アメリカの就労ビザが欲しければ留学せよ

昨日のエントリーで、鍵となる一言を書き忘れてました。それ下記の赤字にした部分:

ただし、文系大学卒の人は厳しい。ソフトウェアに関係ある専攻の大学を4年修了しているのが就業ビザが出るほぼ最低条件。できれば、大学院まで行っている、というのが基本なので。プログラマ暦3年で、大学1年分に換算してくれるので、12年経験があれば、一応大卒とみなされますが、ひじょーに厳しい門で
す。

そう、アメリカで働く最大の関門は「就労ビザ」なのです。

学歴などなくても、会社側は経験で雇用してくれるのだが、しかしそこでビザがでない、という大問題が。

アメリカの会社は学歴社会ではあるが、どこかで入り込んで実績を証明できればあとは人のコネで次から次へと職がある。しかし、いつまでたっても学歴重視なのが移民局。プログラマとしてアメリカで働く以上、ちゃんと大学を出ていても、仕事の専門に関係ない専攻だと高卒扱いになっちゃいます。京大の法学部だろうと、早稲田の政経だろうと容赦なし。逆に、名もない大学でも専攻があっていればOK。

とはいえ、じゃぁ日本でコンピュータサイエンス系の修士を出ていれば簡単に就職口があるかというと、結構大変。

なぜなら、アメリカの会社にとって、今日本にいる人に新たにビザを出すのは大変だから。

基本的に、普通の人がとるビザは、「雇用主が身元引受人として申請する」というもの。だから、まず採用が決まって、それから申請、という流れになる。

で、シリコンバレーのエンジニアの多くが持っているH1Bというビザは、4月に申請して、許可が出て働き始められるのは10月です。そんな先の、しかもビザが取れるかどうか不確実な雇用のためにがんばってビザ申請してくれる会社はなかなかないのだ。

じゃぁどうするの?というと、アメリカの大学・大学院をでるのです。そうすると、勉強した内容に即した仕事をする場合は「お試しビザ」的なものが出て、そのビザで働いている間に本番の就労ビザを申請してもらい、継ぎ目なく働く、、ということになる。

「お試しビザ」が切れたのに就労ビザが取れなかったとある日本人の方は、翌年再申請して就労ビザが取れるまで、日本に戻って実家からリモートで働いていました。一旦実績を出せば、そのようにいろいろなことが可能にはなる。でもそれは実績を証明してから。

最短距離的なのとしては、吉澤さんの経験1吉澤さんの体験2を参照あれ。抜粋すると・・・

いろいろ調べてみると、シリコンバレーで働くには就労ビザが必要で、それを手に入れるのは中々大変なことがわかった。しかし、アメリカの大学を出れば、卒
業後1年間、学生ビザのまま就労可能なOPTなる制度がある。とはいえ、既に大学院まで出た吉澤さんが再度フルの学生に戻るのは無駄が多い、と感じた。そ
こでさらに探すと、カリフォルニア大学サンタクルーズ(UCSC)校の分校がシリコンバレーで見つかった。ここでは9ヶ月で大学卒業と同等の証書が出る。

ちなみに、「自分で起業した会社から自分にビザを出す」というのはとても大変です。他の株主を見つけてきて、マネジメントも別の人を起用して、「自分で自分にビザを出すわけではない」ということを証明できないとNG。アメリカは、世界のいろいろな国のように「お金さえ投資してくれればビザだしまっせ」という国ではないのです。

とにかく、悪いことは言わないので、留学するあるよろし。

なお、シリコンバレーで働いてる日本人に話を聞くと、「社内トランスファーで来た」とか「たまたまアメリカの会社からオファーをもらってきた」とかいろいろと「留学→就職」でないケースばかりが耳につく。

が、しかし、これは、今から目指そうという人にはお勧めしません。確度が低いから。

たとえば、抽選であたってグリーンカード(永住権)が手に入ったのでアメリカにいる日本人に時々会う。結構いるので、「そうか、グリーンカードの抽選ってあたるんだ」などと思ってしまうのだが、それは、「当たった人だけがアメリカに来ていて、当たっていない人は来ていない」からなのですな。「生存者バイアス」ってやつですね。

いや、この「アメリカの就労ビザが欲しければ留学せよ」という話、何度も書いているので耳タコ(目?)かもしれませんが、いつも聞かれるので。

どれほど就労ビザが難しいか知りたい人は、こちらで日本人の移民法弁護士の方が解説しているのビザカテゴリーをよーく研究してみてください。アカデミー賞を取ると簡単に出るみたいですけど。

裏道は「アメリカ市民と結婚してグリーンカード」。私はこれです。楽ちんであった。

アメリカの就労ビザが欲しければ留学せよ」への22件のフィードバック

  1. これ本当に何度言っても・・・ですよね。
    去年あたりからH1-Bは定員に達しなくなって、4月ー10月のタイムラグではなくなりつつあるようですが。
    でもこちらでdegree取得、OPT(最大延長で29ヶ月)、その間にH1-Bにスイッチもしくはグリーンカード申請、というのが最も可能性高いことは間違いないと思います。

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  2. こんちは。
    昔(1994年です、私は)はExtensionで1年くらい勉強してもPractical Trainingが取れました。それで1年働きながらスポンサーを探して、H1-Bというのが常道だったと思います。その後、9.11でPractical Trainingを取得するのが難しくなったとか聞きましたけど、やっぱ大変なのかな。
    それにしても「H1-Bは定員に達しなくなって」なんですね。新興国に戻るヒトが増えた影響でアメリカが人気の就労先でなくなっていて、これは人材流出か?みたいな話も聞きますものね。

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  3. 最近Techcrunchで話題になっていたスタートアップビザが可決されたらいろいろ面白くなるんですけどね。
    >Hidezumiさん
    横レスですが、OPT(Optional Practical Trainign)は米国の大学で学位さえもらえたら比較的簡単にもらえます。ただ3ヶ月以内にどんな形であれどこかの会社で働いている(研修、インターンでも可)証明を出さないと取り消されるそうです。

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  4. コンピュータサイエンスと文系の専攻を比較されていますが、理系の非CSの専攻の場合の事情はどうなのでしょう?物理とか化学とかバイオとか数学とか・・・

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  5. chikaです。
    >H1-Bは定員に達しなくなって
    不景気だからです。人材のdemandの方の問題。あとこれ、「応募解禁の4月1日に定員に達しなくなった」
    だけで、1年の何処かでは確か定員に達してたと思うのですが。
    >スタートアップビザが可決されたらいろいろ面白くなる
    残念ながらほとんどなにも変わらないと思います。「アメリカの特定のVCから1M」「アメリカの特定のエンジェルから$250k」といのが足切り。日本にいながら、そんな投資を受けられるベンチャーがどれだけいるのかと・・・。もちろん、ゼロではないと思いますが。
    >理系の非CS
    基本的になんでも結構good。特に高学歴(修士・博士)は。バイオ系は博士必須、という感が強いです。

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  6. 私の元同僚のソフトウェアエンジニアは応用物理学の博士でした。
    彼は今はGoogleでソフトウェアをやっています。
    アメリカのIT職は崇高な仕事だと感じてしまいます。
    前に勤めていた会社のCEOは数学の博士でした。

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  7. ビザ的なこと以外に、やっぱりエンジニアで就職しても、カスタマー・サービスに関わる場面はありますよね。例えば、大きな契約を取り付けるとき、ビジネス系の人と一緒に相手の会社に出向き、「うちと契約して、こういうソフトを使ったら、こんなことが出来ますよ。」とデモンストレーションするときとか。簡単なソフトだったら、ビジネス系の人だけでも何とかなるけど、高レベルのプロジェクトだとエンジニアも一緒に、ということになる、と聞きました。だから、その話をしてくれた友人は、新しいエンジニアを採用するとき、基本的にはもちろん技術的なところを見るけど、人間関係の作り方も見るって言ってました。
    となると、やっぱり、就職前に学生としてアメリカに来て、アメリカ社会を見回し、ここの人はこういう風に人間関係作っているんだな、と理解する時間が必要だし、その時間を作った人と、そうでない人の差は出てしまうのではないかしら。

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  8. ビザ的なこと以外に、やっぱりエンジニアで就職しても、カスタマー・サービスに関わる場面はありますよね。例えば、大きな契約を取り付けるとき、ビジネス系の人と一緒に相手の会社に出向き、「うちと契約して、こういうソフトを使ったら、こんなことが出来ますよ。」とデモンストレーションするときとか。簡単なソフトだったら、ビジネス系の人だけでも何とかなるけど、高レベルのプロジェクトだとエンジニアも一緒に、ということになる、と聞きました。だから、その話をしてくれた友人は、新しいエンジニアを採用するとき、基本的にはもちろん技術的なところを見るけど、人間関係の作り方も見るって言ってました。
    となると、やっぱり、就職前に学生としてアメリカに来て、アメリカ社会を見回し、ここの人はこういう風に人間関係作っているんだな、と理解する時間が必要だし、その時間を作った人と、そうでない人の差は出てしまうのではないかしら。

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  9. 12月21日に定員に達したそうです。
    http://jnusblog.takimedia.com/japaneseblog/?p=171
    就労可能な10月1日時点で定員に達しなかったので、今回は定員割れという印象を持った方が多かったと思います。
    Chikaさんはかなり脅されていますが、周りや私の例を見ても、本気度が高ければVISAは何とかなります。大変なのは事実で、「生存者バイアス」とも言えますが、本気度の違いと言って良いと思います。

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  10. 千賀さんやその他の方々の文章を拝見していて思ったのですが、9.11のインパクトって、H1Bとかグリーンカードを取るのに元々苦労のない高学歴者・高級労働者には実は結構ポジティブで、ビザ・ヒエラルキーの下の方の人にさらにネガティブ、っていう両極端な結果を生んだのではないでしょうか? 
    ちなみに私は9・11の割合すぐ後にグリーンカードを申請したのですが、ものすごくあっけなく書類審査が終わり、先輩の苦労話とは全然違いました。そのとき、「あー、9.11で移民局が増員され、そうなると州立大学の教師という無難なケースは、さっさと処理してくれるようになったんだ。」と思いました。H1Bについても、9.11の直後は色々あったけど、すぐシリコンバレーの大企業が騒いだから、それも解決したようですね。問題は学生ビザ、および学士レベルで就職しようとする人? 私の頃は日本では普通はなかった面接が9.11以降義務付けられたし、最初の留学は問題ないみたいだけど、再留学(いったん学士を取ってから、別の学士、あるいは修士を取ろうとして再入国する)のとき、ビザ審査に通らなかったという話は、具体的に2件ほど知ってます。

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  11. すみません。3つほど質問がございます。H1Bビザですが、日本で物理学学位は、米国でWeb DesignerかDeveloperの職を獲得するのに役立ちますでしょうか。
    また、多くのエンジニアは、H1B申請から許諾までの半年余りは、自国に戻ってリモートで仕事しているのでしょうか。
    最後です。H1Bを取得した人の次のステップとしてのビザはあるのでしょうか。例えば、フリーランスでも活動出来るようになるビザ等。

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  12. chikaです
    >日本で物理学学位は、米国でWeb DesignerかDeveloperの職を獲得するのに役立
    多分大丈夫(役立つかどうか、というより、取れるか取れないか、という問題ですが)ではないかと思います。CS系のクラスを取った、という証明などが必要かもしれませんが・・・。移民法弁護士に確認して下さい。
    >自国に戻ってリモート
    しなければならないのに雇用してくれる会社はほとんどありません。ですので、留学→OPT→ビザ、で切れ目無く働けるようになる留学が望ましいのです。 http://en.wikipedia.org/wiki/Optional_Practical_Training
    >フリーランスでも活動出来るようになるビザ
    基本的には永住権が無いとフリーランスはできません。裏技としては、起業して自分で自分を雇う、があります。(が、普通に大卒の学位がある人だったら、そんな手間をかけるより永住権を取った方が楽)。下記を参考にしてみてください。
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2011/10/visa.html

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  13. 私は情報系の学生で、学士号の英語表記がInformation Engineeringです。
    アメリカでは図書館学的な扱いをされCS系に分類されないとの噂を聞いたのですが、Information Engineeringでも就労ビザをとることは可能でしょうか?
    また、シリコンバレーの日本人エンジニアでInformation Engineeringの学位の方は多いのでしょうか?

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  14. Information Engineeringを知りませんのでお返事できません。すみません。実質何を勉強したかが問われるものなので、実際CSとみなされなくても、きちんとCS系のクラスを履修していたことが証明できれば大丈夫だとは思いますが。

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  15. ピンバック: アメリカで働くためのビザのまとめ | On Off and Beyond

  16. ピンバック: 先進国での海外就職は、海外の大学を卒業していないと難しい!? | 半年で英語が身に付く「英語習慣」

  17. こんにちは。
    今ハワイでカレッジに2年間通ったあと日本に帰国している状態の者です。
    アメリカで就職したいと思っており、就労ビザについて、調べていたらこのブログにたどり着いたのですが、UCSCの分校で9ヶ月で大卒同様の証明がとれると書いてありますが詳しく教えて頂けませんか?

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  18. こんにちは。

    新卒1年目(25歳)でWebエンジニア, iOSエンジニアとして働いているShotaroです。

    エンジニアとしてアメリカで働く道を探している間にこの記事を見つけました。
    記事が書かれて6年以上たった今でも、この記事が読まれ続け、大きな価値を提供していることに驚嘆しています。

    社会学部卒の私にとって、この記事は本当に参考になりました。
    今現在私の調べた中では、USSCの The 9-month professional certificate programs など、短期でOPTに繋がるプログラムに参加し、H1Bビザを取るのが、最短の方法だとわかりました。

    この記事のおかげで、あとは$25,000のbank statementと生活費を稼いで準備するだけという、目標までの道筋が明確に見えました。

    感謝の気持ちをお伝えしたいと思い、コメント致しました。

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