思いがけず男尊女卑な英語的呼び名の慣習

Mrs.(ミセス)というのは「結婚している女性の尊称」と習うと思うのだが、アメリカではちょっと違って、ダンナさんの名前にMrs.をつけることで、「XXさんの奥様」というニュアンスとなる。しかも、夫の苗字のみならず、フルネームにMrs.をつけたりする。たとえば、John Smithという夫を持つCathy Smithという人は

Mrs. John Smith

というのが正式呼称。

つまり、結婚した女性は、ダンナの名前でしか認識されない、というなかなかもって男尊女卑な呼び方なのであります。

なので、女性が旧姓を名乗っている場合、その姓にMrs.をつけると変な感じになる。ところが、これはアメリカの外では違うみたいで、ヨーロッパなどでは「結婚した女性の尊称」という日本で習ったままの使い方でMrs.が通用しているように見受けられる。(違ってたら教えてください)。私は旧姓のままChika Watanabeなのだが、ヨーロッパでは

「Mrs. Watanabe」

と呼ばれることがある。が、私のダンナの苗字はWuであり、よって私はWuさんの奥さんなので、アメリカ的には

「Mrs. Wu」

な感じ。しかし、アメリカでも、旧姓を名乗っている人をダンナさんの姓で呼ぶことはない。だから、これも変である。

ここで便利なのが、結婚の有無にかかわらず使える

Ms. Watanabe

なのでした。ま、アメリカではよほどのことがない限り尊称をつけなくなってしまったので、Ms.が必要になることも少ないのですが。

ちなみに、夫婦を結婚式に招待する、てな時の古式ゆかしい宛名の書き方は

Mr. and Mrs. John Smith

となる。ここで、奥さんの名前がどこにも出て来ないことに注目。「John Smith様ご夫妻」となってしまうのですな。

しかし、こちらのエチケットページにあるように、奥さんが旧姓をキープしている場合は、

Mrs. Cathy Davis and Mr. John Smith

という風に、奥さんの名前がフルネームで登場するのみならず、ダンナさんより奥さんを先に呼ぶことになる。

「妻は夫の名前+ミセスでしか認識されない」という、おまけ状態だった時代から、ここまで女性の地位が進化したのか、、、と思うとなかなか興味深いのでありました。(ま、必ず先に呼ばれること自体、まだ地位が低い証拠である、と見ることもできるが)。

というわけで、なんでもかんでも尊称をつければよい、というものではないので、どう呼べば良いかわからない時は相手に確認しましょう。

ちなみに、ファーストネームにMrs. Mr.をつけると、小さい子供が大人を呼ぶような感じがするのでナシです。(Mr. JohnとかMrs. Cathyとかね)。

思いがけず男尊女卑な英語的呼び名の慣習」への13件のフィードバック

  1. なるほどぉ、Mrsにはそんな背景があるのですね。
    かねがねスペルと発音が一致しないと感じていたのですが、Mr’sということなんでしょうか。
    日本でも、だれだれさんの奥さんのような言い方がありますが、いやな感じと思っている女性は多いような気がします。
    母(78歳)は、家内とか、奥さんと呼ばれるのをすっごくいやがっています。奥とはなんじゃい、ということのようです。
    (いつも楽しみに拝読しています。私はお隣のオレゴンを愛してやみません)

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  2. 私はいつも Mrs と Ms とどちらで呼ぶべきか迷ってしまいます。どちらを使っても本人の意図にそぐわなければ失礼になるような気がするので。なので学校の先生のように「私は Mrs XX です」と宣言してくれると非常に助かります 🙂

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  3. あと、学問の世界とかでよく使われるのは、Dr.ですね。もちろん博士号を持ってない人には使えないけど、Mrs.かMs.のどっちが良いのだろうとか、考えずにすむから、それなりに便利。もちろん、それもヨーロッパだと少し違うみたいで、学会で堂々とMadame XXX とフランス人の女の先生が呼ばれているのも聞いたことあるけど。
    それから、この前、少し迷ったのは、弁護士さんに手紙を書くとき、どうすれば良いかということ。Esq. って称号があって、その使い方は Ms. Chika Watanabe, Esq. っていう風になるらしいのですが、千賀さん、シリコンバレーとかで、こういうの聞いたことありますか? 

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  4. 日本では、小学生くらいの子供がいる女性は、呼び名が「◯◯ちゃんのママ」だったり、「◯◯ちゃんのお母さん」になったりする。
    家で妻を呼ぶ際、子供の前でも、「ママ」や「お母さん」でなく、ファーストネームで呼ぶようにしている。でも、同世代の子供がいる母親同士のコミュニティでは、やはり、「◯◯ちゃんのお母さん」になるらしい。
    これは、日本以外でも同じなんだろうか。

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  5. 思いのほかアメリカでもそういう昔の考え方が残っているのですね
    しかし、これってほんと(昔)の考え方であって、昔=正しい言語
    って解釈ありますが、それって間違ってると思うんだけど
    いかがですかね?
    よくテレビのクイズ番組で、正しい日本語は?みたいな問題で
    そんな日本語一切使わないよ!みたいなこと、よくありますんで。。。

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  6. chikaです。
    >Mr’sということなんでしょうか
    言われてみれば、確かにそうですね。Wikipediaによると、「正しい(省略されない)スペル」というものは実は明快には存在しないらしいです。
    >どちらを使っても本人の意図にそぐわなければ失礼になる
    口頭だと、「なんとお呼びすればいいですか?」と聞いてしまうのが一番よいと思いますが。。。
    >弁護士さんに手紙を書くとき
    ふふふ、私は、John Smith Esq.に手紙を書くときは
    John Smith
    と書きます。呼び捨て。
    >「◯◯ちゃんのママ」
    ああ、家庭内でもありますよね、それ。子供の視点からの名前に全員が変わっちゃう、、という。私の実家で、私の母親が、私の妹を「ママ」と呼んでいたときは仰天しましたが、ダンナの実家(ハワイ)でも同じ現象が起こって、ダンナのお母さんがダンナのことをjojo(スペルはなぞだが、中国語でおじさん、という意味)と呼んだりして。
    一般的には、アメリカはファーストネーム社会なので、面識あれば普通にファーストネームで呼ぶほうが多いんじゃないかな、と思いますが。
    >先生を呼ぶときもMr.
    私は大学院で、周りが先生をファーストネームで呼び捨てるのにびっくりしました。いまいち私自身はできなくて、Professor last nameって呼んじゃってましたけど。ノーベル賞受賞者をマイケルっとか呼べないよ・・・・みたいな。
    >、昔=正しい言語って解釈ありますが、それって間違ってる
    ふふふ、本文では、なるべく「正しい」という表現を避けてみました。結婚式の招待状も、「古式ゆかしく」はMr. and Mrs.ですが、もちろんMrs. (妻名) & Mr. (夫名)、でもOK。奥さんだけPhDだったらDr. (妻名) & Mr. (夫名)、とか。ただ、だんなさんだけが知り合いのときは、Mr. and Mrs.(だんなさんの名前)でOKだと楽なんですけどね。

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  7. 逆に外国(非日本語ネイティブ)の人から来るメールはsanづけが実におおいんだけど、彼らが日本人にメールを送る場合はsan づけが便利なんでしょうね。
    田中一郎だろうと山田花子だろうと、日本語ネイティブでないと名前の字面だけから性別を判定するのは至難の業。まだ一郎、次郎、三郎みたいな分かり易い人ならいいけれど、中にはネイティブでも性別が分からないような漢字の人もいたりして、そうなるとMr.かMs.か相談されても返答に困ります。ましてや外国人おや。
    かれらはきっとsanづけを実に便利に利用しているのでしょう。

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  8. ジュディ・ガーランドが主演した「スタア誕生(A Star Is Born)」のラストシーンを思い出しました。

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  9. >日本人にメールを送る場合はsan づけが便利
    それもあるし、そうするのが日本人に対する礼儀、だと思ってるかも。(というか、まじで、アメリカでは、Mr. 等使わないのですよ。業界・地域にもよりますが、西海岸では、始めての人にもいきなりfirst nameで呼び捨てのメール、っていうのが多いです。Dearをつけると丁寧、Hi だとカジュアルだったりします)
    >Mrs はmistressの略語
    Wikipediaによると、Mistressを語源として、結婚している人はMrs 未婚の人はMs に分化したらしいんですよね。。。
    http://en.wikipedia.org/wiki/Mrs

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  10. そう言われてみれば、仕事の契約書やプライベートの手紙の宛名にMrとかMrsとか、すっかり付けないっすね。
    銀行からの手紙みたいな顧客様宛的な手紙には付いてたりしますけど。
    あと性別が分からない時も、あえて付けないっすね。

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  11. 昔の家系図で、藤原○○女(女は「むすめ」と読み、つまりは藤原○○の娘になります。)と似てますね。当然、娘にも名前はあった筈なのですが、家系図にはほぼ書かれないため、昔の女性の名前は今に伝わっていません。

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