技術系が高給であること再び

先日のミニベンチャー買収の現行相場に頂いたコメントへの返答をQ&A式に書いてみます。

管理VS技術、の対決構図は如何なものでしょ?

シリコンバレーのIT企業的には、給与体系は大雑把にいって「技術系」「管理系」「ビジネス系」「営業系」に分かれます。そのすべての中で「技術系」が比較優位にあります。つまり、技術でない人=管理部門、ではありません。(・・・という答えを期待されているコメントではないのですが、以降の内容の布石として利用させていただきました。)

アメリカのマンガのDilbertとか、管理職は何も分からず威張っていて、その下で働くエンジニアのDilbertやその同僚は嫌気がさしてる、ってい
うことになってますよねー。あの管理職が、Dilbertよりお給料低いとは思えないし。エンジニアが高いのは、買収のときだけ?

技術系の管理職は普通技術者がなりますので、「技術系」の給与体系に乗ります。「ビジネス系」とは事業開発とか、マーケティングなどです。マーケティングでも、product marketingという、市場ニーズに基づいて製品のスペックを決めるタイプの仕事は技術系の給与体系なことが多いです。(バックグランドも技術系の人が多い)。

Dilbertのpointy-hairedが元技術者だったのは信じがたいですがw

JUNIOR-LEVEL位までならエンジニアのほうが高給(偉い?)のはわかりますが、将来的に”実験室にいるあの人”以上のポジションに上がり、
もっとBIG-PICTUREに関わる仕事をしてそれに見合った給料をもらいたい場合はどうなのでしょうか? 現在欧州でエンジニアをしていますが、それ
を考え現在MBA取得してエンジニアからのキャリア転換も考えています。 

基本的には、ITでは相当なレベル(日本で言うところの部長クラス)まで給与体系は技術系>ビジネス系です。技術のトップ、マーケティングのトップ、事業開発のトップ、というレベルになると給与レベルはほぼ同じになります。

ただし、技術系は下の裾野が広く、「ヒラ技術者」もたくさんいますが、例えば「事業開発」となると、殆どの人がMBAとなるので、そうした「ピラミッドの形の違い」はあります。がっしがっしとVP of engineeringとかVP of R&DとかCTOとかを目指せる人だったらその路線を目指せば、同じクラスのビジネス系の人と同等またはそれ以上の収入となります。もちろん、狭き門ですが。

ライフサイエンス系でも、少々でこぼこの形が違いますが、同じような傾向があります。

 アメリカで優秀なexecutiveを雇うためのゴール設定・報酬体系のありかたというエントリーで触れたベンチャーのexecutive給与相場の資料を参照ください。こちらのページをスクロールして出てくるScribdの資料の上のほうがIT系、下のほうがライフサイエンス系です。

ただし、ライフサイエンス系はビジネスとサイエンスの両方をわかっていないとマネジメントになれず、かつそういう人は少ないので、サイエンスバックグランドでMBA、というのが貴重なマネジメント人材として活用される傾向があります。

MBAの珍しさを象徴するかのように、名刺に「MBA」と書いてある人が散見されるのもライフサイエンス系。IT系でそんなの書いたら笑い者です。(MBAなど掃いて捨てるほどいるので、名刺に「簿記三級」と書くようなもの。)

日本で管理が強いと思われがちなのは別に不思議なことではないと思います。
単に知られている実態例のほとんどが、ある程度規模の大きい会社(即ち、管理が必要な組織)のものだからです。
おそらく日本のベンチャー企業で管理が強いなんて話はあまり聞いたことないのでは?
風が吹いたら倒れかねないベンチャービジネスで管理なんかに力割いてたら会社潰れますよ…

アメリカだと、ベンチャーと大企業の給与相場はかなり同等です。VPクラス(日本で「副社長」と訳されるレベル)になると、上場企業の方が高給になりますが(その代わり、ベンチャーのVPはストックの部分が厚い)。なので、少なくともシリコンバレーでは、大企業でも管理部門の給料は低いのが一般的ではないかと思います。

ただし、かような相場が出来ること自体、「経済が常に発展、新しいものが生まれ続けるので、それを生み出す技術人材の相場が上がる」、という社会を反映しているわけですが・・・・。

技術系が高給であること再び」への13件のフィードバック

  1. 技術職が管理職より高給?そんな理想社会があるのでしょうか。千賀さんは本当に現実を見て話しているのか疑問です。それに、技術系の人材がMBAを大量に取得しているというのも疑わしいですね。工学系の大学・大学院に入るとすれば、MBAを追加で取得する時間的余裕などないはずです。

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  2. なるほど、翻訳の問題ですね。技術系はビジネス系・営業系よりお給料が高く、技術系管理職とビジネス系管理職を比べた場合も、ある程度のランクに行くまでは、前者が高いっていうことですね。納得。確かにシリコンバレーで働いている友達も、「同僚が管理職になった」って言っていたことあるし、Pointy-haired も大昔は技術者だったんでしょうねー。、
    で、これは、かなり帰国子女的な質問なのですが、日本の場合について、教えてください。例えば東芝とか、そういう昔からある会社だと、技術系は同格のビジネス系よりお給料が安いんですか? それとも技術系管理職は、ビジネス系管理職ほど上に行かれないってことですか?
    アメリカは別にビジネスと理系との組み合わせでなくても、複数の専門を勉強して、学士・修士を終わらせるっていうの、かなり普通で、学校の先生になるためのプログラムとかでも、日本でもありそうな国語+社会とか言う組み合わせだけでなく、数学+社会、とかそういう組み合わせの教員資格を取って卒業する学生、時々います。もちろん、どこの国にも、「僕は理系、全然駄目。」とか言う人もいますが。だから、理系の学位+MBAについても、さもありなん、っていう気が私はします。

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  3. 理想社会で働く技術者です。
    もし私が日本に帰って同じような仕事をするとなると年収は半額くらいになると思います。たまに出てくる日本の年齢ごとの平均年収等の記事からの見積もりですが。
    それでもって賢い人達と先端のものを開発できるんですから、それは技術者にとっては理想社会です。
    私の同僚だったエンジニアもその後MBAを取得した人達何人もいます。
    まったく珍しいことではありません。
    ちなみに私の上司は10歳くらい年下の女の子です。

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  4. Business economicsとか会計みたいなことでハードコアなMBAプログラムではないかもしれないですが、理系の大学院でもビジネス系のプログラムと連携して学生を集める試みは良くみます。特に工学系ではそういうプログラム結構盛んなはずです。民間就職するときにはそういうバックグラウンドは結構役に立つらしい。

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  5. シリコンバレーの技術系ベンチャーだと、BS+MBAっていうのはものすごく多いです。 僕の会社(60人強)いる四人のMBAのうち、僕以外は三人ともそうです。今まで出会ったインテルやTIのマーケティングも、大抵BS+MBAです。 MBAは他の学位に追加で取得するものじゃなくて、技術者がいったん就職した後、キャリアチェンジするときに取得するものです。
    )JUNIOR-LEVEL位までならエンジニアのほうが高給(偉い?)のはわかりますが、将来的に”実験室にいるあの人”以上のポジションに上がり、 もっとBIG-PICTUREに関わる仕事をしてそれに見合った給料をもらいたい
    技術ベンチャーは技術力が生命線なので、”実験室にいるあの人”が一番大切な場合があります。うちのPh-D達はなんの役職もついてないけど、宝のように扱われていて給料も高いです。だからシリコンバレーに技術者が集まるんですよ。さらにいうと最高の技術者はR&Dにいてコアの技術開発をする。それよりも技術的に少し落ちる人たちは、下流にいて製品開発をする。

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  6. >それとも技術系管理職は、ビジネス系管理職ほど上に行かれないってことですか?
    企業によっても違うでしょうけど、そもそも日本には「技術系管理職」は原則として『存在しない』と言ってよいと思います。
    日本企業では「技術ができない(無能な)人がなるものが管理職」という図式があります。
    現実に見ても、技術のことが全く分からない管理職なんてゴロゴロいます。
    というか、技術のことが少しでも分かる管理職の方が珍しいくらいです。
    昇進の基準が実力主義ではないので、自ずとそうなるんでしょうね。
    そのせいか時々信じられないほど低レベルな人がいますからね。
    上司に対して「学部1年レベルからやり直せ!」って言いたくもなりますよ。

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  7. 私は仕事の一部として電子部品の評価、購入をやっているので、名刺にPh.D、MBAと書いてある外国人マネージャーと良く会いますね。わざわざ日本に来る偉い人はやっぱりよく勉強してすごいなあといつも感心します(必ずしも優秀な人ばかりではありませんが・・・)。
    rakoさんのコメント
    >例えば東芝とか、そういう昔からある会社だと、技術系は同格のビジネス系よりお給料が安いんですか? それとも技術系管理職は、ビジネス系管理職ほど上に行かれないってことですか?
    とありますが、少なくともハイテク系の企業では技術系管理職は、ビジネス系管理職ほど上に行かれないってことはないと思います。ただ、日本の大企業では職種で賃金があまり変わらず、役職が上がらないと賃金が低いままであり、管理系の人は子会社に適当なポジションを作ってそこの管理職として収まることが多いので出世がとても速く、出世するのも簡単なので生涯賃金が文系>理系となってしまうように見えます。
    このように管理職にする以外に報酬を高くする手段がないので、スーパーエンジニアが高い成果をだしたためにスーパー無能管理職にされるという悲劇がたまに起こります・・・
    長いコメントですみません。

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  8. >Dilbertのpointy-hairedが元技術者だったのは信じがたいですがw
    私はpointy-boss も元・エンジニアなんだろうと思っていました。
    日本の会社では、理工系出身で、今のテクノロジーはからきし、でも「経歴的に技術者出身でないとそのポストには就けない」的な人事上の慣行で技術部門の管理職になっていて、部下の現役エンジニア達の密かな頭痛のタネになっている、、、という人間像は、おそらくそれほど珍しいものではなく、むしろNon-Working-Rich の一つの類型くらいのものではないかと。
    無論このご時世では棲息地域は狭まりつつあるものと信じたいですが、みかか地方とかにはまだゴロゴロいそうです。Scott Adams は確か元・ATTだっていうから、やっぱり似たようなものなのかと・・・。

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  9. こんばんわ
    いきなりですが、渡辺さんの主張に納得ができません。
    大卒は高給だ。何故なら東大卒の平均給与は800万だからだ。と言ってるようなもので、一般化できる根拠が見えません。
    アメリカ国内のランキングで100位程度の大学の修士でも高給だ。というのならわかります。
    そもそも日本は文系卒SEがいるように技術者と呼ばれる敷居が凄く低いです。アメリカでも何の専門教育も受けていない層がシリコンバレーからオファーが来るなんてことは当然ありませんよね。
    私が見てきた限りだと、彼らはPhD課程の1年目からファーストの論文を出したりと常人離れした能力を持っています。技術者の平均は少なくともここではありません。
    ということで、技術者と呼ばれる対象の日米の差や、技術者は高給。というのは何処まで一般化できるのか。ということについて言及していただきたいです。
    もちろんシリコンバレーに限定されても、有能ならば高給というのいうのはとても健全だと思いますし、そういう意味では記事の質は全く落ちないのですが、何故一般化できるのかが知りたいです。
    渡辺さんは色んな話を見聞きして当然のごとく思われてるかもしれませんが、そのへんのお話もぜひお聞かせください。

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  10. chikaです。
    一般化できる根拠は、同一社内での給与水準です。給与・ストックオプションコンサルタント、という仕事が当地にはありまして、そういう人に頼んで一覧を作ってもらうと、「理系優位」となります。
    こんな感じです。
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/05/post_7.html
    また、このエントリーの参照先エントリーで言った通り「同じようなバックグランドであれば理系職の方が文系職より給与が高い」であって、無条件に理系の方が高いわけではありません。

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  11. >そもそも日本は文系卒SEがいるように技術者と呼ばれる敷居が凄く低いです。
    冗談も休み休み言って欲しいなあ。
    それ、本物の技術者からは技術者扱いされてませんよ。鼻で笑われてます。
    それはあくまで、お客様向けに見せるための営業トークであって、実態を表すものではありません。

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