翻訳(通訳)って、すごい難しい。文字も話すのも。
私の場合、仕事柄、通訳する場合は、訳しながら、自分の意見も差し挟んだり、質問したり、と「考える」方も平行してやるので、まぁ1時間続けると低血糖で手が震えてきます。激しく脳が使われている感じ。マルチスレッド処理。ただし、これはほぼ全文キチンと訳す場合。普通はポイントとなるところとか、特に誤解を招きそうなところだけ訳すので、そこまで大変ではありませんが。
文字のものを訳すのは、自分が知らない領域だと、ホントに時間がかかる。そもそも、その領域について学ぶところから始まるので。例えば、数年前、ハワイの親戚に
「この日本語の新聞の記事を英語に訳してくれ」
と頼まれた。短い記事だったのだが、見てくらくら。
いわく、硫黄島で戦ったアメリカ人の兵士だったおじいさんが亡くなって、その遺品から日章旗が出てきた。きっと日本兵のものだからその人に返したいと探したところ、オリジナルの持ち主の奥さんがまだ存命していてその人に渡すことが出来た、といった記事なのだが、奥さんが、日章旗を仏壇に奉って仏様を弔うことにした、ダンナさんも冥土で喜んでいるのではなかろうか、とか、元々ダンナさんはなんとか中隊に属するとある位の軍人で、その上官に当たる人は何とかさんで、とかそういう事実関係が羅列。
そもそも、私は軍隊の位が日本語と英語でどう対応するか知らないので、まず日米の陸軍の組織について学ぶ。さらに「仏壇に奉って仏様を弔う」ってどう訳せばいいのか頭を悩ますことしばし。おかげさまで、10センチ×10センチくらいの小さな記事を訳すのに1時間半くらいかかりました。はい。
なぜ大変かと言うと、つまり、元の言語でかなり深く理解し、しかもそれを別の文化に置き換えた時どういうのが適切かを理解してからでないと、訳せないから。
「入社試験に合格しました」
を英語にすると
「I got an offer from the company」
がまぁ一番一般的に耳障りが良いですが、随分ニュアンスは違うわな。でも「I passed the entrance exam to the compan」なんていったらとても変な感じ。筆記試験がばりばりあるのがアメリカで普通な業界だったらありえるかもしれませんが。こういうのも、もとの「入社試験に合格する」というのがどういうプロセスをさすのか、そしてそのプロセスに一番近いアメリカの出来事はなにか、というのがわかっていないと訳せないのでありました。
時々「これ、どう訳せばばいいでしょう」と聞かれて「うーん、日本語ではそもそもこれはどういう意味ですか?」と聞くと、「いえ、私はよく知りません」というようなことを言われることがあるんですが、よくわらかないものは訳せません。ある日本語の単語にぴったりはまる英語の単語があるわけではなく、全体の意味を考えながら、最適な言い回しを近似値として探してくるので・・・・。
日/独/英をほぼネイティブレベルでこなすトリリンガルの友人がいるが、会議で、この3つの言語を全部いったりきたり訳すはめになったことがあったそうで、いわく死ぬほど大変だった、とのこと。が、それぞれの言語だと普通にネイティブなので、「3つの言語間を訳す」ということがどれほど大変か、会議の他の参加者にはわからないんですねぇ・・・。そういう超人技をこなしている人を見かけたら、是非糖分補給してあげてください。
国連とかの通訳って、1日最長10分しか働かないとか言いません? 私もガーって通訳していると、途中でカクっと、「もう駄目」っていう瞬間が来ます。あれってやっぱり糖分なのかしら。
一つの言葉を話しているときって、一つの靴を履いているような感じだと思います。同じ靴をずっと履き続けていれば、それはそれで居心地よく進めるんだけど、二つの言葉を訳すとなると、二セットの靴をしょっちゅう履き替えなくてはならない、っていう感じ。あるいは着ている洋服を着替える感じっていうか。それが何回も繰り返してると、ものすごく疲れるんだよね。モノリンガルな人には、ものすごく分かってもらいにくいんだけど。
ちなみに、私も一応トライリンガルだけど、第三番目の言葉は、英語・日本語ほど出来ないから、3つとも訳さなくてはいけないっていう場面は経験したことないです。千賀さんのお友達、さぞ大変だったでしょうねー。
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日本の会社や大学のサイトのEnglishページを見ると、あきらかに英語圏のバックグラウンドを持たない人が訳したとわかるものがありますね。それが結構大きな企業だったり、一流どころを思われている大学だったりすると、こっちが変にハラハラしてしまいます。
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知り合いのミュージシャン(英語が苦手。特にwritingが。)がアメリカ人のミュージシャンとメールでやり取りをするのを、頼まれて仕方なく手伝ったところ、調子にのって日本語で書いた歌詞を英訳してくれと頼まれて非常に困った経験があります。抽象的な意味合いが多かったし、歌詞としての体裁とかかっこ良さとかも考えないといけないし。。。そういうのって、どっちかというと日本語のできる英語ネイティブに頼んだ方がいいと思うんですが、プロの翻訳家・通訳でもない自分に頼んだあなたが悪いってことで、テキトーに作って渡しました。
日本人のミュージシャンが時々英語の歌を作ってますけど、いけてるんですかねー?どうやって作ってるんだろ?(日本語で作ってピーター・バラカンやマーティ・フリードマンみたいな人に訳してもらってるのかしら?)
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EU, NATO本部のあるブラッセル在住です。トライリンガルですが、3つめは中級レベルで仕事をするのは少々きついです。友人はデンマーク・ドイツ・英語の通訳をEU議会でしておりますが、かなり大変な模様。でも、ブラッセルでは5ヶ国語話せる人とか、ざらにいます。ただし、ここでポイントにしたいのは、5ヶ国語、6ヶ国語話せても、すべて同じ言語郡であったり、少なくとも、すべてヨーロッパ言語のケースがほとんど。アジア言語が話せるヨーロッパ人はかなりレアです。それどころか、5ヶ国語話せると自慢げに言う人のほとんどが、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、フランス語、英語など、ラテン系に偏っている、あるいは、北欧言語に偏っているなど、日本語ネイティブの私からみると、圧倒的に「ズルイ」マルチリンガル状態。意味、ニュアンスの違いが少なければ少ないほど、翻訳・通訳は簡単だと私は思いますので、日本語からいかなる言語に訳す場合も、例えばドイツ語から英語に比べれば、はるかに大変だと思います。日本の翻訳・通訳の方、本当に苦労されてると思いますよ
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これは翻訳部分での難しさもあるのでしょうが、例えば、自分があまり知らない分野の新聞記事みたいなものを書いたりしようとすると、ぎこちない出来になってしまうのと同じような難しさな気がしますね。
僕はもちろん日本語の方がぜんぜん流暢なんですけれど、専門教育をほとんどアメリカで受けた関係で、日本から来た研究者さんと話したりするときに邦訳された専門用語で話されると、かなり辛い物があります。雰囲気でだいたい分かるのですが、スムーズには行かないですね。困ったものだ・・・。
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二つ以上の言語をネイティブレベルで話せるということと、翻訳・通訳できること、というのは全く違うスキルですね。 言いたい事そのものに加え、言語の背景にある文化なども理解していないと難しいですし、どんなに頑張ってもジョークなどは殆ど無理ですからね・・・
私も立場上「これを英語で何て言うの?」とよく聞かれますが、そもそも日本語を元に英語に変換しようと思わない方が良い、と伝えています。
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chikaです。
歌詞の訳を頼むって、勇気ありますね。私は昔、テクノDJのいとこのバイオを英訳したことがありますが、10行位なのに半日かかったw。環境彫刻とか見たことも聞いたこともない単語の羅列で、「ミニマルテクノ」に関する英語の資料を読み込みましたw。
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docnosukeさんと同様、私も言語学を英語でしか学んだことがないため、日本語で書かれた文献を読むとくらくらします。逆に、堪能ではないフランス語の文献であっても、専門用語が英語と同じか若干フランス語に変化したものであって、読破は可能です。こういう経験をすると、本当に、ヨーロッパ人の「ズルイ」マルチリンガルが羨ましくなります・・・。通訳・翻訳の苦労が、私達と比べて、おそらく半分以下でしょうから。
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ニュアンスの違い、文化的な事象は全部抽象的に遠くから語ってしまうといいのでは?と思ったことがあります.
仏壇が云々 -> religious rite
「お疲れ様!」-> he greeted
軍隊の階級 -> a rank in force
より上の階級 -> higher rank than that
中隊 -> a group unit in force
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こんにちは。やっぱり糖分補給要の状態になるんだ、ボクだけじゃなかったとこちらを読んでホッとしました。
一時間の打ち合わせで、なんちゃって通訳者として議事進行、アイルランド人の同僚の通訳、弊社窓口を兼務しましたが、ヘトヘトになり、その後なにもする気が起きませんでした。
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