Prof. Nishi

スタンフォード大学のNanotech Fabrication Center長になられた西さんにお会いした。西さんには、我々が運営しているNPOのJTPAのアドバイザーにもなっていただいている。

西さんは、東芝でCMOS半導体の研究開発をした後、HPの研究所長に転進、それからTexas Instrumentsの研究開発のトップとなり、今年の春からスタンフォードに来られた。TIでは、同社創立以来最初のChief Scientistにもなった。誰に対しても大変丁寧な素晴らしい方で、ほとんど後光がさしている。

「日本は80年代半ばまで発展途上国だった。発展途上国の成功の仕組みと、先進国の成功の仕組みは違う」という西さんの言葉があった。80年代半ばでは、日本と米国では転職すると給料が倍になった、と。「発展途上国の成功の仕組み」は「安い人件費で、優れた品質の大量生産をする」ことだ。「安い人件費」という最初の条件は先進国になったらなくなってしまう。「優れた品質の大量生産」だけでは勝てないのだ。

西さんいわく「欧米と日本しか世の中になければ、良かったかもしれないが、日本にとっては残念なことに、他のアジアの国がかつての日本の成功のパスをぐんぐん追い上げてきた。しかも中国は当面人件費は上がらない。日本は80年代後半から『先進国の成功の仕組み』を身に着けなければならなかったが、それをしないまま現在になってしまった」と。

西さんは「これから日本も良いほうにいける可能性があるでしょう」とおっしゃっていた。でも、私は個人的には、「先進国の成功の仕組み」を身につける以外にも日本が復活する道はある、と思っている。それは、「人件費の安い発展途上国に戻る」ことだ。

「発展途上国への逆行」はアルゼンチンが20世紀のはじめの絶頂期から、長い長い時間をかけてたどってきた道でもある。20世紀のはじめ「ヨーロッパの次の覇権を握るのは米国だろうか、アルゼンチンだろうか」という議論までされるほど、アルゼンチンは豊かな国だった。しかしその後ずっと緩やかな衰退をし、ついに今クライシスに陥いっている。

クライシスは困るけど、国は、実は「発展途上国に戻る」という道もあるのだ。というか「戻っちゃう」ということも十分あるのだ。

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