義務教育の20世紀歴史教育

20世紀の歴史がイマイチわからない。中学も高校も、原人類とか4大文明とか縄文弥生時代とかは非常に丁寧に教えてくれるのに、明治時代位からは駆け足になって、第一次世界大戦が終わるあたりで時間切れ、という流れだった。

・・・とアメリカ人に言うと、「それはまた恣意的なカリキュラムだね。教えたくないから教えないんでしょ」「日本政府の画策では」などと言われてちょっと驚く。先生の怠慢じゃなかったの?(ちなみに、スイス人の友達は「僕も一緒。中高時代は原始時代詳しくやって、最後時間切れ。わはは」とのことでしたが。)

インターネットを軽く検索すると、日本的には「20世紀の事象は未だに解釈が分かれるので教えるのが大変(だから教えない)」というのが通説だったようだが、本当はどうなのでしょうか。


そんなわたしが学校のテスト用に覚えた最後の歴史的出来事は1919年のベルサイユ条約。第一次世界大戦の講和条約であります。

そんなにまじめに歴史の勉強をした記憶はないのだが、やはり学校で体系的に教わるというのは大事なようで、19世紀までは全体感のある歴史認識があやふやながらもそれなりにある。しかし、今の世界のジオポリティクスを揺るがす様々な事件は、20世紀に起こったことがベースになっていることが多い。しかし、その辺りはつまみ食い的に小説や映画で知っているだけなので、イマイチよくわからないのですよ。

ちなみに、アメリカ人はアメリカ建国にまつわること、そしてアメリカに関係あることしか歴史を学んでいないように見受けられる。「ノルマンディー大作戦」とかやたら詳しい。「それ、映画でしょ」と言ったら「人類史上最大の上陸作戦である」と鼻で笑われた。ま、私の無知蒙昧も恐るべし、なのだが、しつこいけど1919年以降はよく知りません。対してアメリカ人は、建国以降250年分くらいしか勉強しないんだったら、その分はよく知っていて当然ではなかろうか。有史来の中国の年号くらい覚えてから鼻で笑ってほしいものだよ、まったく。私も覚えてないけど。

しかしアメリカ人たるもの、中国どころか、ゲルマン民族の大移動とかギリシャの都市国家とかもよく知らないのがデファクトスタンダード。歴史的事件ではないかもしれないが「コロンブスの卵」すら知っている人に会ったことがない。アメリカに関係あるかもしれないが建国前のことですからねぇ。

もとい、日本の20世紀の歴史教育。

今回の尖閣諸島問題で、「どうして海外メディアは日本に厳しいの?」という疑問が時々日本語インターネット界で見受けられる。

別件だが、個人的に私は「日本が右傾化して戦争になると嫌だなぁ」とずっと昔から言い続けているのだが、それを言うたびに、日本人からは「んなバカな、日本人に外国と戦争する根性があるわけがない」みたいなことを言われる。

ちなみに下記の赤くなっているのは1942年の日本の領土。真珠湾攻撃の翌年である。

出典:History Place – Pacific War Timeline

おおおお、大きいじゃないですか。日本人やるな。このままだったら、今の日本はどうなっているのでしょうか。東京で今以上にアジアの料理が融合してすごく美味しいものが食べられたり、ソロモン島のダイビングが容易だったりするのだろうか。*

もとい、こういう歴史を知らないと、「なんで世界の人は、こんな平和主義の小さな日本に意地悪なんだろう」と首を傾げるのも仕方ないかも。そしてこういう歴史を知っていれば、「日本人に戦争ができるわけない」などという妙な過信をすることもないかも。そして、戦争に至らないための策を真剣に考えることができるかも。

昨今の中高生はちゃんと20世紀の歴史を教わっているとよいのですが・・・・。

(念のため、「日本が悪い」と言っているのではなく、何を議論するにも正しい事実認識って大事ですよねぇ、ということ。私ももっと知りたい。)

(* 「第二次世界大戦に勝ったら」という設定では、豊田有恒のパラレルワールド大戦争という小説があった。敗戦間近の日本と現代日本が、松本大本営のトンネ
ルを通じてつながってしまい、近代武器の力で日本が第二次世界大戦に勝つ!というもの。勝ってみたら、「現在」の方も変わってしまい、全体主義で軍隊最強
なとてもつらい時代が待っていた、というのがオチ。今は絶版のようですが。)

 

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義務教育の20世紀歴史教育」への15件のフィードバック

  1. 僕が通っていた神奈川県の県立高校(ちなみに80年代です。)には、三年生の選択授業に「日本戦後史」という不思議な授業がありました。太平洋戦争中から高度成長期まで教えるという受験を全く無視したテーマで、しかも中身は学生運動出身の社会の先生が「東京裁判がいかに無意味か」「日米安保がいかに不条理か」というテーマをとりあげゼミ形式で議論する、といったものです。今思えばあんな恣意的な授業がよく認可されていたもんだと思います。
    この時代を教えようとするとまだ生きている人も多いし、どうしても主観的な解釈が入って右か左かへ傾き「事実」だけを教えるというのが難しいのでは?

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  2. この地図を思い浮かべる度に当時の日本がどれだけのエネルギーをもって他国に進出していったのか、日本という国の息づかいのようなものを感じるのは私だけでしょうか。当時の人たちが本当に「大東亜共栄圏」ってものを作ろうとしていたとすれば、その本気度合いが意外に高くてびっくりするんですよね。
    私はバブルを知らない世代、物心ついた頃には日本経済が意気消沈していた世代なのでおそらく高度成長期からバブルの時代にも同じようなことっていっぱいあったんだろうなと想像しています(諭吉片手にタクシーつかまえるとか小さなこと含め)。
    そういった時代の息づかいみたいなものをどれだけ中学、高校の歴史の授業で学べる(感じられる)かですよね。そこら辺の質を担保すれば別に縄文時代でもメソポタミア文明でも学ぶ意味はあるんじゃないかと思います。
    蛇足ですが、アメリカ人の歴史の授業って日本で言うと「公民」の授業ですよねw歴史を教えることで愛国心を持たせようってことでしょうけど、肝心の歴史が無いなんてちゃんちゃらおかしいです。

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  3. 日本人が当たり前のように常識だと思っている世界四大文明にしたって、東アジア以外の人たちにとっては常識どころか単なる珍説に過ぎなかったりするわけですが。
    ソースはWikipedia日本語版。
    アメリカやらオーストラリアやらの歴史の授業であんまり昔をさかのぼると、先住民を殲滅して建国しましたみたいな話の色が強くなりすぎてNGになってしまうんじゃないの?

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  4. > 日本的には「20世紀の事象は未だに解釈が分かれるので教えるのが大変(だから教えない)」
    ええ、でも、社会現象に「正しい解釈」とか「定まった解釈」なんてあるかなぁ?ましてや戦争や領土問題なんてお互いの利益や思惑がぶつかってるものなんだから。定まるのを待ってから議論をしようと思ってたら、何も議論できないと思うんですけど…。
    私は、中学までが日本で、高校はイギリスだったのですが、向こうの歴史の授業を初めて受けてビックリしたのが全部が論述だったことでした。例えばテストは「何故、第一次大戦は起きたのか?」というテーマで時間内で論文を書くこと。史実をちゃんと引用し、説得力あるロジックで、何故か戦争が起きたのかを論じることが出来れば良い点をくれた。正しい解釈なんてなく、正反対のことを言っても、ちゃんと論じられていれば良かった。日本では丸暗記中心だったので、歴史の授業がやたら楽しい!と思ったのを覚えています。
    イギリスの全部が好きというつもりはありませんが、「まず自分の立ち居地をハッキリさせて、そこから物事を見ているんだということ意識しなさい、事実に基づいて自分なりの解釈をしなさい、人と話をしたかったらキチンと論理だてなさい、引用や論理がしっかりしているのであれば気に食わない意見でもちゃんと聞きなさい」という学校の教育は見事だな、と思います。
    そうかぁ、解釈が分かれるから教えてにくい、ですかぁ。解釈が分かれたときに自分なりにどう整理したら良いのか、それを少しでも教えてあげして欲しいなぁ。(私も教えて欲しかった。)

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  5. chikaです。しまった、義務教育、高校までと勘違いしてしまって書いてしまった・・・(アメリカはK-12とkindergarten+12年義務教育なんで・・・)「中高」の話でした。
    いろいろな解釈を出して、それを考える力を教えて行く、というのはかなり高度な教育ですよね。X−Menのプロフェッサーがそう言う授業をしているシーンがありましたが、アレを見て結構憧れました。
    日本が真剣な野望で拡大基調だった時代、というのを知ることは第二次大戦しかり、バブルしかりいいことだと思うのですが、やっぱり数々の残虐行為とかもちゃんと俎上に載せないとならなくなるので厳しいみたいですね。別にそんなに大げさに考えるほどのことでもないと思うのに。

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  6. 解釈が確定しているように見える歴史だって、結局残っている記録のほとんどは勝者の物語で、ある出来事にある立場からの見方があるとすれば当然その反対側からの見方もあるはずで…
    考えるための足がかりとして基本的な事実の知識はもちろん必要ですが、歴史教育で「こっちから見たらこう見える、あっちから見たらああ見える」をやってくれたらもっとずっと面白かったろうなあと思います。
    高校までの歴史は退屈なだけでしたが、今は近現代のhistorical drama大好きでそういう役をよくやるようになりました。

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  7. ジョージ・フリードマンが書いてました。
    日本人はもともと好戦的な民族であって、今は平和主義の「ふり」をしているが、いつかまた再び他国を侵略するだろうと。
    そういう見方もあるんでしょうね。

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  8. Chikaさん、はじめまして。
    5、6年前から愛読していたのですが、コメントを残すのは今日が初めてです(ドキドキ)。
    私の相方はハンガリー人なのですが、彼が中学生の時に民主化が進み、共産党による一党独裁政治が終結(1989年)。それに伴い歴史の教科書がすべて書き直されたそうです。それまでは「資本主義=悪」とされてたので、歴史の先生もとまどっていたそうな。 
    また共産党の独裁政権時はロシア語が必須教科でしたが、民主化以降はロシア語は必須でなくなり、職を失ったロシア語教師は税務署勤務になったり。
    極めつけは、彼のおじいちゃんは共産党時代はいわゆる政犯として投獄もされたのに、民主化以降はヒーロー扱いされ国会議員になったこと。共産党時代はスパイに尾行されたり電話を盗聴されてて、その記録が最近公開されたり、と話を聞くとすごいです。
    でも彼曰く、20世紀に入ってからの歴史は時間がなくてあまり学校で教えてはもらえなかった、そうな。orz…
    ま、政変により急激に歴史の見解が変わったため、教育方針が固まってなくて教えなかったのかもしれませんが。
    ちなみにListen-IT愛用しています!
    私は在米歴10年近いですが、自分が今までいかに間違った発音をしていたのか思い知らされました。例:boatをボートと発音してました。(驚愕)
    oa-は通常 [ou]と発音されるんですね。ガビン!
    今まで指摘されなかったのは周りの人が優し過ぎるのか、politeすぎるのか。。。orz

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  9. 日本の歴史の授業で20世紀をカバーしてないのは、古代からやっていて時間が無くなるから、とは確かによく言われるけど、そんなの、実は授業計画さえしっかりしていれば、何とかなるはず。例えば東京のある高校でされているように、歴史をとりあえず20世紀だけ先に教えてしまって、その後それより以前をカバーするとか、20世紀を省略しないようにするには、色々手があると思います。
    だから日本の高校で20世紀の歴史があまり扱われていないのは、やはり高校の歴史の先生自体が20世紀の歴史を良く知らないことだろうし、その原因は、日本の大学教育がかなり空洞化しているからだろう、と思います。少なくとも私が在籍していた頃の日本の文学部の講義って、概論とかも概論では全然なく、先生の専門に絞った特殊講義である場合が多かったし、学生にペーパーを書かせたりするよりは、先生が勝手にずっと講義している場合が多かった。これでは学生が一次資料を自分で分析して、何が起きたか自分の頭で考えてまとめる、という訓練にはなりません。
    ちなみに日本の近現代史だって、諸説あって難しいとか言うけど、どの事件がいつ・どこで起きて、それについて、どういうところで解釈が違っているか、ちょっとマジメに一覧表でも作りつつ勉強すれば、大まかな話は分かるし、大まかな話が分かると、さらに詳しいことを書いた本を読むのも楽になります。
    そういうとき、日本ではあまり、というかほぼ全然知られてないけど、実はアメリカ人が書いた日本史の本とか論文って、コンパクトに分かりやすく書かれていて便利です。たとえばスタンフォードで教えていたPeter Duus のModern Japan (Houghton Mifflin Company) は読み物としても結構いけるし、南京大虐殺・事件だったら、こういう分かりやすい「まとめ」があります。http://www.japanfocus.org/-David-Askew/1729 

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  10. どなたか日韓条約に関する良い本をご存知でしたら教えていただけますでしょうか。モノグサなのでアマゾンでしか見ていませんが、どれがいいのかわからないです。(ちゃんとした歴史書があるのかもわかりません。。。)wikipediaだけに頼るのはどうもこころもとないですし、日本は、補償問題は日韓条約で全て解決済み、といつも言っていますが、本当にそうなのでしょうか。ドイツのClaims Conferenceとの歴史的比較とかにも興味があります。

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  11. そうそう、あるベンチャーで働いていたときに、その会社について書かれたTechCrunchの英文記事があったのですが、その日本語訳をした日本人がとても優れた人で、原文にはない、「コロンブスの卵となるか」というフレーズを使って翻訳してました。で、これをGoogle Translateを使って逆翻訳したその会社の米国人ファウンダーに、「コロンブスの卵って何だ?」と聞かれ、説明してえらく関心され、こちらが驚いたことがあります。
    なるほど、250年分しか歴史を学んでないからってことなのか、やっとわかりました!私もまだまだ修行が足りぬ。

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  12. ヒストリーチャンネルで「アメリカの歴史」という番組が
    イギリス人の入植から始まり911まで
    10回以上に分けて放送されていました。
    ヒストリーチャンネルらしくアメリカのプロパガンダっぽい描写も
    ありましたが、なかなか楽しめました。
    いかにしてイギリスの植民地から超大国になったのかが
    分かりやすく解説されています。
    参考までに第一話を置いておきます。
    http://www.youtube.com/watch?v=EkFXulYEPLA

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  13. 初めまして。花粉と申します。現在二十歳で都内の大学生です。
    小中高と東京のごく普通の公立学校に通っておりました。
    このような歴史問題が話題にあがると教育の世代間のズレなのか、いつも違和感を感じるので、今回ちょっとその違和感を書き込ませて頂いても宜しいでしょうか?
    普通の東京郊外の小学校、中学校で義務教育を受けました。
    いまでも小学校の道徳、中学校の国語の授業等での平和教育を強く覚えております。
    第二次世界大戦中の日本国内に住んでいた者、戦争に行った者、軍の手伝いをしていた者、空襲や広島やひめゆりの話、人体実験に関わっていた者の話、
    また、アジアで戦地となり人生を狂わされた現地の人の話、等、大量にありすぎて思い出し切れないのですが
    とりあえず被害者だけでなく加害者だという事も全く抜けてはおりませんでした。
    とにかくどれも、戦争の無情さを伝えるものであったように記憶しております。
    その結果戦争が嫌いな平和主義の日本人が大量生産されてこの国には沢山いる気がします。
    なので、日本がまた戦争をする?したい?なんて信じられない日本人が多いのではないでしょうか。
    小学校の歴史の授業でも戦時中の事は確か国語などとも絡めて詳しくやり、
    中学の歴史の授業でも、先生が詳しくアジア侵攻について述べていた印象があります。
    それが左だったか右だったかは覚えてなく、ただ事実のみが頭に残っているのですが。
    教育方針など、特に目立って他の学校と違うというわけではない公立学校なので、
    現在の文部科学省の方針通りにやっていたのだと推測するのですが、
    現在の義務教育ではこのような平和教育をやっているのではないでしょうか。
    ただ個人的には、高校などで戦争の歴史認識に関し、何十通りもの様々な解釈を詳しく教える事はこれから隣国がより身近になる上で生徒達に有益になると思いますし、
    教師の考えが間に入ってしまうのならば、現代文等と絡め、右から左、国内国外まで文献のリストを作り課題図書とすれば良いと思います。
    南京批判を考える時、生きている兵隊を書いた石川達三の事が、私はいつも頭をよぎるので。
    確かどっかの本で読んだのですが、イタリアでは100に近い世界大戦時のイタリアについての解釈を歴史の授業で教えていると書いてありました。
    日本もそうなれば面白いなあと思います。
    なんだかとても長くなってしまいましたが、いつもシリコンバレー事情楽しく読んでいます。これからもおじゃまします!

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