カナダ、アメリカなどで生まれる子供に占める男の子の割合が微妙に落ちてきており、調査したところ
両親が同居している場合の男の子の生まれる率=51.5%
シングルマザーの場合の男の子の生まれる率=49.9%
となったそう。これにはきっと「how=どうやって」と「why=なぜ」があるはず。まだどちらも判明していないが、仮説では:
how=離れて暮らしているか同居しているかでHの回数が変わり、それでホルモンのレベルが変わり、男の子・女の子どちらを受胎するかが変わる。または、女性の排卵日は、女の子を受胎する確率が高く、かつ「その気」になりやすい。離れて暮らしていると、女性が「その気」な日にコトが起こりやすいのでは・・・と。(ほんまか)
じゃぁ、なぜ「親が同居しているか離れて暮らしているかで生まれる子供の性別が変わるのか」という「why」が今回の「鳥」に関係しそうなもの。いわく
It is well established, in both humans and other species, that successful males have lots of offspring, while unsuccessful ones have few or none. Females, by contrast, show a smaller range of reproductive output, with most having some offspring, but none having as many as the most successful males. The upshot is that it makes evolutionary sense to have sons when circumstances favour them becoming big, strong, clever and handsome (and therefore attractive to women), but when they do not, it is better for a woman to have daughters, most of whom will find a mate even in tough times.
オスは、うまくいった一部だけがたくさんの子孫を残し、他はほとんど子孫を残さない。メスは誰もが同じくらい子孫を残す。両親そろっていないと、「子孫をたくさん残す強いオスを育てるには環境が厳しい」と体が判断、弱くても子孫が残せそうなメスを誕生させる可能性が高まる、というもの。相当論議を呼びそうな説ですが。

確か1992年頃に、鳥類では精子と卵子(卵黄膜内層)の結合は、種特異的ではないことが示唆されています(Bramwell and Howarth)。
だから、ニワトリとアヒルとかでも受精が行なわれる可能性があります。
しかし鳥類では、異種間の交尾を避けるため、ディスプレイ(と呼ばれる儀式化された求愛行動で、同種の交尾の条件)があります。
この鳥さんは、「集団になる」というのが、ディスプレイになっているのでしょう。
もしもHotshot modelだったら鳥さんも大変ですね、縦社会で。
この鳥さんも、自由気ままに飛んでいるのかと思いきや、「hotshot」に命令されて編隊を組んでいたりするのかなあ。彼らの声が聞けたら、平社員の鳥がトップスターに上りつめるまでのドラマができるかも、ですね。
それにしても、「オスは、うまくいった一部だけがたくさんの子孫を残し……」って、トリにせよヒトにせよなんだか男は立場ないですね。
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そういえば数年前、カリフォルニアで、seal(アシカ?)の群れに紛れ込んだ象アザラシのオスが、周りのsealのメスを押し倒してコトに及ぼうとし、体重差が数倍あるため、片っ端から圧死させて問題になっていました。
ちなみに、Neotropical Companionによれば、小型のサルの中には、オス・メス入り混じったグループで生活するが、その中で交尾するメスは一匹だけ、というアルファメス型の、逆ハーレム状態のものもあるとのこと。必ずしも絶対「男は立場ない」わけじゃないようです。
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