暗号通貨勉強会:ハードフォーク

Photo by Remi Moebs on Unsplash

暗号通貨のネットワークをアップグレードするには、ネットワークを運用しているノードオペレータがみな新しいプロトコルを利用するようになる必要がある。しかし、そこで一部のノードオペレータだけが新しいプロトコルを取り入れ、残りがそれを拒否するとどうなるのか?そこでなんと新しいトークンが発生してしまうのです。要はコードベースが二股に分かれるので、これをハードフォークと呼びます。

Bitcoinのハードフォークの歴史

古くからあるBitcoinでは多数のフォークが起こっていて、メジャーなところでは以下のようなものがある。

– Bitcoin XT 2014年

ブロックサイズを1MBから8MBに増やすことでTPS(1秒あたり処理できるトランザクション数)を一桁から24に増やそうと誕生したのがBitcoin XT。2015年夏には1000ノードが参加したが、その数ヶ月後に消滅。

– Bitcoin Classic 2016年

ブロックサイズを 2MBに増やそうと画策、2000ノードが参加するに至り現在でも細々と存在。 (9月9日時点でBitcoin Classicの価格は$0.1537、市場価値は$3.2M)

– Bitcoin Cash 2017年

2015年に提唱され、2017年8月に導入された。2017年の7月に80-90%のビットコインマイナーがSegregated Witness(SegWit)というソフトフォークを導入することに合意したが、SegWitに反対するマイナーたちが作ったのがBitcoin Cash。SegWitではトランザクションの署名データをブロックに含めないことでブロックサイズを小さくしようとするもので、Bitcoin Cash側は署名データは含んだままでブロックサイズを当初8MBに、2018年には32MBにまで増加した。

Bitcoin Cashは現在$662、市場価値は$13.9B とそれなりのサイズをキープしているが、対Bitcoinでの価値は緩やかな減少傾向にある。

– Bitcoin Gold 2017年

Bitcoinマイニングは専用のASICチップを使ったプロフェッショナルなものになってしまったが、「誰でもマイナーとしてネットワークに参加できる」という当初の分散ネットワークの発想を実現するため、GPUでのマイニングを復活させようと作られたのがBitcoin Gold。

Bitcoin Goldは現在$70、市場価値は$1.5B。

– Bitcoin Satoshi Vision (Bitcoin SV) 2018年

「自分こそがSatoshi Nakamotoである」と主張するも、その証拠を出せないオーストラリア人、Craig Wrightが「これこそがオリジナルのビットコインのビジョン」としてBitcoin Cashをハードフォークして作ったのがBitcoin SV。「Satoshiが認めるのはブロックサイズ増だけで、SegWitやLightning Networkは正統なビットコインへの脅威でしかない」ということで、まずはブロックサイズを128MBまで増加、さらに2019年には2GBまで増やしている。結果、トランザクションスピードは300 TPS、ギガビットテストネットでは5500 TPSまで実現できるとしている。

Bitcoin SVは現在$157、 市場価値は$3.3B。

Ethereumのハードフォーク

– DAOフォーク

Ethereumで過去一番メジャーなフォークは2016年のDAOフォーク (EIP-779)。ことの発端は、分散型組織のThe DAO(Decentralized Autonomous Organization)の設立。The DAOは「VC的にEthereumで資金を集め、そこから投票形式でプロジェクトを選んで投資をしていく」というプロジェクトで、大きな関心と資金を集め、11,000人から$150 millionが集まった。当時のEther全供給量の14%がThe DAOに投資されたことになる。しかし、スマートコントラクトに脆弱性があり、集まった資金のうち360万 Etherがハッカーに盗まれてしまった。これが有名な「DAO Hack」だが、盗まれたのは当時のEthereumの全供給量の4.4%になった。

これをとりもどすため、ハッカーのアドレスに渡ったEthereumを一旦「良い人」たちが管理するアドレスに移すというイレギュラーな措置をハードフォークで行ったが、この際に「ハックがあろうがなかろうが取引をなしにするハードフォーク反対」ということでオリジナルのEthereumを選んだノードがあり、ここで古いチェーンに残ったのがEthereum Classicである。結果、ハッカーの手元にはEthereum Classicチェーン上のトークンは残り、これは当時のレートで$8.5 millionとなった。

現在のEthereum Classicの価格は$59、市場価値は$12Bとなっている。

– London フォーク

2021年8月5日にスタートしたフォークで、当初5種類のEIP(イーサリアム改善プロポーザル)からなっていた。そのうちの一つ、EIP-1559はトランザクションフィー(ガス代)の上下動を減らすためのもので、それまでの「毎回のオークションでガス代を決める」という方式ではなく、全体のデマンドをみてプロトコルがガス代を決めるというもの。 (参照:Ethereum Feeチャート)そして、これまでマイナーに支払われていたガス代の一部はバーンされて消滅する。これによりEthereumがデフレ傾向になるのではないかと期待されている。

もう一つのEIP-3554は、予定されているEthereumのProof-of-Stake (PoS)へのコンセンサス方式の移行を促す「difficulty bomb」の実行を今年の12月まで遅らせるもの。difficulty bombはマイナーにとっての難度をあげることで、PoWの魅力を下げるものだが、この発動を遅らせるのがEIP-3554。EIP-1599でマイナーのフィーによる「儲け」は減るが、EIP-3554と抱き合わせることで、マイナーがこのフォークを受け入れるインセンティブを増したとも言われている。

Uniswapのハードフォーク、SushiSwap

分散型取引所として最初に人気が出たプロトコルに、2018年に始まったUniswapがある。そしてそのUniswapをハードフォークして2020年8月28日にローンチしたのがSushiSwapである。

Uniswapでは、「リクイディティプール」と言われる資金プールに多数の人々がリクイディティを提供している。例えばステーブルコインのUSDTとEtherを交換するためのプールには、この二つの暗号通貨を提供している人たちがいる。そのプールを利用して交換がされるとトランザクションフィーが払われ、それがリクイディティ提供者に分割されてわたる仕組みになっている。そして「リクイディティ」を提供すると「LP (liquidity provider)トークン」というトークンが手に入る。

SushiSwapは、Uniswapをフォーク、さらに「UniswapのLPトークンをSushiSwapに提供してくれたら、Sushiトークンをボーナスで出す」というインセンティブ付きで開始した。当初は年利1000%という高利回りだったため、あっという間にUniswapからSushiSwapにリクイディティが奪われ、その額は数時間で$150 millionに達した。

この「SushiSwapによるUniswapからのリクイディティ奪い取り」はvampire attackと呼ばれ、一時はUniswapのリクイディティの55%がSushiSwapに移る事態となった。

しかし、この事件でDeFiへの世の関心が高まり、最終的にはUniswapのリクイディティも増加するという結果に。2020年8月、SushiSwapローンチ直前の段階でUniswapに預けられていたTVL(total value locked)は$185 millionしかなかったが、現在では$6.4 billionにまで急増している。

SushiSwapは、発行されたSushiトークンの10%が当初のプロジェクトオーナーであるChef Nomiに渡る仕組みになっていた。そしてChef Nomiは、ローンチ直後に$14 million相当分をEthereumに換金して一旦姿を消す。その後この$14 millionは返却されたが、Chef Nomiはプロジェクトから手を引き、代わりに大手取引所のFTXのファウンダー・CEOのSam Bankman-FriedがSushiSwapプロジェクトを引き取り、その後健全にコミュニティ形成・プロジェクト運営が行われ、現時点でのSushiSwapのTVLは$3.9B、Defi Pulseランキングでも9位となっている。

なお、7月にSushiSwapが発表した次世代型AMMはTridentという名称だが、これは「SushiSwapはUniswapのフォークでしかない」と揶揄されていることから、「海の神ポセイドンが持っている三叉の矛(ほこ)」であるところのTridentという名前がつけられている。

考察

ハードフォークは技術力と政治力とクリプトエコノミクスの三つが絡み合うバトルフィールドなのです。

以上の内容について話し合った暗号通貨勉強会@Clubhouseの録音はポッドキャストCrypticのエピソード18で聞くことができます。

18. ハードフォーク Cryptic

2021年9月11日に行った暗号通貨勉強会の録音です。今回はハードフォークについて話しました。 参加者 東京 近藤 シンガポール 西村 シリコンバレー 渡辺 勉強会の予習にまとめたブログポストはリンク先にあります。 https://chikawatanabe.com/2021/09/10/hardfork/
  1. 18. ハードフォーク
  2. 17. オンチェーンにオフチェーン情報をフィードするオラクルについて
  3. 16. DeFiの基本概念の整理ーAMM・イールドファーミング・リクイディティマイニング
  4. 15. 6月に米国で資金調達した暗号通貨系ベンチャー
  5. 14. Binanceの試練、Circle・BullishのSPAC上場、中国のビットコインマイニング禁止

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